長く愛せる道具がある。私とカミノパンツ

株式会社ヤマップ代表取締役CEO・春山慶彦インタビュー~

ヤマップCEO・春山が愛用していたことをきっかけに始まった、「別注カミノパンツ」の開発。なぜ数ある登山パンツの中から、カミノパンツだったのか。履き続ける理由は何なのか。長年の愛用者だからこそ語れる “本当に長く愛せる理由”を紐解きます。
(インタビュアー・執筆:小川郁代)

春山慶彦は、なぜ「こればかり」履き続けるのか

春山慶彦は、なぜ「こればかり」履き続けるのか

YAMAPがアウトドアブランドfinetrack(ファイントラック)とコラボして作った「YAMAP別注カミノパンツ」は、YAMAPオリジナルアイテムの初期商品として、2020年にYAMAPSTOREに初めて登場しました。それから小さなアップデートを重ねながらも、素材や基本的なデザインを変えることなく、今も多くのユーザーに愛され続ける、YAMAP STOREを代表するロングセラーのひとつです。

登山用のパンツとして形もカラーも洗練された、まさに王道ベーシック。どちらかといえば地味な印象さえあるこのパンツが、なぜこれほど多くの登山者の心をつかむのか。その答えに近づくために、カミノパンツを愛してやまないヘビーユーザーの一人、ヤマップCEOの春山に話を聞きました。


──春山さんは、スタッフの間で「いつもあればかり履いている」といわれるほどカミノパンツを愛用されているということですが、最初に出会ったのはいつ頃ですか?

はっきりとは覚えていませんが、登山アプリYAMAPをスタートさせた頃なので、少なくとも10年以上前だと思います。ファイントラックのカミノパンツをたまたま見つけて使い始めたところ、履き心地や耐久性が優れていることもあり、こればかり履くようになりました。たまに他の商品も試してはみるんですが、結局カミノパンツに戻ってきてしまう。今では、雪山以外のすべての山でカミノパンツを使っています。

YAMAPスタッフにはもはやお馴染みの、春山のカミノパンツ姿YAMAPスタッフにはもはやお馴染みの、春山のカミノパンツ姿


──それほどまでに気に入った理由を教えてください。

使い始めてすぐに気づいたのは、非常に動きやすい設計になっていることです。パンツのパターンが工夫されていて、もたつきや膝の引っ掛かりなど、動きを妨げるストレスがありません。この点はほかの登山用パンツと比べても抜きん出ていると思います。

もう一つが、使い続けるうちに実感した、生地や縫製の強さです。今、履いているものは5~6年使っていますが、生地の破れも縫い目のほつれもほぼありません。結構ハードに使っているんですが、修理や買い替えが必要だと感じたことは一度もないですね。最初に使っていたものは、踏んだ枝が跳ね返って突き刺さり、小さな穴が開いてしまったことがありましたが、目の粗い岩や錆びた鎖に強く擦れても、傷がついたり破れたり、生地がダメージを受ける様子はありません。登山で使うパンツとして、とても信頼しています。

ただ、使っていて少し気になる点はありました。一つは、スマホを入れられる使いやすいポケットがないこと、もうひとつが、前面の目立つところにロゴが入っていることでした。

別注の原点は「スマホ専用ポケット」

別注の原点は「スマホ専用ポケット」

──それが別注コラボ商品を作るきっかけになったのですね。

その通りです。今ではさまざまなブランドとコラボしたYAMAP別注モデルがありますが、カミノパンツはまさにそのスタートだったと言えます。
もともと、僕が実際に使ってみて本当に信頼できると感じた商品を、みなさんに紹介したいと想いがありました。そのうえで、YAMAP独自の工夫やアイデア、「こうしたらもっと使いやすい」という提案ができたら、より多くのユーザーに響く商品ができるという確信もありました。

YAMAP仕様のカミノパンツを作るうえで、特にやりたかったのが、スマホ用のポケットを作ることです。元のカミノパンツでは、スマホをポケットに入れると、立ったり座ったりする際に邪魔になったり、スマホを落としてしまう不安もありました。YAMAPアプリの使用を提唱する僕たちが、邪魔にならず安心して収納できるスマホ用ポケットを作りたいと思うのは、すごく当然のことでした。今では、スマホ収納を想定したポケットを備えるパンツは珍しくありませんが、当時としてはかなり早い段階で提案ができたと思います。

また、もともとはファイントラックのロゴが目立つ位置に入っていましたが、これをなくす提案をしました。ただし、ファイントラックとYAMAPのコラボの証として、ウエストのストラップの端に両社のタグをつけています。

別注の原点は「スマホ専用ポケット」

──コラボといっても、カラーやロゴで特別感を出すようなものが多いなか、既存のモデルにはないサイドポケットを追加するというのは、メーカーにとっても多くの手間やノウハウを要することだったと思いますが、ファイントラック側の反応はいかがでしたか?

とても好意的で、協力的に関わってくださいました。ロゴをなくすことも問題なく受け入れていただけました。オリジナルの製品を作りたいという気持ちはもちろんですが、同時に別注モデルを通してカミノパンツの価値や、ファイントラックというメーカーのブランド哲学を多くの人に知ってほしいという想いを理解していただけたのだと思います。

長く愛せる道具がある。私とカミノパンツポケット位置については、何度も綿密に打ち合わせが行われた
長く愛せる道具がある。私とカミノパンツパターンや縫製について細かく指示された仕様書

ロゴはノイズ。自然に溶け込むための引き算の美学

ロゴはノイズ。自然に溶け込むための引き算の美学

──現在は、別注カミノパンツを何本使っていますか? また、長年使い続ける間に、製品の変化やご自身の使い方、カミノパンツに対する印象で変わったことがあれば教えてください。

今は、初期の別注モデルが1本と、開発中にサンプルとして作ったものが1本の、計2本を使っています。どちらも5~6年は使っていますが、破れやほころびはもちろん、ヘタレや色あせなどの劣化もまったく感じません。すごくストレッチが効いているのに、ひざが出たりシルエットが崩れたりしないのも、完成度が高い商品である証だと思います。

何度も洗濯しているので、撥水効果は多少落ちているのかもしれませんが、朝露の中を歩いても濡れて困るようなことはありません。ただ、山でしか履かないので、使用頻度自体はそれほど多くないからそこは何とも言えませんね。

長く愛せる道具がある。私とカミノパンツ左:新品のカミノパンツ 右:5年履いている春山のカミノパンツ。撥水力にほとんど変化なし
長く愛せる道具がある。私とカミノパンツ左:新品のカミノパンツ 右:5年履いている春山のカミノパンツ。よく見ると少し毛羽立ちもあるが、退色や痛みは見られない

──山以外で履くことはないのですか? ロゴを外したのは、街使いしやすくするためかと思っていました。

僕は普段は履きません。ただ、汚れにくくて乾きも早く、雑に荷物に突っ込んでもシワになりにくいので、長期の遠征や、海外旅行のときは持っていくことが多いです。シンプルで履きやすいので街使いする人もいると思いますが、僕にとってカミノパンツは「山で信頼できるギア」なんです。

ロゴをなくしたかったのは、自然のなかではロゴがノイズになると思っているからです。全身のあちこちにロゴがあることが、その人のたたずまいをジャマしたり、風景に溶け込むことができなかったりすると思うんですよね。ロゴがなくてすっきりしている方が、自分にとってもほかの登山者にとっても良いと思いました。

それに、カミノパンツやファイントラックのよさは、ロゴがなくても伝わると思います。自信をもって紹介できる商品だからこそ、ロゴを外す選択ができました。

長く愛せる道具がある。私とカミノパンツ

夏の低山で真価を発揮する、圧倒的なドライ感

──雪山以外はこれ1本のことですが、低温時や夏の暑さ対策などはなにかされていますか?

僕はあまりしませんが、低温時はタイツなどのレイヤリングもしやすいと思います。夏の低山では何を履いても暑いので、涼しさを考慮した薄手のものを試したこともあります。たしかに涼しいのですが、汗をかくと生地がひざや太ももにまとわりつくような歩きにくさを感じて、結局カミノパンツに戻りました。生地離れがいいというのか、肌に張り付く感じがなく、汗を吸って重くなることもありません。サイドのベンチレーションを使えばすぐに温度を下げることもできて、ほかのどのパンツよりも圧倒的に夏場の歩きやすさを感じました。

夏の低山で真価を発揮する、圧倒的なドライ感今季アップデートされた別注カミノパンツの完成度を確認しながらインタビューに応じる春山


──今後、カミノパンツに求める変化や、こうしていきたいというプランなどはありますか?

完成度が非常に高いので、正直なところさらに何かを大きく改良したいと思うことはありません。これまでも必要に応じて小さなアップデートは繰り返してきました。たとえば、スマホの大型化に伴い、ユーザーからの要望が増えたことを受けて、スマホポケットのサイズを変更しました。ユーザーの声がダイレクトに製品に反映されるのは、オリジナル商品の強みだと思います。今回、シルエットが少し変わり、動きやすさや立ち姿の美しさにさらに磨きがかかったとのことなので、そろそろ新しいものを1本手に入れようかと思っているところです。

今後は、カミノパンツ単体というよりも、ファイントラックさんと連携して、修理やメンテナンスのサポートもできるようになればいいと思っています。本当にいいもの、気に入ったものを長く使うことができる仕組みにもアプローチしていきたいです。

──最後に、YAMAP別注カミノパンツを、どんな人におすすめしたいですか?

これから本格的に登山を始めようとする方には、最初に選ぶのにふさわしい1本だと思います。また、登山パンツをいろいろ使ってみたけれど気に入ったものが見つからないという人にも、ぜひ試してほしいです。パンツ選びの難しさを解決してくれる1本になると思います。

長く愛せる道具がある。私とカミノパンツ

長く愛せるには理由がある。

春山のカミノパンツ愛用歴は10年以上。
春山が語るように、「気づけばこればかり履いている」という体験こそが、このパンツの価値を何よりも物語っています。
使い込むほどにその良さが深まり、自然と手に取ってしまう、そんな一本です。

登山をこれから始める人にも、すでに多くのギアを試してきた人にも。
「長く愛せる一本」を探しているなら、このカミノパンツはきっと、その答えになるはずです。

春山 慶彦

春山 慶彦

1980年、福岡県春日市出身。同志社大学法学部 卒業。アラスカ大学フェアバンクス校野生動物学部 中退。ITやスマートフォンを活用して、自然や風土の豊かさを再発見する仕組みをつくりたいと思い、2013年3月にYAMAPをサービスリリース。2024年春、養老孟司さんらとの対談をまとめた本『こどもを野に放て!』を出版。同年、Forbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30」に選出。

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