汗をかいても本当に臭くない? 防臭効果のある登山ウェアを着用して実験
もうすぐ本格的な夏山シーズン。日本アルプスなどの高山で、長距離縦走を計画している人も多いのではないでしょうか。汗をかきやすいこれからの季節、気になるのは、ずばりウェアの「ニオイ」です。今回は防臭効果のある様々な素材のウェアを着用して、それぞれの「ニオイ」度合を判定する実験を行ってみました。果たして、結果はいかに……?
※実験結果はあくまでも個人の主観によるものです。あらかじめご了承下さい。
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登山でニオイの原因となるもの
長距離縦走では必然的に山中での宿泊がともないますが、水が豊富な立地や温泉が湧出している場所などの例外を除き、多くの山小屋では入浴することができません。テント泊の場合も同様です。
暑い環境や登山などのハードな運動をした場合には、エクリン汗腺・アポクリン汗腺という器官から皮膚表面に汗が放出されます。これが皮膚表面の皮脂や垢と混ざり合い、皮膚表面に付着している様々な雑菌(皮膚常在菌)の作用で、皮脂や垢に含まれる脂質・タンパク質・アミノ酸が分解されることで、不快な「ニオイ(揮発性成分)」を発生させるのです。
長期間入浴できない場合には、皮膚表面の皮脂や垢が普段以上に蓄積されるため「ニオイ」が強くなってしまいがち。山小屋やテントに同宿している人や、自分のウェアの「ニオイ」が気になった経験がある方も多いのではないでしょうか。
本当に臭くない? 防臭効果のあるウェアを4日間着用して実験!
今回は長距離縦走の中でも比較的日数の長い、北アルプス・裏銀座(高瀬ダム〜新穂高温泉)コース(3泊4日)や北アルプス・栂海新道 縦走コース(2泊3日)などを考慮して、以下の方法で実験を行いました。
- 1.被験者(テスター)は同じウェアを4日間連続して素肌の上に着用する。ただし入浴・就寝時は着用しない。
- 2.被験者(テスター)は4日間の着用中に最低でも1回は汗をかく運動をする。今回は2〜3時間程度の登山・ハイキングに統一。
- 3.着用済みウェアを密閉できるジップ付袋に入れて判定者(チェッカー)に渡す。
このため、評価結果はあくまでも判定者(チェッカー)の主観に基づきます。
実験1【化繊×天然素材】ノーブランドのウェア
まずは比較対象として、街の衣料品売場で1,000円(税別)で購入した、長袖のインナーウェアを着用。生地はポリエステル80%・綿20%で、消臭・抗菌防臭加工も施されているとの商品表記がありました。
4日間着用後も見た目の変化はほぼなし。ただし3〜4日目は背中を中心に、少し痒みを感じるようになりました。評価は以下の通りです。
- 判定者①(男性):濡れると、皮脂のような男性っぽい香りが際立つ。
- 判定者②(女性):クサいとまではいかないが、誰かが数日着ていたのがわかる程度にはニオう。
- 判定者③(女性):汗の酸っぱいニオイはないが、皮脂のような強いタンパク質のニオイを感じた。
実験2【化繊×天然素材】スタティック/オールエレベーションロングスリーブ
生地の凹凸によって、通気性と保温性を両立したウェア。素材は防臭性と保温性を兼ね備えたメリノウール50% に、強度と速乾性を高めるリサイクルポリエステル50%のオールエレベーション混紡生地です。
適度な厚みとしっかりとした着心地で、アウターとして単体で着用しても違和感はありません。汗をかくと染みになりますが、速乾性がありすぐ元通りに。4日間着用後も快適な肌触りが持続しました。
評価は以下の通りとなりました。
- 判定者①(男性):場所によってニオイの強度は異なるが、気にならないレベル。山小屋で隣にいても何も感じないと思う。
- 判定者②(女性):人が着た香りはするが、まだ繊維の香りのほうが勝っている。
- 判定者③(女性):袋に入った状態だと一瞬香るが、ノーブランドに比べるとニオイは半分以下になった気がする。
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実験3【天然素材】ヤマップ/プラックスウールロングスリーブT
植物由来の生分解性プラスチック・ポリ乳酸を製品化した「PlaX(プラックス)」を23%、コットンがベースのキュプラを23%、ウールを54%配合した天然素材のウェア。厚手のしっかりした生地なので夏の東北・北海道など気温が低い高山での着用におすすめ。肌触りが滑らかで静電気を発生しにくい生地です。
生地に厚みはありますが、4日間着用後も着心地は変わらず快適。ポリ乳酸は水を吸わないため、料理中に誤って起こした汁撥ねも拭き取ればすぐに消えてしまいました。
評価は以下の通りとなりました。
- 判定者①(男性):若干の苦み?のようなニオイはあるが、生地に鼻を近づけないと感じないくらいなので、ほぼ無いと言ってもいい。
- 判定者②(女性):ノーブランドに比べると大きな差を感じた。あと数日着ても気にならないレベル。
- 判定者③(女性):袋を開けた瞬間にふわっと体臭を感じたが、取り出して嗅ぐと何も感じなかった。
実験4【メリノウール100%】ヤマップ/スーパーエクストラファインメリノロングスリーブ
世界レベルの技術力を持つ国内メーカー・アタゴと共同開発したメリノウール100%のウェア。適度な厚みがあるため、気温が下がる朝晩の稜線上でも心強い一着です。かといって汗をかく状況下でも、不快な暑さを感じることはありません。
独自の縫製によるウールとは思えないやさしい肌触りが敏感肌のテスターには快適で、4日間の着用中ずっと持続しました。多量の発汗時は多少の染みが生じますが黒色で目立つことなく、すぐに乾きます。
評価は以下の通りとなりました。
- 判定者①(男性):人が着たのはわかるが、嫌なニオイではない。電車の横に座っても気にならないと思う。
- 判定者②(女性):袋を開けた瞬間は体臭を感じたが、出してみると無臭といってもいいほどにニオわない。
- 判定者③(女性):鼻に近づけると男性が着用していたと分かる程度に香るが、20cm離すとあまりニオイを感じない。山小屋で同室になるくらいなら分からないと思う。
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実験結果について
4種類のウェアを比較すると、ノーブランド品のニオイの結果は一目瞭然。消臭・抗菌防臭加工と記載があっても、アウトドア用に開発されたウェアとの大きな差を感じました。
化繊×天然素材の「スタティック/オールエレベーションロングスリーブ」は、50%配合されたメリノウールの持つ防臭性が効果を発揮。通気性にも優れた生地構造によって、快晴の日に登山で着用しましたが長袖でありながら暑すぎず快適でした。
天然素材の「ヤマップ/プラックスウールロングスリーブT」は、ポリ乳酸バイオプラスチックで製品名にもなっている「PlaX(プラックス)」は抗菌・消臭機能も備えており、発汗によるニオイの生成を軽減する効果もあるようです。
「ヤマップ/スーパーエクストラファインメリノロングスリーブ」は、防臭効果の高いと言われてるメリノウール100%。適度な厚みがもたらす安心感は、標高や緯度が高く気温が下がりやすい山でも心強いものです。着用時には短時間ながら、ややハードな登山で多く発汗しましたが、メリノウールの防臭性が発揮されたようです。
判定者によると、袋の中ではどのウェアもそれなりに体臭を感じたが、ノーブランド以外の天然素材の割合が多いウェアに関しては、出してみるとあまりニオイを感じないというのが正直な感想とのことでした。
番外編【化繊】ファイントラック/ドライレイヤーベーシック
番外編として、ベースレイヤーの下に「finetrack(ファイントラック)のドライレイヤーベーシック」も着用したので一緒に判定。
表面の無数の穴から素肌の汗を吸い上げて外側のウェアに移動させるドライ系のアンダーウェアで汗っかきには最適。撥水加工が施されているため外側のウェアの濡れが肌に戻ることを防いでくれます。生地の素材はポリエステル100%。
化繊ですが、4日間着用後も見た目の変化はほぼなし。ドライ系アンダーウェアの特性からして、肌のベタつきや痒みを感じることもありませんでした。評価は以下の通り。
- 判定者①(男性):臭くはないが、化繊の上に人のニオイが乗っかった感じはあり。
- 判定者②(女性):ちゃんと人のニオイはするが、臭いというほどではない。
- 判定者③(女性):毎日使用している枕に付く程度の体臭は感じる。汗のニオイはなし。
染み付いた匂いには専用の洗剤を使用
どんなに優れた防臭効果のあるウェアでも、着用後の染みついた匂いは洗濯して、しっかり洗い落とすことが重要です。
優れた性能を持続させるためには、アウトドアウェア専用の洗剤を使用することをおすすめします。
ラベルについている洗濯表示の記号をよく確認して正しく洗うことも、ウェアを長持ちさせる秘訣ですよ。
ニオイのストレスを解消して、快適に登山を楽しもう!
たくさんの汗をかいても、すぐに着替えたり入浴することができない夏の登山。ウェアの「ニオイ」は山小屋や乗り物内での他人はもちろん、ソロテントなどでは自分自身も不快に感じる場合もあります。
今回の検証結果も参考に、肌触りや防臭効果に優れたウェアをチョイスすることで、この夏の登山をより快適に楽しんでください。
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