難しい「ウェアの専門用語」をわかりやすく解説|もう迷わないトップスの選び方
登山で使うウェアのなかでも、種類が多いトップスには、じつにさまざまなアイテムが存在します。見た目の印象を大きく左右するものだから、カラーやデザインにもこだわりたいけれど、やはり重要なのは、快適に着られること。アイテムの機能や特徴をしっかりと理解して、うまくコーディネートに生かしたいものです。
アイテムの特徴を理解するうえで、素材や用途などと並んで重要なのが、形やスタイル。ただ、見た目の違いはわかっても、カタカナ用語がたくさんあって、分類がよくわからないと思っている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、トップスのスタイルを表す「用語」を解説しながら、それぞれの特徴や選び方、コーディネートのコツをご紹介します。
まずはスタイルを大きく分類!「フルオープンかプルオーバーか」

袖や裾の長さ、シルエットなど、スタイルを作る要素はいろいろありますが、もっとも需要なのがフロントの仕様。全開にできるのかそうでないかで、大きく2つに分けることができます。
「フルオープン」はいたってシンプルに、前を全開できるタイプ。
「プルオーバー」は、頭からかぶって着るタイプですが、こちらはちょっと複雑。「プルオーバー」のなかに、「ハーフジップ」や「アノラック」と呼ばれる、フロントの一部だけが開けられるタイプがありますが、明確な定義がないためいろいろな呼び方が存在し、分類が複雑になっているのです。
でも、心配は無用。それぞれの特徴を理解すれば、名前を聞いただけでそのアイテムのことが、イメージしやすくなるはず。それぞれのタイプについて、着こなしのポイントとともに解説してきましょう。
使いやすくてアレンジも自在。これぞアウターの基本形
「フルジップ」タイプ

フロントがファスナーで全開できるタイプ。アウターやミッドレイヤーなど、レイヤリングの表に近い部分には、なくてはならないベーシックな形です。全開にできるという意味では、シャツなども同じですが、フルジップはその名の通り、ファスナー(=ジッパー)で開閉するタイプ。アウトドアではこちらが主流です。
特徴は、なんといっても着脱が簡単で、レイヤリングしやすいこと。ファスナーの開け閉めで、着方に変化を与えられるのも特徴です。温度やフィッティングの調節がしやすく、シルエットを変えることも可能。インにも着られる薄手のタイプは、同じアイテムで何通りもの着こなしができます。
超軽量コンパクトなフルジップのウインドシェルは、急な天候の変化に対応するお守り的存在。素肌に直接触れてもベタつき感がないので、夏場のライトな着こなしと相性抜群。風をしっかりブロックするので、フリースなど通気性のいいウェアと組み合わせると、保温力アップに効果的。インに使えば差し色として、単調になりがちなコーディネートに華を添えてくれます。
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さまざまなアイテムに使われる機能的なスタイル
「ハーフジップ」タイプ

胸元あたりまで開けられる、短いファスナー付きのタイプ。幅広いアイテムに使われる用語ですが、主にはベースやミッドレイヤーなどのインナーに使われることが多いようです。基本的にはフードのないクルーネックやハイネックを指し、フードのあるものは「ハーフジップフーディ」などと表現されます。
アウトドアウェアにこのスタイルが多用されるのは、機能的なメリットが多いから。首元のファスナーを開け閉めすることで、すばやく体温調整ができ、高めの襟で首をカバーできるので、日焼けや冷気の侵入を防ことも可能。前出のフルジップタイプと比較し、ファスナーが下まで伸びていないので、シルエットも綺麗に出やすいでしょう。長時間屋外で活動するときには、使いやすいスタイルです。
温度調節以外にも、襟の開閉で首回りの印象が変わるのが、ハーフジップの便利なところ。すべて閉じればハイネックのように、襟元を開けて開襟風に、胸元まで開ければVネック風に。他のアイテムとの色や形との組み合わせを楽しみましょう。
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機能的なメリットいっぱいのフード付きアウター
「アノラック」タイプ

「アノラック」は、「ハーフジップ」の一種で、防水や撥水の機能を備えた、フード付きのハーフジップアウターのこと。スタイリッシュな印象でタウンでも人気のようですが、実はアウトドアの機能的にみても、このスタイルにはメリットが多数あります。
ウエスト周りがすっきりしていて、ハーネスやバックパックのウエストベルトと干渉することがないし、ファスナーが短いぶん、軽量コンパクト性の面でも有利。フロントに大型ポケットを備えることができるので、行動中に便利な手元の収納力をアップさせることもできます。
フルジップに比べて着脱がしにくいという印象がありますが、ファスナーの付け方を工夫すれば、大きく開口して着脱もスムーズ。頻繁に着脱をするのではなく、着たまま行動することを前提にしているので、通気性や透湿性の高い素材を採用した、運動量の多いシーン向けのモデルが多いのも特徴です。
ウェアそのもののデザイン性が生かせるアノラック。少し長めの丈と、高めでゆとりのあるフード一体型の襟が、都会的な印象。ゆとりのあるシルエットでざっくり着られるので、中に着るものを選ばず、ハイキングやランニングはもちろん、ジムの行きかえりなどでも、一着でスタイルが決まります。
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シンプルなのに主張もある
「プルオーバー」タイプ

かぶって着るもののなかで、フロントの開閉ができないものを、「プルオーバー」と呼びます。ハーフジップもプルオーバーもの一部なので、分類的には少し複雑ですが、一般的に「プルオーバー」といえば、このタイプを指すことが多いでしょう。
アウトドアでもベースレイヤーでは主流の形ですが、アウターでは少数派。しかし、ハーフジップタイプ同様、着脱を繰り返さずにアウターとしての機能を果たすための工夫がされたものも多く、取り入れるとコーディネートの幅をぐっと広げてくれます。
フード付きやスタンドネックタイプとのレイヤリングしやすいクルーネックのほか、フードやバラクラバ付きのタイプなどもあり、気軽に使えるのに1枚でスタイリッシュな印象ができあがるのも特徴です。
中綿入りのプルオーバー。ゆったりシルエットとサイドのファスナー、七分丈の袖で、保温性と通気性をバランスよく発揮します。シンプルな着こなしに1枚足すだけで、人とはちょっと違うスタイルが完成するのもポイント。マンネリ化した山のコーデを、一気に底上げしてくれます。
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アウトドアウェアの形はタウンウェアと違い、見た目のデザインだけではなく、機能や使い心地のための理由があって決められています。なぜその形で作られたのかを考えると、使用に適したシーンや素材の特性など、その一着の個性が見えてくるはず。用語を入り口にウェアからのメッセージを受け取って、ルックスも機能もスタイルも、トータルに満足できるコーディネートづくりに役立てましょう。