「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体

強い日差しの下では欠かすことができない紫外線対策。けれど、日焼け止めクリームは汗で流れやすいのが難点。休憩の際も塗り直しやケアに気を取られ、眼前に広がる大自然の雄大な景色に集中できない——そんな経験はありませんか?うっかり対策そのものを忘れてしまった日は、帰宅後にダメージを受けた肌を見て愕然とした経験をお持ちの方も多いはず。

そんなお悩みから生まれたのが、“着る日焼け止め”という発想。YAMAPでは、UVカット機能を備えた、オリジナルベースレイヤーを開発しました。紫外線対策そのものをウェアに託すことで、「塗る」ストレスを減らすというあたらしい選択肢です。

ベースレイヤーに求めたい機能は、「速乾性」だけではないはず。本記事では、基本知識から“着る日焼け止め”の仕組みまで、普段はなかなか知ることができないベースレイヤーの裏側を開発担当者に聞きました。

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体

話を聞いた人:YAMAPスタッフ・伊藤 真理(いとう まり)
2022年入社。登山歴は8年ほど。YAMAPに入社後本格的な登山を始める。2023年にはトレイルランニングのレースにて約70kmを走破するなど、アクティブにアウトドアを楽しむが、ウェア選びや道具の知識はまだまだ勉強中。

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体

話に答える人:YAMAP STORE 商品企画・乙部 晴佳(おとべ はるか)
2021年入社。登山歴は15年ほど。アウトドアの業界に長年勤め、大手アウトドアメーカーでもMD・商品企画を歴任。YAMAPオリジナルベースレイヤー「サンブロックシリーズ」の開発担当者。

ベースレイヤーの素材といえば「ポリエステル」。その理由は?

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体
  • 伊藤

    初めて登山に行く際に、誘ってくれた友人から『ベースレイヤーにはポリエステル素材の服を選んで』と言われました。なんとなく「速乾性が優れている」ということは理解していましたが、それ以外にもメリットがあるのでしょうか?

  • 乙部

    ご友人のおっしゃる通り、ポリエステルの特徴として真っ先に挙げられるのは「速乾性」です。
    アウトドアでは普段の生活より多くの汗をかくため、速乾性が重視されます。そのため多くのメーカーはベースレイヤーにはポリエステル素材を採用していますね。
    速乾性以外のメリットとしては、他の繊維と比べて耐久性が高く、洗濯を繰り返しても縮みや型崩れはほとんど起こらないこと。そのうえ色落ちしにくく、日光が原因で劣化することも少ない素材で、天然素材よりも軽量。価格も比較的安価なんです。
    よく比較として例に挙げられる綿は、水を吸いやすいという特性を持つ一方で乾くのが遅い。濡れた衣服は肌にはりつく不快感だけでなく、身体を冷やしてしまうことによる汗冷えのリスクが高いので、登山では推奨されていないんです。

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体
  • 伊藤

    なるほど!速乾性以外にもいくつかメリットがあるんですね。では、製品表示に「ポリエステル」と記載されていれば、アウトドアメーカーのもの以外でもOKなのでしょうか?

  • 乙部

    実は、ポリエステルという素材の中にも、たくさんの種類が存在しています。ポリエステルは、綿のように自然から採れる繊維ではなく、石油由来の原料を溶かしてつくる「化学繊維」です。
    高温で液体状にしたポリエステルを細い穴から押し出し、糸のように引き伸ばして固めることで繊維になります。

    この製法の特徴は、繊維そのものを設計できること。糸の太さや断面の形を変えたり、繊維の内部に多数の細かい穴をあけた多孔質構造にしたりと、さまざまな工夫を加えることができます。さらに、液体の状態で繊維を作るため、原料の段階で別の素材を混ぜ込むことも可能です。

    つまり「ポリエステル100%」と書かれていても、その中身はすべて同じではありません。繊維の設計や加工の違いによって、まったく異なる機能を持つ生地が生まれるんです。さらに、糸の編み方や織り方によっても、生地の通気性や水分の拡散の仕方は大きく変わります。

    同じ「ポリエステル」という素材でも、設計次第で「汗を吸い上げて拡散する生地」や「水を弾く生地」など、まったく違う機能を持たせることができるんです。言い換えると、ポリエステルは素材そのものが高機能というより、「設計次第で性能をつくれる素材」

    そのためアウトドアウェアやスポーツウェアでは、繊維の形状や加工技術を組み合わせて、さまざまな機能を持つ生地が開発されているんです!

  • 伊藤

    つまり、製品表示タグにポリエステル100%と書かれていても、機能は製品によって異なるってことなんですね!

  • 乙部

    そういうことです。
    私も登山を始めたばかりの頃は、ポリエステル製であれば、ファッションブランドのものでも、なんでもいいんだって思っていました。
    同じポリエステル製の服でも、アウトドアメーカーのものと比較するとファッションブランドのものの方が安かったりすることも多いですしね。

  • 伊藤

    わかります…。私もそう思ってました。

  • 乙部

    そもそもポリエステルという素材が持っている純粋な特性は、「疎水性(水を吸わない)」なんです。
    「吸水速乾性」が機能としてうたわれているものは、繊維の形状や加工技術を組み合わせて、ポリエステル繊維に「吸水性」を付与しているからなんですよ。

  • 伊藤

    全然知らなかった!

  • 乙部

    私もアウトドアメーカーで商品企画の仕事をするようになって、初めてこの事を知りました。でも、それをきちんと説明して販売しているメーカーは少ないから、一般の方がそれを知る機会は少ないと思います。
    だからこそYAMAPでは、細かいものづくりの知識や情報を伝えたうえで、登山者にとって一番いい生地でベースレイヤーを作りたいと思ったんです。

  • 伊藤

    ここまでの話を聞いたら、YAMAPのオリジナルベースレイヤーにはどんな特徴や工夫があるのか、俄然気になってきました!

UVカットと遮光・遮熱機能付き|ポリエステル100のサンブロックシリーズ

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体
  • 乙部

    YAMAPの「サンブロック」シリーズも、製品表示上は、ポリエステル100%です。でも、登山者のお悩みに目を向けて、少し特殊な機能を加えてみました。

    結論から言うと、その名の通り「UVカット」と「遮光・遮熱機能」。登山は日差しに晒され続けるアクティビティですが、汗もたくさんかくので日焼け止めを塗るのが面倒だったり、不快に感じたりしませんか?私自身は長年この「日焼け止め問題」にかなりストレスを感じてきました。そこで、UVカット機能の高い「着る日焼け止め」というコンセプトでベースレイヤーを開発することにしたんです。

  • 伊藤

    着る日焼け止め」!面白い発想ですね。
    マリンスポーツでよく着用されるラッシュガードなどではそういう機能がある服のイメージがありましたが、登山のベースレイヤーでもUVカット機能がついていたら嬉しいです。
    どのようにこの機能を付与しているんですか?

  • 乙部

    この機能性を実現させているのが、「酸化チタン」です。
    「酸化チタン」をポリエステルに練り込むことで、もともと半透明な色を持つポリエステル繊維が白く濁ったような色に変わります。その結果、光の乱反射を発生させることで紫外線や可視光線、赤外線(熱線)を弾くことができるようになるんです。

    紫外線を通さないことで、UVカット(UPF50+)機能がもたらされます。可視光線を通さないことで服の内側が透けにくくなり、赤外線(熱線)を通さないことで遮熱性が備わります。遮熱性については試験を実施していて、一般的なポリエステルと比較して、衣服内の温度上昇が2度低い(※)ことが確認されています!

(※人工太陽照明灯を用いて熱線を生地に30分間照射し、生地裏側の温度を測定した結果。数値は測定値であり、実際の着用状況や個人差により効果は異なります。)

  • 伊藤

    すごい!身体を動かし続ける登山にうってつけの生地ですね。
    実際に生地に触れてみると、よくあるスポーツウェアなどのポリエステル生地とは全然違う。生地がしっとりとなめらかな感じですね。色味もマットな感じ。

  • 乙部

    これは、「酸化チタン」を練り込んだことの効果のひとつです。
    繊維が白濁することによって、ツルツルしたポリエステル特有の光沢感が抑えられ、マットな風合いになります。おかげでスポーティな印象が弱まって、下山後の街歩きなどでも堂々と過ごせるんです!

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体
  • 伊藤

    なんかこの生地、伸び感もすごく良いですね!

  • 乙部

    そう、でもポリエステルは本来は伸びる素材ではないんです。この伸び感は、ポリエステル繊維に加えたもうひとつの加工のおかげ。繊維に、ウールのような縮れ加工を施すことで、糸がバネのように伸び縮みするようになっているんです。

    この加工糸で生地を編むことで、ポリエステル100%の素材感のまま、ストレッチ性が生まれて着心地を向上させることができるんです。
    さらに生地の密度が高まることで、軽さはキープしたまま岩や枝などに表面の引っ掛かりにくい耐スナッグ性能も向上。もちろん吸水速乾性も高く、数あるポリエステル100%の生地のなかでも、登山者にぴったりの素材だと思って選んだんです。

  • 伊藤

    ストレッチ性のおかげで、着ている時に服で身体が突っ張るような感覚が全然ないですね!空気を纏っているかのような着心地。
    そういえば、抗菌防臭をうたっているベースレイヤーもあるけど、これには抗菌防臭はありますか?

  • 乙部

    ニオイの問題は、ポリエステル素材のTシャツの唯一のデメリットとも言えますね…。
    洗濯をしてきれいになったと思いきや、着用して汗をかくとニオイが戻ってきた経験がある人も多いのでは。実は、ニオイの原因は体臭ではなく、雑菌の繁殖によるもの。

    ポリエステルは、石油由来の素材だから、油やタンパク質などとなじみやすく、皮脂や汚れを吸着しやすい素材。
    皮脂汚れがしっかり落ちていないと雑菌が繁殖して、それがニオイの原因になってしまうんです。抗菌防臭加工を施してるポリエステルが多いのは、このデメリットを解消するため。
    加工方法もさまざまだけど、細菌の増殖を抑えることで嫌な匂いを防ごうとしていて、「サンブロック」シリーズもAg+(銀イオン)の抗菌防臭加工がされています。

    私は昨年の登山で北アルプスに行ったとき、3日間同じサンブロックを着て過ごしたけど、匂いは気にならなかったです。
    ただ、本音を言うと消臭力に関しては吸湿性が高くて繊維内に匂いを閉じ込める性質のあるウールには敵わない。
    速乾性をとるのか消臭力をとるのかは、1枚のTシャツで何日過ごすのか、すぐに洗濯できる環境なのか、などのシチュエーションに合わせて素材を選ぶことをおすすめします。

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体昨年の北アルプス山行にてサンブロックシリーズを着用する乙部さん

登山者のニーズに合わせて選べる4種類のデザイン

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  • 伊藤

    話を聞きはじめる前は、ポリエステル100%の素材ならなんでも同じだと思っていたけど、設計や加工次第で、全然違うものになるんですね…。
    ちなみに、夏向けに用意されたベースレイヤーなのに半袖がないのは何か理由があるんですか?

  • 乙部

    もちろん半袖の方が涼しいけれど、山では標高が上がるに従って紫外線の量もあがるうえ、夏でも平地に比べれば気温は低い環境がほとんど。
    この生地は遮熱効果もあるし、紫外線対策がコンセプトの製品だから、長袖でいろんなパターンを用意することにしました。

    実は、同じ紫外線対策の特徴を持った生地で、半袖のベースレイヤーも商品開発を進めているところです。夏前にはみなさんにお知らせができると思います。

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体
  • 伊藤

    サンブロックシリーズは、「クルー」「ハーフジップスタンド」「フルジップフーディ」「アームカバー」と全部で4型ありますが、それぞれどんな人に向けて開発したものか教えて欲しいです!

  • 乙部

    まず定番の型として作ったのが「クルー」ですね。シンプルな長袖のデザインで、用途を選ばず着回しやすいもの。登山以外の用途としても使える汎用性があります。

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  • 乙部

    「ハーフジップスタンド」は、首元まで紫外線対策をしたい方におすすめ。みぞおちくらいまでの深いファスナーを開ければ換気ができるので、着用したままで細かい体温調整をしたい方はこちらがおすすめです。

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体
  • 乙部

    「フルジップフーディ」はベースレイヤーの素材ですが、パーカーのように羽織るスタイルのものです。一枚で着るもよし、半袖などと組み合わせて着るもよし。フードをかぶることで首裏や耳裏も日焼けから守れます。他の製品に比べて長い季節で着用できるのも良いところですね。

  • 乙部

    「アームスリーブ」は従来のアームスリーブとは異なる変わったデザインですが、ザックを背負ったまま使うことができたり、首裏をケアできたり、メリットがたくさんあります。ノースリーブや半袖と合わせて使うと、脇下から風が抜けるのでかなり涼しく着用できます!

  • 伊藤

    わかりやすく教えてもらえてすごく勉強になりました!ありがとうございました。

この夏の相棒は見つかりましたか?

「着る日焼け止め」は本当か?開発者が明かす、UVカットウェアの正体

紫外線対策と快適さを両立した「サンブロックシリーズ」のこだわり、いかがでしたでしょうか。開発者の想いを通して、このウェアが持つ「山での使いやすさ」が少しでも伝わっていれば嬉しいです。

これからの季節、日差しを気にせず山を存分に楽しむために。
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    • YAMAP

      YAMAP

      「つづく、つながる、ものがたる」を大切にしているYAMAP STORE...

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