冬の運動不足解消・夏山に向けたトレーニングに「楽しい冬ラン」のススメ

夏とくらべて登山者数が減ってしまう冬。寒さや雪の影響で、少し山から足が遠のいてしまうという方も少なくないでしょう。しかし、山には行きたい、体力を維持したいと考えているはず。今回は、そんな方のために「冬のトレイルランニング」をオススメしたいと思います。

冬だからこその楽しさ、そして快適に山を走るためのハウツーを、100マイルランナーの本田真琴さんのギアレビューとともにお届けします。ランはもちろん、体力アップにつながる冬のトレランに、ぜひともトライしてみていただければと思います！

本田真琴（ほんだまこと）

1995年生まれ、北海道出身。早稲田大学在籍時代に環境経済学を専攻し、その研究がきっかけで山の美しさに魅了され登山を始める。2022年にトレイルランをはじめてからは山を走る楽しさにハマり、国内有数の大会「ULTRA-TRAIL Mt.FUJI」では100マイル（160km）を完走。一年を通してトレイルランに親しんでいます。

トレイルランニングとは？

自然の地形を走るスポーツで、通常のロードランニングとは異なり、山道や森林、小道などの未舗装のトレイルを走るアクティビティのこと。森林や山岳地帯を走ることで、自然との一体感を感じることができるのが大きな魅力。

「山を走るなんて難しそう」「体力が必要なのでは？」と思うかもしれませんが、必ずしも頑張って走る必要はありません。登りはゆっくり、見通しのよいトレイルを、話せる程度のスピードで軽く走るだけでOK。ちょっと駆け足くらいで山を歩くだけでいいんです。

冬のトレイルランのメリットとは

まずは、冬のトレイルランの魅力について。当然ながら「冬は寒い」のですが、実はトレイルランではこの寒さにむしろメリットがあります。

ひとつは、「オーバーヒートしにくい」こと。夏は汗をかく量も多いため体内の水分が失われるスピードも早く、さらに走ることによる体温上昇で熱中症になるリスクが高いです。一方冬は、気温が低いためこのオーバーヒートが起こりにくく、快適に走ることができます。暑さで失う水分量も減るので携行する水が少なくて済むのも嬉しいポイントです。

本田さん
冬は空気が澄み切っているので、景色がとても綺麗なんです。また、日の出・日の入りが遅い分、夏だとどんなに早起きしても見えない朝焼けが結構簡単に見られたりもします。
暑さがないぶん、汗もかかず、心拍も上がりにくいので、夏よりもボリュームのあるランが楽しめます。距離とスピードを伸ばせるところも、冬のランニングのいいところですね。

大切なのは「体を冷やさない工夫」

もちろん冬特有の注意点もあります。寒さ対策や、走ることによる発汗からくる汗冷え対策です。こちらは防寒着や汗対策ウェアを着用すればOK。春や秋の登山のウェアリングと考え方は一緒なのでご安心ください。

必要なのは「体を冷やさない工夫」。4つのカテゴリーに分けて、おすすめのアイテムを紹介します。

①休憩時の防寒対策に。軽量コンパクトな「インサレーション」

寒さを苦にせず快適にランニングを楽しむためには、体が冷えるタイミングで適切な保温着を着用する事が大切。重量を気にせず持ち運べる、軽量でパッカブル仕様のインサレーションがおすすめです。

【PICK UPアイテム】
ティートンブロス/ルフトジャケット

高品質なグースダウンを使用し、ゆったりとしたプルオーバー型のダウンジャケット。パッカブル仕様なので、体が温まってから、バックパックに収納する際もコンパクト。夏山登山の朝晩の冷え込み対策にも活用できるので、軽量ダウンを探していた方にもオススメ。

本田さん
冬は体が冷えるのが早いので、保温着は必須。このジャケットはとても軽量かつコンパクトになるので、バックパックに入れておいても苦になりません。一着あれば、休憩やご飯を食べるときに、サッと取り出して羽織れます。冬のトレイルランの必需品ですね。すごく安心感があるアイテムです。

【YAMAP STOREおすすめの軽量コンパクトなインサレーション】

②行動中は通気と保温のバランスが重要「アクティブフリース」

保温着を着たまま走ると汗をかきすぎてしまう、かといってベースレイヤーだけでは寒い...。そんなときにおすすめなのがアクティブフリースです。体温を効率的に保持しながら、活動中の熱を放出して汗冷えを防ぎます。軽量なのも嬉しいところ。

【PICK UPアイテム】
アンドワンダー/アルファダイレクトフーディ2

「保温」だけでなく「通気」も兼ね備えた薄手タイプのフリースフーディー。ポーラテック社のアルファダイレクトという素材を使用していて、起毛生地でありながらメッシュ地になっていることで、熱や汗をスムーズに放出します。速乾性にも優れており、汗を逃しながらしっかり保温してくれます。

本田さん
「フーディータイプなので、首周りも暖かいんです。通気性のよい素材を使っているので、いわゆるフリースジャケットとは異なり、汗でムレることはほとんどありません。ちょっとゆったりめのシルエットもポイント。ランだけでなく、ハイキングやリラックスウェアとしても活躍してくれます」。

【YAMAP STOREおすすめのアクティブフリース】

③末端を守って快適に走る「キャップ＆グローブ」

冬の冷たい風にさらされて、ことのほか冷えを感じやすいのが露出している耳と指先。耳が冷えると血流の悪化から頭痛を引き起こしたり、指先が冷えてかじかむと感覚が鈍化し、補給食を食べたり、道具の使用に支障が出ることも。
快適にランニングを続けるためには、キャップやグローブで体幹部だけでなく末端もきちんと保温しましょう。

【PICK UPアイテム】
ザ・ノース・フェイス /フリーランイヤーフラップキャップ

秋冬シーズンのトレイルラン向けのキャップです。名作「フリーランキャップ」に耳当てがついたモデルで、メッシュ生地が頭部のムレを軽減しながらも、冷気にさらされる耳を温めてくれます。体温が上がったら、フラップを上げることでクールダウン効果を得られます。走りながら簡単に頭部の暖かさが調整できるスグレモノなんです。

本田さん
まさに冬のトレイルランのためのキャップですね。ニット帽だと暑くなって脱ぐと髪が崩れてしまい被ったままになってしまいますが、こうして調整できるのは嬉しいです。ツバがついているので、日差しもカットしてくれ、紫外線対策にも最適です。

【YAMAP STOREおすすめのグローブ＆キャップ】

④急な天候変化にも慌てない「軽量レインウェア」

急な天候の変化から体の濡れを守ってくれるレインウェア。防水性はもちろん防風・防寒の役割も果たします。トレイルラン用に開発されたレインウェアは軽量で携行性が高く、激しい運動にも対応できる透湿性に優れています。

【PICK UPアイテム】
ザ・ノース・フェイス /フューチャーライトトレイルピークジャケット

ザ・ノース・フェイスが独自に開発した防水透湿性素材「FUTURELIGHT」を素材に採用したトレイルラン向けジャケット。走ることでかいた汗やムレを効果的に排出してくれるため、冷たい風を防ぎながらも、ウェア内を快適に保ってくれます。3層構造でありながら、薄手で軽やかな生地は、トレイルランにぴったりです。

本田さん
風を止めることは、防寒のひとつの手段。ダイレクトに冷気が当たるのを防いでくれますし、体温を逃さずに温かい空気を留めてくれます。レインウェアでありながら、ウインドシェルのような軽さで、かつ透湿性もあるので、着たまま走っても快適。伸縮性がないぶん、少し大きめのサイズを選んでもよさそうです。気分も明るく爽やかに着れるブルーがいいですね。

【YAMAP STOREがおすすめする軽量レインウェア】

通年使える！トレイルランニング装備リスト

悪路を安定して走るための「トレイルランニングシューズ」

剛性のある登山靴と異なり、トレイルランニング用の靴は、速く走ることを意識した設計になっています。また、ロード用のランニングと比べて、軽量性に優れ、不整地でのグリップ力とクッション性に優れています。軽やかな履き心地はトレイルランニング向けのシューズならでは。ライトハイクにも最適なので、登山ブーツの重さが気になる方はぜひとも試していただきたいアイテムのひとつ。

荷物が揺れない、ブレない「トレイルランニング用ザック」

トレイルラン用のバックパックは、ダイナミックな体の動きでも荷物が揺れることなく安定するように設計されています。ショルダーハーネスにはボトルやスマートフォンを収納できるポケットが配置されているのも特徴。防寒着や行動食を収納できるので、トレイルランだけでなく、ライトハイクにも使えるので、サブバッグ的に持っているのも◎。

快適性を大きく左右する「ベースレイヤー」

実は、肌に触れるベースレイヤーが快適性を大きく左右します。かいた汗を素早く肌から離し、蒸散させることで不快さを取り除き、汗冷えから身を守ってくれます。汗をかく量や発熱の違いに合わせた生地配置になっていて負荷の高い運動に適したベースレイヤーを選びましょう。

専門メーカーと共同開発した「BMZ YAMAP別注山を走るインソール」

シューズの性能を大幅にアップしてくれるインソール。インソールは、買ったシューズに入っているものでも問題はありませんが、より走りやすさや足の健康を追求するのであれば、専門メーカーのものに変えるのもひとつの手段。「立方骨」と呼ばれる足裏の骨を適度に押し上げる効果があり、疲労軽減効果も期待できるYAMAPオリジナルのベストセラーアイテムです。

冬にトレイルランをオススメしたい理由

今回は冬のトレイルランについてご紹介しました。トレイルランをいつかはじめたい、気になっていた方にとって、冬〜春先ははじめるにはもってこいのシーズン。少し寒さが気になるかもしれませんが、走っているうちに体はポカポカ。運動不足の解消にもなりますし、夏山登山への体力アップにつながります。まずは短い距離からはじめればOK。3kmでも、5kmでも、少しずつ走ってみるといいでしょう。きっと、山を走る楽しさに触れられるはずです。