昭和から令和へ、最新の山シャツを体感せよ!コアエアシェルシャツフィールドレポート
今季からマイナーチェンジを果たしたMOUNTAIN HARDWEAR(マウンテンハードウェア)とYAMAPのコラボウェア、別注コアエアシェルシャツ。YAMAP的にも自信作のこのシャツを、アウトドアライターの櫻井卓さんに実際に試してもらいました。山には基本的にシャツスタイルで行くという櫻井さんに、山でシャツを着ることのメリットなどを語っていただきます。
(文:櫻井 卓 写真:表 萌々花)
MOUNTAIN HARDWEAR × YAMAP
コアエアシェルシリーズ
櫻井 卓(さくらい たかし)
1977年生まれ。「TRANSIT」「Coyote」などの旅雑誌の他、登山雑誌「PEAKS」やアウトドア誌「Be-pal」、ファッションカルチャー誌「Houyhnhnm Unplugged」など多数のジャンルで執筆中。趣味は海外のトレイルを歩くことで、好きなエリアはカリフォルニアのヨセミテ北部。
本場のフロンティアマンにあこがれて

いまから10年程前、アメリカのハイシエラのトレイルを歩いているときでした。前方からやってきたおじいさんが、なんとロバを引き連れているではありませんか。聞けばロバとともにトレイルを旅していると言います。そんな西部開拓時代的な旅をしている彼の出で立ちは、良く着込まれた白シャツにブルージーンズ。完全にヤラレました。
そこから、僕の山シャツ崇拝が始まります。
いまでは山を歩く時だいたいシャツ。なんだったらトレイルジョグ(ランというほど速くないので)の時ですらシャツを愛用するくらいのシャツLOVERなのです。
そもそも、山といえばシャツとニッカポッカーにキスリングという時代もあったワケです。昭和の登山者の写真などを見るとみーんなシャツです。
山でシャツはなぜ定番で居続けるのか。それはずばり、シャツという形状の持つ機能性にあると思います。
襟を立てることによる防風や日除け効果。腕まくりやフロントのボタンを外すことによる体温調整のしやすさ。セカンドレイヤーからアウターまでこなせる汎用性の高さ。そして山から下りてもそのままレストランに入れちゃうような“キチンと感”などなど。山シャツのメリットは多岐にわたります。
唯一の弱点と言えるのが、素材だったワケです。厚手ウールのものが多くて、かさばるし、重たいし、乾きにくい。このことから、軽量化志向が強まっていった2000年代初頭頃から、一時期山シャツは衰退期を迎えますが、それを変えたのはナイロン製山シャツの登場。速乾性が高く軽い素材を取り入れることで、ふたたび山シャツ人気が上がってきています。
そんな山シャツの最新進化系とでも言うべき存在が、YAMAPが別注したMOUNTAIN HARDWEARの「コアエアシェルシャツ」です
ここからは「コアエアシェルシャツ」を実際に試して僕が感じたことをご紹介していきます。
防風性と通気性という矛盾を解決!

先述したとおり、往年の山シャツは素材が課題でした。
この「コアエアシェルシャツ」に採用されているのは、最新の「PERTEX®︎ QUANTUM AIR™(パーテックス クァンタム エアー)」。この素材によって、防風性と通気性という相反する要素を見事に両立しています。
つまり、山シャツは最強の汎用性を手に入れたんです。肌寒いときにはウィンドシェル的に使えますし、抜けが良いのでセカンドレイヤーとしても優秀。ずーっと着続けられる一着だと思います。
個人的に気に入っている点は、ゆったりめのシルエット。シャツは重ね着をした時に最高のパフォーマンスを出してくれると思います。僕の場合、春や秋はシャツの下に薄手のフーディを合わせることが多いので、あまりタイトすぎると具合が悪い。
フーディとシャツの相性が僕的には最強だと思っていて、稜線などで風が出てきたときはフードをさっと被ります。「フード付きのウィンドシェルで良いじゃん」という声が聞こえてきそうですが、あの風に煽られたときのシャカシャカ音が苦手なんです。メリノウールのフーディとシャツの組み合わせが、いまのところ僕の中での最適解です。
最近じゃっかんムチムチ感を増してきたボディラインがあまり出ないという点も強調しておきます。
軽いし、弾くし、伸びるし!

このシャツを羽織って最初に感じたのは驚異的な軽さ。実測でわずか120g(Mサイズ)。実は一昨年からトレイルランニングを始めたのですが、往年のアメリカのトレイルランナーに憧れてシャツスタイル。発汗量が登山とは桁違いのトレイルランだと、ウィンドシェルよりも、より通気性の高いシャツのほうが良いという判断もありました。ただ、当然重量も削減したいワケですから、その点ではウィンドシェルに一歩譲ってしまっていたのも事実。そこに来てのこの軽いシャツとの出会いは、スタイルと機能を見事に両立してくれたワケです。

しかも、PCF/PFAS(フッ素加工)フリーの撥水加工済みということで、多少の小雨程度であればこれ1枚とキャップの組み合わせで十分に凌ぐことができます。
そして驚くほどのストレッチ性。腕振りを何万回と繰り返す長距離レースになると、多少の引っかかりもストレスになってくるんですが、このシャツであればおそらく皆無。うーん、早くレースでも試してみたい! もちろん、クサリ場などで突っ張ることもないですし、岩場が多い北アルプスあたりの縦走にも適していると思います。

素材だけにあらず!シャツの特性を引き上げる進化

素材だけではありません。この「コアエアシェルシャツ」は、シャツが本来持っている利便性をさらにアップデートするようなさまざまな工夫も詰まっています。
どこから行こうか迷うくらいあるんですが、まずは袖のまくりやすさ。伸縮性があるから、グッと引っ張るだけで前腕部を出すことができるので、少し暑さを感じたときはこのスタイル。しっかり捲りたいときはボタンを外して、という具合に使い分けできる点も気に入りました。

袖口のボタンが2つ付いていて、上部だけ開けると腕時計が見やすくなるというギミックも、登山はもちろん、頻繁に時計を確認するトレイルランでもとても便利だと思います。

そしてエリの立ち具合。高すぎず低すぎずの絶妙なデザインで、日焼けから守りたい首裏はしっかりガードしつつ、首元は締め付けないというバランス感。襟元のボタンでホールドすることができるので、風が強い日などでも首周りをしっかりと保護してくれます。

シャツの良さで外せないのがベンチレーションのしやすさです。ボタンをどの程度外すか、どこの位置を外すかによって、ジッパーとは違って、かなり多彩な体温調整ができます。このシャツはボタンがスナップボタンになっているので、そのあたりのアレンジがとてもしやすい。ホールド感が軽めのスナップボタンを採用しているのでワンハンドで扱えるというのも、ストレスが少なくて良かったです。

フロントの開閉によるベンチレーションだけではありません。両脇下にも2つずつベンチレーションが付いています。このことによって、フロントの第3、第4ボタンを外すだけで背中側までスーッと風が抜けていく感じが独特の着用感で気持ちが良い!

そしてまさかのパッカブル仕様。ウィンドシェルでは定番になりつつあるギミックですが、まさかシャツで実現してくるとは。背面裏のスリーブに押し込むだけでペットボトル程度のサイズになるのでパッキングが容易、どころかパンツのポケットにそのまま仕舞えちゃいます。
どうですか、このてんこ盛りシャツ。なにはともあれ進化と定番のバランスが素晴らしい。
紹介したいポイントが多すぎ(&細かい!)て焦点を絞りにくいから、原稿化するのが正直難しかったくらいです。

シャツがもともと持っていた機能的なディティールをアップデートしつつ、防風性、通気性、伸縮性、撥水性と全部盛りの素材の採用によって、もはや無敵状態の山シャツだと思います。
これまで様々な山シャツを試してきましたが、ついに最適解を見つけてしまった。おおげさではなく、そんな印象です。
“いまさら”ではなく“いまこそ”山シャツなのです。自信を持って言い切ります。
MOUNTAIN HARDWEAR × YAMAP
コアエアシェルシリーズ


