本格冬山登山のためのインサレーションウェア&ギア
冬山シーズンを迎え、アルプスの雪山に登ってみたい、縦走してみたいと考えている方も少なくないはず。しかし、本格的な冬山登山には、スノーギアをはじめ専門的な山道具が必要。どのようなアイテムが必要なのか、どう選べばいいのか悩んでしまうこともあるかもしれません。今回は、そんな冬山登山の装備のなかでも、防寒機能を備えた「インサレーションウェア」を中心にご紹介。積雪が多く、気温が低い高山では、いかに寒さから身を守りながら行動できるかがカギ。目的に合った防寒着が欠かせません。
しかし一言でインサレーションウェアと言ってもバリエーションはさまざま。選ぶ際に悩んでしまうこともあるでしょう。そこでご紹介したいのが、積極的に行動中に着用できる「動的」なものと、停滞時や動きの少ないときに活躍する「静的」なもの。YAMAP STOREが取り揃える多彩なインサレーションウェアを2つのカテゴリーに分けてご紹介します。
加えて、冬の本格登山に最適なバックパック、テントといった装備もピックアップ。オススメの雪山コースと合わせてチェックしてみてください。シーズンどまんなか、真っ白な雪に覆われた冬の山を安全に、そして快適に楽しむための最新情報をお届けします。
本格登山だから見ることのできる、幻想的な冬の景色へ。
標高2500m。前夜まで降りつづいた粉雪が木々を覆い、
幻想的なモノトーンの世界が広がります。
気温はマイナス10℃。
畏怖の念すら感じさせる景色を前に
一歩一歩、アイゼンを効かせて歩いていきます。
過酷でありながらも美しい冬の山では、
たしかな道具選びが安全を左右します。
ぬかりのない装備と知識、
そして積み上げてきた経験。
そのすべてが揃うことで許される
冬山登山という世界。
必ずしも万人に開かれた世界ではない。
けれど、少しずつステップアップしていけばOK。
身近な山から、次第に標高を上げていくことで
知識と経験が磨き上げられていきます。
冬山登山を支える、インサレーションウェア
ときにはマイナス20℃、もしくはそれ以下にもなる冬山登山。気温だけでなく、風が吹くことで体感温度はさらに下がります。そこで大切なのが、ダウンジャケットのようなインサレーションウェアです。いわゆる防寒着なのですが、冬山には冬山のためのアイテムがあるんです。
保温と通気のバランスが秀逸。着たまま行動できる「動的インサレーション」
まずは、行動中に着用できるタイプからご紹介。冬といっても、ハイクアップや歩行時にカロリーを消費すると、発熱や発汗が伴います。「寒いのに汗をかく」と、汗が冷えてしまい、低体温症などのリスクが発生します。そこで、選びたいのが、行動中に適度なウェア内環境を保ってくれる、動的=アクティブインサレーションです。
finetrack(ファイントラック)/ポリゴン2ULジャケット
独自開発の「ファインポリゴン」と呼ばれるシート状の立体保温素材を使用。軽やかな綿のような繊維は濡れに強く、汗をゆるやかに発散してくれるのでアクティブに行動したい方にオススメ。脱ぎ着の回数を減らしたい大型ザックを背負っての縦走や、ULスタイルで軽量性を追求したスピードハイクに最適です。
上)行動によりヒートアップしたウェア内を強制的にクールダウンするリンクベント
下)ヘッドライトや行動食などの小物の携行に活躍するチェストポケットを配置
上)袖口は冷気をシャットアウトする伸縮タイプを採用
下)中綿が透けてみえるほど薄手の表生地。汗を効果的に発散します
Teton Bros.(ティートンブロス)/ハイブリッドインナーダウンフーディ
近年は化繊インサレーションジャケットが注目を集めていますが、保温力に定評のあるダウンがいいという声も根強くあります。「Teton Bros. / ハイブリッド インナー フーディー」は、最高級といえる1000FPの羽毛を使用し、かつダウンの弱点である濡れを克服するために表生地にはDWR(耐久撥水)加工を施すなど、実用性を最大限高めたモデル。フードつきなので、風に対する防寒性も良好。行動中のインナーダウンとしてだけでなく、テントや山小屋でも活躍するマルチなスペックが人気。
上)上質な1000FPの羽毛は細かめのブロックで区切ることで保温力を最大化
下)フィット感に優れる袖口デザインで動きやすさにもしっかりと配慮
上)防風性につながる高めの襟とフード。首周りを確実に保温します
下)フラップタイプのポケットを採用。シンプルでありながら安全に小物が携行可能
THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)/ベントリックスシャツ
カジュアルなシャツスタイルでありながら、中身は本格仕様というギャップが特徴的な「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)/ベントリックスシャツ」。内側には、通気性とストレッチ性に優れるスリット入りのベントリックスを中綿に採用。動くことで通気が促され、熱が逃げるというもの。つまり、止まっているときは保温、行動中は通気という2つの機能を一着に込めた画期的なアイテムなんです。樹林帯のハイクを中心にアクティブにもカジュアルにも着こなせるルックスも魅力です。
上)コーディネートの幅が広がるシャツスタイルの襟デザイン
下)シャーリングを採用し、レイヤリング時のごわつきを抑えるシンプルな袖口
上)小物の携行だけでなくハンドウォーマーにもなるジッパー付きのサイドポケット
下)撥水加工&ストレッチ素材を使用し、アクティブな動きと快適性をサポート
NORRONA/フォルケティンオクタジャケット
日本の繊維メーカー・帝人が開発した特殊素材「OCTA」を採用したインサレーションジャケット。繊維を顕微鏡で拡大してみると、ストローのような中空の繊維の周りに8つの羽のような突起があることがわかります。これは、保温力のカギである空気を少しでも溜め込むための工夫。繊維そのものが軽いため、ダウンに比べ重くなりがちな化繊インサレーションであっても驚くほどの軽量性と保温力を実現。ある意味、動的にも静的にも使えるマルチな一着です。
上)サイドパネルにはストレッチ素材を使用し、アクティブな動きにも対応
下)サムホールを採用し行動中の袖のずり上がりを防ぎます
上)アクセントとしても目を引く視認性を高めるリフレクターロゴ
下)ハンドウォーマーを兼用するジッパータイプの大型ポケット
停滞時もテントでも。保温力を高めた「静的インサレーション」
体を動かしているときは寒さを感じなくとも、止まると一気に冷えに襲われるという経験はあるはず。休憩時やテント場など、体を動かさないシチュエーションでは保温力の高い「静的インサレーション」が必須。止まったら、体が冷える前にバックパックから取り出してサッと羽織る。体温消費を最小限に抑えてくれる、極上インサレーションウェアが揃います。
HOUDINI(フーディニ)/ダンフリ
中綿には「PrimaLoft® Gold Insulation Eco」を使用した、フーディニのロングセラーモデルのひとつ。ダウンに引けをとらない保温性もさることながら、化繊ならではの扱いやすさが人気の理由。雪や氷だけでなく、テントの結露にあたっても濡れにくく、防寒性の低下は最小限。リサイクル素材を積極的に使用しているのも特徴です。
上)ハーネスの着用を考慮したダブルジッパータイプ。ベンチレーションとしても使用可能
下)バックパックの着用に対応する高めのポケット位置を採用。ポケットにはジッパーを配置
上)ゴーグルやグローブの携行に役立つ大容量インナーポケット
下)冷気の侵入を防ぐシャーリング仕様の袖口
Teton Bros.(ティートンブロス)/ホバック プリマ オーバーフーディ2.0
「Teton Bros.(ティートンブロス)/ホバック プリマ オーバーフーディ2.0」は「Primaloft Thermo Plume」という化繊を使用したアウターインサレーションジャケット。特徴は、一見薄手のインナーインサレーションのようでありながら、優れた保温性を備えていること。ジャケットの上に羽織るだけで停滞時の活動をしっかりサポートしてくれます。大型のポケットやインナーポケット、袖口ジッパーなど、冬山登山をターゲットとした機能も充実しています。
上)グローブやギアの携行を可能にする開口部の大きいダブルジッパーポケット
下)クライミングやウインタースポーツで欠かせないヘルメットの着用を想定したフード設計
上)グローブを着用したまま脱ぎ着ができる袖口ジッパーを採用
下)コードでフードの細かなフィット感を調整が可能
patagonia(パタゴニア)/DASパーカ
パタゴニアの名品である「DASパーカ」。アイスクライミングやアルパインクライミングでのビレイ用ジャケットとして誕生し、コアなファンに愛用されてきたモデルも進化をつづけ、現代版にアップデート。中綿には「Primaloft Gold Inslation」を採用し、格別な保温性とやわらかさを提供。中綿の配置も冷えやすい箇所に重点的に配置することで保温効果を最大化しています。
上)ヘルメットの装着に対応した大きめのフード設計を採用
下)小物やギアの携行に役立つチェストポケットを配置
上)クライミングギアの操作時などでも袖のずり上がりを確実に防ぐサムホール
下)ゴーグルやグローブの携行に対応する大型インナーメッシュポケット
Teton Bros.(ティートンブロス)/ハイブリッドダウンパンツ
テント泊や山小屋などで下半身の保温に役立つのがダウンパンツ。「Teton Bros.(ティートンブロス)/ハイブリッドダウンパンツ」は、1000FPの最高級グレードの撥水ダウンに「Thermo Max」と呼ばれる縁赤外線を輻射させることで保温力を高める素材を組み合わせ、効率的な保温力を実現。スリムな見た目以上の保温力で夜や朝晩の冷え込みから守ってくれます。
上)保温性の高い1000FPダウンを使用することでスリムなシルエットを実現
下)ウエストはボタンで留めるタイプを採用。レイヤリングをしても当たりにくく快適です
上)山小屋やテント場で便利なサイドポケットを両サイドに配置
下)夜間の視認性を高める先反射プリントのブランドロゴ
patagonia(パタゴニア)/アルプライトダウンプルオーバー/レッド
800FPのダウンを使用したプルオーバータイプのダウンジャケット。ダウンジャケットとしての機能もさることながら、漁網をリサイクルした素材をはじめ、再生資源をふんだんに活用した環境配慮アイテムであることも大きな特徴。プルオーバータイプは脱ぎ着にコツが必要ですが、一度着てしまえばフロントのジッパーがないため、着用に優れリラックスにも最適。コンパクトに収納できるので、防寒着のバックアップにも活躍します。
上)行動食やギアの携行に役立つジッパータイプのサイドポケット
下)キルティングにも腕の動きやすさを考慮したテクニカルパターンを採用
上)雪や冷気の侵入を防ぐゴムシャーリングタイプの袖口
下)ウエスト部分のフィット感を高め、保温性を高めるドローコードを配置
冬山の縦走登山にはギアの携行を想定した大型バックパックを
The 3rd Eye Chakra Field Bag Works(ザ サードアイ チャクラ フィールドバッグワークス)/ザ バックパック #001 60L/ブラック/UNISEX
防寒着やジャケット、着替えのほか、テント装備や寝袋などの幕営装備など、冬の本格登山は多彩な山道具を携行する必要があります。そんな荷物を不足なく背負え、かつ快適に活動するためには専用のバックパックがベター。「The 3rd Eye Chakra Field Bag Works(ザ サードアイ チャクラ フィールドバッグワークス)/ザ バックパック #001 60L」はまさに、テクニカルな冬山登山のために開発されたモデル。ギアポケットやバックパネルなど、他にはないユニークな機能がクライマーを支えます。
テントや寝袋など、縦走登山の装備を収納・携行できる大容量メインコンパートメント
スノーシューやピッケル、アックスなどのスノーギアを外付けできるベルトを完備
アックスなどの鋭利なスノーギアを安全に収納できるフロントポケット
「大型バックパック」のその他のおすすめはこちら
テントもスノーフライをプラスして冬仕様にアップデート
3シーズン用のテントでは、雪や風、寒さに対応するのは難しいのが事実。雪に対応したスノーフライや快適性を高めるインナーライナーなど、オプションアイテムを揃えましょう。
finetrack(ファイントラック )/カミナドーム2
finetrack(ファイントラック )/カミナドーム2 スノーフライ
日本の山岳シーンに対応した信頼のおける定番モデル「カミナドーム」には、冬用の「スノーフライ」をプラス。テント内への雪の侵入を防ぐエントランスや、防風性を高めるスカートなど、雪山のための機能が備わっています。
雪の吹き込みを防ぐ巾着タイプのエントランス
トグルパーツを使用することでシンプルな形状も可能
finetrack(ファイントラック )/カミナドーム2 ウィンターライナー
冬のテントは結露が大敵。インナーの中にさらに吊り下げて使う「ライナー」があれば、「層」がひとつできるのでウェアが濡れたりするリスクを軽減できます。入口からの雪の侵入も防ぐこともでき、スノーフライと合わせて導入したいアイテムです。
インナーはテント内部のパーツにワンタッチで吊り下げ可能
エントランス部分はジッパータイプでスムーズな開閉を実現
道具が持つ機能を理解し、存分に冬山登山を楽しもう
たしかな装備がなければ、ときには危険にさらされてしまうことがあるのが冬の山。そして、冬山に限らず山の天候やコンディションは常に変わりつづけます。冬の登山は装備も増え、経験や技術も求められますが、その先に待っているのは、登った人だけが見ることのできる景色。まずは装備の確認をしてみましょう。
本格雪山にステップアップ!中級ハイカーにおすすめの雪山
①北横岳 / 長野県
ロープウェイを利用すれば2,237mまでアクセスできる手軽さがありながらも、その先は本格的な雪山登山を楽しむことができます。コンディションがよければ北横岳山頂(2,480m)の登頂を目指してもよし、北八ヶ岳の山々を周遊するのもオススメ。厳冬期は積雪が多いためスノーシューハイクが定番。
②木曽駒ヶ岳 / 長野県
こちらもロープウェイを利用することで2,612mから登山をスタートできます。雄大な千畳敷、3,000mに迫るアルプスの山々を眺めながらのトレッキングはまさに冬山本格登山。カール地形なので積雪後は雪崩の危険性があること、また宝剣岳周辺などの岩場はたしかな登山技術が求められるテクニカルなエリアであることを踏まえ、経験を積んでから挑戦しよう。
③伊吹山(いぶきやま・いぶきさん) / 滋賀県・岐阜県
1,377mという標高ながら豊富な積雪があり、冬山登山の登竜門として人気の山。山頂までのコースは往復10kmほど。広々とした景色のなかでのスノーハイクはもちろん、雪山を長時間歩くトレーニングにも最適です。山頂付近は木々がなく、強風時は低体温症や道迷いに注意が必要。
冬山登山の注意点
・積雪期はコースタイムの1.5倍の時間を見積もって行動することをお勧めします。
・コースタイムに休憩時間は含みません。時間に余裕を持った計画を立ててください。
・ゴンドラやリフトは運休することもあります。最新情報を施設サイトにてご確認ください。
・山小屋、売店、トイレなどの施設が冬季休業や営業時間の短縮をしている場合があります。事前によく調べるようにしましょう。