ベテラン登山者必見! 装備軽量化計画を低山ハイクからはじめよう
UL(ウルトラライト)。装備を軽量化して体への負荷を軽減することで長距離を歩いたり、快適性を高めた行動ができる、近年人気の登山スタイルのひとつです。元々はアメリカの長距離トレイルを歩くための手段でしたが、今は一般的な登山にも装備の「UL化」や「軽量化」は導入されてきており、アウトドアメーカー各社からも、「軽い山道具」がいくつも発売されています。
でも、気になってはいるけれど「どこから軽くしていいかわからない…」「軽い道具に不安がある」という方も少なくないはず。
そこで今回は、「ベテラン登山者の軽量化」をフィーチャー。YAMAP STOREが厳選したコーディネート&ギアとともに、登山装備軽量化の第一歩をサポートします!
まずはBefore→Afterをチェック!
装備の「軽量化」に挑戦するのは、YAMAPメンバーの斉藤克己(さいとう・かつみ)さん。大学探検部出身で、登山歴は30年以上。日本のみならず、世界各地の山を登ってきた社内でもベテラン中のベテランです。
【Before】
そんな克己さんのBefore装備はこちら。ちょこちょこ軽い道具は交えているけれど、基本はオーソドックスな登山スタイル。昔ながらの「山はド根性!」と思っていたけれど、50歳を過ぎてからは体のことも気になりはじめたのだとか。
「以前は、ULなんて!って思っていたんです。それに、軽さのメリットは理解しているつもりですし、気になってはいたんですが、なかなかとっつきにくいところもあって…。で、結局昔から使っている装備で登っちゃうんです」
【After】
そんな克己さんを「軽量化」したAfter装備がこちら。今回は夏山のライトハイクがテーマ。ポイントは、ただ軽くするのではなく「快適さ」も重視したウェア・ギア選びです。ストレッチ性や撥水性など、山歩きを安全かつ快適に楽しめる機能性が備わったアイテムを選びました。ウェアのどこかと小物の色を揃えてあげることで、コーデにもまとまりが生まれます。今回は克己さんの好きな「緑色」から、トレンドの「オリーブ」をテーマカラーに採用しました。
「デイハイクなのでそもそも荷物が少ないとはいえ、もう軽さを感じています。色味も自分が選んでこなかったカラーなので新鮮。歩き慣れた山でも、こうして装備が一新されると、気分が盛り上がります!」
軽量化の効果を、登りで体感
静かな森歩きが楽しめる北八ヶ岳。
標高2000mの空気はひんやり涼しく、
うだるような夏の暑さとは無縁。
今回の山行は新しい装備。不安のある方は
慣れ親しんだ山でテストするのが安心です。
カラマツがまばらに生える平原を歩き、
木の根が張り巡らされた急登を登ると
視界がパッと開けました。
装備の重量が減ることで、
体も心も軽くなるよう。
夏山ハイク向け「軽量」ギア&ウェア|1|
macpac(マックパック)/へスパー30/UNISEX
ニュージーランド生まれのマックパックが展開する軽量モデル「ヘスパー 30」。デイハイクから小屋泊、そして本格的なULスタイルなら野営までこなせてしまうオールラウンドなアイテムです。
「フレームが入っていないバックパックを使うのははじめてだったので、安定感やパッキングのしやすさに不安がありました。でも、背面にパッドが入っているおかげで背負い心地もいいし、ポケットがたくさんあるので小物やストックの持ち運びもしやすかったですね。何より背中が軽いと足取りも軽くなります」
夏山ハイク向け「軽量」ギア&ウェア|2|
HOUDINI(フーディニ)コスモシャツ/MENS
登山ウェアのなかでもカジュアルなルックスで人気のあるシャツスタイル。プルオーバー仕様の本アイテムは、「Wish Woven™」と呼ばれるリサイクル素材を仕様。コットンのような肌触りを持ちながらも、2WAYストレッチで着用感に優れるのが特徴です。
「いままで使ってきたような登山ウェアとは違ったデザイン。自分には着こなせるのかな?と避けていたタイプです。実は着てみるまで疑心暗鬼だったのですが、肌触りがよくて、汗でベタつくこともなく快適。スポーツウェアにはない上質な感じがします」
夏山ハイク向け「軽量」ギア&ウェア|3|
THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)/バーブライトパンツ/MENS
速乾性、伸縮性、美しいシルエットと、三拍子揃ったトレッキングパンツの定番モデル。軽量かつサラッとした生地がもたらす履き心地のよさは、日帰から縦走登山までカバーしてくれます。テーパーのかかった細身なパンツですが、生地がストレッチするのでつっぱる感じもなく、足捌きもしやすくなっています。
「トレッキングパンツがダボっとしていると、やっぱりおじさんぽいなとは思ってたんです。シルエットがすっきりしたパンツがほしかったけれど、これなら機能的にも問題なし。撥水性があるので小雨でもそのまま歩けますね」
夏山ハイク向け「軽量」ギア&ウェア|4|
halo commodity(ハロ コモディティー)/クレビスキャップ/UNISEX
ひとことで「キャップ」と言っても、ツバの長さや深さなどの形状が異なったり、使われている素材にバリエーションがあったりと、実は奥の深いアイテムのひとつ。登山はもちろん、街使いもできる機能とデザインを兼ね備えたモデルがこちら。
「カジュアルな見た目なのに汗抜けもよくサラッとしていて快適でした。キャップやハットは、セレクトが大事だと思うんです。ついついビビッドな色を選びがちなのですが、こうしてコーディネートで紹介してもらえると助かりますね」
樹林帯を経て、森の湖へ
静かなシラビソの森を歩く。
ときおり立ち止まり、小鳥のさえずりに耳を傾ける。
軽やかな足取りで、自然を楽しむ余裕が生まれたよう。
笹藪をかき分け、急な坂を下ります。
タフなルートも軽量装備ならラクラク。
「もう着いちゃった!」
コースタイムもこれまでより早くなり、
軽量化の恩恵を感じます。
快適な山歩きを支える、足元の装備|1|
ALTRA(アルトラ)/ローンピークアルパイン/MENS
トレイルランニングシューズブランド・アルトラの人気モデル「ローンピーク」の新シリーズ。クラシカルな佇まいですが、登山道での歩きやすさを支えるソールは本家と同様。アッパーには耐久性に優れる素材を用い、コーディネートしやすいカラーリングを採用しているのが特徴です。
「シューズに関しては、普段から軽量モデルを履いていたのもあって、違和感なく歩くことができました。トレランシューズは派手なカラーリングのものが多くて躊躇してしまうけれど、これは落ち着いた色味なのが好印象でした」
快適な山歩きを支える、足元の装備|2|
BMZ(ビーエムゼット)/YAMAP別注 山を歩くインソール/UNISEX
インソールメーカー・BMZとYAMAPが、登山のために共同開発したインソール。シューズ内で足の形状をサポートしつつも、山歩きには欠かせない土踏まずのアーチと指が動くためのスペースを設けることで、足が本来持っている機能を高めてくれる効果があります。
「靴のなかでガチッと固定される感じもなく、履いていて違和感がないですね。歩くことで足の機能が高められるということなので、とても期待しています。実は去年膝を痛めてしまったこともあり、足や膝をしっかりケアして登山をしたいと思っていたんです」
快適な山歩きを支える、足元の装備|3|
SINANO(シナノ)/フォールダーTWIST125/UNISEX
多層構造カーボンと呼ばれる特殊素材でできたトレッキングポール。1本わずか230gという軽量性もさることながら、縦方向に43kgの対荷重を達成するなど、安全基準もしっかりと満たした本格モデル。
「膝を痛めていることもあり、トレッキングポールは必需品。似たようなモデルを使っているのですが、こちらの方が断然軽いし、組み立てが簡単! 長さ調整もしやすいし、3つ折りタイプなので使わないときはバックパックの中に収納できますね」
湖畔で楽しむ、スマートな調理スタイル
眺めのよいロケーションに腰を下ろし、
ランチタイムの準備。
使ったことのないギアには不安もあるけれど、
新しい楽しみの方が大きいように思います。
山道具遊びも登山の醍醐味のひとつ。
日帰り登山のときは手軽な行動食やお弁当ですませがち。
でも、シンプルな調理ギアがあれば、
おいしい山ご飯をスマートに楽しめます。
はじめは四苦八苦しても
コツさえ掴めば楽しみは無限大。
調理器具もULギアも試してみよう
Esbit(エスビット)/ポケットストーブ
登山といえばガス缶を使用したバーナーが一般的ですが、固形燃料という選択肢もあるんです。イメージとしては、民宿のお鍋で使われる着火剤のようなもの。「エスビット」はアウトドア向けに開発された固形燃料で、軽量かつ野外で使いやすいのが魅力です。
「固形燃料、はじめて使ってみましたが、思った以上に便利。日帰り登山だと、バーナーのセットは重いから持って行くか悩みますよね。山頂でコーヒーを一杯飲みたいというくらいなら、これの方が格段に軽量。今回はカレーを作りましたが、火力も十分。調理もいけますね。また、万が一の事故などがあって動けなくなったときなど、温かい飲み物を作れるのは大事。そういったエマージェンシー的な用途でも揃えておきたい装備だと感じました」
山道具の定番「サコッシュ」も軽量素材を選ぼう
MINIMALIGHT(ミニマライト)/メッセポーチ/UNISEX
斜めがけタイプのシンプルなポーチ・サコッシュ。さまざまなモデルがありますが、こちらは「500mlのペットボトルが入る」「キーフック付き」など、使いやすさにこだわったモデル。貴重品やスマートフォン、コンパクトカメラなどの小物の携行に便利です。
「サコッシュも、以前から使っていたアイテムなのでその便利さは体感しています。一見小さく見えますが、ボトルが入るのにはびっくり。小さすぎると入れたい小物が入り切らないし、大きすぎると重くなってしまうので、このくらいがベストかも」
稜線で雨に降られても、登山は楽しくなる
ポツポツと、梢の葉に落ちてくる雨音。
樹林帯を抜けると、湧き上がってくる霧が雨を降らせていました。
こんなときはレインウェアを着用。
雨風から体を守り、体温低下を防ぎましょう。
霧と雲がおりなす絶景。
雨予報と聞くと、つい山から足が遠のきがちですが、
しっとりした幻想的な景色も山の魅力です。
これまで見てきた景色が新鮮に感じるはず。
登山の必需品・レインウェアも軽量モデルを
THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)/ベンチャージャケット/MENS
毎年のように革新的なモデルが登場するレインウェア。215gと、まるでウインドシェルのような軽量性でありながら、2.5層の防水透湿性を備えた逸品がこちら。縫い目にはしっかりシーム処理も施され、不意の雨にも確実に対応します。
「実はこれ、軽すぎてウインドシェルだと思っていたんです。レインウェアといえばゴワゴワしたものをイメージしていたけれど、質感もよくて着心地もいい。かさばらないからバックパックに入れていても苦にならないのは嬉しいですね」
克己さん、軽量化してみてどうでしたか?
今回の装備軽量化計画に協力してくれたYAMAPメンバーの克己さん。実際に山を歩きながら、軽くすることのメリット、また最新ウェア&ギアの魅力を存分に感じていただけたようです。実は撮影時は、霧〜雨という天気で、強風やときには雨もぱらついたりと、決して良好とはいえないコンディションでした。ですが、そんな装備の真価が試されるような状況でも、安心&快適な山行ができました。最後に克己さんのコメントで締めくくりたいと思います。
「冒頭でもお話ししたように、30年も山をやっていると、お決まりの装備が出来上がってしまっていました。『重くても根性で登り切る!』という山への向き合い方だけでなく、選ぶ装備も『似たような色』『同じブランド』だったりして、固まった自分の定番を変えたいとは思っていました。もちろんそれでも登山はできるのですが、体の負担も心配ですし、新しい山道具も気になっていたのは正直なところ…。
実際に最新の装備を試してみてびっくりしたのは、『こんなにウェアやギアが進化しているのか!』ということ。軽さはもちろん、快適性や着心地のよさには驚きました。自分で装備を組み合わせるのが難しくても、YAMAP STOREはコーディネートで紹介してくれているので、そのまま参考にしてみるのもOK。ともあれ、なんか生まれ変わった気分…。装備が一新されたことで、行ってみたい山が浮かんできました。また、フレッシュな気持ちで山登りができそう!」
これまでたくさんの山に足を運んだベテランハイカーならば、山道具の進化や変遷を実際に肌で感じてきたという方も多いはず。しかし、山道具は今も変わらず進化を続けているのです。
すでに行ったことのある山も、新しい山道具と一緒なら新鮮な気持ちで再チャレンジできることでしょう。今年はYAMAP STOREの厳選した最新の「軽量」山道具で、フレッシュに山歩きを楽しんでください。
着用アイテムはこちら
ライトハイクが楽しめるオススメの山をご紹介!
平標山&仙ノ倉山
群馬県みなかみ町と新潟県湯沢町にまたがる平標山(1983m)と仙ノ倉山(2026m)に登頂できるループコース。距離は14kmほど、アップダウンもあるので軽量化の効果を試すには最適。広々とした景観を軽やかな足取りでハイクを楽しめるでしょう。
八ヶ岳(桜平〜硫黄岳)
硫黄岳(2760m)を目指す周遊コース。樹林帯にはじまり、稜線に出れば八ヶ岳の峰々が一望できるバリエーション豊かな景観が魅力です。ルート上には複数の山小屋があり、悪天候時などのエスケープ先として頼ることも可能。
石鎚山
西日本最高峰の石鎚山(1982m)。山頂までは複数の登山口がありますが、古くから山岳信仰の山として親しまれてきた歴史に触れられる成就ルートがオススメ。天候がよければ山頂から瀬戸内海が遠望できることも。急登もあり軽量装備の恩恵を存分に体感できるはず。