ウール? ポリエステル?|素材から考える登山のベースレイヤー選び

季節の移り変わりが早く、1日の中でも寒暖差が大きい山。そんな気候の中で、いかに快適に過ごすかは、レイヤリングの要であるベースレイヤー選びにかかっています。

直接肌に触れ、体温調整の要であるにも関わらず、行動中の替えが難しいベースレイヤー。だからこそ、素材の特徴をしっかりと把握し、山の状況に応じて選ぶことが快適な登山の必須条件と言えるでしょう。

今回は、ベースレイヤーの素材ごとの特徴と代表的なアイテムをご紹介します。

素材の違いがもたらす変化を解説:ポリエステル、ウール、そしてコットン

ベースレイヤーの素材としてよく耳にするのが「ポリエステル」と「ウール」。まずは、この2つの違いをご紹介していきます。

加えて、登山初心者の方からよく質問されるのが「コットン(綿)はなぜダメなの?」という疑問。コットンの特徴と、なぜ登山に不向きなのかについても、見ていきたいと思います。

ポリエステル:速乾性に優れた軽量な化学繊維

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

「登山ウェアは化繊を選ぼう」という言葉を、山に登る方なら一度は耳にしたことがあるかと思います。化繊とは、化学繊維の略称。そのなかのひとつであるポリエステルは、速乾性、軽量性、強度に優れています。

汗や雨で濡れてしまっても、非常に高い速乾性によって一瞬で乾いてしまいます。また、様々な加工を施しやすく、各社が趣向を凝らした高機能素材を開発しています。今ではファッションアイテムとしてお馴染みの「フリース」も、その多くがポリエステル繊維で作られています。

ポリエステルは石油を主原料にして作られる化学繊維ですが、近年の研究開発により、環境に配慮したリサイクルポリエステル素材も登場しています。

ウール:調湿・防臭効果のある天然素材

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

羊毛から作られるウールは、クリンプと呼ばれる縮れた繊維構造により、繊維の間に空気を多く含むことができるため、断熱効果を発揮します。これにより、ウェア内の温度変化を緩やかに保ちます。

また、ウール繊維の表面にはスケールと呼ばれるウロコ状の層があります。これは、私たちの髪の表面を覆うキューティクルと同じような構造で、内部の水分環境を一定に保ち、快適さを維持する調湿機能や、汚れや水を弾く適度な撥水機能を持っています。さらに、細菌が繁殖しにくい特性をもつため、汗などの臭いを抑える防臭効果も期待できます。

このような特性から、ウールは学生服や制服にも広く用いられてきました。これらの機能性は、アウトドア環境でも非常に有用です。

コットン:速乾性に乏しく、登山には不向きな素材

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

綿花からつくられる繊維であるコットンは、私たちの生活には1番馴染み深い素材と言えるのではないでしょうか。コットンは、吸湿性肌触りに優れるという特性を持っています。

しかしながら、一度濡れてしまうと乾きにくいという性質をもっているため、登山においては不向きと言われています。汗(水分)は空気に比べて25倍の熱伝導率を持っており、肌やウェアに汗が残ったままだと身体の冷えにつながってしまうのです。これを登山では「汗冷え」といいます。

このような理由から、コットン素材の衣服を登山で使用することは避けるべきでしょう。

【ポリエステル】
速乾性・強度に非常に優れており、軽量。様々な機能を付加した生地が開発されている。

【ウール】
調温性・調湿性に優れた天然素材。ウェア内の急激な環境変化を抑える。天然の防臭効果を持つ。

【コットン】
調湿性・肌触りに優れるが、乾きにくいため登山のベースレイヤーには不向き。

ここまでご説明した内容を簡単にまとめてみました。それぞれの特徴をご理解いただけるかと思います。

ただし、ベースレイヤーの機能は素材だけでなく、生地の製法や加工、繊維の太さなどによっても左右されるため、注意が必要です。上記はあくまで基礎知識として捉え、製品を選ぶ際は総合的に判断することが重要です。

次の章では、ここまでにご紹介した素材を用いた、YAMAP STOREおすすめベースレイヤーをご紹介します。

「ポリエステル」を用いたベースレイヤー

①キャプリーンミッドウェイトクルー|patagonia(パタゴニア)

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

中空糸と呼ばれる内部が空洞になった繊維を使用し、肌面にダイヤモンド型のグリッド・パターンを取り入れることで、アウトドア環境における機能性を極限まで追求した長袖のベースレイヤー。素材は環境に配慮し、100%リサイクル・ポリエステルを使用しています。

中空糸の採用により、軽量性、保温性、吸水性を高めると同時に、ダイヤモンド型のグリッド・パターンがこれらの性能をさらに向上させています。この構造は肌との接地面を減らして汗によるベタつきを緩和するうえ、生地表面の凹凸が汗を効率よく吸い上げ、素早く拡散・蒸発させることで、不快な汗冷えを軽減します。また、メカニカルストレッチの自然な伸縮性を備えているため、身体に心地よくフィットし、長時間の着用でもストレスフリー。

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び左:滑らかな表面、右:ダイヤモンド型の凹凸がある裏面

表面は凹凸がなく滑らかに仕上げられており、フリースなどのミドルレイヤーと重ね着してもゴワつきを感じません。このように、使い手目線のメリットが詰まったベースレイヤーとなっています。

長袖がちょうどいい春や秋はもちろん、冬のスポーツやアクティビティでも活躍する一枚。汎用性の高さがファンを離さない、patagoniaのロングセラー・プロダクトです。

②サンブロックロングスリーブ|YAMAP(ヤマップ)

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

リサイクルポリエステルを100%使用したオリジナルの生地で制作された、YAMAPのオリジナルベースレイヤー。メカニカルストレッチによる抜群のストレッチ性と、繊維に酸化チタンを練り込むことで実現したマットな質感とUPF50+のUVカット機能が特徴で、薄手のため夏場でも使用可能です。

生地には吸水速乾機能や抗菌加工が施されており、かいた汗を素早く吸い上げ、すぐに乾かすことで不快感や汗冷えを防ぎます。着用時だけでなく洗濯時にも速乾性が発揮されるので、洗濯後はすぐに乾き、毎回のお手入れも簡単。

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

耐久性も高く、ピリング(ザックなどとの摩擦によって毛玉ができる現象)や、スナッグ(枝などに引っ掛けて繊維が飛び出したり生地がつってしまう現象)が起こりにくい素材なので、長く愛用していただけます。

同生地を使用したハーフジップフーディタイプもラインナップ。筆者は川や海などのウォータースポーツでも水着のように愛用しています。

「ウール」を用いたベースレイヤー

①オールエレベーションロングスリーブ|STATIC(スタティック)

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

日帰りのハイキングから縦走登山、過酷な冬山登山まで、あらゆるシチュエーションで快適性をもたらせるベースレイヤーとして、「スタティック」が開発したのが「オールエレベーションロングスリーブシャツ」。メリノウールを50%、ポリエステルを50%組み合わせた独自開発の生地を使用しています。

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選びエクスペディションドライドットクルーの生地拡大図

生地には凹凸のあるボーダーメッシュ構造によって高い通気性をもち、吸水速乾性と保温性の両立を実現しています。生地の薄さや軽さに対して保温性が優れているため、涼しさを感じる春や秋の低山、夏の高山を中心に活躍するでしょう。ミドルレイヤーは必須ですが、冬のベースレイヤーとしても問題なく活躍します。

ウールは動物愛護など羊や牧場の管理について厳しい倫理下で作られたRWS(Responsibl e Wool Standard)認証のものを使用しています。ポリエステルもリサイクル素材を使うなど、地球環境に配慮されている点も嬉しいポイントです。

②ロングスリーブキャプリーンクールメリノシャツ|patagonia(パタゴニア)

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

メリノウールの「調湿性」「調温性」「防臭性」と、ポリエステルの「強度」「速乾性」を併せ持つハイブリッドなベースレイヤー。ポリエステルはリサイクルのものを採用し、ウールも動物と放牧地の両方がしっかりと守られているもののみを原料として使用。工場に対してもフェアトレードを実施していており、こちらもパタゴニアらしいエシカルな一着。

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選びロングスリーブフラッシュドライ3Dクルーの記事拡大図

生地は比較的薄手のため、夏でも着用可能。適度な「調温性」と「調湿性」をバランスよく備え、「防臭性」にも優れているので、春や秋の長期山行・夏の高山などが活躍の場になります。

③プラックスウール200ロングスリーブT|YAMAP(ヤマップ)

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

ウールを70%使用した、ウール混率の高いベースレイヤー。ここまでご紹介した「ウール」を用いたベースレイヤーのなかで最も厚手で、柔らかな着心地が特徴です。

涼しさを感じる春や秋のシーズンは一枚で、冬はインナーとして日常的にも活躍すること間違いなしの一着です。ベースレイヤー界では「中厚手」に分類される厚さのため、寒いのは苦手だと自覚のある方には強くおすすめしたい一枚。

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

ウールと一緒に繊維に使われているのは、最新繊維の「ポリ乳酸(PlaX™️) 」。これは、化学繊維でありながら生分解性をもつ、環境に優しいポリエステル繊維であり、速乾性だけでなく、生乾きのニオイの原因菌の繁殖を抑える抗菌・防臭効果や、静電気が起こりにくいといった珍しい特徴を兼ね備えています。

素材を理解すれば、ベースレイヤーは選びやすくなる

「ウール? ポリエステル?」素材から考えるベースレイヤー選び

今回の記事では、素材に注目して注目のベースレイヤーの特徴をご説明してきました。冒頭でもご紹介した通り、ベースレイヤーは直接肌に触れ、体温調整の要とも言える非常に重要なアイテム。だからこそ各社が工夫を凝らし、様々なモデルを販売しています。

一方で、種類が多すぎてどれを選べばいいのか迷ってしまうのも事実。そんな時は素材に注目して、自分の活用シーンをイメージしながら選んでみてはどうでしょうか?

きっと最適な1着が見つかるはずです。

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