涼しさは自分でつくれる! <クールアイテム>を賢く使って、夏でもヒンヤリ感じる山旅を
夏真っ盛りな今日この頃。ひと昔前は、気温が30度を超えようものなら“今日は真夏日で……”なんて騒がれたものですが、近頃は最高気温が35度と聞いても、あまり驚かなくなった気がします。
こんな暑い日には山で少しでも涼を感じたいなー、なんて思いますが、こうも気温が高いと熱中症や汗のニオイも気になるところ……。
そこで、アウトドア用品専門店での販売経験をもつ、登山歴13年のライター山畑理絵が、女性ならではの視点を交えて選りすぐりの<クールアイテム>を紹介します。
暑い日だって、軽快に山を楽しみましょ。
(文:山畑 理絵、写真:茂田 羽生)
「インナー」でクールに
たった一枚のインナーが山歩きに革命を起こす
2004年に登場したファイントラックの<ドライレイヤー>。ベースレイヤーの下にさらにもう1枚着るという新しい発想で、肌のベタつきや汗冷えのリスクを大幅に減らしてくれる画期的なアイテムです。
私がはじめて身にまとったのは、2009年頃。最初はスキンメッシュ(現:ドライレイヤーベーシック)を購入し、半信半疑で山へ。すると汗冷えを感じにくくなったどころか、汗による肌のペタペタ感が抑えられて、いつも感じていたストレスがなくなっていました。
ドライレイヤーを着ていると無類の安心感があるので、暑いときも寒いときも、億劫になることなく山へ向かわせてくれます。私の山歩きを変えてくれたといってもいい、そんなアイテムです。
そのドライレイヤーの夏専用とも言えるのが「ドライレイヤー<クール>」なのです。
汗を多量にかく季節なら、迷わずドライレイヤー<クール>
現在のドライレイヤーシリーズは<ベーシック>、<クール>、<ウォーム>の3タイプに分かれています。なかでも<クール>はベーシックの約2倍の冷涼感があり、汗をたくさんかく季節の登山や、発汗量の多いトレイルランニングなどにおすすめ。
生地を見ても分かるように、汗の通り道となるメッシュの孔が大きく、すばやく肌から汗を引き離してくれます。
そして女性用アイテムとして特筆すべきは、ブラトップのフィット感。動きの激しいアクティビティで活躍する「クール」だからこそ、揺れを軽減するさらしのような形状になっているんです。でも、締め付けすぎず、そしてゆるすぎない絶妙なフィット感。
旧モデルと比較すると、胸のあたりの窮屈な感じが減り、着心地が格段にアップしています。また、パットで胸の形を緩やかに整える「ベーシック」と比較すると、しっかりとホールドされているので、1枚でも安心感アリ。ベースレイヤーを重ねたときのシルエットもきれいです。もちろん手持ちのブラと重ねてもOK。
ショーツに関しても、単に汗ヌケがいいだけではなく、縫い目がオモテに出ているので肌あたりが柔らかくなっているのも特徴です。ウエストと足回りは汗や擦れで赤くなったりかゆくなったりしやすいので、この配慮は嬉しいポイント。
正しいレイヤリングが100%の効果を発揮する
レイヤリングに革命を起こしたドライレイヤーシリーズ。ただし、きちんと効果を得るためには正しいレイヤリングが不可欠です。
着用時のお約束は、ドライレイヤーの上は、ぴったりとしたサイジングの吸汗速乾ウェアを着ること。なぜなら、ウェアがぴったりしていないと吸い上げた汗の行き場がなくなり、汗が肌に逆戻りしてしまうからです。
ドライレイヤーを着るなら、ジャストフィットの吸汗速乾ウェアとセットで。これを覚えておきましょう。
「ウェア」でクールに
汗で肌がペタぺタするときこそ、素材や形にこだわる
「登山には速乾性の高いウェアが絶対条件ですよ」。これは私がアウトドア用品専門店で働いていたとき、たびたび口にしていた言葉です。
でももうひとつ、お客様に伝えていたことがあります。それが「着心地のいいものを選ぶ」です。
着心地がいいウェアというのは、速乾性はもちろん、素材の肌あたりがよかったり、動きやすいデザインだったりします。
暑い季節の登山は、滝のように汗が流れます。汗を吸ってすばやく乾かすことも重要ですが、動きやすいか否かでも夏の快適度が大きく左右されます。
ここでご紹介するウェアは、いずれも吸汗速乾性に優れたアイテムなので、プラスアルファの要素である「着心地の良さ」にもスポットを当てていきましょう。
素材とカッティングに注目
写真左から、ウール、ナイロン、ポリエステルをメインに使用したベースレイヤーです。
どれも吸汗速乾に優れていますが、カッティングや素材の編み方に工夫をこらすことで、より汗はけがよかったり、動きやすかったりするつくりになっています。
トップスは肩回りに注目。腕を上げても突っ張らない、縫い目がバックパックのショルダーに干渉しないデザインになっているのがわかります。
汗で肌にウェアがまとわりつくと必然と動きにくくなるので、素材感やカッティングにも目を向けてみるとよいかもしれません。
薄手ショートパンツなら、涼しくそして軽快に
涼しさを求めるなら、ボトムスはショート丈を。この2本は細部にまでこだわりが詰まっているのですが、とくに個性が光るのはウエスト回り。
ウエストは、下着、ベースレイヤー、バックパックのハーネスなどが重なり合って汗の溜まりやすい部分です。そのためシンプルなつくりに越したことはありません。
<アイコニックショートパンツ>と<ワジショーツ>は、スッキリとしたデザインながらも履き手の体型に合ったフィット感を出せる仕様になっています。<ワジショーツ>にいたっては、この手があったか!といったユニークなウエスト周りのシステム。
生地は薄手で、<アイコニックショートパンツ>が170g、<ワジショーツ>が148gと超軽量! 暑い日こそ、足さばきを軽快に。
「小物」でクールに
+αで清涼感を上乗せする
ウェアやバックパック、登山靴はこだわって選ぶけど、小物選びは意外と手を抜きがち。でも、あったらとても重宝するアイテムがたくさんあるんです。
今回はクールアイテムとして優秀な<キャップ>、<タオル>、<ハッカ油>をピックアップ。注目すべきポイント、筆者流のおすすめの使い方をご紹介します。
キャップは通気性の高さがキモ
ヒトのからだは、体内の熱を体外に逃すことで体温調節をします。もちろん頭からも熱をたくさん放熱しています。でも、熱中症対策を考えると帽子はマストアイテム。そこでポイントになるのが、帽子の通気性です。
<リムキャップ>は頭のてっぺんから後ろにかけて、<ダックビルキャップ>はおでこの上辺りから後ろにかけての大部分がメッシュで、ムレを溜めずにどんどん発散します。
ツバは小ぶりですが、最低限の日差しを遮るならこれでも十分。むしろ短めなことで視界が広くなるので、かぶっていても開放的。
どちらも帽子全体が柔らかいので、樹林帯など日差しの気にならないシーンではクルッと丸めてポケットやサコッシュにインしてもいいですね。
頭部はムレやすい場所だけにニオイが気になるところですが、部分的に抗菌加工がなされているので雑菌の繁殖をおさえてくれます。
見た目はシンプルだけど、技あり!
たかがタオルと侮るなかれ
タオルって、使い方次第でいろいろなものに早変わりしますよね。ですが、このタオルはもっとスゴい。水に濡らして拭くだけで、お風呂に入ったくらいスッキリできちゃう嘘みたいなアイテムなんです。
スゴさの秘密は、髪の毛の1/7500というもはや想像できない領域の細さに素材を加工しているから。なんでも世界最先端のナノ技術を使ってポリエステルを極細に加工しているそう。
要は、この極細繊維が肌のベタつきやしつこい汚れ、ニオイまでもいとも簡単に拭い去ってくれる、ということです。
よく見るとオモテとウラで色と質感が違っていて、青い面は柔らかいので汗をぬぐうときに、白い面は少しザラッとしているので汚れを拭き取りたいときに。
しかも保水力が高く、濡らして首に巻けば火照りもクールダウン。いわゆる気化熱ってことですね。水分が蒸発するときに熱を奪うので、一時的に体温を下げることにつながります。
ハンカチとタオルどっちにしようなんて迷う方もいると思いますが、顔まわりやサングラスを拭くならハンカチ、首に巻いたり身体を拭くならタオルがおすすめ。
収納ケースに入れると手のひらに収まるサイズ感でとっても小さくなりますし、両方あっても損はない! と言い切れます。実際、私も悩んだ挙句2つとも買いまして、主人とシェアしています。これ一度使うと手放せませんよ、本当に。
じつはヒンヤリも得意な<ハッカ>
ハッカ(ミント)は虫よけ対策のイメージが先行しがちですが、じつは爽快感も得られるアイテム。
たとえばハッカのガムを食べて息を吸うと、口の中がスースーしますよね。これはハッカに含まれるメントールが清涼感のある成分だからです。
個人的におすすめする使い方は、精製水で薄めたハッカスプレーを作り、肌にシュシュッとしたり、水で濡らしたタオルに吹きかけたりして使う方法。これで腕を拭いたり、首に巻いたりするとびっくりするくらい涼しい……! ここに風が吹けば、もっとヒンヤリ。効果は一時的ですが、クール感は絶大です。
ただし原液のままだと刺激が強いので、ハッカが肌に直接触れる際は必ず薄めてから使います(肌が弱い方は、とくにご注意ください)。
原液のまま使うなら、肌以外のところに。ハッカは消臭効果も期待できるので、登山靴やバックパックの背面などニオイの気になるところに少量スプレーしても◎。
香りも清々しいですし、シュシュッとすれば暑さを心地よ~くしのいでくれますよ。
「飲み物」でクールに
カラダの内側からダイレクトに冷やす
手っ取り早くクールダウンするには、水分補給が効果てきめん。そんなときは保冷力に優れた<タンブラー>が大活躍。冷たいドリンクを飲んでカラダの内側から体温を下げましょう。
また水の調達が難しいエリアや、長距離ハイクのときは<浄水器>があると安心です。近年はコンパクトで扱いやすいモデルが続々と登場しているので、いざという時のためにも携行しておきたいアイテムです。
見た目以上に、実力派! KINTOとYAMAPのダブルネーム<タンブラー>
KINTOは、おもにコーヒーグッズやマグカップ、タンブラーなどのテーブルウェアを手がけるブランド。フォルムが美しく、アウトドアユーザーにもファン多数の注目株です。
本体はステンレスの真空二重構造で、暑い中でも冷たさをキープ。口が広いので、大きな氷を入れやすいのもポイント。
また、中蓋は口当たり良く、360°どこからでも飲める仕様。写真を見て分かるように、すべてのパーツが同色のマットカラーで統一されているためスタイリッシュさがより際立ちます。
見た目も機能も妥協したくない、そんな人にチェックしてほしいタンブラーです。
山で手軽に使うなら、<ボトルタイプの浄水器>が最適解
山での水切れは死活問題。使うか分からなくても、もしものときのために浄水器は携行しておきたいアイテムのひとつです。
でも、かさばるものやパーツが多いものはなんとなく自分には使いこなせる気がしなくて買うのをためらっちゃう……。そんなハイカーに知ってほしいのが、カタダインの<ビーフリー0.6L>。
おもなパーツは、飲み口、フィルター、ソフトボトルの3つ。使うときはペットボトルのフタを開けるような感覚でフィルター部分をくるくる回して外すだけ。あとは沢の水をすくって、外したパーツを元に戻すだけでOKです。
しかも圧をかけなくても下に向けるだけで自然にろ過できるので、使い方はとってもイージー。このまま飲んでもいいし、ボトルに移し替えても◎。63gという軽さながら、浄水能力はなんと1,000リットル(1,700回)!
ソフトボトルなので折りたたむと小さくできます。これなら持っていくのも苦になりませんよ。
暑いけど、山に行きたい。そんなときこそ<クールアイテム>を上手に取り入れて
自然の力強いパワーを存分に感じることができる夏の山の美しさは、この季節ならではです。暑いけど山に行きたい。そんなときは、今回紹介したような<クールアイテム>を賢く取り入れて爽快に歩きましょう!
山畑 理絵(やまはた りえ)
登山歴15年のライター・編集者。元アウトドア用品専門店スタッフ。のんびり日帰り低山から、山小屋グルメ堪能ハイク、テント泊縦走まで楽しむ。ホームマウンテンは奥武蔵。現在は3歳の娘と山歩きとクライミングジム通いに没頭中。