憧れの雪山登山を叶えるウェア&ギア|YAMAPスタッフが挑む積雪期ハイク
すっかり山は冬化粧。このシーズンを待ち侘びていた登山者がいる一方、「いつか雪山に登ってみたい」と思いながらも「どんな装備が必要かわからない」と二の足を踏んでいた方も少なくないでしょう。そこで、今回は「はじめての雪山」をテーマにウェア&ギアをご紹介しながら、雪山初体験のYAMAPスタッフ近藤が、雪山登山歴12年の先輩スタッフ挾間のレクチャーを受けながら雪山に挑戦する様子をお届けします。雪山デビューを目指す方、必見です!
YAMAP STOREコンテンツディレクター
近藤 巧(こんどう たくみ)
キャンプ系メディアの編集者を経て、2023年11月ヤマップに入社。低山メインに登山を楽しむ山ビギナー。猫とビールとアニメが好き。
YAMAP STOREコンテンツディレクター
挾間 美優紀(はさま みゆき)
「暮らすように山を歩く」をテーマに、アメリカのJohn Muir TrailやスウェーデンのKungsledn、国内では熊野古道・大峯奥駈道、信越トレイルなどのロングトレイルを踏破。クライミングや沢登り、スキー、キャンプも大好き。子育てがひと段落したらチベットにあるカイラス山周遊を目論む。
澄みわたる白銀世界へのいざない
街でも冷え込む日が増えてきましたが、山々は一足先に冬を迎えています。
YAMAPスタッフが向かったのは、長野県と山梨県にまたがり、標高2,899mの赤岳を擁する八ヶ岳連峰。雪山登山の入門に最適な樹林帯ハイクを楽しめる「唐沢鉱泉〜黒百合ヒュッテ」のルートをセレクトしました。周辺には天狗岳や硫黄岳といったピークはありますが、まずは雪上での歩き方や氷点下の気温でのウェアリングで感覚を掴むためにも、樹林帯のハイクからはじめるのがベター。ピークを踏まずに山小屋まで、標高差約540m、おおよそ2時間の散策を楽しみます。
装備に関しては、春〜秋のウェアを活用しつつ、冬の山で活躍するアイテムをピックアップ。いわば「これさえあれば」的なセレクトとなっており、「雪山登山では専用の道具がたくさん必要」と苦手意識を感じている方は、ぜひともチェックしていただきたいラインナップです。
雪山の行動では「汗冷え」と「保温」を考慮したレイヤリングを
まずは登山装備の基本である「レイヤリング」から解説していきましょう。冬のレイヤリングの考え方は、基本的に春や夏と一緒。しかし、気をつけておきたいのが、「汗対策」と「寒さ対策」です。
近藤「肌寒い秋山登山の経験はあるのですが、雪山登山ははじめてなんです。正直何を着ればいいかよく分からなくて……」
挾間「ドライレイヤー、ベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターの、いつものレイヤリングでOK。ただ、「汗冷え」には要注意。寒さ対策で防寒着をたくさん着込んでしまいたくなるけれど、雪山では汗が冷えると低体温症になってしまうことも。「通気」機能のあるウェアを選ぶことで、汗やムレが軽減され、登山がグッと快適になるんです。もちろん、『暑くなったら脱ぐ、寒くなったら着る』といった、気温や行動に合わせたレイヤリングの調整も忘れずに!」
発汗をともなう「行動時」のレイヤリング
適度に保温しつつ、汗を逃す素材を使用することで快適性をキープしてくれるfinetrack「ドライレイヤー」。夏山登山ではお馴染みの方も多いかと思いますが、雪山でも汗冷え対策として効果的なアイテムです。オールシーズン使えるアイテムなので、気になっていた方はこの機会に試してみてはいかがでしょうか。保温性の高い「ウォーム」タイプは、冬だけでなく春や秋の肌寒いシーズンに活躍する一着です。
行動時の保温を担う「ミドルレイヤー」
寒さから体を守り、行動を支えてくれるミドルレイヤーは、フリースやダウン、化繊インサレーションなどさまざまなバリエーションがあります。オススメは「保温」と「通気」を兼ね備えたアクティブフリースと呼ばれる、MOUNTAIN HARDWEAR(マウンテンハードウェア)の「YAMAP別注ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」です。メッシュタイプのフリース生地なので、保温しながらも斜面を登る際にムレが抜けやすく快適な着用感が持続します。レイヤリング調整の回数も減らせるスグレモノです。
防風効果で体温低下を防ぐ「アウタージャケット」
主に「防風」の役割を果たしてくれるのがアウタージャケット。いわゆるレインウェアでも代用ができますが、冬山では厚みのあるハードシェルと呼ばれるタイプがオススメ。耐久性があり、ハードな雪山でも安心して着用できます。
Teton Bros.(ティートンブロス)の「ツルギジャケット」は斜めジッパーがベンチレーションになるため、ウェア内が熱くなったときでも強制的に換気が可能。軽量でしなやかな着用感も魅力です。
「化繊インサレーション」でプラスアルファの防寒を
より寒さが厳しいときは化繊の保温着をプラス。ダウンだと汗や湿気で羽毛がへたり保温力が落ちてしまうので、濡れてもロフトが保たれる化繊素材を中綿に使用したfinetrack(ファイントラック)の「YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」がベスト。夏のアルプス登山の防寒着としても使えるので、持っていて損はないアイテムではないでしょうか。
中厚手生地を使用し保温性を高めた「ボトムス」
冬の登山に履いていくボトムスは、防寒性のある厚手タイプをセレクトしましょう。
Gramicci(グラミチ)「YAMAP別注ウィンタートレイルパンツ」は裏起毛タイプで暖かさがありながらも、生地に伸縮性を持たせているので、大きく足上げをするようなシーンでもストレスフリー。
雪化粧した北八ヶ岳の樹林帯を抜けて稜線へ
樹林帯をハイクすること3時間。小高い丘に登ってみると、霧氷に覆われた八ヶ岳の山々が目の前に広がりました。少し風があり、アウタージャケットを防風のために着用。キリリと冷たい空気に緊張感を覚えながらも、夏とはまったく違う景色にしばし時間を忘れます。
近藤「登山口では指先がかじかむほど寒かったのですが、歩いているうちに体が温まってきて少し汗ばんでしまうシーンも。でも、こまめにレイヤリングを調整したので快適に登れました。冬山というと防寒にばかり気を取られてしまいますが、思ったより暑いと感じることもあるんですね」
挾間「そうそう。寒さの感じ方や発汗の度合いは人によって異なるので、山を登りながら自分のベストレイヤリングを見つけるのが、快適で安全な登山への近道。基本のレイヤリングを軸に、足し引きしていきましょう!」
雪山の魅力を楽しむには小物選びも重要
天候が安定していたので、黒百合ヒュッテ到着後に足を伸ばして展望スポットである「中山」へ。アイゼン歩行を練習しながら八ヶ岳を一望できる場所まで雪道を登ります。ルートのほとんどは樹林帯ですが、岩が露出していたり、雪が吹き溜まっている場所があったりと、アイゼンを着用しての歩行に慣れるにはちょうどいいコースです。
近藤「夏山と違って雪山には必要な小物が多いですよね。何を基準に選ぶとよいのでしょうか?」
挾間「それぞれの役割を知ることが大事。冬の小物のほとんどは、寒さや雪から守るためのものなんです。たとえば、ゲイターは足からの雪の侵入を防ぎつつ、アイゼンのこすれからボトムスをガードするもの、グローブはスマートフォンや装備の操作をしながらも手先を防寒するもの。
手先や首まわり、足元など、体の末端をカバーするものが多いかもしれませんね。でも、そんな小物が、登山の安全性や快適性を左右するといっても過言ではありません」
近藤「たしかに。マイナスの気温では、冬用のグローブでなければ凍傷になっていたかも。ゲイターも深い雪のなかを歩くときに、とても安心でした!」
雪山に欠かせない小物装備をピックアップ
冷たさから手先を守る「グローブ」
冬山用のグローブは、インナーとアウターの2つがセットになったものが便利。樹林帯での行動やスマートフォンの操作はインナー、森林限界上での行動時にはアウターを着用するなど、シーンに合わせて防寒度合いを使い分けることができます。
アウター部分にリーシュコードが付いたグローブなら、景色を撮影する際に外しても落下による紛失を防ぐことができます。
「ロングスパッツ(ゲイター)」で雪の侵入を防ぐ
ボトムスの裾からシューズに雪が入らないよう、ゲイターを着用しましょう。シューズ内の濡れは不快なだけでなく、冷えや凍傷のリスクもあります。OUTDOOR RESEARCH(アウトドアリサーチ)「クロコゲイター」は雪山登山の定番ゲイター。膝下までカバーするのでアイゼンの爪でボトムスを破く心配もありません。
雪や氷の上を歩くための「12本歯アイゼン(クランポン)」
滑りやすい雪上で安定した歩行を支えてくれるのがアイゼン(クランポン)。汎用性が高い12本歯のタイプがオススメ。
平坦なトレイルはもちろん、急な登り坂でもしっかりと爪が効いてくれます。山行前にご自身のシューズに合わせてサイズを調整しておきましょう。
「サングラス」で日差しから目を守る
もともと紫外線量が多い山の上。積雪期は雪からの反射もあり、サングラスなしでは眩しくて行動できないことも。また、長時間裸眼で行動していること雪目と呼ばれる現象が起こり、最悪の場合は失明してしまうことも。目を守るためにもサングラスは必携です。
「断熱ボトル」でいつでも温かい飲み物を
体が冷えてしまったときは、温かいドリンクやお湯を飲むのが最大の解決策。出発前にお湯を入れておけば、山中でバーナーで沸かす必要がありません。登山用のモデルはいくつもありますが、軽量で耐久性の高いチタンモデルが携行性もよく、オススメです。
他にも忘れず持っていきたい小物アイテム
今回紹介したアイテムは基本的なもの。雪山用登山靴に頭を寒さから頭を守る帽子、強風時に顔を覆うバラクラバ、歩行を安定させるトレッキングポールにスノーバスケットなど、持っていると便利なアイテムはたくさんあります。また、切り立った稜線を歩く場合には必用に応じてピッケルやヘルメットも必須。揃えるのは少しずつでOK。レベルアップしながら、装備を充実させていきましょう。
雪山だからこそ出会える景色に会いに行こう
近藤「雪山は、写真で見ていたのと実際いくのとでは、全然違う! 雪と氷の世界がこんなに美しいものだとは思わなかったです。装備も、使いこなしていく楽しさに気づきました」
挾間「冬の気温の低さや雪の上を歩くことなど、まずは慣れていくことが大事。少しずつステップアップして、いつかはあの雪山の山頂に立てるといいね!」
雪山登山では、汗対策機能のあるウェアが快適性をもたらし、小物が安全な行動を支えます。アイテムごとの機能と使い方をしっかりと理解することがとても大切です。リスクの少ない山から経験を積んでいけば、憧れの山頂に立つことも夢ではありません。「いつかは…」と考えていた方も、今年の冬は雪上ハイキングにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?!
今回着用したアイテム一覧
雪山初心者におすすめの山
長野県・北横岳(八ヶ岳)
長野県・入笠山
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