東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|安達太良・吾妻 自然センター

磐梯朝日国立公園の南東端「安達太良山(あだたらやま)」について

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center吾妻連峰の東端にある浄土平エリアには、噴煙を上げる一切経山や富士山のような爆裂口を有する吾妻小富士(写真)など、火山を感じる山々が連なっている

国内で2番目に大きな面積を持つ「磐梯朝日国立公園」。

福島県域の「磐梯吾妻・猪苗代地域」では、火山が造った大地の迫力ある景観や、大小の湖沼が織りなす変化に富んだ美しい景観がみられます。
 
日本百名山にも数えられる「磐梯山(ばんだいさん、標高1,816m)」「吾妻山(あづまやま、標高2,035m)」「安達太良山(標高1,700m)」の3つの活火山が近接し、それらの山麓には日本一大きな火山性堰き止め湖である「桧原湖」や、日本で4番目に面積が大きな湖の「猪苗代湖(いなわしろこ)」があることから、登山などのマウンテンスポーツはもちろん湖上でのウォータースポーツ、そして山や湖を巡るサイクリングなど、1年を通じてアウトドアアクティビティを目的とした多くの方がこの地を訪れます。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center安達太良山の頂上直下に広がる「沼ノ平火口」。富士山の火口直径が780mなのに対して、沼ノ平火口は1.2kmあり、火口を周回することもできる

磐梯朝日国立公園 / 磐梯吾妻・猪苗代地域の南東の端にある安達太良山。頂上から繋がる稜線上には、直径1.2kmにおよぶ噴火爆裂口「沼ノ平(ぬまのたいら)火口」があり、安達太良登山に来る多くの人がこのスポットを目指します。
 
安達太良山には四方八方からいくつもの登山口がありますが、その中のひとつ「奥岳登山口(二本松市)」には、標高約1,350mにある山頂駅まで上がることができる「あだたら山ロープウェイ」があり、山頂駅から1.5時間も歩けば安達太良山に登頂でき、30分も歩けば「沼ノ平火口」に到達できます。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center奥岳登山口から安達太良山に登るための中継地として利用される「くろがね小屋」。小屋の裏手は「岳温泉」の源泉地帯であり、江戸時代後期までは、この場所に現在の岳温泉の礎となる温泉街があった

 また、安達太良連峰エリアに唯一ある営業小屋「くろがね小屋」に最も近い登山口も「奥岳登山口」です。小屋の宿泊のみならずトイレ休憩のスポットとして小屋を経由して安達太良山に登る計画を立てる人も少なくありません。くろがね小屋の裏手には、安達太良山麓の温泉地「岳温泉」の源泉地帯が広がっており、その源泉を小屋に引くことで“温泉に浸かることができる”というのも、ここを訪れる人が多い理由のひとつです。
 
しかしながら、人気のくろがね小屋も2023年3月末より休業中。建屋の老朽化により建て替えが必要となり、約60年間この地で登山客を見守り続けてきた山小屋の解体がこれから始まり、現時点での完成予定は2028年頃となっています。

人気の安達太良山に迫る「登山道崩壊」

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center安達太良連峰の稜線。中央奥が「鉄山」山頂。20万年前の大噴火によりできた巨大クレーターの周辺は、いまだ裸地や五葉松などの植生が中心で、火山地帯独特の風景を作り出している

YAMAPアプリの登頂数(活動日記数)が多かった山をエリア別に集計した『登られた山』ランキングによると、東北エリアで3年連続(2021年〜2023年)1位となっている「安達太良山」。日本百名山のひとつに数えられていることや、首都圏からの交通アクセスが比較的良いこと、そしてグリーンシーズン(初夏から秋)にはロープウェイが運行していることから幅広い層の登山客が訪れています。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center紅葉シーズンの安達太良山。かつての噴火活動で流れ出た溶岩大地はミズナラ、ブナ、イタヤカエデ、ナナカマドなど、黄色、赤、オレンジが混じり色鮮やかな錦色に染まる

秋になりミズナラ、ブナ、イタヤカエデ、ナナカマドなどの広葉樹が錦色に染まり始める紅葉シーズンになれば、ロープウェイの乗車までに1時間以上の待ち行列ができることもあり、中でもロープウェイの山頂駅から安達太良山頂に繋がる登山道は、多くの人で溢れかえります。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Centerあだたら山ロープウェイ山頂駅から安達太良山の頂上に繋がる登山道。土地の侵食により土壌が流され、地中に埋設されていた木段が抜け落ち、さらにそれらが無惨にも流されてしまっている。このように崩壊が進行し、大きな段差ができてしまっている箇所が多数存在する

一方で、多くの登山客が通行するルートでは、登山道の崩壊が深刻化してきています。

約25年前に設置されたとされる数多くの木段は、地面の侵食により抜け落ち、よじ登るように上がらなければいけない大きな段差も多くでき始めています。

そのような箇所には雨が降ると水が溜まったりぬかるみになるため、それを避けたり大きな段差を少しでも楽に登ろうとして、両サイドの法面に新たな踏み跡ができています。そうなると元々そこにあった植生も無くなり、更なる侵食が進行するという負のスパイラルに陥っているのです。
 
また、ここ数年は雨の降り方にも著しい変化があり、いわゆる「ゲリラ豪雨」と呼ばれる短時間に集中した降雨の頻度も高まっています。その影響か、登山道の侵食スピードも早くなっており、同じ場所で記録した写真を見ても、みるみるうちに地面が削れて表土が流されていっていることが見て取れます。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center有識者による登山道の現状を知る勉強会。登山道の管理に携わる関係者に対して登山道で今何が起きているのかを、因果関係も含め解説する機会を設け、環境保全に対する意識の底上げを図っている

そこで、安達太良・吾妻自然センターでは、有識者とともに現状の崩壊に関する要因を調査するため、登山道保全の専門家である中里浩さん(※)を招聘し、奥岳登山口から上部で何が起こっているのかを分析。その後、環境省 裏磐梯自然保護官事務所との連携により、福島県や関係市町村、安達太良山に関わる団体等を集めた現地勉強会などが開催されることとなり、登山道で起きている問題を顕在化することができました。

※中里浩さん…登山道の整備・維持管理について豊富な実践的知見を有し、奥多摩 、上信越、離島地域等における登山道の調査、計画、設計、工事監理等を行う。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center約25年前に作られたという登山道上の横断溝の清掃作業。長年メンテナンスされていないため、溝の中に土砂が堆積し排水設備として全く機能しておらず、登山道に雨水が流れ込む一因となっている

中里さんの指導も仰ぎながら、登山道崩壊の大きな要因の一つである排水処理の改善を図るべく、作られてから25年という間、まったく手入れされることなく現在に至ってしまった、登山道上にある横断溝(登山道上に流れる雨水を脇に逃すための排水溝)を掘り返し、びっしりと詰まった土砂を掻き出して排水機能を取り戻す作業からスタート。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center木段が抜け落ち散在している登山道を通り、登山道整備に向かうツアー参加者の方々。ロープウェイの山頂駅から上部は保守材料や道具など全て人力で持っていかなくてはならない

YAMAP TRAVELの登山道保全ツアーも実施し、地元在住者に加え、遠くは岩手県や首都圏からも安達太良山への想いがある方々が参加して作業を行なってくれました。この横断溝は調査で分かっているだけでも11本あり、そのうち5本が完了しました。

大きくえぐれてしまった登山道の補修を行い、植生も含めた環境の復元を目指すためには、10年、20年単位(きっとそれ以上)の作業になると思います。すでに手遅れとも思える箇所もありますが、このタイミングでスタートを切れたことを良しとして計画を作っていくほかありません。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|安達太良・吾妻 自然センター「くろがね小屋」とその裏手に続く岳温泉の源泉地帯(※登山者は源泉地帯は立ち入り禁止)。1200年以上前からこの地に温泉があることが書物に残されており、江戸時代には現在の岳温泉の礎となる「陽日温泉」が写真の中央あたりにあった

「くろがね小屋」休業に伴う、「トイレ問題」

安達太良山の「登山道崩壊」に加え、もうひとつの課題が「トイレ問題」です。

先述のように、これまでは「くろがね小屋」がトイレ休憩のスポットになっていましたが、昨年2023年より営業休止となり、トイレの利用が一切できなくなりました。

休業のアナウンスが直前に行われたこともあり、山小屋が営業していると思って安達太良山を訪れる登山客も少なくなく、その結果、登山道脇の茂みで排泄をする人の姿や捨てられたティッシュなども散見され、その痕跡は目に見えて多くなっていきました。
 
当時「仮設トイレを設置できないか」と、関係する県や市町村にも問い合わせましたが、いずれも「建て替えが終わるまでトイレを設置することはない」との回答でした。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center2023年度に設置した携帯トイレブース。予備を含めて2つのテントを使用して運用したが、火山性のガスによりテントの金属パーツが腐食したり、紫外線によりテント生地もボロボロになった。テントでは耐風性も含め限界があるため、2024年度のシーズンに向けて、現在、新たな携帯トイレブースの設計と試作を行なっている

そこで「安達太良・吾妻 自然センター」では、2023年5月の安達太良山の山開きまでに、携帯トイレ用の仮設テントの設置と携帯トイレキット販売を間に合わせるための準備を急ピッチでおこないました(※)。この地に源泉を持つ「岳温泉」の観光協会員とともに、携帯トイレブースのメンテナンスや清掃、トイレキットの補充など定期的に山に上がり、保全作業を実施しました。

※森林管理署および環境省の認可(国有林の使用許可、国立公園内での造作物設置許諾等)を取得した上で実施しています。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center安達太良山の環境保全により多くの方々に参画いただけるよう制作した「Mt.Adataraシリーズ」。購入代金の10%以上を環境保全に使用する旨パッケージに記載していたが、現在は制作コストをのぞいた全ての収益を保全活動に充当している

保全作業にかかる経費を少しでも回収しようと、トイレブースの利用代金や保全協力金を含む携帯トイレキット、「くろがね小屋」が描かれた手ぬぐい、オリジナルグッズの販売等をおこない、その収益を全て充当しましたが「トイレ問題」にかかる経費を回収するまでには至っていません。登山道の保全と同じく、長いスパンで辛抱強く続けていくことが必要になりそうです。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center携帯トイレブース内に設置した販売用の「携帯トイレキット」。携帯トイレを持参していなくても、トイレブース内で無人購入できるようにしている。ブース内に設置したオリジナルの便座にフィットするよう、携帯トイレキットもオリジナルで制作し検証を行なった

また、年間を通じて根本的な課題として感じたのは、そもそも「携帯トイレ」自体が、まだまだ一般の登山客の方々に知られていないということでした。

昨年「くろがね小屋」の前で聞き取り調査をおこないましたが、「聞いたことがない」という方が最も多く「聞いたことはあるが持っていない」「持ってはいるが使ったことはない」方など、総じて9割5分以上が実際に使用した経験がない印象でした。
 
また、携帯トイレを使用した後の問題も。

使用された多くの方はトイレキットの解説書通りに防臭袋に入れて持ち帰ってくれましたが、一部の方がトイレブース内や周辺の茂みの中に使用済みの排泄物が入った携帯トイレキットを投棄していく問題が発生しています。

安達太良山の登山人口がピークを迎える紅葉の時期には、1週間で下写真(ゴミ袋2袋分)ほどの使用済みキットを回収し「くろがね小屋」の片付けに来ていた管理人さんに車で「岳温泉」まで運んでもらうこともありました。

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center携帯トイレブース内やその周辺に投棄された、使用済みの携帯トイレキット。使用したトイレキットは自身で持ち帰るよう呼びかけているが、残念ながら現地に投棄して帰る人がいることも事実

トイレを利用される方々のマナーやモラルの問題もありますが、今後は外国人観光客も踏まえた情報発信など、多言語によるサイン表示等にも対応する必要があり、2024年度よりできるだけ対応できるよう推進していきたいと考えています。

安達太良山の登山道整備と携帯トイレプロジェクトについて


本プロジェクトでは、上記に挙げた「登山道整備」と「トイレ問題」について、昨年度に引き続き、具体的な取り組みを2024年春から実施していきます。

支援金は活動に不足している経費の一部として有効に活用しながら、安達太良山の豊かな自然を次世代に残していくために、支援者になっていただける企業や個人の方々と対話を重ねていきたいと思っています。これは今だけの問題ではなく、先人たちから受け継いだ国立公園の自然をどのようなカタチで次の世代に継承していくのかという大きなテーマでもあるからです。

安達太良山の自然環境に向き合いながらそれを仕事とする未来の担い手に対しても、夢を抱くことができる取り組みにしていく必要があると考えています。

具体的な取り組み①:登山道保全

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center

・登山道保全作業の実施(2023年からの継続作業)
 → 2023年度に引き続き、登山道上にある横断溝の清掃未実施箇所の清掃作業
 → 専門家同行での2024年作業内容の検討および技術指導
 → 横断溝清掃以外の登山道整備作業の実施とレポーティング
 
・専門家(中里浩さん)招聘による勉強会の実施
 → 一般登山者向けの勉強会の開催

具体的な取り組み②:携帯トイレブースの設置

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center

・「くろがね小屋」近辺における携帯トイレブースの設置
  →現在、原寸のプロトタイプまで完成した新型の携帯トイレブース(上写真)の部材を現地まで運搬し施工

・ブースに設置するサイン類(多言語)のデザインおよび制作
 →組み立てた新型ブースの外壁や内部に設置するための多言語サインの制作
 
・セルフオペレーションで間違いなく使用することができる携帯トイレキットの制作
 →2023年度に販売した携帯トイレキットのユーザビリティ向上と多言語化など

プロジェクトの主体となる団体について

東北の名峰「安達太良山」の自然を守り、未来へ伝える|Adatara Azuma Nature Center

Adatara Azuma Nature Center(安達太良・吾妻 自然センター)


Adatara Azuma Nature Center(安達太良・吾妻 自然センター)は、2023年7月、磐梯朝日国立公園の磐梯吾妻・猪苗代地域に関する情報提供やガイドツアー、登山道の環境保全を行うため、安達太良山麓にある温泉地「岳温泉」内に開設した民間運営の案内施設です。

磐梯朝日国立公園内に広がる3つの活火山と温泉地を繋ぐロングトレイル「磐梯・吾妻・安達太良ボルケーノトレイル®︎」のトレイルセンターとしての役割も担っており、この地域でのロングディスタンスハイキング、トレイルランニング、バイクパッキング、キャンプなど、マウンテンアクティビティに関する各種サポートを行っています。

また、Adatara Azuma Nature Centerでは2024年度より「保全と活用を50対50に」を掲げ、アドベンチャートラベルなどの国立公園の利用日数と、登山道整備を含む環境保全や次世代のレンジャー育成など保全に関連する日数を1年を通じて均等にしていきます。

[安達太良]岳温泉:福島県二本松市岳温泉1-104
[吾妻]浄土平サテライト(浄土平レストハウス内):福島県福島市土湯温泉町字鷲倉山地内

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 一般社団法人 岳温泉観光協会


岳温泉観光協会は、安達太良高原「岳温泉」エリアの地域活性化や環境保全等の活動を取りまとめる組織として地域の協会員と事務局によって運営しています。

「くろがね小屋」の裏手に源泉があり8kmに及ぶ湯樋パイプで温泉を引湯している岳温泉は、山麓の温泉街とともに安達太良山の環境保全に積極的に関わっていかなければなりません。

登山道や安達太良山の環境保全に正面から向き合い、行政機関や関係団体との接点となって課題に向き合うことで、観光としてこの地域を訪れてくれるお客様に対してのサービスの維持向上を行なっていかなければなりません。

そのため、磐梯朝日国立公園内にあるこの温泉地のブランディングや、安達太良山の環境保全を担当する部門を2024年度より新設し、本プロジェクトにも参画し具体的なアクションを起こしていきます。

福島県二本松市岳温泉1-16
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 環境省 裏磐梯自然保護官事務所・環境省レンジャー


環境省レンジャー(自然保護官)は、地球温暖化対策や海洋プラスチックゴミ対策、東日本大震災からの環境再生・復興などの多岐にわたる環境省業務の中でも、国立公園や野生生物の保全管理を重点的に担当して、各地の現場に配属されている環境省職員です。

裏磐梯自然保護官事務所に所属する環境省レンジャーの管轄範囲は、磐梯朝日国立公園の中の福島県と山形県の2県にまたがり、広大な磐梯吾妻・猪苗代地域と飯豊地域(福島県側)におよび、今回のプロジェクトの対象になっている「安達太良山」に加え、「磐梯山」「西吾妻山」「飯豊山」と言った日本百名山にも数えられる山々を管轄しています。

主な仕事は、「国立公園の各種許認可に関する仕事」、「自然景観の保護のための調査や巡視」、「利用のための施設の整備と管理運営」、「美化清掃のための作業」、「自然とのふれあいの推進」などと多岐にわたり、関係する行政機関や地域活動団体、地域住民などと連携して、国立公園を舞台とした地域振興の取組を行っています。 

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最後に

ここまで、直近の課題と取り組みについて記載してきましたが、俯瞰してみるとこれは将来にわたって非常に長い時間を要するプロジェクトであり、今後何世代にも渡って引き継がれていく、ある意味終わりなきプロジェクトと言えるかもしれません。この取り組みに向き合う時間が長い分、道筋を常に軌道修正しながら、あるべき方向性に進むことが重要であると考えています。
 
人々の生き方や観光のあり方、そして気象の変化など含め、時代の変わり目だからこそ、既成概念を取り払って本質的な議論をして行動に移していくタイミングが「今」であると信じ、本プロジェクトに従事していかねばなりません。
 
「携帯トイレ」に関しても、「くろがね小屋」がリニューアルオープンしたからと言って終わりになるものではなく、人間の生理現象である以上、今後も安達太良山に入る人がいる限り永遠と続くことでもあります。

現在、「くろがね小屋」の営業が行われていないため、安達太良連峰の稜線上にある「鉄山避難小屋」に宿泊する人の割合が増えたこともあってか、その周辺にはこれまでには無かった数の排泄物跡が見られるようになりました。引き続き観察を続け、次のステップも意識しながら本プロジェクトを推進していきたいと思います。
 
また、このプロジェクトでの取り組みや実績は、同じ磐梯朝日国立公園内の別のエリアにも活かせる内容が多く含まれると考えています。Adatara Azuma Nature Center(安達太良・吾妻 自然センター)では、まずは安達太良山を中心にこのような取り組みを始め、直近では自然センターの活動拠点がある東吾妻エリアについても課題の抽出やヒヤリング、調査などを行なっていきたいと考えています。
 
プロジェクトへのご支援、ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

支援金の使い道


▼登山道整備に係る支援金の使途
・整備資材の購入(ヤシ製土嚢、透水管、ロープなど)
・安全管理機材(放射線量計モニター)の購入
・有識者への謝金

▼携帯トイレブースの運用に係る支援金の使途
・現地(くろがね小屋近辺の国有林借地)でのブース施工経費
・情報発信やサイン掲示などにかかる経費
・携帯トイレキットのパッケージ設計

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