天空の草原「北アルプス・雲ノ平」の美しい自然を守る|一般社団法人雲ノ平トレイルクラブ
雲ノ平トレイルクラブの目指すもの
雲ノ平は北アルプスの最奥部、黒部源流域の標高2,600M付近に広がる溶岩台地です。
水晶岳、薬師岳、黒部五郎岳などの名だたる山々に囲まれながら、草原に点在する池塘(ちとう)やハイマツ、火山岩はまるで日本庭園のような独特な空間美を織りなし、雲ノ平の景色を彩っています。
どの登山口から歩いても1泊2日以上かかり、北アルプスの中でも最後まで未開拓地として残されたことから、かつては「最後の秘境」と呼ばれていました。
本プロジェクトは、雲ノ平の登山道整備や植生復元の活動を通して、国立公園の持続可能な環境保全活動のロールモデルを築くことを目的としています。
これまで日本の国立公園は観光利用に偏って発展してきたため、自然環境を適切に保全するための公的な仕組みが十分に整備されませんでした。そのため、登山道の日常的な維持管理は、現場の山小屋や山岳会などの自助努力に頼らざるを得ず、近年の気候変動による荒廃の加速や社会環境の変化、コロナ禍などにより、民間レベルでの保全体制には限界がきています。
また、行政機関のエキスパートも不足していることから、公共事業として行われる登山道整備工事も、的確な判断ができず、かえって生態系や景観を壊してしまうケースも決して珍しくありません。
自助が機能せず、公助が育つのにも時間がかかる状況下で、今できることは「共助」を育むことです。
長年培ってきた雲ノ平山荘での取り組みを強化し、アウトドア関連企業、環境コンサルや学術機関、多様な技能を持つボランティアスタッフなどが連携して、自立的な環境保全体制の仕組みづくりを行うことを目的として、本プロジェクトの実行主体となる雲ノ平トレイルクラブ(以下KTC)は設立されました。
雲ノ平トレイルクラブ ホ-ムページ
この取り組みは、ただ「善意を示すこと」「より善い活動をすること」にとどまらず、各種専門家や行政も巻き込むことで、景観や生態系に調和した整備技術の確立、情報共有のためのデータベースの作成、持続可能な組織づくりの提案、新しい財源の創出など、今後の環境保全システムのロールモデルとなる取り組みにすることを目指しています。
こうした取り組みを広く発信することで、時代の変化に左右されずに、豊かな自然環境を後世に残すことができる、国立公園の持続可能な運営体制の基礎を築いていきたいと思います。
これまでの活動と今後の展望
これまで、KTCでは2021年から3年に渡って「雲ノ平登山道整備ボランティア・プログラム」を開催してきました。
このプログラムでは、継続的にKTCの活動に参加する意思のある人材を募集し、現地での自然観察、登山道整備や植生復元の実践、技術講習、社会的な課題やその背景となる歴史の座学などを通して、これからのKTCの活動を支える人材育成をしながら、雲ノ平の環境保全活動を実践しています。
これまでの3年間で、近自然工法による祖父岳の登山道整備、アルプス庭園の池塘および周辺の木道の修復、日本庭園付近の荒廃した登山道の整備および植生復元などを行いました。
また、昨年はKTCに活動をバックアップし、公的な権限を付与する法的な根拠として、KTC、地元自治体、環境省、林野庁などが連携して「自然体験活動促進協議会」が設立されました。
来年度以降は、雲ノ平エリアにおいて同様の活動を展開すると共に、より開かれた形で、多くの方に活動を体験でき、参加できる仕組みを考えていこうと思います。
KTC代表メッセージ
雲ノ平トレイルクラブの代表理事を務める伊藤二朗です。
20年間雲ノ平山荘を運営する中で、国立公園の問題については日々危機感を募らせてきました。
近年になり、様々な状況が一層逼迫する傾向も否めませんが、だからこそ、こうした現実に向き合おうとする連帯の輪も生まれつつあります。YAMAPユーザーをはじめ、世界中の「自然」を求める人たちがつながることで、新しい可能性や美しい景色を作っていけるのではないでしょうか。私たちも微力ではありますが、引き続き全力を尽くしていきたいと思います。
今、自然環境と向き合うことの意義
世界的に気候危機や資源問題が叫ばれ、過度な情報化や都市化の歪みが顕在化する今、「自然」との向き合い方を問い直すことの重要性は日増しに大きくなっているように感じます。
SDGs、ネーチャーポジティブなどのスローガンが踊り、アウトドアブームが世界中で起きつつあるのも、まさにこうした時代背景の顕れということができます。
しかし、そんな中で日本の国立公園の管理体制が危機的な状況にあることを知っている方がどれほどいるでしょうか?
国立公園の問題は「一部の人たちの趣味の問題」と思われることも少なくありません。しかし、雲ノ平をはじめとした原生自然環境は、私たちに共有可能な世界の原風景を思い出させてくれる、大切な学びの場であり、機会でもあります。
私たち自身が、実際にどういう世界を残し、守っていくべきなのかという確信を得るためこそ、現実の土地や景観、生態系の営みに触れることが不可欠なのです。
雲ノ平トレイルクラブの活動を通し、こうした想いや新たな可能性を、みなさんと共有していきたいと考えています。ご支援、よろしくお願いいたします。
支援金の使い道
雲ノ平のような遠隔地で組織的な活動を行うためには多額の資金が必要となります。現状では、公的な財政支援体制はあまり存在しないため、KTCでは各種助成金やメンバーシップによる会費、個人や企業による寄付などを運営資金に充てています。この度の支援金は以下のような用途に充てられます。
・雲ノ平における活動経費(山小屋滞在経費など、15名× 5泊)
・活動に必要な工具類の調達(チェーンソー、ツルハシ、ポータブル電源など)
・消耗品類の調達(植生復元資材、手袋など)
・活動の記録、情報発信(Webサイト、アニュアルレポートなどの制作)
この活動への支援は、「finetrack × YAMAP別注 ドライレイヤーベーシックT」の購入による支援のほか、「YAMAP FUNDING」経由で、DOMOやクレジットカードによる現金支援でも応援いただけます。
DOMOやクレジットカードによる現金支援は下記よりお申し込みください。