グラミチのヒストリーとコラボアイテムの真価をクライミングインプレッションで徹底解説!
アウトドアファッションに興味のある人なら、「グラミチ」というブランドの存在を、いろいろな場面で目や耳にしたことがあるでしょう。アウトドアはもちろん、ストリートファッションとしての人気も高く、幅広いシーンで愛される人気のブランドです。
そんなグラミチと、YAMAPがコラボして作ったのが、「YAMAP別注トレイル」シリーズ。発売当初から注目を集め、YAMAP STOREの新たな人気商品の地位を早くも確立しつつあります。グラミチが持つ、クライミングパンツとしてのDNAを引き継ぎつつ、登山やハイキングに向けて機能をブラッシュアップした「YAMAP別注トレイルパンツ・ショーツ」は動きやすくて着心地がよく、街から山まで幅広く使える、トレンド感のあるスタイルを目指した自信作です。
今回はクライミングをこよなく愛する3名のクライマーにご協力いただき、実際にパンツを着用してのアクティビティの感想や、グラミチとの出会いや印象について、お話を伺いました。
いざ検証!YAMAP別注トレイルショーツ&パンツでボルダリング
「グラミチ」の誕生は1982年。アメリカのロッククライマー「マイク・グラハム」が、クライミングの聖地、ヨセミテで立ち上げたブランドです。小さなガレージを借りて、自分たちがクライミングに使うための、理想のパンツを作ったのが始まりでした。
コラボモデルの魅力をより深く知るために、実際に使ったリアルな感想を、その場で語ってもらう機会を設けました。ブランドのヒストリーに敬意を払い、クライミングパンツとしての真価に迫るべく、選んだ会場はボルダリングジム。
テスターとして、こちらの3名に集まっていただきました。
まんさく:渡邊万作(わたなべまんさく)さんは、国内開催のクライミングの大会にて、LIVE中継を含む映像制作、大会運営にも関わっているクライマー。クライミングチョークブランド「東京粉末」のスタッフでもあり、「工場長」の名でも知られています。
●写真左 身長:178㎝ 試したモデル:YAMAP別注トレイルショーツ(Lサイズ)
すず:紅一点は、YAMAPでもおなじみのフォトグラファーで翻訳家の鈴木千花(すずきちか)さん。普段は登山やアルパインクライミングが中心で、ボルダリングはトレーニングのためのジムが中心とのこと。
●写真中央 身長:168㎝ 試したモデル:YAMAP別注トレイルパンツ(Mサイズ)
ねろめ:そして最後は、根路銘幸昌(ねろめゆきまさ)さん。今回のインプレッション会場となった、山梨県にあるボルダリングジム「グラッパ」のオーナーで、岩場のクライミングや競技でも多くの実績を持つ、実力派クライマーです。
●写真右 身長:170㎝ 試したモデル:YAMAP別注トレイルパンツ(Mサイズ)
広々とした空間にそびえる、色とりどりのホールドがつけられた大きな壁。ここに、初心者から上級者までに向けた、さまざまな難易度の課題が設定されています。久しぶりにここに来たというまんさくさん、初めて訪れたというすずさんが、待ちきれないといった様子で、さっそく課題にトライ。
気が付けば1時間近く、ほとんど休憩もなく登り続け、そろそろ腕が言うことを聞かなくなってきたところで、ようやく3人のトークが始まりました。いくつかのテーマにそって、お話を伺いました。
現役クライマーが抱く「グラミチ」への想いとは?
_皆さんの「グラミチ」の印象を教えてください。
すず:この赤い「ランニングマン」のロゴはよく見かけるからブランドとして知ってはいたんだけど、正直にいうと、グラミチのパンツを履いたのは今回が初めて。生地が分厚くて動きにくそうっていうイメージがあったので、どちらかというとオシャレ用で、アウトドアには向かないって思っていましたが、今回で大きく印象がかわりました。
ねろめ:クライミングを始めたころ、グラミチは一番手に入りやすいクライミングパンツだったから、たぶん初めて買ったのがグラミチだったような気がします。ただ、1本持ってはいたんですが、使わなくなっちゃったんですよね。当時のグラミチのパンツは生地がしっかりしすぎていて、僕のクライミングスタイルには合わなかったのかな。なのでグラミチのパンツに足を通すのは、実は10年ぶりでした。
まんさく:僕のグラミチの最初の印象は、裏原のストリートファッションですね。グラミチが日本に入って来たのがたぶん90年代の始めなんだけど、そのころは裏原ファッションの全盛期。原宿にもファッションでグラミチを取り入れている人が多くいて、その印象が強かったです。クライミングを始めてから、クライミングのことをいろいろ知りたくて歴史を調べるうちに、グラミチ創始者の「マイク・グラハム」のことを知って…。そこからグラミチがどんどん好きになっていきました。
ねろめ:あの時代のヨセミテは、今もクライマーにとって憧れだからね。当時、「ストーン・マスターズ」っていうクライマー集団がいて、グラミチ創始者のマイク・グラハムもそのメンバーの一人。ほかにも伝説のクライマーが名を連ねていたんだよね。僕はジョン・バーカー推しなんだけど。
まんさく:僕はロン・コーク派ですよ。
すず:え、なんかすごく詳しい! かなり昔の話だけど、グラミチはマイク・グラハムが作ったとか、ストーン・マスターズに誰がいたとか、クライマーはみんな知ってるの?
ねろめ:今の若い子は知らないと思うけど、ある程度前の世代のクライマーって、結構マニアックというか、クライミングオタクみたいな人が多くて、クライミング文化に惹かれていろいろ調べたくなっちゃうんだよね。最近はライト層というか、遊びのひとつとしてクライミングをやってる人が多いから、「グラミチっていうのはマイク・グラハムのあだ名でね」みたいな話をしても、「ふーん」っていう反応。まあクライマーといっても、世代や熱量によってかなり違うと思いますよ。
まんさく:ねろめさんとグラミチは、ほぼ同い年ですもんね。
僕は、クライミングが好きになってから、この時代のクライミングのことを知ったので、とにかくいろんなことが知りたくて調べまくりました。僕が頭につけてるバンダナもヨセミテのヒッピー文化の影響(笑)。当時の写真集とかを見てると、みんなものすごくカッコいいんだよね。
ねろめ:当時の彼らは、「Don’t trust over 30(30歳以上の人間は信じるな)」っていう、70年代のヒッピー文化そのもののようなスタンスで、逃げ込むようにヨセミテを訪れ、自由にクライミングに没頭していたみたい。ある意味、いい時代だよね。
まんさく:自分たちが登るのに、動きやすいパンツが欲しいと思って作り出したのが、ブランドのスタートだから。それまでは、海で使うマリンパンツを履いてクライミングをしてたんだけど、動きにくいから、どうしたらいいか考えて、ガゼットクロッチを発明したんですよ。
すず:それを聞いて本当に驚いたんですよ。ガゼットクロッチって、どこのブランドのパンツにも使われてるから、グラミチが発祥だって知らなかった。でもこの仕様って、クライマーにとってすごく重要で、本質的な仕組み。今じゃアウトドア用パンツの常識みたいになってますよね。
ウエストベルトが片手で調節できるのも、グラミチが考えたんでしょう?
まんさく:ウェビングベルトはね、イヴォンがマイクに作業場として倉庫を提供してたんだけど、そこにバックパック用の金具がたくさん転がっていて、それをウエストベルトに利用したのが始まりなんです。
ねろめ:イヴォンっていうのは、パタゴニア創業者の、イヴォン・シュイナードのことね。その見た目で、友達の話みたいにうんちく語られると、まるで70年代からタイムスリップして来た人みたいだな。
グラミチ創設期から変わらぬ仕様を受け継いだYAMAPとのコラボパンツ、その履き心地や感想は?
_万作さんが詳しすぎるので、私たちからお話しすることがなくなってしまいました(笑)。実際にグラミチの「YAMAP別注トレイルパンツ・ショーツ」をボルダリングで使ってみた感想はどうですか?
すず:今回履いてみてすごくいいと思ったのが、生地が薄くて動きやすいこと。勝手にイメージしてたのとぜんぜん違って、履いててすごく楽なんですよね。ウエストにタックがたっぷりとってあって、腰回りがゆったりしてるから、動きやすいし安心感もあるのが、すごくいいと思いました。
ねろめ:僕も昔履いた時に、厚ぼったいし、汗をかくとはりつく感じがあって足上げもしにくいから、難しい課題にトライするときには使えないっていうイメージだったけど、印象が大きく変わりました。ウエスト回りは結構生地がたっぷり使ってあるんだけど、素材が薄いからもたつかないし、ガゼットクロッチがあるから、動きが制限されない。
まんさく:快適すぎて、何も履いてないみたいでした。
ねろめ:すごいな。なかなかそんなうまいこと言えないよ。
まんさく:本当に履いてるの忘れるくらい楽だから。ショートパンツだからっていうのもあるけど、裾にスリットが入ってて、足上げしたときに引っかからないから、足さばきもいいし、丈が長すぎず短すぎずで、クライミングにちょうどいい長さなのも、さすがっていう感じ。
それに、この素材がすごいんですよ。「ミノテック®︎」っていうんだけど、軽くてストレッチ性がいいだけじゃなくて、撥水性がすごく高くて。それも、普通の撥水加工とは違って、表面に水がとどまらずに落ちていくっていうすごい機能があるんです。
すず:あれ、関係者の方? 通販番組みたいに売ろうとしてる?
ねろめ:すごい詳しい。必死で調べてきただろ。
まんさく:確かにちょっと調べはしたんだけど(笑)。僕はもともとアパレルをやっていて、デザイン事務所に勤めてたこともあるんで、普段から素材に興味があって、ミノテックのことは本当に知ってたんですよ。
グラミチが大好きな僕からすると、グラミチパンツの昔のままのスタイルで、素材が今の時代の機能素材だっていうのが、すごくうれしいんですよね。YAMAPさんがこのモデルを作ることで、グラミチがファッションやクライミングだけじゃなく、登山やハイキングをする人にも好きになってもらえたらうれしいと思いました。
すず:確かに。タウンユースのイメージが、一気に登山に使えるアウトドアウェアっていうイメージに代わった。素材って本当に大事ですよね。シンプルで、ちょっとこなれた感じのあるデザインも、すごくいいと思います。
まんさく:僕はショートパンツを選んだんだけど、撥水性がいいから濡れても乾きやすいから、海でも使えると思う。あとこのスマホポケット、めちゃくちゃいいね!この位置ならクライミングシーンの足上げでもパンツが突っ張る心配がないし、日常生活でも便利。これは嬉しいポイントですね。
ねろめ:僕は、年齢的に足を出すのに抵抗を感じるから、ロングを選びました。これなら普段にも履けるし、子どものお迎えに行っても浮かない。自転車にもよさそう。さっきも言ったけど、昔は分厚くて動きにくいイメージだったけど、薄手でとても楽に履けるのがよかった。ポリエステル100%素材って、汗をかくとまとわりついて突っ張るイメージがあったけど、ストレッチが効いてるせいか、今日はそんな感じはなかったですね。長い距離を歩いてアプローチするクライミングでも試してみたい。クライミングで、戦力になるパンツとして使えるイメージです。
あと、ジムで課題をセットする作業にもよかったです。作業中は壁にぶら下がったり脚立にたったり、とにかくいろんな動きをするし、工具を扱うから耐久性がないと割けたり破れたりする心配があるけれど、薄いのに耐久性も高いということなので安心ですね。
すず:山で使うことを考えると、やっぱりロングがいいんですよね。肌が露出していると、虫さされやケガも心配だから。
まんさく:実は、ロングも気になっていて、裾をロールアップして履くのもいいなって思ってた。
すず:ああ、それオシャレ!サイズ選びでイメージが変わるから、あえて大きめを選んでサルエルっぽく履くのもいいかも。1本でいろいろ使えそうだし、クライミングも、登山やハイキングにも、もちろん街でも履きたい!
クライマー同士の共通の話題で盛り上がる、根路銘さんと万作さん。プライベートでも仲のいい、すずさんと万作さん。登りも会話も止まらないほど盛り上がった3人の時間は、あっという間に過ぎていきました。
お互いにツッコミを入れながらの楽しい会話から感じられたのは、シンプルなパンツのなかに、クライミングの歴史やブランドのヒストリーが生きていて、それが現代に新しい形で引き継がれていること。そして、みなさんのクライミングへの愛情の強さも、あふれ出ていました。
動きの大きさでは、他のアクティビティを圧倒するクライミングのための工夫が、登山やハイキング、日常生活にも、快適な着心地を与えてくれること。古きアメリカのクライミングシーンをイメージさせる、リラックスした雰囲気。グラミチとコラボしたYAMAP別注パンツの奥に潜む魅力が伝わる1日になりました。