グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

四季を問わず、登山の必携品である「グローブ」。アウトドアシーンでは、寒さだけでなく、木や岩などから手を保護する役割も果たします。

装着時間も長くなるため、デザインや素材選びも重要。バックパックから必要なものを取り出したりスマホやカメラを操作したりする際に、いちいちグローブを外していては、紛失のリスクも高まるうえタイムロスにもつながりかねません。

街用とは少し異なる視点で選びたい、山用のグローブ。そこでYAMAP STOREが提案するのは、日本のグローブブランド「handson grip(ハンズオングリップ)」です。約70年に渡り培ってきた技術と最新の素材を活かしたグローブで、アウトドアフィールドでの信頼を集めています。

今回は、そんなハンズオングリップの創業から現在までのストーリーや、プロダクトに込める想いを探るべく、香川県東かがわ市へ。代表である内海さんに、お話を伺いました。

創業68年の老舗工場が立ち上げたオリジナルブランド

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

ー ブランド発足以来「日本製」にこだわってグローブを開発・製造されているハンズオングリップですが、その理由を教えてください。

ハンズオングリップは2014年にスタートしたグローブブランドですが、僕たちはもっと以前からグローブ製造に携わってきました。日本の手袋産地である香川県東かがわ市に工場をかまえている、いわゆるファクトリーブランドなんですね。

創業は1955年、もうすぐ70年目を迎えます。これまでは他ブランドや会社からの依頼を受けて手袋を製造する業態を中心にしていて、ゴルフや野球のグローブなどをたくさん作ってきました。

しかし、時代の変遷とともにコストや納期の要求も厳しくなるばかりで、製造先も工賃の安い海外に流れてしまって。一大産地だった東かがわでも、企画から製造まで一貫して行う体制を持っている工場は、もうほとんどありません。

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

他社からの依頼だと、新しい素材やおもしろい技術を提案しても実現できないことが多く、このままでは日本の優れた縫製技術や歴史ある産地が失われてしまう。

ならば、自分たちでブランドを作り、自分たちがその技術や素材を使った製品を発信していこうと考えたんです。そうして生まれたのがハンズオングリップであり、僕たちがJAPAN MADEに拘っている理由でもあります。

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

ー 創業期から積み上げられてきたノウハウが、今のハンズオングリップをつくりあげているんですね。

スポーツやアウトドア向けのグローブを多く製造していた実績は、 製品の品質を支える土台になっています。

特に専門の用途があるグローブは、手の動きを妨げないように成形パターンや縫製仕様に配慮して製造する必要があるため、グローブづくりのなかでも難易度が高いものなんです。

これらを長くやってきたことで、理想的なパターンメイキングが可能になり、むずかしい縫製にも対応できます。ハンズオングリップのグローブの特徴的なデザインは、裏地の肌触りを軽減したり、関節の動きを妨げないようにするための工夫になっています。

用途を限定しない「移動」のコンセプト

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ー アウトドア関連ショップの取扱が多い印象ですが、コンセプトは『アウトドア』なのでしょうか?

スタッフたちが外遊びが好きだということもあって、アウトドア向けの製品が多いというのも事実ですが、ハンズオングリップの根幹のコンセプトは『移動』です。外の世界に踏み出す『移動』のための道具として企画をしています。

ー あえて『旅』や『アウトドア』と定義しないことには意図があるのでしょうか。

そうですね。使い方を限定してほしくないという思いがあるので、『移動』という言葉を選んでいます。国内外を問わず、各地の展示会やイベントに出店した経験がありますが、日本ではどこのイベントに出店しても必ず、「これは何用ですか?」と聞かれるんです。

僕たちは、使い手に寄り添い、どんなシーンにも対応できるグローブこそが良いグローブだと考えています。だからこそ、用途を限定したり、カテゴライズしたりせず、「出かけるときの道具」として、毎日の暮らしに寄り添えるプロダクトを作りたいんです。

現代は、徒歩、自転車、公共交通機関、バイク、自動車など、多様な移動手段があり、人によって偏りはあれど、何かしらの手段を使って移動します。その『移動』シーンに寄り添って製品を作ることで、アウトドアの枠を越え、日常の相棒になれると考えています。

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

ー 『移動』というコンセプトでつくられた最初の製品はどのようなものだったのでしょうか。

最初に作ったプロダクトは、「ワンダーバウト」というレザーグローブでした。当時はまだ珍しかったウォッシャブル(洗える)の牛革を使用し、裏地にはウールのライナーをつけた冬向けのグローブです。

スーツケースなどの重たいカバンを持つことも想定して手のひらに滑り止めをつけたり、移動中の寒さを考慮して中綿をいれたり、機能をふんだんに盛り込んだ製品でしたね。

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

既に廃盤になってしまった製品ですが、YAMAP STOREでも取り扱いのある「ウィンター トラバースグローブ」のデザインには、「ワンダーバウト」の仕様が盛り込まれています。

handson gripのキープロダクト「Hobo」シリーズ

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ー 2024年に10周年を迎えるハンズオングリップですが、ブランドの成長を支えたキープロダクトはありますか?

ハンズオングリップのロングセラー製品と呼ぶにふさわしいのは、「Hobo(ホーボー)」シリーズですね。アウトドア関連のお店だけでなく、カジュアルウェアのお店でも好評をいただいています。メリノウール生地の柔らかな風合いと立体成形のパターンが組み合わさることによって生まれる、抜群のフィット感が特徴です。

YAMAP STOREにも置いていただいている「ホーボーHF」は指をハーフカットにする事により、 一日中グローブを着用したままでも快適に過ごせます。指が解放されていることで、細かい作業を必要とするスマホの操作やデスクワーク、 またランニングや登山中などのアクティブな状況でも着用していられるため汎用性が高いんですね。血管の通る手首や甲をカバーしてくれるため、つけていない状態と比べれば格段に暖かいです。

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ー 使い手に寄り添い、どんなシーンにも対応できるグローブ。まさにハンズオングリップの考える『良いグローブ』の象徴のようなプロダクトですね。

お客さんの要望に合わせて製造をするときも、汎用性の高いグローブは受注数が多かったですね。あとは、着脱のしやすさなど、細かい配慮が施されているかどうかも『良いグローブかどうか』の決め手になると思います。

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

グローブは小さなプロダクトなので、縫製は複雑であっても見た目は比較的シンプル。しかし、着脱時の配慮として指をかけるループを施したり、左右のグローブをひとつにまとめるカラビナループをつけたり、使い手のことを考えたギミックはたくさん考えられます。「ホーボーHF」にも、これらの仕様が盛り込まれています。

ー 発売当初から、デザインなどは変わっていないのでしょうか?

ホーボーシリーズは発売から何度かアップデートしていて、素材を変更した新しいモデルも制作しています。「ホーボーグリッド」は、素材をメリノウールから「POLARTEC®POWER GRID®」に変更したモデル。軽量で速乾性に優れる素材を使用することで、手入れもしやすく、アクティブなシーンでもより使いやすくなっています。

通常の「ホーボー」も然り、最近のグローブは人差し指にスマホ対応の素材が使われているものが多いですが、「ホーボーグリッド」ではあえて人差指と親指部分に切り込みを入れて、指が出せる仕様にしてみました。こうすることで、指が全て覆われるグローブをつけていても、スマートホンの操作はもちろん、靴紐を結ぶなどの細かい作業もしやすくなっています。

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

今後は定番の「ホーボー」もこの仕様に切り替えていく予定です。変化を恐れず、使い手の声を聞きながら積極的にアップデートを行っていきたいですね。

作り手と使い手の双方がいて成り立つ「実践」の哲学

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ー ハンズオングリップというブランド名に込められた意味についても教えていただけますか。

ブランド名は、「hands-on(ハンズ-オン)」という英語から考えられたものです。日本語にすると、「実践的」という意味になります。作り手目線で言えば、自分たち自身が想定するフィールドや用途で実際に使ってみることや、実際に国内で丁寧に製造をしていくことへの意思証明です。

また、使い手にとっても、製品は、実践の場で多く用いてもらうことによって「ツール」として生まれ変わるものである、という意味が込められています。

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

使いながら作ること、作られたものが使われること。「作り手」と「使い手」という、ふたつの手が、繋がり、続いていくような姿を描きながら、ハンズオングリップという名前をつけました。ブランドロゴも、実はふたつの手指が重なりあう様子をモチーフに作っていただいたものなんです。

ー 最後に、今後のブランドの展望などがあればぜひお聞かせください。

グローブという製品に特化したブランドって実は案外少なくて、絶対的なシェアを持つブランドが存在していないんです。だからこそ、「グローブといえばハンズオングリップだよね!」と言ってもらえるような存在を目指していきたいなと考えています。

ー 製品ラインナップにも変化はありそうですか?

そうですね。3年前、コロナ禍真っ只中の時期に、東かがわの工場倉庫を改築して直営店舗をオープンしました。そこに直接足を運んでくれるお客さんからの声や要望だけでも、すでにいろいろなアイデアが生まれています。でも、ハンズオングリップの根幹の想いは変わらないので、大きく様変わりすることはないと思います。

今、日本でグローブが製造できる工場は、指折り数える程度しかなくなってしまいました。だからこそ始めたブランドでもあり、今後も、日本で培われた技術を活かしたものづくりは積極的に行っていきたいと考えています。

グローブ製造メーカーとしてのこれまで、ブランドとしてのこれまで、というふたつの経緯を大切にしつつも、変化を恐れず、新しいことにも積極的にトライしていきたいと思います。

ー 本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

ハンズオングリップの取り扱い製品はこちら

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UNWASTEDは香川県東かがわ市に拠点を置く、グローブ、アクセサリ類のFactory「サングローブ」が手掛けるセレクトストア。60 年以上の間、数々のスポーツ、アウトドアブランド、アパレルブランドのアクセサリーアイテムを世に送り出してきた背景を元に、蓄積してきた技術、生産背景、素材のノウハウを駆使したFactory brand「handson grip」のFlagship storeです。

住所:〒769-2601 香川県東かがわ市三本松1256-7
営業時間:AM11:00〜PM17:00(不定休)

内海 祐作(うつみ ゆうさく)

内海 祐作(うつみ ゆうさく)

1987年香川県出身。2010年にサングローブに入社。祖父が立ち上げた会社で、現在は兄の紘作と兄弟で会社の運営を担っている。グローブという特殊な製品を製造する難しさと奥深さに魅せられ、その魅力をもっと発信していくため現在は兄弟共に営業として活動。2020年にUNWASTEDというセレクトショップ兼ハンズオングリップの直営店を香川に展開。

    紹介したブランド

    • handson grip

      handson grip

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