憂鬱な日をほがらかに変える吸水ショーツ|アクティブな女性を支える繊維のプロのこだわり
吸水サニタリーショーツを中心に、女性に向けた製品作りに取り組むフェムテック・フェムケアブランド「Hogara(ホガラ)」。母体が繊維を扱う会社ということもあり、他にはないオリジナリティあふれる商品を日々開発しています。
今回はYAMAPとのコラボレーションにより誕生した「YAMAP別注 吸水ショーツ レギュラー」のリリースを記念して、ブランド立ち上げから吸水ショーツの普及に力を尽くしてきた大川侑穂(おおかわ ゆきほ)さんにコラボに至るまでの経緯と、ホガラの吸水ショーツに対する想いを伺いました。
(文:阿部静 写真:小池美咲)
ブランド立ち上げのきっかけは女性社員の悩み
― 繊維を中心に扱う商社「豊島」を母体としたホガラですが、どういうブランドなのでしょうか。またブランドを立ち上げるまでの経緯を教えて下さい。
ホガラは繊維を扱う「豊島」に勤める女性社員で立ち上げたフェムテック・フェムケアのブランドです。最初のきっかけは、ブランドの立ち上げメンバーのひとりである女性社員と残業中に何気なく「吸水ショーツを作りたいね」と話したことがきっかけでした。
海外で吸水ショーツが話題になりはじめた頃、日本ではまだ1〜2メーカーしかなかった時代ですが、徐々に社会の流れに伴って活躍する女性が増えてきたなかで、自分たち主体で何か作れないかと。その後、有志が集ってブランド「ホガラ」を立ち上げたのが2020年のことです。
まだ「フェムテック」という言葉自体が馴染みのない時代でした。サニタリーアイテムは、買うときに隠すように紙袋や銀色のビニール袋に入れられるような後ろ向きなイメージが強く、ファッションと同じような感覚でサニタリーショーツがあってもいいのにと感じていました。
有志で集まって、現状の不満や課題を上げていったとき、サニタリーアイテムに関するネガティブな印象はすべて「仕方のないこと」として諦めてきたことに気づいたんです。もしかして言葉にしていないだけで私たち以外にも悩んでいる人はたくさんいるんじゃないかなと。これらの想いが私たちを突き動かして、手探りのなか走り出しました。
今ではメンバーが一丸となり、企画段階から素材の開発・製作所選定・デザイン・パッケージまで一貫してコーディネートしています。
繊維のプロだからできる環境と人に配慮した取り組み
― 大事にしている点やこだわっているポイントなど、ホガラが展開する吸水ショーツと他社製品との違いはありますか?
一番は素材へのこだわりです。弊社は繊維のビジネスを始めて200年近くの歴史がありますので、他社にはない厳選された生地を扱うことができます。
これまでのホガラのショーツは、生産者の顏が見えるオーガニックコットンを使っていることであったり、規格外等の理由で捨てられてしまう食材から染料を抽出して染める「フードテキスタイル」を用いた製品を採用したり。また、洗濯を100回しても抗菌・消臭の性能を損なうことなく、環境にも身体にも優しい「リピュール」と呼ばれる加工も取り入れています。繊維のプロとして、人と自然に配慮したさまざまな素材や加工を込めることができる点は私たちの強みです。
こだわりは素材以外にも。商品に同封する取扱説明書には広島の原爆ドームに届く折り鶴を再利用したり、売上の一部を世界の女の子が安心安全・平和に暮らせるように応援する「ガールズプロジェクト」という活動に寄付をするなど、積極的に社会的貢献にも取り組んでいます。
女性社員の強い想いによって立ち上がったブランドなので、素材だけではなくホガラを通して多くの女性に想いを馳せたり、平和について考えてもらうきっかけ作りなど、私たちがどういった形で発信していきたいかといった部分も大切にしています。
登山を楽しむ女性のための「YAMAP別注 吸水ショーツ レギュラー」誕生
― 今回アクティブな女性向けの吸水ショーツを作ったきっかけを教えてください。
今までに私たちのブランドで手がけた吸水ショーツは一貫してオーガニックコットンで作ってきましたが、ヨガやスポーツをすると汗を吸ってしまうので、アクティブなシーンで履ける製品がほしいという声をユーザーさんからよくいただいていました。
オーガニックコットンは良さもたくさんあるのですが、私もジムに行く時にはぐっしょり汗をかくので、汗対策したショーツを作れたらいいのになと。そんななかでのYAMAPさんとの出逢いでした。YAMAPさんは登山を楽しむ女性のための吸水ショーツを作りたいとのことでお声掛けいただき、また掲げている理念に共感するところもあって「絶対にいいものを作ろう!」という思いでスタートしました。
― ホガラの既存製品と、今回作ったYAMAP別注製品との特徴の違いはありますか?
従来のホガラ製品はコットン素材を使用していますが、汗を吸ってしまうと乾きにくいというデメリットがあります。コットンは合成繊維に比べて肌に優しい素材ではありますが、レジャーやスポーツなどアクティブに活動したいときは合成繊維が最適なんですよね。
そこで「YAMAP別注 吸水ショーツ レギュラー」の本体生地には、ポリエステルとポリウレタンを採用することで乾きやすく、高いストレッチ性とフィット感も持たせました。
また、最近スポーツ向けの商品が増えてきてはいますが、アクティブなシーンでは履き心地も大事なポイントだと思います。さまざまな足の動きに追随し、とくに足ぐり部分の動きにこだわって、吸水帯クロッチを本体生地から離した「ふらし」にしている点が「YAMAP別注 吸水ショーツ レギュラー」で新しく取り入れたところです。
商品開発の際に軸になった、ホガラの既存製品であるレギュラータイプはクロッチ部分が縫い付けられた仕様になっていますが、アクティブに活動する際に大きく足を動かしたりすると隙間ができてしまって漏れてしまうこともあります。そのためクロッチを縫い付けずにふらしにすることで足の動きに追随し、よりフィット感が得られて、かつ漏れにくい仕様にしました。
さらに、山登りで長時間履くことを想定し、吸水帯クロッチ部分を既存製品では4枚のところ、「YAMAP別注 吸水ショーツ レギュラー」では5枚を採用。漏れと履き心地はトレードオフになりがちですが、通常モデルよりもクロッチ部分を厚めにし、本体生地から離すことでしっかりとした吸水量と、不快感の原因である蒸れを逃がすことができます。
生地はポリエステルなので速乾性に優れ、通気性もよく、履き心地にもちゃんとこだわって作られているのでアクティブなシーンにぴったりだといえます。私たちのいままでの製品ではなかなか訴求できなかった部分を今回YAMAPさんと組ませていただいたことで実現することができました。
― 4枚構造と比べると5枚構造は吸水量や持ちが違ってくるのですか?
全然違います。私は今まで、多いときやジムで運動したりするときに、通常のサイズでは不安なのでクロッチ部分がお尻まであるフルサイズのものを使っていました。ですが最近は「YAMAP別注 吸水ショーツ レギュラー」一択です。しかもキックボクシングをやっているので思いきり足を上げたりするのですが、安心感があっていいですね。
また、私の場合、一日だけの着用ならほかのサニタリーアイテムを一切使用しません。吸水ショーツ単体です。運動時に使い捨てのサニタリーアイテムを使用すると、どうしてもズレてきてしまうんですよね。それを直すのも恥ずかしいし、悩みの種ではありました。吸水ショーツ単体にしたことで、それがなくなったのは自分にとってはかなり快適になり、本当に嬉かったです。
― YAMAP別注のショーツの吸水量が15〜20mlとありますが、吸水量の実験に関して独自の方法を取り入れているとお聞きしました。
「YAMAP別注 吸水ショーツ レギュラー」のほうがホガラの既存製品よりも吸水量は多いのですが、私たちが吸水ショーツ業界に参入したとき吸水量の試験のほとんどが独自試験だけで、基準にのっとったものはありませんでした。
まず、試験をするときにショーツのクロッチ部分をカットして、そこにスポイトで水分を垂らします。メーカーさんによってはそこに荷重をかけたりなど方法が変わってくるのですが、基本は平面試験でして、私たちも最初は他社さんがやっているように平面で試験をしていました。
しかし、販売していくなかで漏れる位置が試験とは少し違うなと思ったんですよね。よく考えてみると当然です。ショーツは立体で履くものなので一番漏れる箇所は足ぐりの隙間の部分であるはずなのです。ただ試験をしているとクロッチ部分の前後から漏れるので、実際に履いているときとは異なるわけです。
消費者にとっては吸水量が選ばれる指標のひとつになるわけですが、その試験のやり方が実着用時に基づいていないことに少し違和感を感じまして。そこで当社では立体の試験を開発し、特許を取得しました。なのでYAMAPさんとのコラボ商品は立体試験を行なったうえでのデータになります。
― 具体的にはどのように実験を行うのでしょうか?
マネキンを用いた方法なのですが、弊社の女性社員にアンケートを取ったうえで垂れてくる位置の平均値をとり、ボディの股部分に穴を開けてそこから滴加します。よりリアルにショーツを着用している状態をつくり、目視で漏れたかどうかを判断する試験を行ないました。その結果として15〜20mlだったということに基づいて吸水量を謳っています。
なので平面試験の場合だともっと吸水量が多く、40mlぐらいだったと思います。
― 登山をするようなアクティブな女性にとって吸水ショーツを使うメリットは?
登山を楽しむ女性にとっては、サニタリー期間が登山と被ることは仕方のないこと。山では使い捨てのサニタリーアイテムを取り替えづらい環境だけど、それも仕方のないこととして、我慢という感情すらなかったという方もけっこういるのではないかと思います。だけど、吸水ショーツによってちょっとでも何かが変わったらいいなと思いますし、サニタリーデイでも楽しくなる第一歩として、みなさんの選択肢のひとつになり得たらいいなと思っています。
ほがらかな明日を目指すブランドの未来
― 今後のブランドの展望を教えて下さい
ブランド名の由来である「ほがらか」は「光り輝いて広く晴れ渡る、そんな毎日をみなさんにすごしてほしい」という想いを込めて、「Hogara(ホガラ)」という名前を付けました。まだ正解は見えていないのですが、今回のYAMAPさんとの協業も含めてこのブランド名にふさわしいサービスを出すことで、本当にひとりでもほがらかになる可能性を模索し続けたいですね。
今回はアクティブな女性に向けていますが、もしかしたら、ゆくゆくは男性をターゲットにしてもいいなとも思います。どんなかたちであっても、「ほがらかな明日をつくる」ということが私たちの最終ゴールだと思っています。
ホガラは女性の悩み起点で吸水ショーツを出しているので、また次の言語化されていない悩みや課題、まだまだ周知されていないものなど、需要の掘り起こしから行なったり、価値観を変えるようなサービスを提供して、少しでもみなさんがほがらかになれるお手伝いができたらと思っております。
大川侑穂(おおかわ・ゆきほ)
2015年、豊島株式会社入社。入社当時女性総合職が一人もいない状況だったが、徐々に女性総合職が増えてきたタイミングで、「私たちが今本当にほしいものを作らないか?」という一声で、フェムケアブランド「Hogara(ホガラ)」を立ち上げ。働く女性一人ひとりのライフステージに寄り添うBtoB企業様向けの福利厚生サービス「Hoga Life Support」の提供、さらに女性のライフスタイルの変化・課題についてみんなで考えるコミュニティラボ「Hoga Labo」を運営しながら、ほがらかな明日を模索中。
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