アウトドアを遊び尽くすデザイナー・谷口亮太郎が手掛けるバッグブランド「holo」を紐解く

遊び心溢れるデザインとフィールドでの実用性を兼ね備え、コアなハイカーたちから高い支持を集めてきた「RawLow Mountain Works」。そのフロントマンである谷口亮太郎さんが、新たなバッグブランド「holo(ホロ)」を本格始動。ハイキングにバイク、釣りにスキーと、縦横無尽にアウトドアを遊び尽くす谷口さんに、自分自身の「好き」を最大限詰め込んだという「holo」のプロダクト、そしてモノづくりについて語っていただきました。

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アウトドアフリークだからこそアイデアが詰まった「holo」


— まず、「holo(ホロ)」というブランドの成り立ちや、はじめたきっかけについて教えてください。

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「holo」は、ハイキングはもちろん、さまざまなアウトドアアクティビティのためのバッグブランドです。僕自身、2015年に自転車と登山をテーマにした「RawLow Mountain Works(ロウロウ マウンテン ワークス)」というマウンテンギアブランドを仲間と立ち上げたのですが、より自分の外遊びやライフスタイルを反映したモノづくりをしたかったんです。

ブランド名の「holo」とは、トラックの「幌」が由来。幌は車を覆うための生地のことで、運送用のトラックや自衛隊の車両などにも使われているもの。実は、「holo」はキャンプギアのシリーズとして2019年から展開していて、そのときに作っていたトートバッグが幌の生地を使っていたんです。質実剛健な質感が、自分が作りたいアイテムのイメージにぴったりだなと思って名付けました。

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– 谷口さんと言えば、「RawLow Mountain Works」の顔的な存在、そしてバックパックデザイナーとして活躍されています。「holo」までのバックグラウンドをお伺いしたいです。

僕は美大卒で、もともとは女性向けのハイブランドのバッグのデザイナーをしていました。その当時からアウトドアが大好きで、最初はマウンテンバイクにどハマりしまして。レースに出るくらい本格的にやっていたんです。バッグデザイナーとしては20年ほど会社に勤めていましたが、その後独立して、好きだった自転車全般のプロモーションやカタログ、フレームデザインなどを行っていましたね。

登山をするようになったのは独立してしばらく経ってから。その頃ネパールを旅する機会があって、「さすがにヒマラヤ登山はできないけれど、トレッキングならできる」と思いアンナプルナの方に歩きに行ったんです。そこでの景色に魅せられて、一気に山の世界へ。外遊びもギアも好きだったので、海外のガレージブランドのバックパックやギアを個人輸入で取り寄せて使うくらいハマってしまって。

いろいろなギアを使ううちに、「これは自分たちで使いたいものを作った方がいい」と気づきました。もちろんデザインはできますし、生産や工場とのやりとりのノウハウもある。バッグのデザイナー時代の仲間も一緒に山に行っていたので、ブランドを作ってしまおうと2015年に「RawLow Mountain Works」を、並行して2019年に「holo」をスタートしました。

— 同じバッグブランドである「RawLow Mountain Works」と「holo」では、どのようにアイテムの棲み分けをしているのでしょうか?

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「RawLow Mountain Works」は、仲間と一緒にやっているので、僕個人の意見だけでなく、話し合いながらモノづくりをしています。アイテムは、ハイキングと自転車に特化したコア層向け。タウンユース向けのものは作らないなど、ブランドとしてのポリシーもあります。

一方「holo」は、ハイキングや登山と、それら周辺のアウトドアアクティビティを楽しむためのもの。釣りにハマっていたらタックル(釣り道具)を入れられる構造を採用してみたり、山で写真を撮りたかったらカメラやレンズの持ち運びを考えたデザインをしたりと、そのときのブームで作る感じです。何かに特化したアイテムではないけれど、いろいろな外遊びに使えるプロダクトになっていると思います。

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長年バッグのデザイナーとして仕事をしてきて、いろんなアウトドアの遊びも経験してきました。その2つの要素を組み合わせることで生まれたのが「holo」。そして、そもそも自分1人でやっているブランドなので、何を作ってもいい。基本は自分の遊びが起点。そんな自由なモノづくりのスタイルも「holo」の特徴ですね。

ハイキングと外遊びのための3アイテムをピックアップ


— YAMAP STOREでは、バックパックとサコッシュ、山財布を取り扱っています。それぞれご紹介いただけますか?

■ユニークな2気室構造を採用した「Utility Back Pack ユーティリティバックパック」

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まずは2気室構造を採用した「holo(ホロ)/ユーティリティバックパック」を。デイハイクから小屋泊、ULスタイルであれば野営にも対応できる40Lサイズの多機能バックパックです。最大の特徴は2気室構造になっていること。メイン気室とボトムの間に仕切りを設けていて、ジッパーでボトムコンパートメントにアクセスできるようになっています。

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– 珍しい構造ですね。ボトムは1つの気室というより、ツールボックスみたいです。

このボトムコンパートメントがこだわりで、登山であればコッヘルやアルコールストーブといったクッカー類を収納したり、釣りをするならリールやルアーなどのいろんな道具を入れられるようになっています。クッション素材をライニングしてあるので、デジタル機材もOKです。

アウトドアで動画や写真を撮る人にとっては機材の持ち運びにも便利だと思います。カメラ本体とレンズ2本とバッテリーくらいは入りますよ。ポイントに到着して、ガバッとボトムのジッパーを開ければカメラバッグみたいになるので、通常の1気室のバックパックよりも使いやすいはず。

– 1気室だと道具がごちゃごちゃしちゃいますし、底の方に入れると出しにくい。そんな悩みを解決してくれそうです。

2気室構造自体は昔からあったものなんですよね。ただ、仕切りはジップファスナーによる開閉式にしているので、1気室構造に変更することも可能。ちなみに、クッションのためにライニングしている素材は保冷温機能も備えていて、冷たいビールや食材を入れる簡易クーラーとしても使えます。実は、高さも350mlの缶の高さに合わせているんです。

– 遊び心もありつつ、実用性も兼ねていて面白い機能ですね。その他にもこだわりのディテールはありますか?

ハーネスとサイドポケット、ボトム部には、防水性と耐摩耗性に優れる強靭なポリカーボネート コーティングを施したコットン生地を使っています。登山向けのバックパックにはあまり使われないコットン素材ですが、コーティングを施すことでレザーのような質感に仕上がっていますし、とても丈夫。トレッキングポールや三脚を入れても問題はありません。

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バックパック内部生地は、耐水性、耐久性、軽さ、透湿性など、あらゆる機能に優れた「タイベック®︎」を採用。絵柄はイラストレーターJerry鵜飼デザインのUltra Heavy柄で、僕は特別に使わせてもらっています。

■サイズ可変するサコッシュ「Campers Sacoche S キャンパーズサコッシュ S」

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ボトムにマチを設けることで容量を変えられる「holo(ホロ)/キャンパーズサコッシュ S」は、マチを畳んだときに四角になるようにデザインしています。また素材には、「コンブ®ナイロン」というコットンのような質感の機能性素材を使っています。ナイロンなので耐久性があり、軽い。そして撥水性を備えているので、アウトドアでの実用性もおさえつつ、街使いもできるカジュアルさがある魅力的な素材です。

– 細引とブタバナがアウトドアブランドらしいアクセントになっていますね。

キーループとハンドルにアウトドア用の細引きを使っています。ハンドルはトート的に使うことを想定。ちなみに、細引をハンドルに使うとき、一般的な縫い方では引っ張ると抜けてしまうんですよね。なので、見た目に反映させないように独自の縫製技術で強度を高めています。

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サコッシュとしては珍しいバックポケットも。これはファッションバッグでよく採用していた設計なのですが、財布やカードなどのちょっとした小物の収納にはやっぱり便利です。

■ミニマムなデザインのアウトドア財布「Multi Wallet X-PAC マルチウォレット X-PAC」

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ハイキングや登山だと、3つ折りタイプが基準になっているのですが、こちらは2つ折り。デザインソースは、20年くらい前に流行ったサブ財布。メインは長財布で、ランチのときに持っていくサブの財布というものがあったんです。使いやすさと山でのコンパクトさを考えると、この形状がちょうどいい。3つ折りタイプは優れたアイテムがすでにあるので、「holo」ならではのものを作りたいという思いもありました。

形状自体は新しいものではないのですが、サブ財布の構造に山財布的な要素を入れています。山には何枚くらいカードを持っていくか、小銭を使いやすい構造とは?を考えた仕様になっています。こちらも内側はタイベック素材なのですが、お札の滑りがいいので出し入れがスムーズ。

デザイナー・谷口さんが「holo」に込めた思い


— 遊び心満載のアイテムが揃いますが、こだわりポイントを教えてください。

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3アイテムに共通しているのは、とても小さな「ブタバナ」をデザインアイコンにしていること。ブタナバというのは、もともとはカラビナやロープを通すループとして使うパーツで、山を象徴するモチーフのひとつ。でも今はそのような使われ方はせず、デザインとして受け入れられていますよね。

ブタバナをそのままつけるのではなく、小さくしようと思ったのは、縫製技術の限界を攻めてみたいという遊び心でもあります。ハイテク素材にローテクというアンバランス感を入れたかったんです。そして、ここまで小さいブタバナを縫い付けるのは、技術のある工場でなければできない芸当なんですよね。なので簡単に真似されることもありません。細かい話ではあるのですが、このブタバナがある種の品質保証であり、holoの正規品であることを証明してくれてもいるんです。

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– 一貫して「Made in Japan」にこだわっていますが、その理由を教えてください。

バッグのデザイナー時代から国内の工場と関わってきたので、人脈も知識もある。日本の縫製の技術力は信頼していて、クオリティを追求するなら国内生産になってしまうんですよね。また、生産できればどこでもいいというわけではなくて、工場もブランドをやる上での仲間のようなもの。長年付き合ってきた関係があるので、こちらがやりたいことや製造上の難題にも積極的に応えてくれます。

「holo」のアイテムは、シンプルなようでギミックも多く、どこの工場でも作れるというわけではないんです。先ほどお話ししたブタバナをはじめ、バックパックのハーネスやサコッシュのハンドルなど、山道具としての信頼性は必須。こちらのリクエストを叶えてくれる工場は大切なパートナーなんです。

また、基本的にダイレクトに工場とやりとりをしているので、サンプルを作るのも早いですし、リペアや品質管理も安心。手頃な価格で提供できるのも、工場と直取引をするファクトリーブランドのメリットです。少し大袈裟かもしれませんが、なくなりつつある技術ある工場を支えたいという思いもありますね。

— 以前はファッションブランドのバッグをデザインしていた谷口さんにとって、アウトドア向けのアイテムを作る上での違いを感じることはありますか?

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ファッションと違って、アウトドアの場合はまず「道具」なんですよね。自然環境のなかで使うことを考えると、使いやすさや強度設計がとても大事。ファッションではバックパックのハーネスに角度をつけたり、アタリが柔らかくなるようにクッションを入れたりといった機能性を高めることはしません。体にコンタクトすることを考えていないので、細いヒモが流行れば肩紐を細くしちゃうし、肩に食いこもうが関係ない。

だからこそ、山の世界に出会って、山のバッグを作るようになって、考え方がガラッと変わりました。無駄なデザインはないですし、すべての機能に意味がある。ファッションのデザイナー時代とは真逆な感じもすごくよかったんですよね。山遊びが好きな人たち同士はみんな仲が良いし、マイナーなアクティビティだからこそ一緒にボトムアップで頑張っていこうぜっていう感じも好き。「俺のいる場所はここだ!」って思ってしまうくらい居心地のいい場所です。

— 谷口さんが考える「いいデザイン」とは?

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いいデザインというのは時間が経っても色褪せないもの。それは、ファッション業界ではできないことでした。「RawLow Mountain Works」も「holo」も、基本的にマイナーチェンジはしますが、シーズンごとにデザインを変えたりはしません。根底にあるのはアウトドアを楽しむための道具であることなんです。

「holo」に関しては、ハイキングだったり、釣りだったり、自分の「好き」な外遊びのための道具を作りたいというのが第一にあります。ただ、ユーザーに受け入れられないものは作りたくないという気持ちはあって。一点一点手作りするような作家であればそれでもいいのだけれど、たくさんの仲間とものづくりをしている以上は、やっぱりたくさんの人に持ってもらいたい。その上で自分らしさを出せたらいいなと思っています。

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    紹介したブランド

    • holo

      holo

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