【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

登山を始めて数年。道具も一通り揃い、少しずつ経験も積んできた。そろそろ初心者を脱して中級者にステップアップしていきたい。それに合わせて2足目の登山靴を検討しているけれど、どんなものを選べばいいのだろうか?

登山を始めたころは、わからないことだらけで、登山専門店で勧められるままに初心者向きの登山靴を選んだけど、山を歩いているとトレランシューズやローカットシューズで登っている人も見かけるし、中には山用のサンダルを履いている人も!

装備を軽くして山を歩く「UL(ウルトラライト)」というスタイルも最近よく耳にするし、登山靴の選び方は、実はさまざまにあるのではないだろうか.......

そんな登山を初めて2〜3年で抱える疑問を、ガイドさんに直撃取材。ステップアップに向けて、知っているようで本当のところ、よくわからない「登山靴の気になること」を聞いてみました。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本佐知恵(みやもとさちえ)
横浜生まれ。八ヶ岳山岳ガイド協会所属登山ガイド。Field & Mountain (Yamakara)、トラベルギャラリーなどでツアーガイドを行う傍ら、YAMAPにて登山地図の制作にも携わる。趣味のアドベンチャーレースを中心にMTBやパックラフト、沢登りなど、アウトドア全般を満喫している。

今回教えてくれるのは登山ガイドの宮本さん。夏は北アルプスの裏銀座、冬場は八ヶ岳や関東近郊の低山を中心に活躍をするベテランガイドです。老若男女、さまざまな登山者を案内するなかで、歴の浅い登山者が知っておくべき登山靴の選び方や真実について聞いてみました。

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そもそも「登山靴」って?

──ガイドさんがいう「登山靴」とは、どのような靴のことを指しますか?

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた(ハイカット(左)の登山靴とミッドカットの登山靴(右))

宮本:前提として「足首が保護されるもの」が本格的な登山靴という位置づけだといえます。ハイカット・ミッドカットのシューズがそれにあたり、靴がくるぶしよりも上まであると、足首が保護されて捻挫などのトラブルが防げます。

「トレッキングシューズ」という言葉もありますよね。決まった定義はないのですが、これはいわゆる「軽登山靴」。「登山靴」という大きな括りのなかに含まれていると考えるのが良さそうです。

──「ハイカット」と「ミッドカット」。どちらを選ぶべきか難しいです

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本:ハイカットモデルのほうが足首の上まで固定され、筋力が弱い方でも靴に頼りながら登れるので、足への負担が少なくなります。ミッドカットはハイカットモデルよりも少し足首部分が低くなりますが、そのぶん軽量になり、足運びが軽やかになります。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた(ハイカットの岩稜帯向き登山靴(左)とミッドカットの登山靴(右)ではソールの硬さが異なることが多い)

私がガイドをしているなかで、よく見る登山靴の誤った選び方は、ハイスペックな登山靴を低山で履いてくるケース。

登る山に相応しくない登山靴を選ぶことは良くないですね。登山専門店や友人に良いと勧められて購入する方も見受けられますが、自分が行く山によって選ぶ靴は変わります。たとえば岩稜帯を登るのか、低山を登るのか、縦走するのか。登るシーンに合わせて靴を選ぶことがベストです。

ハイカットの岩稜帯向き登山靴は岩の突き上げなどから足裏を守るため、かなりソールが堅くできています。低山などの平坦な道を歩く場合、堅さや重量感により疲れやすくなります。また足首が固定されすぎるのも低山では疲れの原因となってしまいます。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

もし低山をメインに歩く場合は、ソールが柔らかめでより軽いミッドカットのシューズを選ぶといいでしょう。疲れにくく、足運びがラクになると思います。

▼おすすめのハイカットモデル

▼おすすめのミッドカットモデル

ローカットもアリ?登山靴選びのホントのところ

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──近年は「ULスタイル」など、登山のスタイルが増えています。これに伴って登山靴の選び方も変わってきているのでしょうか?


宮本:私にとって「本格的な登山靴」と呼べるものは足首が固定できるハイカットやミッドカットのシューズなので、「登山靴の選び方が変わる」こととはまた違うと思います。ただ「山に行くための靴」の選び方は広がってきたと考えています。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

実際、昔は保護性能やクッション性が重要視されていましたが、最近は裸足に近い感覚のベアフットシューズや山用のサンダルも登場しています。山を登っていて、見かけることもありますよね。

これらの靴は、「より自然な状態」「自分の足を鍛える」ことに重きをおいています。一般的な登山靴の目的が「足の保護」だと考えると、真逆の発想ですね。

▼おすすめの登山用サンダル

──では、足首が保護されないシューズで山に登るのもアリなのでしょうか?

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本:アリかナシかで言えば、「アリ」だと私は思っています。実際、私も低山やトレイルランニングでは、登山用サンダルやローカットを履いています。

メリットは、危機管理能力が高められること。ハイカットと比べて保護力が低いので、瞬時に足の置き場を考え先を読み、ルートファインディングしながら歩く必要があります。

足の置き場をミスしたら、足首を挫いたり小指をぶつけるなど怪我の元になるので、それを防ぐために頭の中で瞬時に判断できるようになります。結果として、普通の登山靴で歩くときにも、より自然かつ楽に歩けるようになります。

──その言葉を聞くと、ローカットシューズが欲しくなりますね

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本:とはいえ、安直に考えてはいけません。大切なのはリスクを理解すること

当然、ローカットは、着地に失敗した場合など、足首の捻挫のリスクが伴います。例えば、トレランシューズはソールがかなり柔らかいので岩稜帯などでは不安定な状況になります。

なので、歩き方の技術を身に着けることと、不安定さをフォローできる体力や筋力、体幹の強さが必要です。また、防水でないと不快はもちろん、皮膚の炎症、低体温症になりやすくリスクが上がります。

軽量なうえ足首が自由なため軽快にスピーディーに歩けるので、気軽に使いたくなりますが、これらのリスクがあることを承知のうえで選択すべきです。

▼おすすめのローカットモデル

──「アプローチシューズ」という靴もあります。これを登山靴として使うことはできるのでしょうか?

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本:クライミングをする人が、岩登りのために岩場までアプローチするために使う靴をアプローチシューズといいます。ローカットモデルが多く、クライミングシューズのような爪先が保護されているデザインが一般的です。

ソールは岩場歩きに適した堅めのソールで、滑りにくく、グリップの効きやすいビブラムソールなどが採用されています。つま先部分には滑らず岩に立ち込めるように「クライミングゾーン」というソールデザインがなされているのも特徴です。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

ソールが堅いので低山などの平坦な登山ではあまりお勧めできませんが、山登りに使うことはできると思います。

岩登りのために購入し、岩稜登山でも使いたいということであればアリですが、わざわざ登山だけのために選ぶ靴ではないと思います。ただ、ローカットのため足首は自由になるので、ソールの堅さと足首の自由さを求めるならば選択肢としてアリでしょう。

▼おすすめのアプローチシューズ

2足目に選ぶべき靴は?

──「脱初心者」に向けて、今まで通り、ミッドカットなどの登山靴がいいのでしょうか?それともローカットな靴にチャレンジした方がいいのでしょうか?

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本:当たり前かもしれませんが、次の目標が何なのか考えるべきです。

目標を以前よりステップアップして、高度を上げたり、テントを担いでアルプスを2泊3日で縦走するなど、登山をレベルアップさせていくなら、たしかな装備を揃えてリスクを減らすことが何より重要になってきます。

この場合、ローカットシューズだとリスクが高まりますよね。より高度な登山に向けた靴として、ハイカットで防水性のある、縦走登山向きの靴を2足目として選ぶことがベストだと言えるでしょう。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

一方で、しっかりとした登山靴で登山をしていると、登山靴に頼りすぎてしまって歩き方が雑になり、登山レベルが上がりにくいのも否めません。

そういう意味では、リスクを理解したうえでローカットを選ぶのは、その人個人の選択としてありだとは思います。しかし、自分の体力や筋力、スキルが伴わない状況で、 “かっこいい”などの理由でローカットを選ぶことはNGです。

日帰り低山の場合はまだいいですが、何日間もの縦走でリスクを負ってしまった場合、下山が困難になり、大きなトラブルになりかねません。リスクを理解し、回避することこそ「脱初心者」です。

ローカットシューズにトライするならば、まずはハイカットやミッドカットモデルで経験を重ね、登ったことのある山で試してみるのがいいでしょう。自身の身の丈に合わせた登山、靴選びが大切だと思います。

──低山も登るけど、今後冬山にも登ってみたい。そう思ったときに冬山用の靴を夏山でも使うのはアリでしょうか?

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本:それはナシですね。使ってみたらわかると思いますが、冬山用登山靴は保温性が高められているため、夏に使うと蒸れます。また、かなり重量感があり、重いです。冬山用登山靴は冬山に向けて作られたものです。季節に合った登山靴を使いましょう。

冬山といってもスノーシュートレッキングなどの場合、3シーズン用の登山靴でも問題ない場合もあります。逆に夏山でも、雪渓を歩く場合には、アイゼンが装着できるコバ付きの登山靴が必要なケースもあります。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

──使い分けるのがベストだと思いますが、なかなか何種類も揃えるのは大変です。その場合はどんな靴を選べばいいのでしょうか?

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた(靴は使っていくと、ソールが減り劣化していく)

宮本:靴の使用年数は使う頻度にも寄りますが3〜5年が限度です。そうなると、実は用途に分けて使い分けるのは、使う頻度が少なくなり、ただ経年劣化させてしまうだけなので、お金の無駄になってしまいます。

それを考えるとさまざまな山で使える1足を持っておくのがコスパ的にはベストです。軽登山よりのミッドカットの登山靴であれば低山の日帰りから、筋力や荷物量にもよりますがアルプス縦走まで可能です。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

▼おすすめのミッドカットモデル

もっと知りたい。登山靴を最大限に活かすための結び方

──宮本さんがオススメの「解けない靴紐の結び方」を教えてください。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた(平紐(左)と丸紐(右))

宮本:まず靴紐には一般的に、平紐丸紐の2種類があります。平紐は締めたときに戻りにくく結びやすいですが、丸紐のほうが強度があり丈夫です。ですが、丸紐は締めると戻りやすくほどけやすい性質があります。この性質をまず覚えておきましょう。

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた(シューレースの一番上は下からではなく、上からかけると緩みにくくなる)

結ぶ際はシューレースの上から2つ目までは普通にかけ、一番上だけ上からかけます。そして、結ぶときに3回まわして締めます。さらに蝶々結びするときにも2回まわして締めます。これで簡単にほどけることなく、だけど自分で解くときには引っ張るだけで解きやすい、非常に便利な結び方です。ぜひ習得して活用してください!

──ガイドをしているなかで、誤った登山靴の使い方をしている例があれば教えてください

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた(NG例。しっかりとシューレースを上まで結べていない)

ハイカット・ミッドカットのメリットとして、足首部分をしっかり締め上げることで下りのときに爪先が登山靴に当たりにくくなるという利点がありますが、あまり活かせていない人をよく見受けられます。

逆に爪先部分を締め上げがちな人がいますが、圧迫されて足先が痛くなってくる原因に繋がります。足首をしっかり締めたほうが下りでは有効なので、ぜひ活かしましょう。登りの場合は足首の可動域を持たせるために指が数本入るぐらい、少し緩めにするといいでしょう。

時間帯によっても足のサイズが変わってくるので、自分の一足を見付けたら終わりではなく、より良い履き方を模索する事をオススメします。

登山靴選びにおいて、大切なことは?

──最後に、登山歴2、3年目の登山者に向けて、登山靴選びにおいてもっとも大切なことを教えてください

【そろそろ2足目】ローカット?ハイカット? 登山靴の気になるアレコレをガイドに聞いてみた

宮本:楽しく快適に山を登れないと登山は、苦行になり続かなくなると思います。自分がいかにして「楽しく快適に」登れるかということを一番に考えて登山靴を選ぶことがなによりだと思います。

楽しさ・快適さ・リスク。これらの折り合いをつけて、アナタにとってのベストな2足目を見つけてみてください!

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