保温と換気のバランスに注目!「動」と「静」で使い分ける秋冬の保温着選び

保温と換気のバランスに注目!「動」と「静」で使い分ける秋冬の保温着選び

秋冬シーズンの登山を楽しむために欠かせないのが、厳しい寒さから体を守る保温着。ダウンやフリースなどは日常生活でも大活躍ですが、山で使うとなると、ただ温かいだけでは充分に役割を果たすとはいえません。保温力や素材、厚さなどの特性や、どれくらいの気温で使うのか、アウターなのかミッドレイヤーなのかなどの多くの要件があるなかで、忘れてはいけない重要なセレクトのポイントが、「行動中に着るのか、そうでないのか」ということ。「動」の状態で使う行動着としての保温着と、休憩時や運動量が少ないときに着る「静」の保温着では必要な機能が異なり、目的に合ったものを選ばないと、快適性や安全性を損なうことになりかねません。保温着選びのコツを、今シーズン注目の保温着10着の特徴と合わせて考えていきましょう。

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【動】

行動中に使える通気性を備えた<アクティブタイプ>

保温と換気のバランスに注目!「動」と「静」で使い分ける秋冬の保温着選び

気温が低い環境では、行動中にも保温着が必要になります。しかし、冬山登山やバックカントリースキーなどの運動量の多いアクティビティでは、「動けば暑い、止まると寒い」を繰り返し、大量の汗をかくことが避けられません。行動中の保温着には、寒さ対策と同時に、暑さ対策も必要なのです。

軽くて暖かいダウンは保温着として優れた素材ですが、水に弱く濡れると一気に保温力が下がってしまうため、大量の汗をかく行動中の保温着には向きません。そのため、長い間行動中の保温着の代表として、濡れに強く扱いやすいフリースが、長く定番として使われてきました。

ところが、近年の素材の進化により、保温着の選択肢は大きく広がりました。特に注目されるのが、「アクティブインサレーション」と呼ばれる化繊綿入りの保温着。ダウンに近い軽さや保温力を備えながら、水に強くて乾きやすい化繊綿が、行動着の保温材として近年定着してきたのです。

化繊綿素材の最大の進化は、衣服の中がオーバーヒート状態になるのを防ぐ機能を備えたことでしょう。適度な保温性を保ちながらも、積極的に湿気を吐き出して内部のムレを防ぐことで、「着たまま動ける保温着」を成立させたのです。もちろんフリースの進化も負けてはいません。モコモコと厚みのあるフリースとは一線を隔す、通気性に重点を置いた製品は、着心地のよさや汎用性の高さで、行動着として欠かせない存在です。

ただ、このタイプの保温着は、寒冷な環境や、気温の下がる夜間の防寒に1枚で使うには、保温力不足を感じることがあります。また、通気性が高いため、風が吹くと保温力はあまり期待できません。それぞれの製品の特長をよく確認して、使用する季節や天候、シーンに合わせて使い分けたり、他の保温着やシェルと上手く組み合わせたりするようにしましょう。

目的で選ぶ、
アクティブタイプの保温着5選

保温と換気のバランスに注目!「動」と「静」で使い分ける秋冬の保温着選び

通気性+ベンチレーションでムレ知らず
アクティブにラフに使いたいなら、めっぽう水に強い1着を

finetrack/ポリゴン2ULジャケット

独自開発のシート状立体保温素材を使用。濡れに強く速乾性も高いので、汗や雨、雪の侵入も心配は不要。抜群の通気性で内部のムレを排出し、運動量の多い場面でも快適に使えます。それでも熱いと感じたら、サイドの大型ベンチレーションを使えば、こもった空気をすばやく換気。コンパクトに持ち運べて予備の保温着としても便利。薄手で中にも外にもレイヤリングしやすいので、他のウェアとの組み合わせも自在です。

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2つの素材のいいとこどりで弱点を克服
寒さが苦手な冬山好きなら、ダウンの保温力を味方に

peakperformance/ヘリウムハイブリッドジャケット

汗の湿気で保温力が低下するダウンの弱点を、素材の使い分けで見事解決。寒さを感じやすいボディには、軽量で保温性の高いダウンを、汗をかきやすい脇や首回りには、通気性と伸縮性に優れるフリースを。それぞれの利点を生かすことで、寒さに負けずに動ける1着に仕上がりました。ウェーブ状のキルティングは、ダウンの偏りを防いで保温力を下げない工夫。もたつきがちな肩回りはフリースですっきりと、重ね着による動きにくさを軽減します。

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出発から戻るまで脱がない前提のアノラック型
暖かさが必要なすべての条件で使えるものが欲しいなら

NORRONA/アルファフーディシャツ

中綿に使われる保温材をむき出しにして編み込むことで、軽さと温かさ、汗抜けのよさを実現した素材がベース。裏側はふわふわと暖かな肌触りで、表には防風性と撥水性、脇下には汗冷えしにくいウール混と、適材適所の5種の素材を配置。バラクラバタイプのフードや、パンツにインして着られる2重構造のウエストなど、寒さに対抗するギミックも満載。シャツとして、ミッドレイヤーとして、脱ぎたいと思う場面がない快適な着心地です。

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山に日常に、1枚でレイヤリングで
1年でもっとも出番の多い、快適で多用途な1着を選ぶなら

patagonia/R1フルジップフーディ

起毛した裏地に格子状のパターンがある、薄くて軽いフリース素材。グリッド構造がつくる空気層が適度な保温力を生み出し、高い通気性と汗をすばやく処理する効果で、ムレや濡れ感のない快適な着心地が得られます。ソフトで暖かく、コンパクトなシルエットにスムーズな表面で、レイヤリングしやすいのも特徴。シンプルなデザインは日常使いにもフィットし、小さく畳めるので、旅のお供として荷物の隅に入れておくのもいいでしょう。

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機能性や快適性は犠牲にせず
自分のスタイルで、人とは違うものを身に着けたいのなら

Teton Bros./テンスリープシャツ

見慣れたアウトドアウェアとは一線を隔す、カウボーイシャツのようなデザイン。しかし中身は、次世代の「通気する中綿」と高評価を受ける化繊綿に4wayストレッチの耐久撥水素材を組み合わせた、最先端素材搭載の機能派。開閉しやすいスナップボタンの襟付きシャツは、山シャツの流れを汲む山のクラシックスタイル。包み込むような優しい着心地で、落ち葉のトレイルも、キラキラ光る春の積雪も、自転車のペダルを漕ぐ間も、汗をぬぐうことなく進めます。

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【静】

休憩時に使える保温力重視の<サーマルタイプ>

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動いている間に温まった体も、気温の低いなかでは運動をやめたとたんに一気に冷え始めます。昼食などの長時間の休憩はもちろん、ほんの数分の小休止でも、寒いと感じる前に保温着を着て、体を冷やさないようにしなくてはなりません。
動かない時を中心に使う保温着に、もっとも必要なのは保温力。しかし、ただやみくもに温かいものを選べばいいわけではありません。季節や標高、天候の状況などによって必要な保温力が大きく違うのは当然ですが、雪の中での休憩時に使うのなら、多少ラフに扱ってもいいように耐水性のあるものが望ましいし、アウターとして使うのかシェルと合わせて使うのか、耐久性や防風性など必要な要件も変わってきます。中に何を着るのか、上に重ねる物が何なのかによって、サイズやシルエットの選び方も変わってきます。
また、秋のハイキングや残雪のスノートレッキングなど、運動量がさほど高くない場合や気温が比較的高い環境で使うなら、行動用と休憩用のそれぞれに保温着を用意せず、アクティブタイプと兼用できるものを選ぶのもいいでしょう。そして、このタイプの保温着に共通するのは、着ていない時間が長いこと。持ち運びがしやすいよう、軽くコンパクトに収納できることも重要な要素です。


目的で選ぶ、
サーマルタイプの保温着5選

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少しでも小さく軽く、しかもしっかり保温力も欲しいなら
900FPの高品質ダウンの実力を

NORRONA/ビティホーン スーパーライトダウン900

重さわずか160gは、一般的なスマホとほぼ同じ。900フィルパワーの高品質ダウン使用で驚くほどコンパクトに持ち運べ、出番が来たらふわりと大量の空気を含んで、高い保温性を発揮します。撥水加工済みのナイロン素材で、濡れや汚れを気にする必要も不要。さっと羽織れば、頂上での休憩も温かく過ごせます。軽さと温かさのためにムダをそぎ落としたミニマムデザイン。寒さ厳しい北欧生まれならではのクオリティです。

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アウター使いも視野に入れて総合力を求めるなら
ディティールにもこだわったフーディが使える

peakperformance/ヘリウムフードジャケット

ダウンの偏りを抑えるウェーブ状のキルティングが、コールドスポットをなくして安定した保温力を発揮。撥水素材の表地がダウンの濡れを防ぎ、インサレーションウェアには珍しい庇付きのフードは、2つのドローコードでフィッティングができる本格派。フード付きで320gという軽さと、ダウンならではのコンパクト性のなかに、アウター使いには欠かせないファスナー付ハンドポケットも備えた使い勝手のよさは見逃せません。

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厳しい寒さのなかですばやく保温体制に入りたいなら
グローブをしたまま着られる、実用度の抜群のコアな1着を

Teton Bros./ホバックプリマオーバーフーディ

その名の通り「上から」着るために作られた1着。分厚いグローブをしたまま着用するための、袖口からひじまで届く大型のファスナー。シェルの上から着られるようにサイズは大き目の設定。凍結させたくないものや手指を体温で温めるための超大型フロントポケットを備え、濡れても保温性が低下しない、高保温性の化繊綿を使用。吹雪の中での休憩や長時間のビレイなど、低温環境で動かずにいなければならないときのためのすべてを備えます。

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インにもアウトにも、いつでもどこでも着たくなる
微妙な温度調節に役立つ使い勝手のいいものが欲しいなら

patagonia/ナノパフジャケット

表地は耐水、耐風性を備え、中綿は保温力の高い化繊綿。本体をポケットに収納できるパッカブル仕様で、薄手でコンパクトなのに保温性に優れます。水にも強く、荷物にもならないとくれば、ラインナップに加えない理由はありません。汚れても手軽に洗える扱いやすさも魅力。アウターにもミッドレイヤーにも使え、息が切れる場面が長時間続くのでなければ行動着として着続けることも可能。そのまま街に出ても山帰りだと気づく人はいないでしょう。

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暖かさだけでなく着心地やデザインにもこだわりがあるなら
フリース界のロールスロイスと称される1着を

HOUDINI/パワーフーディ

しっかりとした厚みと滑らかな肌ざわりに、フリースとしては最高レベルの保温力。高めの襟にボリュームのあるフード、ダブルファスナーやドローコード付きの裾周りと、フリースには珍しい充実した機能も備えます。レイヤリングしやすいスムーズな表面に、短い毛足の内側は一度袖を通したら忘れられないほどの肌触り。ミッドレイヤーとしても便利ですが、シンプルで美しいデザインとシックなカラーは、上に何かを着るのが惜しいほどです。

保温と換気のバランスに注目!「動」と「静」で使い分ける秋冬の保温着選び

ご紹介した10点の保温着は、素材も形も、種類もそれぞれ違いますが、どれも寒さから身を守るという役割は同じです。今回は大きく【動】と【静】に分けて機能の違いをご紹介しましたが、気候や条件、運動量などの多くの要件を、2つの状況にはっきりと分類することはできません。
ただ、やはりレイヤリングが重要なのは、アウトドアで行動するうえでの基本。保温着とベースレイヤーやシェル、また保温着同士を組み合わせることで、それぞれの条件にあった、より快適な着心地を得ることができます。
秋冬の行動で保温着に不満や問題点を感じているのなら、今使っている保温着の特性を改めてチェックしてみましょう。何か1枚を加えたり入れ替えたりすることで、快適性が格段にアップするかもしれません。

    紹介したブランド

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      「本当のアウトドアウエアとギアを創れるのは、本気で遊べる者だけ。」 f...

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