山が変われば「防寒着」も変わる!「インサレーション」の性能・種類と選び方を徹底解説!
冬になればアウターを着るように、山でも厳しい寒さから身体を守るために中綿入りの防寒着を着用します。それが「インサレーション」です。
しかし、ひとえにインサレーションといっても、使われている素材や持ち合わせている性能によって、着用するシーンや使い方がバラバラなのが難しいポイント。例えば、標高の高い山に行くのか、森林限界を超えない低山を歩くのかによっても、持っていくウェアは変わります。
今回はYAMAP STOREのインサレーションのラインナップの中から、製品の特徴に合わせて「攻め」「中堅」「守り」の3つのカテゴリに分けてピックアップしてみました。山行スタイルや山域に合わせた適切なインサレーションを見極めることは、秋冬の登山を快適かつ安全に楽しむための最重要ポイントと言えます。さっそく見ていきましょう!
「攻めのアクティブ」インサレーション|活動量の多い山行スタイル

最初は「攻め」のインサレーション。静止中は着込むことで身体を温めることができますが、動いているときに適度に保温するというのは難しそうですよね。しかし、最新のインサレーションには、行動中の着用に特化した「アクティブインサレーション」と呼ばれるジャンルがあるのです。
外の気温が低くても、身体を動かすと体温が上がり汗をかきますが、山行中に大切なのは「余分な熱を外に出す」こと。そうすることで、過剰に汗をかく状態を防ぎ、汗冷えによる体温低下を防ぐことができるのです。
活動中の快適さを重視して作られているのが特徴の「アクティブインサレーション」は高低差や歩行距離がある活動量の多い山行中に身につけると吉。一見薄手で不安を感じるデザインのものが多いですが、結果的に快適で安全な登山の近道につながるのです。
オススメ|1|and wander / アルファダイレクトフーディ
着用したままでも体温調整ができるのがこちらの「and wander(アンドワンダー)/アルファダイレクトフーディ」。一見、普通のフーディですが、フリース地の透け感に注目してください。
ポーラテック社のアルファダイレクトの技術を採用し、特に汗をかきやすい背中と脇まわりの通気性を大幅に向上させています。動きながらでも効率的に熱を外へと放出してくれるため、トレイルランニングなどに最適。


加えて高い速乾性もあり、汗をかいても肌にまとわりつく不快感もありません。アクティブに活動をするなら、吸水性の高いベースレイヤーと組み合わせることで快適さと適度なあたたかさを実現します。
風を受けやすい全面、腕まわり、フード周りは撥水ナイロンでしっかり保温。耐久性にも優れたコーデュラ素材を使っているため、バックパックのショルダーハーネスがあたっても生地が激しく消耗するような心配もありません。
オススメ|2|finetrack / YAMAP別注ポリゴンライトジャケット
「finetrack(ファイントラック)/YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」は中綿に独自開発の素材「ファインポリゴン®︎」を採用することで、行動中の快適な着心地を実現しています。
これは一般的なインサレーションで使われる中綿とは違い、重なり合った立体感のあるシート内に空気をふくませることで保温力を保持します。また、ダウンは濡れてると保温力がなくなるのに対し、「ファインポリゴン®︎」は水をためにくいポリエステル繊維のため、乾きが早いのも特徴です。


腕周りとバックパックのハーネスが当たる肩まわりには「トルネードスリーブ®」という立体パターンを採用。動きやすいパターンを取り入れることで、ストレスフリーな動きが生まれるのです。
袖口はリブタイプのニットだからグローブとの干渉もなし。ちょっとした小物を入れるのに便利なハンドポケット付きです。
■アクティブインサレーションを選ぶときの注意ポイント
アクティブインサレーションは、あくまでも行動中における保温を想定したもの。そのため山小屋やテント滞在時、休憩時など停滞する場合は一枚だけでは寒く、少し頼りないかもしれません。
リラックスタイムに身体をしっかりと休めさせる意味でも、下山後や停滞時用として別の防寒用ウェアを持っていくことをおすすめします。
「中堅オールラウンダー」インサレーション|どこにでも連れていきたいマルチな相棒

次に紹介するのは、「中堅オールラウンダー」型のインサレーションです。
はじめてのインサレーション探しなら迷わずコレ!と言えるような、夏の高所登山から冬の山まで、活動量や季節を問わずマルチに活躍できるオールシーズン向けのアイテムをピックアップしてみました。
特徴として、コンパクトに持ち運びができてしっかりと保温力があるということ。夏なら朝晩に羽織るアウターとして、冬ならジャケットの下に着るミドルレイヤーとして、シーンごとに使い分けも可能。一着持っておけばどんな山行でも安心できるお守りのようなアイテムです。
オススメ|1|patagonia / ナノパフジャケット
インサレーションに使用する中綿は、「ダウン」か「化繊」が一般的。そして「patagonia(パタゴニア)/ナノパフジャケット」は、化繊を使用したインサレーションになります。
水に濡れてしまうと保温力が低下してしまうダウンのデメリットを克服し、速乾性と軽量性、そして高い保温力を備えた化繊綿「プリマロフト・ゴールド」を使用しています。積雪期のような寒い時期の山行では、アクティブインサレーションのような使い方をすることも可能です。夏の宿泊山行では、防寒着としてもマルチに活躍します。


表地に耐久撥水加工が施された生地を採用。耐水耐風性に優れ、アウターとしての機能も十分に備えています。
首元は高めの襟で、風や冷気の侵入をしっかりブロック。収納するときは、インナーポケットにしまい込むことで、コンパクトにパッキングすることも可能です。
オススメ|2|Teton bros. / ハイブリッドインナーダウンフーディ
攻めと守りの双方をこなす、次の名品は「Teton bros.(ティートンブロス) / ハイブリッドインナーダウンフーディ」。最大の特徴は、1000FP(フィルパワー)の最高級ダウンと、保温力の高い「Thermo Max」をハイブリットさせたという点です。
空気層を作り断熱する「ダウン」の特性に加えて、人体から放出された熱(遠赤外線)を吸収・蓄積し、ふく射効果で体にもどし温める「Thermo Max」の効果で、保温力をより一層高めています。
そのため、ダウン量を多くしなくてもあたたかく、薄手だからこその動きやすさやレイヤリングのしやすさが生まれるのです。


ダウンには撥水加工を施してあり、多少の濡れなら保温力が落ちる心配もなし。調整機能付きフードのおかげで、強風時でも寒さから頭を守ることができます。
中綿にダウンと化繊を組み合わせることで、双方の機能をいいとこ取りを実現させた画期的なインサレーションです。
■中堅インサレーションを選ぶときの注意ポイント
基本的にはシーズン問わずオールラウンドに使えますが、季節や天候によっては行動中にオーバーヒートしたり、逆に停滞用として使うには保温力が足りないということもあります。出発前に、必ず目的の山域の気温や天候を調べてましょう。
厳冬期の高所登山や雪中テント泊など局所的な環境下での着用が想定される場合は、ダウンなどの保温に特化したアウターを別途持っていくことをおすすめします。
「守備までこなす」インサレーション|保温・防寒を重視するならこれ

最後にご紹介するのは、「守備までこなす、徹底保温」型のインサレーション。厳冬期のアクティビティで寒さから身体を守るためには、時には保温機能に特化させることも大切です。行動中と停滞中、それぞれに適切なレイヤリングを考える必要があります。
ここでご紹介する「守り」のインサレーションは、休憩時やテント設営時など外で静止するような状況と、アウターの上から羽織るだけで冷気で体温が奪われるのを防ぐことができます。
山以外でも街着として着用するのもいいし、キャンプや釣りなど冬のアウトドアシーンで幅広く使えるのも特徴です。
オススメ|1|HOUDINI / ダンフリ
「HOUDINI(フーディニ)/ダンフリ」の名前の由来は、「ダウンフリー」。ダウンやフェザーなど動物性の素材を一切使わず、リサイクル素材をメインに作られたジャケットです。
ダウンの性能に劣らない保温性に加え水濡れにも強い、独自の人工羽毛(化繊)を採用しています。雨や雪の日でもアウターとして羽織っても問題ありません。北欧ブランドらしい、冬の厳しい気候や山域に特化させた工夫が盛り込まれた一枚となっています。


フィット感の高いフードとリブ袖になっている手首まわりのおかげで、隙間から風が入り込むことなく保温力をキープ。スキーなどのウィンタースポーツや冬のキャンプと幅広く使えます。
素材の性能だけでなく、包まれるようなやわらかな着心地も魅力のひとつ。シンプルかつスタイリッシュなデザインも相まって、アウトドアフリークから注目を集めるアイテムです。
オススメ|2|patagonia / DASパーカ
「patagonia(パタゴニア) / DASパーカ」は、厳冬期の屋外で活動するクライマーのために開発されたビレイ用パーカです。「ビレイ」とは、ロープクライミングをするクライマーの”安全確保をすること”をいいます。ロープを使ってクライミングをしている人を見ると、下で同じロープを持った人がいると思いますが、この人のことを「ビレイヤー」と呼ぶのです。
ビレイヤーは吹きさらしの野外の環境であっても動くことはできないので、厳しい環境でもあたたかさを保てるよう、断熱性の高いエアロゲルを取り込んだ独自の化繊素材を採用しています。つまり、濡れても保温性が落ちず、それでいてダウンのようなやわらかさがあるということ。


もちろんクライミングだけでなく、真冬の凍てつくような寒さから予定外のビバークまで、あらゆる状況下でも身体の熱を守ります。
表地には超軽量なリップストップ・ナイロン素材を使用し、耐水性コーティング加工が施されており悪天候でも安心です。調整可能なフードで、ヘルメット着用にも対応。専用スタッフサック付なので持ち運びも便利です。
■防寒重視のインサレーションを選ぶときの注意ポイント
厳冬期から残雪期でも対応できますが、ハードに動くような場面では暑すぎてオーバースペックになってしまうことも。つねに動き続けるような状況であれば、行動用として別の中間着を持っていくといいかもしれません。
防寒対策にここまでする? と思うかもしれませんが、冬の屋外での夜をあたたかく快適に過ごしたいなら、持っておくと安心なアイテムであることは間違いなしです。日常や旅行で使うことを想定すれば、活躍の機会はもっと広がります!
自分にあった登山装備を見極めて、快適な山登りを!

インサレーションとひと括りにしても、商品ごとにその役割はさまざまあります。山行予定日の山の気温や、山行スタイルに合わせて最適なウェアを選ぶことが大切です。自分にあったインサレーションを選び、寒さに負けない快適な登山を楽しみましょう!