雨が降っても快適に過ごしたい|登山必携の「防水ウェア・ギア」選び
毎年のようにやってくる雨の季節。カラリと乾いた春の空気から一転し、重く湿気を帯びた鉛色の空を見上げては、「梅雨なんてなければいいのに」と、思わず口にすることも少なくないでしょう。でも雨の山は、晴れた日には出会うことのできないすてきな景色にあふれています。特別な景色に出会うチャンスを、みすみす逃すなんてもったいない! 雨の山を快適に、安全に楽しむためのアイテムを手に入れて、緑が躍動する雨の情景も楽しみましょう。紹介するのは夏山登山の雨対策にも役立つものばかり。アイテムが豊富なこの時期に、早めに手に入れて使い勝手を試しておくのがおすすめです。
※大雨や災害の可能性がある場合、少しでも不安を感じる場合は無理をしないようにしましょう
雨天時に必要な基本アイテムをチェック!

ただでさえ不安定な路面を歩く登山では、雨具の基本は両手が使えるレインウェア。下から巻き上げるような風雨や、地面からの跳ね返りに備えて、レインコートやポンチョでではなく、上下セパレートのレインウェアを用意しましょう。雨を遮り視界が確保できるフードや、袖口や裾をしっかり閉じられることも大切。着たまま動いてもムレにくい、防水透湿素材を使ったアウトドアブランド製のものが安心です。
ほかにも、冷えやすい手指を守るグローブや、小雨の時に便利な帽子、防水性の高い登山靴やゲイターなども、状況に合わせて用意すると便利。しとしとと小雨の続く低山なら、本格的な山ではNGのポンチョタイプが快適だったり、登山口までの道や荷物の雨除けなどに折り畳みの傘が活躍したりというケースも。基本を押さえながら、それぞれのシーンや環境に合うアイテムを選ぶことが重要です。
これらのポイントを踏まえ、アイテムの用途や特徴を意識したセレクトで、4つの登山のスタイルに合わせたおすすめの雨の日コーデをご紹介します。
◆初心者こそこだわりたい! 日帰りハイクのおすすめコーデ

これから登山を始める人や、雨予報の日は山に行かないという人は、つい「雨に降られることはそれほどないから、とりあえず安いものでいい」と思いがちですが、これはおすすめできません。とくにレインウェアは、品質で快適性が大きく違うので、安物買いは禁物。雨の日や登山以外にも幅広く使えるデザインや、着心地のよさで選べば、日常からフィールドまでフルに使えて、使用頻度も満足度もアップ。いいものを手に入れる価値が実感できるでしょう。

finetrack(ファイントラック)/エバーブレスフォトンジャケット
レインウェアと聞いて想像する、ゴワゴワした風合いとは無縁。雨は完全にシャットアウトしながら、ソフトでストレッチ性があり、ムレのないサラリとした着心地。雨の日はもちろん、強風時のウインドシェルや防寒着としても活躍します。片手におさまるほどコンパクトに収納できるので、日常のお出かけや旅行のお供にも欠かせません。

finetrack(ファイントラック)/エバーブレストレイルグローブ
気温は比較的高くても、濡れると一気に冷えやすい指先。体温を奪われないためには、防水グローブが必需品です。撥水透湿素材を使用した国産グローブは、ムレずに快適に使えて、抜群のフィット感で細かい作業もストレスなし。登山だけでなく、さまざまなアウトドアシーンや日常にも活躍します。
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Matador(マタドール)フリーフライ16バックパック
16Lというほどよい容量、高性能にして快適、使いやすく、パッカブル仕様なので軽量コンパクトに収納可能。そして、雨や霧に強い、完全防水仕様。縫い目やファスナーは全てシーム処理されており、外からの水の侵入を許しません。
シンプルなブラックの色味ですので、日常にもマッチするデザインとなっています。
◆長い時間を暮すように山で過ごす、縦走登山のおすすめコーデ

長い時間を山で過ごす縦走登山では、当然悪天候に見舞われる確率も高くなります。移動距離が長いだけに、雨の中を歩き続けなくてはならないこともしばしば。安全のためには、防水はもちろんのこと、ムレずに長時間快適に動き続けられるよう、湿度や体温の調整機能を重視したアイテム選びが重要。アウターだけでなく、汗処理や速乾性に優れるベースレイヤーを選ぶなど、適切なレイヤリングも心がけましょう。

Teton Bros.(ティートンブロス)/ツルギライトジャケット
高温多湿な日本の山に合わせて作られた「ツルギジャケット」を、暑い季節に向けてさらに軽量化。驚異的なストレッチ性を備えるナイロン素材が、防水シェルとは思えないほどのソフトで軽快な着心地を実現。高い防水性と通気性がウェア内のムレを解消し、効率的ですばやい換気を可能にする、斜めファスナーのプルオーバースタイルも健在です。

THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)/L1+シェルグローブ
メインの素材にはノースフェイスのオリジナル素材で耐水性と透湿性、防風性に優れ、軽量で着心地にも定評がある、リサイクルポリエステルを使用した防水透湿素材「ハイベント」2.5層を使用。
縫い目は水の侵入を防ぐためにシームシーリング加工をすることが一般的ですが、「L1+シェルグローブ」は縫製糸自体を超撥水糸にすることで防水性を向上。シームシーリング加工をせず、軽量化を実現しました。
雨の日に寒さを感じるときは、「L1インナードライドットグローブ」と併用することで、保温性と快適さが相乗的に向上します。さらに汗をかいてもドライな肌触りが持続。

MYSTERY RANCH(ミステリーランチ)/パックフライ/UNISEX
長時間雨に降られる可能性があるときは、レインウェアと一緒にレインカバーも忘れず。長く降り続く雨の中でも、大切な荷物を守ってくれます。収納袋が本体と一体になったパッカブル仕様なので、持ち運びに便利なうえに袋をなくす心配もなし。雨が止んだ後も、濡れた荷物を分けて持ち運ぶときや、荷物をデポするときの防犯対策などに役立ちます。
◆長距離をすばやく移動する、軽さとスピード重視のULハイキングおすすめコーデ

少ない荷物で軽やかに、短い時間で長距離トレイルを歩く、UL(ウルトラライト)ハイキング。できるだけ軽く必要なものを持ち運ぶために、雨のための装備も、軽さを意識したチョイスです。荷物の出し入れやウェアの着脱にムダな時間をかけないよう、着たままでコンディションを調整できることも重要。知識や技術、体力を必要とするシーンで、実力を発揮するアイテムを選びました。

Teton Bros.(ティートンブロス)/フェザーレインジャケット
「3レイヤーでありながら200g を切る」軽量防水ジャケット。重量はなんと190g(サイズM)。初めて手にした時、まずはその軽さに驚くはずです。「フェザー」の名の通り、羽のような軽量感です。体型や性別問わず、フィット感の高い着用感も注目のポイント。荷物を極力軽くしたいトレイルランニングや、晴れ予報の日のお守りとして。幅広いシーンで活躍する一着です。

EXPED(エクスペド)/ブラックアイス 30/UNISEX
素材だけでなく、シームのすべてにシーリングを施した、防水仕様のロールトップパック。雨にも摩擦にも負けない400DのHDリップストップナイロン素材を採用したシンプルなデザインで、タフなアウトドアシーンをカバーします。ウエストベルトなど、着脱が可能なパーツを取り外すことで、さらなる軽量化をすることも可能。カラビナなどを加えて、自分なりの収納方法をアレンジしてもいいでしょう。
◆さらに早く、さらに軽やかに。トレイルランニングおすすめコーデ

スピードを重視するトレイルランニングで、とくに意識しなくてはならないのが、体温調節機能の重要性。登山より圧倒的に運動負荷の高い状況下で、通気性や保温性などをコントロールするには、トレランシーンに向けて作られた、専用モデルを取り入れるのが近道。意外と見落としがちですが、走ることで生じる、衣類やバックパックの擦れによる、生地へのダメージ対策も必要。軽さや通気性に加え、耐久性や耐摩耗性も意識してチョイスしました。

GOLDWIN(ゴールドウイン)/パーテックスシールドエアーアドバンスドライトジャケット
世界的なトレイルランナーの監修のもと作られた、ウインドシェルのよう薄くて軽い、3レイヤー防水透湿素材の超軽量レインウェア。高温多湿の環境下で、着用したまま行動し続けるための通気性を備え、極細繊維を高密度に織り上げることで、耐久性も確保。背中に余裕のあるカッティングで、パックを背負ったまま着ることもできるので、着脱のために足を止める必要はありません。

THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)/L1+シェルグローブ
耐水性と透湿性、防風性のすべてを備える、2.5層防水透湿素材の防滴グローブ。通常は、シームシーリングで縫い目からの浸水を防ぐところを、縫い糸に超撥水性を持たせることで、グローブ全体の防水性を上げているため、手なじみがよく細かい操作もしやすいのが特徴です。1枚でも、インナーグローブと重ねても。

SALOMON(サロモン)/XAプロ3DV9GTX
抜群の安定感とグリップ力に定評のある、トレイルランニングシューズの代表作。安定性やサポート性、耐久性など、アドベンチャーレースに分類される過酷なシーンで求められる要素を備えながら、すばやいフィッティングや交換可能なレースなど、扱いやすさにもこだわりました。冒険から旅行や日常までをこれ一足で駆け抜ける、汎用性の高さも魅力です。

体を濡らさないことと同様に、荷物を濡らさないこともとても大切。防水性や撥水性の高いバックパックや、レインカバーなどの対策をとっていても、横殴りの雨がレインカバーの隙間から入り込んだり、荷物の出し入れの際に雨がかかったりすると、ほかの荷物まで濡らしてしまいかねません。濡らしたくないものは小分けにして、防水性のスタッフバックに入れておきましょう。

世界的に見ても雨の多い日本では、梅雨に限らず、山の天気が予定通りにはいかないのは、避けられない現実。もちろん、安全性を確保できない悪天候のなか無理をするべきではありませんが、技術や体力と相談しながら雨の山を楽しむことができれば、より深く自然とつながることができるはずです。
新しいアイテムを手に入れたら、雨の山でいきなり使うのではなく、使用法の確認やフィッティングなどを事前に済ませおきましょう。雨が降らなくても、普段の生活や身近な裏山などで、試してみるのもおすすめです。
シーンに合わせたコーディネートを参考に、足りないもの、欲しいものを探してみてください。お気に入りのアイテムと出会うことができれば、雨の日が待ち遠しくなるかもしれません。