メリノウールって正直どうなの?|YAMAPユーザー約4,700人に聞いてみたら意外な結果が!
登山やハイキングに使うベースレイヤーの話になると、必ず耳にするのが「メリノウール」という素材。数ある羊毛のなかでもとくに繊維が細く、伸縮性に富んだ毛質を蓄える「メリノ種」という羊から刈り取られた羊毛を「メリノウール」と言い、その肌触りの良さから多くのアウトドア製品に取り入れられています。
ウールを素肌に直接着るというのは、一般的にはあまりなじみがないのかもしれませんが、アウトドアの世界ではもはや常識。調湿機能に優れ、数日間着続けてもニオイが気にならない、天然のUVカット効果があるなど、ウールの特徴がアウトドアシーンに最適だと、近年ますます人気が高まっています。
とはいえ、「値段が高くて手が出ない」、「過大評価なんじゃないの?」などという声が聞こえてくることもしばしば。そこで、YAMAPユーザー4,700人に「メリノウール」についてのアンケートを実施して現状を調査。リアルな声を集めてみました。
気になる!隣のメリノウール事情
まずは、実際にどれくらいの人がメリノウールの製品を持っているのかを聞いてみました。
結果は驚異の所有率80パーセント。人気の高さを実感してはいましたが、まさかここまで多くの人がメリノウール製品を持っているとは、正直驚きの結果。登山者にとって、マストアイテムになりつつあることがわかります。
続いて、実際にメリノウールを愛用しているという人に、その魅力を聞いてみました。
やはり一番に上がったのが、防臭性。ベースレイヤーやソックスなど、実際に直接肌に着けるものを使ってみて、その効果に驚いたという声が多く聞かれました。
では、反対に使っていないという人は、メリノウールにどんなデメリットを感じているのでしょうか?
こちらも納得の結果。確かに、羊毛のなかでもとくに繊維が細いメリノウールは、希少価値の高い高級素材。どうしても価格が高くなるのは否めません。
しかし、よく見ると、先ほどメリノウールの魅力として挙げられたものと、デメリットと感じられているものが、同じ要素とも思えます。汗冷えしにくいと感じる人がいる反面、速乾性がないと思う人がいる。肌触りのよさを魅力という意見もあれば、チクチクしそうだと感じる人もいる。これはもしかしたら、メリノウールの特徴が正しく理解されていないことが、メリノウールを使わない理由なのかもしれません。
そのイメージは誤解かも? メリノウールの特徴をおさらい
では、メリノウールを使わない理由としてあげられた要素を、あらためて検証していきましょう。価格が少々割高なのは事実ですが、食わず嫌いならぬ「着ず嫌い」で、メリノウールのすばらしさに出会えていないなんてもったいない! 使ったことがある人も、快適さの理由がわかれば、奥深いメリノの魅力をもっと感じることができるかしれません。
①メリノウールは暑すぎる?
メリノウールを使用しない理由として、「夏は暑そうという」という声が多数あがりました。愛用する人のなかにも、冬にしか使わないという人もいるようです。
しかし、これは大きな勘違い。メリノウールは、「寒いときは暖かく、暑い時には涼しく」着られる素材。天然のエアコンのような機能で、自然に快適なコンディションを作ってくれるのです。
その秘密は、メリノウール特有の繊維構造。
ウールの保温力は、毛の縮れ(クリンプ)が空気をため込むことで発揮されますが、ほかのウールに比べて繊維が細いメリノウールは、クリンプも非常に多いのが特徴。これがメリノ特有の暖かさを生み出します。
また、ウールの表面はうろこ(スケール)状になっていて、湿度の増減に合わせて開閉して、呼吸するように衣類内の湿度を調節する機能があります。繊維の細いメリノウールはスケールも多いので、過剰に増えた内部の湿度を自動的に逃がして、暑い季節もさらりとした着心地を得ることができます。
もちろん、気温の高い環境に厚手のものは適しませんが、夏にぴったりの薄手タイプは、さらりとした着心地で、化繊にはない優しい肌触りも楽しめます。シーズンやアクティビティに合ったものを選べば、よりメリノの快適性を体感することができるでしょう。
■ ユーザーの声
・夏山長期縦走、アトピー体質。肌荒れもなく、汗冷えも蒸し暑さもなく、体温に近い温かさで重宝しています。(20代女性)
・思った以上に、夏涼しく冬暖かい。また、化学繊維にはない肌触りの良さがある。(60代男性)
涼しく使える暑がりさん向けベースレイヤー
②速乾性がない?
近年開発された速乾性に富む化学繊維に比べれば、たしかにウールの乾くスピードが遅いのは事実なのですが、そのスピードがもたらすメリットも少なくありません。
一般的な化繊の速乾素材は、体から吸い上げた汗を生地の外側に強制的に移動させて、蒸発させることで汗処理を行います。そのため、繊維の中に水分がとどまる時間が短く、すばやく汗を乾かすことができます。
一方ウールは、高い吸湿性を備えるため、体の水分は繊維に一度吸収され、そこから継続的に蒸発し続けます。そのため、乾く速度は遅くなりますが、1本1本の繊維の中に水分が閉じ込められた状態になるので、ベタつきを感じにくいのが特徴。気温や湿度などの条件に大きく左右されることがなく、水分が体温を奪いにくい状態を保ちながら徐々に乾いていくので、風や気温の変化に影響されて、急激な冷えを感じることがありません。
大量に汗をかき続ける状況や、濡れて衣類が重くなるのが気になるという場合は、化繊とウールの混紡素材を使った商品を選んでみてはいかがでしょうか?ウールの快適性と化繊の速乾性や耐久性、両方のメリットを感じることができます。
■ユーザーの声
・厚手のメリノウールは確かに暑いし、汗をかきすぎると乾きにくいから寒く感じてしまう。しかし冬は冬の厚みのメリノウールを、夏は化繊との混合で速乾性もあるものをと使い分ければ一年中メリノウールは快適に着用できます。私は3種類の厚みのメリノウールのシャツを着て過ごしています。(40代女性)
・北アルプス白馬岳の夏、雨とレインコート内の湿気でシャツがびっしょりと濡れたが、ウールTシャツは、冷えが少なく乾きも速かった。(30代男性)
化繊とウールのいいとこ取りベースレイヤー
③チクチクする?
厚手のセーターやコートのイメージからか、やはりウールには「チクチクする」という印象を持つ人が多いことがわかりました。しかし、メリノウールはまったくの別物。売り場で初めて手に取って、手触りのよさに驚いて購入する人も多いのです。
ただし、同じメリノウールでも、素材のクオリティや加工の方法、縫製などによって、着心地に差があるのも事実。価格だけで選ばずに、品質管理に定評のあるブランドのものを選ぶとよいでしょう。
■ ユーザーの声
・化学繊維で肌荒れするのですが メリノウールに変えてからは肌荒れもせず快適です! お高いのが難点。(30代女性)
・肌負けしないし、ベタつかない。 汗冷えもあまりしないですね。(50代男性)
・安価な質の悪い製品だと、肌にチクチク当りすこぶる不快。ちゃんとした物を購入するきっかけになった。(50代男性)
YAMAPイチ押し!
最高レベルの肌触りなら、「スーパーエクストラファインメリノ」
より肌触りを重視するなら、メリノウールのなかでもトップレベルの品質を誇る「スーパーエクストラファインメリノ」シリーズがおすすめ。
本シリーズに使われているのは、なんと15.5μmという超極細繊維。その繊維の細さはカシミヤに匹敵するほどで、滑らかな肌触りが特徴です。メリノウールならではの着用感と機能性に魅力を感じていながらも、ウール特有のチクチク感が苦手という方にも安心な生地に仕上がっています。
素材のよさがたっぷり楽しめるメリノウール100%のベースレイヤー
④耐久性やメンテナンスが心配?
使わない理由だけでなく、使っている人からも聞かれた「毛玉」や「虫食い」に対する不満。製品の品質にもよりますが、これらは確かに、天然素材であるウールの弱点でもあります。
ただ、これらの弱点は、裏を返せば生きた天然素材である証拠。ウールを選ぶ理由として、「化繊が肌に合わないから」、「ウールに変えたら痒みに悩まされなくなった」などの声も多く、デメリットを上回る化繊にはまねできないメリットが、ウールにはあるということがわかります。
化繊ほどラフな扱いはできませんが、ほとんどの製品は、家庭の洗濯機でメンテナンスができます。せっかく手に入れたメリノウールを、長く快適に使いましょう。
TIPS:メリノウールを長持ちさせるメンテナンスの基本
1.洗濯表示をチェック!
製品に必ずつけられている洗濯表示に従うのが、メンテナンスの基本。混紡や縫製、付属パーツによって洗濯の方法が異なるので、表示マークや注意書きを必ず確認しましょう。
2.洗濯ネットを使おう
繊維同士が擦れるのを防ぐため、目の細かい洗濯ネットを使いましょう。裏返しにして、1つのネットに1枚ずつ入れるのが理想的。面ファスナーや金具のあるものと一緒に洗うのは避けましょう。
3.濡れたままは厳禁。すばやく乾かそう
洗い終わったら放置せず、やさしく形を整えてから、風通しのいい場所ですぐに乾かしましょう。製品やブランドによっては、乾燥機が使用できるものもあるようですが、取扱説明書をよく読んで、それぞれに合った方法を選びましょう。
4.保管時は防虫と防湿に注意
長期間使わないときは、汚れをしっかりと落として完全に乾燥させてから保管。メリノウールを虫食いから守るには、密閉できる保存袋などに入れて、外気や虫を完全にシャットアウトしましょう。引き出しや衣装ケースなど密閉性の低いもので保管する場合は、防虫剤が効果的です。
⑤値段が高い?
確かに価格は高めだし、高いわりに化繊に比べてセンシティブだし、保温性も吸汗性も高い化繊商品も、世の中にはたくさんあるでしょう。ウールのよさを実感するには、安いものをとりあえず買うのではなく、品質が確かなものを選ぶ必要もあります。それでもぜひ使って欲しいと思うのは、ウールが本当に優れた素材だから。一度使ったらとりこになって、日常生活でも手放せないという人も多く、使用頻度を考えたら、それほど高い買い物ではないようにも思えます。ただ、こればかりは選ぶ人の自由。無理強いをすることはできません。
もし、「ウールに興味はあるけれど、ベースレイヤーにそれほどお金をかけられない」、というのなら、それ以外のアイテムはいかがでしょうか? 手軽に試せる小物で、ウールデビューするというのもおすすめです。
『天然の機能性』をアウトドアライフに取り入れよう
メリノウール製品の魅力BEST5には入りませんでしたが、メリノには天然のUVカット効果もあるので、日焼けの気になる季節や、紫外線の影響を受けやすい高山にも役立ちます。南半球の高山で育つメリノ種の羊が、過酷な環境で生き抜くために授けられた『天然の機能性』をわたしたちのアウトドアライフにも取り入れましょう。
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