【YAMAP×マウンテンハードウェア】限定フリースジャケットをテスト&レビュー|立山登山ガイド・水間大輔
富山県と長野県の間にまたがる立山エリアをメインフィールドに、登山ガイド・スノーボーダーとして活動する水間大輔(みずま・だいすけ)さんに、YAMAPとマウンテンハードウェアのコラボ商品のフィールドテストにご協力いただきました。
Mountain Hardwear 公式アスリート
水間 大輔(みずま・だいすけ)
1978年生まれ。富山県富山市出身。ハーフパイプ競技でのスノーボードプロ資格を得る。現在は富山県立山町をベースに立山ガイドとして活動し、同時にスノーボーダーとしてバックカントリーフィールドにてスプリットボードを用いたスタイルで、さらなる奥山の斜面に思いを馳せている。 奥深い剱、立山の魅力を長期間に及ぶテント泊にて映像を集め、スライドショーや試写会を行い発信している。日本山岳ガイド協会 登山ガイド ステージII、スキーガイド ステージI、日本雪崩ネットワーク 雪崩業務従事者 レベル1
本拠地・立山での一泊二日の山行を通して感じたことを本音でレビュー。MOUNTAIN HARDWEAR 公式アスリート、そしてアルプスの山を知り尽くした登山ガイドならではの視点で、「着続けられるフリースジャケット」の実用性を解説いただきます。
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袖を通して最初に感じたのはグリッド構造の生地が生み出す「動きやすさ」
ー 晩秋の立山でのテント泊登山で実際に着用いただきました。率直な感想をお伺いしたいのですが。
まず感じたのは「動きやすさ」でした。生地の毛足が長いのに、グリッド構造のおかげか軽量でかさばらないので、レイヤリングしたときでもストレスがないんです。これまでのフリースやダウンは保温のみを目的としているものが多く、着ぶくれしたり、重ね着の際に窮屈に感じたりすることがありましたが、このジャケットは柔らかくてそういったストレスがまったく無かったです。
今回の山行では、朝3時にテントを出て雄山の山頂を目指しました。気温は5℃以下だったと思いますが、冷え込みが厳しかったので化繊のインサレーションジャケットを「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」の上に着用したのですが、冬想定のレイヤリングでも、本当に動きやすかったですね。その上で、行動中の「保温」と「通気」が効果を発揮したように思います。
快適な着心地のおかげで脱ぎ着のために立ち止まることもなく、朝日が昇る前に山頂に着くことができました。
同じフリース素材でも種類はさまざま。「行動中も着続けられるフリースジャケット」の真価とは?
ー やはり「着続けられるフリースジャケット」というのがポイントですね。
防寒着というと暖かさが気になりますよね。冬なら「保温力が高い方がいいもの」だと思っている方も少なくないでしょう。でも、行動を考えたとき、保温力が高すぎるとかえってデメリットになるケースもあるんです。
たとえばハイクアップ時。息が切れるほど登りがつづくようなシーンでは体がヒートアップして発汗もします。そんなときは厚手のフリースだとオーバーヒートしてしまい着ていられません。斜面の途中で脱いだり、着たりする必要があるでしょう。
一方、「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」は、行動を前提とした保温力のための生地選びをしているので、オーバーヒートのリスクはかなり抑えられていると感じました。また、生地が通気性に優れるグリッド構造なので、暑くなれば上に着ているジャケットを脱ぐことでクールダウンできます。風が抜けてくれるのでムレを瞬時にリリースすることができるんです。
実際、テントを出て一ノ越から雄山山頂への急登、そして山頂までずっと「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」を着用したままでした。登りで少し暑くなりましたが、上に着ていた化繊インサレーションジャケットのフロントを少し開けて通気したくらい。体温変化が少なく、まさに「行動中も着続けられるフリースジャケット」だなと感じました。
ー どのような使い方、レイヤリングが効果的だったか教えていただけますか?
レイヤリングは、化繊のベースレイヤーに「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」、冷え込みが厳しいシチュエーションではその上に化繊のインサレーションジャケットを着用しました。日中のハイキングであればジャケットなしでOK。気温が低くてもフリースが保温力を発揮してくれるので快適でした。
「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」はとても通気するので、風をいかにコントロールできるかが快適に着用するためのポイントです。基本的にはウインドシェルや化繊インサレーションジャケットと組み合わせることで、効果を存分に体感できるでしょう。
日中でも稜線など風が吹くシチュエーションでは風をブロックしないと体が冷えてしまいます。そんなときはウインドシェルを着用して、自分の身体と外気の間に「空気の層」を作ることで保温力をキープします。さらに気温が低いときは化繊のインサレーションジャケットで保温力をプラス。この組み合わせがあれば、晩秋から厳冬期、そして残雪期までカバーできると思います。
化繊インサレーションジャケットを重ねたときでも、フリース生地が汗やムレを外にどんどん出してくれるのでウェア内は快適でした。汗ムレを放出するためにも、ダウンではなく化繊素材の中綿がオススメ。ダウンだと濡れてしまって通気の効果がなくなってしまい、むしろ冷えの原因になってしまうでしょう。
公式アスリートが語る、デザインソースである「ポーラテックハイロフトジャケット」との違い
ー YAMAPの別注モデルである「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」には、ベースとなった「ポーラテックハイロフトジャケット」があります。
こちらもすごくお気に入りのモデルです。登山用の防寒着としては出番が少なかったのですが、毛足が長く保温力が高いのでキャンプなどの動きが少ないシーンで活躍しています。「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」がオンのときのフリースジャケットなら、こちらはオフのときというイメージですね。見た目は似ていますが、役割は大きく異なるなと今日の山行を通して改めて感じました。
ー YAMAP別注では、生地を「ポーラテックハイロフト」から「ポーラテックハイロフトグリッド」に変更したほか、ダブルジッパー仕様にしたり、ポケット位置を調整するなどアレンジを施しています。
ダブルジッパーはいいなと思いました。これまで使ったことはなかったのですが、ベンチレーションになると聞いて「なるほど!」と。たしかにフロントを開けられる方が、脇下や側面のベンチレーションよりさらに通気もできますし、瞬間的に暑さを和らげたいときにはよさそうです。
胸ポケットはバックパックのチェストストラップとも干渉しませんし、スマートフォンの定位置としてとても便利でした。山ではいい瞬間に写真を撮りたいので、サッと出し入れできるチェストポケットはありがたいですね。
同素材のフリースビーニーは、重量わずか27g。軽量コンパクトな登山の相棒
ー 今回の一泊二日の山行で一緒に使っていただいた「ポーラテックハイロフトグリッドビーニー」はいかがでしたか?
軽くてコンパクト。山頂や稜線で寒さを感じたときに、パッと出して保温できるのがよかったです。「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」と同じく、汗が抜けてくれるので帽子特有のムレがなく本当に快適でした。頭は思った以上に汗をかきやすい部分なんです。保温だけであればニット帽などがいいかもしれませんが、やはり「行動」を考えると、通気性の高い素材がベターだなと感じました。
生地に伸縮性があるので深めに被って耳を覆うこともできるし、朝晩は日中に被っていたキャップと組み合わせても案外調子がよかったです。
また、小さくなるから気兼ねなくバックパックに入れておけるのもいいですね。また、ニット素材だと洗濯に気を使いますが、フリース素材なので下山したら洗濯機で洗えるのも実用性が高いと思いました。
冬場でも汗ばむ登山やスノーアクティビティの強い味方。アクティブフリースで今冬も自然を満喫しよう!
ー これから冬になりますが、水間さんはどのような使い方を考えていますか?
「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」はミドルレイヤーなので、上に防寒着を重ねることで、厳冬期でもバッチリ使えます。基本的には行動中に着るもの、アクティビティに使うものなので、冬山登山やバックカントリーのスノーボードにもよさそうだなと思っていました。
汗抜けがいいのでずっと着ていられるんですよね。それはつまり、レイヤリングの調整が少なくて済むということ。行動時間の短縮にもなりますし、ガイドをしているとお客さんのサポートをしなければならず、着替えでモタモタしていられません。これは冬山登山での大きなメリットです。
これから立山は一足先に冬を迎えます。ガイド業もバックカントリースノーボードも、冷え込みが厳しいシチュエーションでは、快適にストレスなく行動できるウェアが欠かせません。今シーズン、「ポーラテックハイロフトグリッドジャケット」が大活躍してくれると確信しています。
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