知っておきたいパッキングの基本 & 達人の術
バックパックに荷物を詰め込んでさあ山へ。でも、登山中に必要な荷物が見つからなかったり、取り出しにくかったり…と、パッキングのせいで余計な時間がかかってストレスを感じてしまうことはありませんか? 今回は登山中に役立つパッキングの基本と、目からウロコな応用術をご紹介します!
とりあえずバックパックに放り込んでない?! まずはパッキングの基本から

パッキングでは、「どのような順番」で「どこに配置」するかが大切。一般的には、①頻繁に取り出すものは手前(使用頻度が低いものを奥) ②重いものは背中に近い側(軽いものは遠い側)、というのが基本です。
まず①の「頻繁に取り出すものは手前」について。開口部がひとつしかないバックパックでは、入れる口と出す口は一緒。当然のことですが、奥に入れたものは取り出しづらくなってしまいます。行動食や防寒着、レインジャケットといった頻繁に使うもの、すぐに出したいものは手前に入れるのが鉄則。一方、寝袋やテント場で使用する調理器具など、行動中に使用しないものは奥に詰めておきましょう。
②の「重いものは背中に近い側」は、力学的な考えがベースにあるのですが、荷重が体から離れるにつれて支える力がより多く必要になります。重いものを手にもって、胸元で保持するのと、腕を伸ばして保持するのとでは使う力が大きく異なりますよね。重い荷物をバックパックの外側に入れてしまうと後ろに引っ張られてしまい、歩行中はずっと負荷に耐えなければなりません。つまり、重いものはバックパックの背中に近い場所に入れることで余計な負荷がかからないということ。
実際にパッキングしてみよう
まず、バッパックの中身を「A:奥」と「D:手前」、さらに「B:背中に近い側」と「C:背中から遠い側」の4つに区分けして考えてみましょう。

パッキングの順番は、「A:奥」「B:背中に近い側」「C:背中から遠い側」「D:手前」。


A:奥=使用頻度が低いもの

一番奥に詰めるのは「使用頻度が低いもの」。取り出すときにはバックパックに入っているほかの荷物をすべて出す必要があります。予備の着替えや防寒着、テント泊であれば設営後に使う寝袋などです。
・寝袋
・着替え
・夕食の食材 など
〈おすすめのパッキングアイテム〉
B:背中に近い側=重量のあるもの

つづいて、背中に近い場所には重量のあるものを入れましょう。バックパックのちょうど真ん中あたりにあるため、比較的取り出しにくく、テント場に到着したときや大休止のときに使うものを入れるのがオススメ。
・テント
・食事用の水(行動用はサイドポケットなど)、ハイドレーション
・バーナーやコッヘルなどの調理器具 など
〈おすすめのパッキングアイテム〉
C:背中から遠い側=軽いもの、使う可能性が高いもの

こちらには軽いものを。例えばレインウェアや防寒着など、必ずしも使うかわからないけれど、使う可能性が高いものを収納しましょう。
・レインウェア
・防寒着
・予備の行動食 など
〈おすすめのパッキングアイテム〉
D:手前=使用頻度が高いもの

もっとも取り出しやすい場所には、行動食やヘッドライト、エマージェンシーキットなどを。バックパックの雨蓋を活用するのもOK。アクションを少なく、アイテムにアクセスできるのがポイントです。雨が降りそうであればレインウェアをここに入れましょう。
・行動食
・常備薬
・ヘッドライト
・エマージェンシーキット
・コンパス、地図
・レインウェア など
〈おすすめのパッキングアイテム〉
スタッフサックに小分けして収納上手に

どこに何を詰めればいいかお伝えしましたが、アイテムそのものだけを入れてしまうとバックパックのなかでごちゃごちゃになってしまいます。そこで活用したいのがスタッフサック。
カテゴリーごと、使うタイミングが同じもので整理整頓しておけば、使いたいときにサッと取り出せます。雨の日や夜間など、必要なものを取り出したり探したりするのが大変なシーンでもストレスがなくなります。注意したいのは小分けしすぎないこと。スタッフサックだらけになってしまうと本末転倒です。
機能性スタッフサックでレベルアップ
1)コンプレッションバッグで省スペースを

荷物をバックパックに詰め込んでいくと、寝袋のほか、ダウンジャケットやフリースといった防寒用のウェアが嵩張ることに気づきます。そんな「もこもこ系」のアイテムの省スペース化には、コンプレッションバッグ(=圧縮機能のあるスタッフサック)が大活躍。
寝袋や衣類に含まれる空気を抜くことで嵩張りを軽減し、荷物をコンパクトにしてくれます。イメージとしては布団の圧縮袋のような感じ。収納後にコードを引いて圧縮するため、小さなスタッフサックに無理やり詰め込むようなストレスはナシ。嵩張りそうなものはどんどん詰め込んでコンパクトに。
2)雨の日のパッキングはドライバッグが大活躍

着替えや食事、スマートフォンやカメラといった電子機器など、バックパックのなかには「濡らしたくない」アイテムがたくさん。とくに防寒着や寝袋は濡れると保温効果がなくなり、必要なときに効果を得られなくなってしまうため、確実に防水対策を施しておきたいもの。
そんなバックパックの雨対策ですが、レインカバーとドライバッグの組み合わせがベスト。雨が降ってきたらレインカバーをかけるという方が多いと思いますが、背面部分からの浸水は防ぐことができず防水対策としては不十分。そこで、濡らしたくないアイテムはドライバッグに入れてからパッキングすれば完璧です。ちなみに濡れたウェアやテントなどをドライバッグに入れておけば、他の荷物を濡らすこともありません。
応用篇:雨は?! テントは?! 次の行動を考えたパッキングを
「雨が降ってきたけどレインウェアが奥の方にある…」「荷物を全部出さないとテントを取り出せない…」などなど、パッキングのせいで山行時にストレスを感じてしまうケースはありませんか? パッキングの基本はあくまで基本。状況や次の行動を想定してパッキングする応用篇をマスターしましょう。テント場で荷物を広げることもなく、スマートな上級者の仲間入りです。

応用篇の例)
・麓は晴れているけれど、山頂付近は雨が降りそうだ
レインウェアやレインカバーといった雨対策グッズを取り出しやすい場所に収納しておきましょう。雨蓋を雨対策グッズの定位置にしたり、メインコンパートメントの最上部にスタッフバッグに入れておくのがオススメ。
・山頂でお昼ご飯、その後テント場へ移動
出発時はバーナーやコッヘルといったごはんセットを取り出しやすい位置に収納。昼食後はごはんセットはバックパックの奥に入れ、テントを手前に配置しましょう。そうすればテント場に着いた時にサッとテントを取り出すことが可能。とくに雨が降っているときは他の荷物を濡らすリスクも減らせて効果的です。
・雨の日の登山。テントの設営を考えた収納を
パッキングの基本では、テントの収納位置は「B:背中に近い側」。しかし雨が降っている場合は、思い切って「D:手前」に入れてしまうのもアリ。テント場に到着してからテントを引っ張り出しているうちに荷物がビショ濡れ…というリスクの軽減になります。

パッキング術は奥が深い!

ここで紹介したパッキング術は一般的なもの。バックパックの種類や山行のスタイル、天候などによって最適なパッキングは変わってきます。しかし、どの位置に何を入れれば使いやすいのか、どうパッキングすれば快適に山を歩けるのかといった基本的な考え方は変わりません。
「濡れたテントはドライバッグに」とご紹介しましたが、「ドライバッグには濡らしたくないものを入れて、濡れたテントはバックパックのボトムに入れる。そうすれば水が抜けて軽くなる」という考え方をする人もいます。
パッキングは十人十色。「登っていくうちに雨が降りそうだからレインウェアは上に」「山頂でごはんを食べたいから調理器具は手前に」など、山を考えながらパッキングしてみましょう。そうすれば、きっと苦手だった準備の時間も楽しくなるはずです。