パタゴニアの「クリーン・クライミング」提唱から50年ーー。不変不朽のコンセプトは今も
パタゴニアは1957年、イヴォン・シュイナード氏がロッククライミング用具の製造と販売からスタートしたアメリカのアウトドアブランドです。1972年にはピトンのように岩に打ち込むプロテクション(安全を確保するためのギア)ではなく、「チョック」と呼ばれる岩を傷つけずに岩の間に挟むタイプのプロテクションを開発し、販売を始めました。同時にアウトドア史上初めて「クリーン・クライミング」を提唱し、以降、環境保護に関する取り組みを精力的に行ってきました。
2022年は提唱から50年の節目になります。環境に配慮した活動が注目されるようになった昨今、アウトドア好きなら知っておきたいパタゴニアの環境保護に関する取り組みを、50周年を記念するスペシャルアイテムとともにご紹介します。
パタゴニアの原点は「クリーン・クライミング」にあり
パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード氏はクライマーで、1950年代から独学で鍛冶を学び、自分やクライミング仲間が使用するギアを開発・製造していました。1970年ごろまでには、北米でも有名なクライミングギアの製造・販売元になっていたそうです。
ところがシュイナード氏は急成長の真っ只中にも関わらず、自社製品の「ピトン」というギアの製造・販売を中止することを決意します。ピトンは岩に打ち込んで使うプロテクションで、これが多用されることで岩が変形し崩れてしまっているのを目の当たりにしたからです。
その後、ピトンに変わる製品の開発が進められ、1972年には「チョック」という岩の間に押し込んで使うプロテクションを発表しました。それと同時に岩を傷つけない、環境への影響が少ない「クリーン・クライミング」を提唱し、翌年の1973年にパタゴニア社を創業しました。
2022年は「クリーン・クライミング」提唱から50周年の節目
いまや環境への配慮はアウトドアブランドとしては常識になっていますが、そのきっかけのひとつとなったのが、このパタゴニアの「クリーン・クライミング」という概念です。そんな「クリーン・クライミング」の50周年を記念し、さまざまなスペシャルアイテムがリリースされています。
ノスタルジックな色味を新色としてリリースしたアイテムや、当時のカタログの図柄やフォントをオマージュしたTシャツコレクションなど、「クリーン・クライミング」が提唱された70年代を彷彿させるステキなアイテムばかりです。
リサイクル・ポリエステルや、オーガニックコットンなど、パタゴニアの環境保護活動を象徴する素材はもちろんのこと、2020年から採用された、海洋に廃棄された漁網を使った「ネットプラス・リサイクル・ナイロン」など、近年の取り組みで生まれたリサイクル素材も積極的に取り入れています。
言うまでもなく、製品の性能や使い心地はパタゴニアの「今」を詰め込んだ最高品質。スタートラインと現在が交差した、パタゴニアの歴史を語る上では欠かせない一品たちが揃っていますので、ぜひチェックしてみてください。
YAMAP STOREでの取り扱いがある「クリーンクライミングコレクション」のアイテム
YAMAP STOREでは、クリーンクライミング・コレクションのなかでも、クライミングだけでなく、登山やトレッキングにも役立つアイテムをラインナップしました。
夏のテント泊から冬場の中間着としてまで、活躍の幅の広さが魅力の「アルプライトダウンプルオーバー」(漁網リサイクル素材を100%使用)
廃棄された漁網を100%使用したリサイクル・ナイロンを採用。環境に配慮した耐久撥水コーティングが施され、機能性にも抜かりなし。中綿はNSFインターナショナル認証済み(強制給餌や生きたまま羽毛採取が行われていないことを保証)のグースダウンを使っています。肩周りや脇の下などでパターンが異なり、動きやすさは抜群。
ダウンを配分するキルトパターンにもこだわり、肘や肩は幅を細めにして配置。プルダウンだから保温性も高く軽量仕様に。70年代を彷彿とさせるクラシカルなレッドに、落ち着いたブルーの裏地が印象的です。
裏返すと、内側には封筒型ポケットが付いており、その中に本体が収納できる(WOMENSは左胸のチェストポケットに収納可)。
ロッククライミング仕様のディテールは山も街もカバー。「ベンガロックパンツ」(オーガニックコットンをメインに混紡)
オーガニックコットンに、ポリエステルとポリウレタンを混紡し、ソフトでほどよい伸縮性が。表面には環境に配慮した耐久性撥水コーティングが施されています。立体的なパターンのほか、足裁きを考慮した股下のマチ、屈伸を妨げない膝周りのダーツなど、動きやすさは◎。
クライミングはもちろん、低山ハイキングから長期縦走まで、どんな山行にもフィット。後ろの2つのポケットは摩擦の多いお尻部分を補強する役割も担っています。長く快適に使えるよう配慮されたデザインです。
考え抜かれた3つのポケット。補強布としての機能も果たすヒップポケット、右腿部分には深めのジップポケットが配置され、スマートフォンや行動食を入れて置くのにピッタリ。
暖かな季節に活躍間違いなし! パタゴニア最軽量パンツ「RPSロックパンツ」(リサイクルナイロンを使用)
廃棄された漁網を100%使用したリサイクル・ナイロンにポリウレタンを混紡した素材を使用。環境に配慮した耐久撥水コーティング済み。立体的なパターンと伸縮性のある生地は動きやすく快適と評判です。
パタゴニアの化繊のパンツのなかでも最軽量で、涼しく軽い履き心地。裾にはショックコードが仕込んであるので、すぼめて冷気を遮断したり、膝下までまくり上げたりできます。新緑の低山ハイキングから夏の縦走登山まで、暖かな季節に活躍間違いなしです。
ノスタルジックな雰囲気が山好きにはたまらない「オーガニックコットンTシャツ」(オーガニックコットン100%使用)
「クリーン・クライミング」の提唱から50周年を記念したコレクション。ROCコットン(リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットン)を100%仕様。RO認証は世界でも最高水準の認証で、土壌再建や動物福祉、フェアトレードなどの条件をクリアした製品にのみ付されるものです。
ワンウォッシュ加工済みなので、手に取ったときからやわらかく、縮みの心配もほとんどありません。肩の縫い目はテープ処理が施され、肌当たりが優しく、耐久性も◎。使い込めば味が出るのもコットンのよさ。永く愛用して、自分だけのTシャツに育てあげたいアイテムです。
理念として引き継がれていく環境保護活動
「クリーンクライミング」の提唱以降、環境保護の取り組みはパタゴニアの理念として引き継がれていくことになります。
1985年には売上げの1%を米国内外の環境保護団体に寄付を行うと誓約を掲げ、現在では「1% for the Planet」という2000社以上が参加する企業同盟にまで発展しています。1990年代に入ると、衣料品の素材の見直しが進められ、93年にリサイクル・ポリエステルのフリースの販売がスタート、96年に綿素材の製品はすべてオーガニックコットンに置き換わっています。
リサイクル・リユースに関する取り組みは精力的に続けられていて、2025年までに、ギアから衣料品まで、すべての製品において、再生可能な素材もしくはリサイクル素材に切り替えることを目標として掲げています。ポリエステル素材のリサイクル率は現状で89%。パタゴニアの熱意・行動力からすれば目標達成は序の口で、その先の展開をすでに見据えているのかもしれません。
愛着をもって使える一着をアウトドアに
登山道具・ウエアを購入するときは、デザイン性や機能性、使い勝手や価格など、さまざまな観点を天秤にかけ、選択することになると思います。近年はこうした観点に、製品がどうやって作られるか、どこからやってくるかなど、製品の工程や背景なども加わり、引いては環境配慮や企業理念などにも広がってきました。観点が増えるほど選ぶのは難しくなりますが、迷いに迷って選び抜いたモノはきっと愛着も深くなるはずです。
まだあるパタゴニアの新作、名品アイテム
山で、街で、これからの時期に着たい、パタゴニアの新作アイテム、名品の定番アイテムをご紹介。
これからの季節に活躍間違いなしの「アウター」
カジュアルなシーンから本格登山までバリエーション豊かな「パンツ」
着心地を追求した「Tシャツ」
モデル着用アイテム(パタゴニア以外も含む)
記事内でご紹介している「アルプライトダウンプルオーバー」「ベンガロックパンツ」に加え、男性モデルは以下のアイテムを着用しています。
〈LA SPORTIVA(スポルティバ)TX4/ブルー × グレー〉
スポルティバ のアプローチシューズ “TX シリーズ”の中でも、岩稜帯が混じる山歩きに適した軽量ローカットモデル。
〈patagonia(パタゴニア)/P-6ラベル トラッドキャップ/ネイビー〉
これからの時期のコーディネートにひと足し。つばはリサイクルした漁網100%で作ったネットプラス素材を使用。
〈MYSTERY RANCH(ミステリーランチ)/クーリー40/ブラック〉
山小屋泊やクライミングギアを詰め込んだ山行におすすめの40L。3ジップとフューチュラヨークシステムが特徴のバックパック。