山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

PLATFORM(プラットフォルム)は宮城県仙台市に拠点をかまえる新鋭のガレージメーカー。山、旅、街、日常へとボーダーレスに使えるギアをコンセプトに、個性派ぞろいのアイテムを世に送り出しています。

「あえて使い方を限定させていません。いろんな人に自由な発想で使ってもらいたいです」と楽しげに話すのは代表の平間徹さん。

平間さんが手掛けるのは、軽量性にこだわった収納アイテムたち。スタイリングに馴染むウエストポーチ「スペアポケット」、手のひらサイズ小物入れ「ゼニガメ」など、商品名も遊び心に溢れており、いずれも思わず手に取りたくなるビジュアルで、感度の高いハイカーから注目を受けています。

こうしたユニークな商品はどうやって生み出されたのか。また、製品を作るうえで大切にしていることはなにか。固定概念にとらわれないプラットフォルム流のモノづくりを伺ってきました。

(インタビュアー/記事:挟間美優紀、写真:鍛冶雅志)

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

−まずは、山をはじめたきっかけを教えてください。

実は山を始めたのが30代にはいってからなんです。友人たちに誘われて仙台市にある太白山に登ったのが最初でした。それから、「自然のなかでオーバーナイトしたい」という思いから、ソロで飯豊山を縦走するなど主に東北の山をメインに歩きましたね。

最近では、低山で藪こぎしたり、自分でルート探しをしてみたり、変わった形の岩を見に行ったり。ピークハントというより、探検要素が多い里山を歩くスタイルがあっているのかもしれません。そういう型にはまらない山歩きは、道具作りにも表れていると思います。


−プラットフォルムのギアも軽量素材を使われていますが、最初からUL(ウルトラライト)を意識していたのでしょうか。

最初はまったく。それこそ最初は縦走用の重いバッグパックを背負って登っていました。でも調べていくうちに、装備が軽いULという文化があるらしい、と。何より衝撃を受けたのは、ULの父と言われているレイ・ジャーディンの「シンプル」な道具づくり精神。山道具は自分で作れるし、縫い目が曲がっていてもいいんです。いわゆる「MYOG(Make Your Own Gear)」に出会ったことで、それまではバッグの構造なんて気にしたことなかったのに、自分で作ってみて完成した時は「本当にできちゃった!」みたいな感じで、ものすごく感動したのを覚えています。

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

―自作カルチャーを知って、作るほうに興味が出たのですね。

もともと何かを表現するのが好きで、音楽も好きなんです。サンプラーという機械を使っていろんな音とミックスすると、音楽のセオリーを知らなくても音を楽しめるというか。それが製品作りに近い部分があって、既製品で完成されたものとかじゃなくても、自分が楽しめる道具を使えるというところは音楽にすごく近いなと感じます。


−裁縫やモノづくりの経験はあったのですか?

小学校のとき家庭科の授業でやった程度で、ミシンなんてほとんど触ったこともなかったです(笑)。なので、まずは中古のミシンを購入して、とりあえず作ってみようと。

あと祖父が靴屋を営んでいて、小さい頃から靴の修理や革をたたく姿を見てきた影響もあると思います。靴と向かい合う祖父の姿を見てきたので、簡単なものを作ったりするなど、何かを作りたい欲求は昔からありましたから。たぶん、モノづくりの精神は祖父から受け継がれたのだと思います。

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

−ブランド立ち上げはお祖父様の影響が大きいと。

祖父の存在はかなり大きいですね。あと、3.11の震災を経験した影響もあると思います。その頃、自分は仙台市内にいたので無事でしたが、沿岸部では多くの人が被害に合われました。震災をきっかけに「人の一生ってなんだろう?」と考えるようになり、だったら悔いのないよう、自分が好きなこと、するべきことで生きていきたいという気持ちが固まったのもこの時だったと思います。

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

−ブランドの顔でもあるウエストポーチ誕生のきっかけを教えてください。

サコッシュスタイルが主流のなかで、昔からあるウエストポーチをつけている若い人はほとんどいません。でも、年配の方はウエストポーチをつけているし、便利なのになんでみんなつけないでだろうって。僕も以前、腰回りに道具をつけて仕事をしてたとき、やはり腰は手からも近く、道具の出し入れをするのに最適な場所なんですよ。

でもいざウエストポーチを探してみると、既製品はいまいちに使いにくい。使いやすくてもっとシンプルに使えるようなものを提案できないかなと。便利なのに見過ごされた物に新しい価値観を出せたら面白いじゃないですか。

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

−製品を作るうえで苦労したことはありますか?

理系の人間でないので、パターンを制作するときに苦労しました。数字が得意なら計算してピタッと合わせることができるのかもしれませんが、数字に強くないのでとりあえず作ってみて何度も修正を繰り返す。思った以上に時間がかかってしまうんですよね。でも、試行錯誤を繰り返すうちに、ちょうどいいサイズ感にたどり着けることができたと思います。

大きすぎず、でも必要な小物を入れるためには小さすぎず。絶妙なサイズ感を出すために、自分の感覚にたよったところが大きいと思います。

−製品づくりで大切にしていることは?

持ったときのサイズ感も大事ですが、ライフスタイルに溶け込んだモノづくりも意識していますね。登山用と限定するのではなく、普段から持って歩けるようになるべくシンプルに。ブランドの方向性でもあるのですが、街、山、旅とボーダーレスに使えるギアとして、機能をどんどん足していくより、分かりやすく使えるとものを提案するように心がけています。

あとは完璧さを求めないというか。使い手が自由な発想でギアを楽しめるように、少し足りない感じにして完璧にしない。

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

例えば、この「ゼニガメ」も端材から作ってみようと思っただけで、特に小銭入れに限定しているわけではありません。USBメモリーを入れでもいいし、ピルケースでもいい。使い方はさまざま。そういう不完全さがプラットフォルムらしさででもあるし、製品作りをしていて意味があるのかなと思います。


−YAMAP STOREで取り扱うアイテムについてご紹介ください。

サイズ感がちょうどいいウエストポーチ「スペアポケット」

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

スペアポケットはスマホや行動食といった小物を収納するのにちょうどいいウエストポーチです。ポーチの本体部分は1枚生地で生成され、生地には軽くて防水性のあるリサイクル素材を使用しています。ジッパーは真上ではなく、斜め45度に設定することで、物の出し入れがしやすくなるように工夫しました。

横から見ると両サイドが三角形になっているのが分かります。これは、小物を入れた時に重心が身体側に寄せられる形になるように意識しました。

また中心からボトムにかけては中心からボトムにかけて細くなっていく仕様で、小物の動きが前後しないよう設計しています。使い勝手がいいので、サイクリングや普段の生活のなかでも使ってもらえたらと思います。

手のひらに収まるコンパクト収納「ゼニガメ」

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

あまった端材を活用して作ったミニポーチです。四隅の角を落としたことで、亀の甲羅のような形になったのでゼニガメ。手の指に引っ掛けることでジッパーが開きやすい作りになっています。

片手に収まる超コンパクトサイズだから、バックパックの肩部分に引っ掛けても邪魔にならないと思います。個人的には山の中の神社でお賽銭だすときなんかに使っていますね。軽量で防水性にすぐれているので濡らしたくないお札をいれても大丈夫です。

山から日常とボーダレスに。あえて型にはめないプラットフォルム流の製品づくり

−最後に、今後はどのような製品を作っていきたいとお考えですか?

製品でいうなら、やはり大物のバックパックですね。

あとは今後も自分らしいものを作っていきたい。例えば巻きたばこケースを作ったりもしているのですが、「山でちょっと美味しいビールを飲む」というのがあるなら、「自分で巻いたタバコで美味しい一服」というのがあってもいいんじゃないかなと。

すでに誰かが作っているものでは意味がないので、使い方の新しいアプローチやスタイルを含めて、自分なりのものを作り続けるだけです。

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