【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

「濡れに強い」「一年中使える画期的な化繊インサレーション」。

このキャッチフレーズとともに登場したYAMAP別注「ポリゴンライトジャケット」と「ポリゴンライトパンツ」

筆者ももちろんその存在は知っていました。でも寒がりな体質なので、どちらかというと化繊よりもダウン派。「良さそうなアイテムだな〜」と思ってはいたものの、すでにお気に入りのダウンがあったこともあり、なんだかんだで着る機会がありませんでした。

そんな矢先、YAMAPスタッフの近藤さん(通称コンちゃん)から「使ってみませんか?」という声をかけてもらい、二つ返事でレビューすることに!

「本当に一年中使えるの?」「濡れに強いっていうけど、それって本当?」といった疑問を含め、使い勝手や機能について、実際に使ってみて感じたことを正直ベースでお伝えします。

YAMAPの製品レビューをYAMAPの公式サイト内で書く……わけですが、忖度は一切しませんので悪しからず!

(撮影:茂田羽生)

山畑 理絵(やまはた りえ)

登山歴15年のライター・編集者。元アウトドア用品専門店スタッフ。のんびり日帰り低山から、山小屋グルメ堪能ハイク、テント泊縦走まで楽しむ。ホームマウンテンは奥武蔵。現在は3歳の娘と山歩きとクライミングジム通いに没頭中。

そもそもどんなアイテム?

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

YAMAP別注の「ポリゴンライトジャケット」と「ポリゴンライトパンツ」を説明する上で、一番大切なポイントは使用されている素材についてです。

このウェアに封入されているのは、「ファインポリゴン®」というfinetrack(ファイントラック)の自社開発による特殊素材。ダウンのような羽毛でもなく、一般的な化繊綿のようにワタ状でもありません。新聞紙をくしゃくしゃにしたような「シート状」の保温材が使われています。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力(「ファインポリゴン®」。極薄の特殊シート生地を、最先端の収縮加工で立体構造に仕上げています)

このシート状の立体保温素材は「世界初」。ファイントラックのモノづくりにかける情熱が、世界初の画期的な素材を生み出したというわけです。

「ポリゴンライトジャケット」を透かしてみるとご覧の通り(画像:右)。保温材がワタ状ではなく、シート状であることがわかります。

この「ファインポリゴン®」を使ったアイテムがもつ強みは主に以下の3つ。

  1. 多少水に濡れても暖かい
  2. 保水しないから乾きが早い
  3. 保温材の偏りや抜け出しが少ない

このように、ダウンや一般的な化繊綿の弱点を克服している素材ということです。

今回レビューするYAMAP別注の「ポリゴンライトジャケット」と「ポリゴンライトパンツ」には、この「ファインポリゴン®」が2枚封入されています。

実際どうなの?正直にレビューします

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

ここまで書いていて、とにかく「すごいスペックなんだな」ということは理解できました。しかし、いくら机上で学んでも、体感しないとピンとこないもの。

ということで、「YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」を実際に水で濡らして実力を検証してみました。

【検証その1】濡れても温かい?

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冬の時期に山で雨に濡れた状況下を作るのはいろいろリスクがあるので、自宅のシャワーを活用して検証。着用したまま3分間強めのシャワーを浴びて、ジャケットを濡らしてみることにしました。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

最初の30秒くらいは表地が水をつるつると弾いてしまい、中まで全然濡れない様子でしたが、容赦なくジャージャーと水を浴びさせていくと徐々にしんなりしていきました。

まずは家のベランダで着てみることに。あれ、なんか軽いし、あんまり濡れてないのかも? と感じたので、今度は桶に水を張って思いっきりジャブジャブ。

沢にでも入らない限り、山でこんなに濡れることはありませんが、今回は検証なのでちょいとオーバーに。これで中までずぶ濡れです。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力(桶でジャブジャブしたあと(左)は550gに。乾いているときの約2倍以上になりました)

検証時の気温は19℃、天候は薄曇り。2月中旬にしては日差しの暖かさを感じる日ですが、風速は5mで結構強め。周囲の落ち葉が勢いよく飛ばされていきます。どうやら春一番が吹いていたようです。

ということで、家から公園に移動して、ずぶ濡れになった「YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」を着て歩いてみます。ちなみに、ジャケットの下はメリノウールの半袖だけ。保温材の温かさを感じやすいよう、あえて最低限のレイヤリングにしました。

【結果】温かいというより寒くない

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

羽織った瞬間は、地肌に冷たい裏地が触れてヒヤッと感じたものの、「あれ……? なんか濡れている割には寒く感じないな」というのが最初の感想。ぽかぽかを感じる温かさではなく、「寒くない」という表現がしっくりくる感じ。

そして、着てみて気がついたのですが、保水している部分が明確に分かる! 色が濃く見えている部分は、保水している証拠。おもに縫い目、袖口、裾まわりが濡れています。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力 (重力にしたがって、袖口や裾まわりに水が溜まり、どんどん流れ出ていきます)

そのおかげで手先とおしりは冷たいですが、ボディ部分は濡れ感がなく、これにはびっくり。「ファインポリゴン®」が保水しにくいというのは本当なんだな、と実感しました。

それに、ダウンや一般的な化繊綿は水を含むと重たくなりますが、濡れていても軽い着心地なのも驚いたポイント。確かにずぶ濡れにしたはずなのに……!

【検証その2】乾くのは早い?

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

濡れてもウェア内に水を溜めにくく、かつ極薄の素材のため乾きが早いところも特長とのこと。ならばと、どのくらいで乾くか試してみました。

用意したのは「YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」と、薄手長袖の化繊ベースレイヤー。化繊のベースレイヤーといえば乾きが早い素材の代表格。なので、この2つを同じ条件で洗濯・脱水したあとに部屋で干して、乾きのスピードを測ってみました。

【結果】速乾Tシャツなみにすぐ乾く

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室温は18℃。扇風機の弱風を当てながら乾かしてみた結果が以下の通り。

  • 化繊ベースレイヤー:1時間30分
  • ポリゴンライトジャケット:1時間50分

どちらも2時間たたずにサラサラに。むろん同じ乾燥スピードとはいかないものの、薄手ベースレイヤーと保温材入りの差が20分って、スゴすぎません……? ダウンじゃ絶対にありえない……。

仮に山で濡らしてしまったとしても、状況によっては着ながら乾かすことができちゃうかも!? ってくらい、乾きの早さにびっくり。夏ならもっと素早く乾きそうです。

なお、「YAMAP別注ポリゴンライトパンツ」もジャケット同様に1時間50分ほどで乾いていました!

【検証その3】保温材は偏る?

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

「YAMAP別注ポリゴンライト」シリーズに使われている保温材はシート状です。そのため、濡れても中綿が偏らず、それによって保温性が左右されにくい強みがあります。

実力を確かめるために、濡れた状態でしばらく吊るしてみました。

【結果】濡れてもロフトが均一

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

濡らしたジャケットを持ち上げてみても、ダウンのように大きな保温材の偏りは感じません。 かさ高の変化が少ないので、保温性をキープできるということなのでしょう。

雨雪以外にも、アウトドアシーンでは汗や結露など水濡れの可能性はあるので、濡れても保温力が偏らないのは安全に登山を楽しむうえで最も欠かせないポイントですね。

使って感じた4つの魅力


とにかく洗濯と乾燥がラク

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型崩れしないことによるメリットは、もう一つ。洗濯するとき、そして洗濯後のお手入れもラクちんということです。

洗濯の手順は、日常着を洗うときと同じ。洗濯洗剤を入れて、標準コースで洗えばOKです。ここでのポイントは、洗濯ネットに入れること、柔軟剤は使わないこと。洗濯ネットに入れることで生地の傷みを防ぎ、柔軟剤を使わないことで生地の機能を損なわないそう。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

洗ったあとは、日陰に吊るして干すだけ。「YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」は中綿の偏りがないため、そのまま吊るして乾かせるイージーケアがとにかくいい! 

なんせダウンウェアの洗濯は羽毛の偏りをなくすために手間がかかるので、日常着と同じように干せるのはありがたすぎます。

窮屈さを感じないデザインもよき

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ダウンや中綿入りの防寒着は、少なからず動きづらさを感じることがありました。ジャケットなら腕が上げにくかったり、パンツならしゃがんだときに突っかかりを感じたり。

一方、YAMAP別注「ポリゴンライト」シリーズは動きやすさまでしっかりと設計されています。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

くどいようですが、ここでも「シート状」の保温材がミソ。羽毛入りのダウンウェアと比べるとカッティングの自由度が高く、動きやすさ、シルエットを考慮したパターンを採用できるのだそう。そのため行動中でもつっぱり感がなく、とても快適でした。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

「ポリゴンライトパンツ」に関しても、股下にストレッチ生地のガゼットがあることで大胆な足上げが可能です。この身のこなしの軽さは一度体感するとクセになる!

春夏秋冬で使える

YAMAP別注「ポリゴンライト」シリーズは分厚すぎず薄すぎない、絶妙な厚み。1年を通して防寒着として役に立ちます。

たとえば、夏のアルプス。下界は暑くても、標高を上げるにつれて肌寒さを感じることはよくあること。「頻繁には着ないけれど、どこかのタイミングで防寒着が必要になるかも……」というシーンで、この程よい保温力、軽さ、コンパクトさはとても重宝します。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

防寒着を着る予定のない夏の低山などであっても、いざというときのお守りとして気兼ねなく携行できるところもいいな、と思いました。

日常生活でも着まわしやすいデザイン

ここまで優秀なアイテムを、山だけで着るのはもったいない……。普段使いしやすいポイントが多いところも魅力的。

たとえば、重ね着しやすい「薄手」で、首元が襟のない「クルーネック」仕様であること。これならコートの下に違和感なく着込めますし、フードを出してもサマになります。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力(インナーとして着る際は、裾口のストレッチ部分を織り込むことで、アウトドア感がなくなり着回ししやすい)

それに「ダブルジップ仕様」も惹かれたポイント。下からジップを上げるだけでスタイリングの幅が広がるんですよね! ワンピースと合わせたときもバランスがよく見えます。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

山ではウェア内の換気が手軽にできて、腰回りの圧迫感も和らげられますし、この「ダブルジップ仕様」は山使い・街使いでグッと便利。

決して安い買い物ではないので、着まわしが効く=着る回数を増やせるところも高評価です。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

「YAMAP別注 ポリゴンライトパンツ」は、ワイドすぎない美しいシルエットが特長です。野暮ったく見えないので、寒いときはトレッキングパンツとしてはくのもアリですし、スカートの下にはいておけば見せない防寒対策の完成。キャンプのときにも重宝しました。

【ここは注意】「とにかく保温!」を求めるシーンには向いていない

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

筆者が「ポリゴンライト」シリーズをおすすめしないシーンを挙げるとしたら、とにかく暖かさ優先の防寒着を求める場面です。

先ほどもお伝えしたように、分厚すぎず薄すぎない絶妙な厚み。だからこそ1年を通して、山でも街でも着まわししやすいわけですが、そのぶん冬の寒さの厳しい状況下では、人によって保温力の物足りなさを感じるかもしれません。

筆者は寒がりな体質なこともあってか、行動中はちょうどよくても、停滞時はアウタージャケットをプラスしても「もう少し保温力が欲しいな……」と感じる場面がありました。

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力(冬は重ね着で保温力をプラスするなど工夫が必要)

もっと保温力が欲しいというときは、防風性の高いアウターや防寒小物を足したり、「ファインポリゴン®」が3枚封入されている「ポリゴンアクトフーディ」などを選んだりすると、より高い保温力が得られるでしょう。

保温性だけでみたら「最強」というわけではない。ここだけは注意しておきたいポイントかな、と思います。

【レビュー総評】使い勝手◎の化繊保温着でした

【本音レビュー】ダウン派でも欲しくなる化繊ウェア。 使ってわかった3つの実力

山行中の「濡れは大敵」。濡れたウェアは気化熱によって体から体温を奪い、ときに低体温症などのリスクを高めてしまうからです。でも、濡れても暖かさを失いにくいYAMAP別注「ポリゴンライトジャケット」と「ポリゴンライトパンツ」を持っていれば、そのリスクは低減できる、これはハイカーにとってとてつもなく心強い存在です。

筆者は今年の冬のアウトドアと日常生活をこのウェアを使って過ごしましたが、山で、キャンプで、日々の生活で登場するシーンが多く、その有用性を感じました。

しかも、たくさん着て、汚れても、いつも通りの洗濯でいい。乾燥も吊るしておくだけ。忖度なしに想像していた以上の実力で、この扱いやすさを味わってしまうと、正直お手入れがデリケートなダウンの出番は減りそうだな……と思いました(もちろんダウンならではのよさもあります)。

春、夏、秋の始まりの登山では、おもに休憩時の"停滞用"保温着として。秋の深まる季節〜寒さが厳しい冬の登山では、おもに"行動用"保温着として。日常でも着まわしやすいデザインなので、多くのシーンで支えてくれます。ぜひ多くの方々に使っていただき、このよさを共有したい!

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