RIDGE MOUNTAIN GEARが提案する、山と街をつなぐギアとスタイル

「山で過ごす時間と、日常をシンプルに過ごすための道具を作りたいんです」。そう話すのはRIDGE MOUNTAIN GEAR・代表の黒澤雄介さん。サコッシュやポーチをはじめ、ウェア作りにも取り組むなど、アウトドアとライフスタイルという2つのシーンをつなぐプロダクトは、どのように生まれてきたのだろうか。ブランドの立ち上げから製品開発に込めた思い、そしてこれからの展望を伺いました。
(インタビュアー:YAMAP 清水直人、記事/撮影:小林昂祐)

RIDGE MOUNTAIN GEARが提案する、山と街をつなぐギアとスタイル

—まず、RIDGE MOUNTAIN GEARのブランドコンセプトについてお伺いさせてください。

アウトドアブランドではあるのですが、山と日常をシンプルに過ごすための道具を作るメーカーだと考えています。付け加えると、山と日常の境界をなるべくなくしたいという思いを持って、日々製品づくりを行っています。

それはどういうことかと言うと、僕自身山に出かけることは好きなのですが、前日のパッキングが億劫に感じてしまったり、片付けが面倒になってしまったりということがあるんですよね。道具もウェアも、「あの山に久しぶりにいくけど何を持っていけばいいのかな」と考えることが小さなストレスになってしまっていて。ルートを考えたり、宿泊場所を選んだりするのは好きなのですが、道具の選定やウェア選びをもっとシンプルにしたいというのが根底にあります。

—たしかに、翌日山に行こうと思っていても、その日家に帰るのが遅くなると腰が重くなってしまうことがありますね。

そこで、サコッシュやバックパックといった身近なギアを、山と日常分け隔てなく使えるものにしたいと考えたんです。主にスリーシーズンの山で使えて、日常でも着ることのできるもの。それらがひとつのクローゼットに入れられるようなイメージです。

今日着ているシャツは試作品なのですが、ジャケットを羽織れば山に行ける機能とデザインになっています。山でも使えるけど、街に下りてきても違和感がないものにしたいんですよね。電車で山帰りの人を見ると「あの人山に行ってきたな」って思いますよね。そうではなく、街に戻ってきても違和感なくファッション的にも気にならないようなもの作りをしたいと思っています。

登山をはじめた頃は、生地のスペックや機能も気になりましたし、「あの人山に行くのかな」って思われるのが快感というか(笑)。普段の自分と違うように思われるのがよかったときもありました。でも、だんだん日常との乖離が気になるようになりました。山も街ももっとフラットでいたい。でもそういう服ってあまり多くないんですよね。だから自分で作ってみようと。

RIDGE MOUNTAIN GEARが提案する、山と街をつなぐギアとスタイル

—RIDGE MOUNTAIN GEARというブランド名はどういう意味でつけられたのでしょうか?

山登りをはじめたのが2011年。そのときから写真を撮るのが好きで、登山の様子をブログに書いていたんです。そのブログのタイトルが「RIDGE」でした。山のなかでも尾根(=リッジライン)を歩くのが好きだったので、「RIDGE」という言葉をブランドの冠にしました。

—はじめはブログだったんですね。でもそこからメーカーになるまではどのような経緯があったのでしょうか?

ブログをはじめて少し経ったときに、UL(ウルトラライト)、MYOG(Make Your Own Gear)という文化に出会いました。まわりの山仲間にもそういう人が増えてきて、自分でギアを作るようなシーンが生まれていました。

僕もできるのでは、と思ったんです。というのも、専門学校は服飾、前々職も服飾関係だったこともあって、ミシン作業には自信があったんです。でも周りのMYOGをやっている人って、ミシン未経験者がほとんど。そういう人がバックパックを作ったりしてすごいなと思っていて、だったらミシンできる僕が作ったらと考えたんです。

RIDGE MOUNTAIN GEARが提案する、山と街をつなぐギアとスタイル

最初は作ったものを写真に撮ってブログに載せて、みんなで見せ合っていました。今はSNSがありますが、当時はブログで、ちょっと前はBBSという掲示板もありました。作ったアイテムをブログにアップすると、コメントをもらったり、なかには「欲しいです!」みたいなメールをくれたりするようになりました。当初は一件ごとにやりとりして、作って、お金振り込んでもらって、送ってというような感じでした。実物が見たいと言う人には、道端で待ち合わせて見せたりしたこともありました。

でも、だんだん欲しいと言ってくれる人が増えてきました。ちょうどウェブショップのサービスが出てきたので、オンラインショップを開設してみて、そこでしっかり売れるようになって、今に至るという感じですね。

—最初はどのようなアイテムを展開していたのでしょうか?

ハイカーウォレットですね。今も作っているアイテムなのですが、カードと紙幣とコインが数枚入るようなお財布です。ガレージメーカーではよくあることなのですが、小物からスタートして、サコッシュ、バックパックなどの大物に向かっていくというのは王道の流れですね。

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—UL(ウルトラライト)の影響はありましたか?

当時、山に登りはじめたときはULは知らなくて、大手メーカーのバックパックを使っていました。北アルプスを登るときの荷物で一番重いと18kgくらい。当時、重さはあまり気にしていなくて、重ければ重いほどいいみたいな気持ちでした。でも、歩き切ったときにさすがに無理だなと(笑)。

山を下りてきて、うっすらULハイキングという言葉を思い出して、本格的に調べてみたんです。そこから荷物を軽くしていきましたね。

前職で勤めていたアウトドアブランド「山と道」に出会ったのもその頃でした。はじめはいちユーザーだったのですが、イベントに遊びに行ったり、使った製品のことをブログで書いたりしていました。すると代表の夏目さんが見てコメントをくれたりして、一緒に山に行くようになったんです。

次第に、「山と道の製品をフィールドでテストしてほしい」「こういう製品を考えてるけどサンプルを縫ってほしい」という関係になって、最終的に「山と道で働かない?」と誘ってもらい、2015年に入社することになりました。

—やはり山と道での経験が、今の活動に繋がっているんでしょうか?

そうですね。企画から製造、販売までの流れを経験させてもらうことができました。山と道に入社したあとも自分のブランドは続けたいと言っていて、ゆくゆくは独立したいということも了承してもらっていました。今の業務のほとんどは山と道で学んだことで支えられていると言っても過言ではありません。

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—RIDGE MOUNTAIN GEARでのこだわり、大事にしていることを教えてください。

まずひとつは、自分が欲しいもの、身につけたいものであることを大前提にしています。「この世にないものを作りたい」という大義名分はなくて、単純に自分が着たいものを作りたいんです。

また、クオリティも大切にしたいですね。服飾の専門学校に入ったときも服を綺麗に縫うことが好きでした。デザインよりも綺麗に仕上げることが好きだったんですよね。ミシンの糸調子が素材に合っているかどうか、針の太さが合っているか、そういうところは大前提なのですが、さらに素材に合ったミシンのピッチを何センチに何針にするか、何番の糸を選ぶのか、どういう素材の糸かなどなど。そういうことがクオリティだと思っています。ほんのちょっとの違いで製品の出来上がりが違います。表から見えない縫製が強度に大きく関わることもあります。

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—デザインやスペックだけでなく、縫製による仕上がりもモノのクオリティですよね。

そうなんです。加えて、どのように作られてきたかもしっかり伝えていきたいと思っています。アウトドアのウェアや山道具って、素材や機能はしっかり書かれているけど、製品がどこで、どういう風に作られているかという情報ってあまり伝えられていないですよね。

そこで、RIDGE MOUNTAIN GEARではどの工場でどういう人が作って、どういう手間暇がかかっているということを、これから製品ページに載せていきたいと思っています。野菜も生産者が見えるとかありますよね。フェアトレードのように、お互いストレスなく、メーカーと工場が対等に付き合えるようにしたいんです。

そして道具自体がサステイナブルでありたい。どういう思いで作られているのかを伝えること、壊れても修理して長く使っていけるような発信をすることは、これからメーカーとしての責任になってくると感じています。

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ーセールで安く買うのと、メーカーの想いに共感して買うのとでは、明らかに愛着が違いますよね。サスティナブルってそういうことでもあるのかなと思います。
企画から製品が完成するまでの流れはどのようになっているのでしょうか?

大きく分けると、ギアとウェアの2つがあります。ギアに関しては試作、最終段階まで自分で作っています。なんとなくこういうのが作りたいなというのを頭に思い描いて、紙のパターンに起こします。パタンナーの経験もあるのですが、とくにULハイキングやMYOGの影響があるギアは複雑な形状ではないので、とりあえず作ってみて、ここをこう変えたいなということをプラスして完成系まで持っていく感じですね。

ウェアに関しては、やはり自分が着たいもの、作りたいものを、2人のパタンナーさんと一緒に作っています。リクエストを伝えて、パターンを引いてもらうんです。それをサンプル工場や量産工場に送って、使いたい素材も自分で選んで送って、サンプルを作ってもらいます。上がってきたものに修正を加えてということを何度か繰り返して、OKになったら製品化です。

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—製品化にはどのくらいの期間がかかるのでしょうか?

まちまちですね。最近はアイテム数が増えてきたこともあって、いくつも並行して制作しています。量産品を製作しながらサンプルの試作や開発を同時におこなっているのですが、ウェアに関しては自分で縫うと大変なので工場に依頼しています。

その場合、依頼してからサンプルが上がるまでに時間がかかってしまうので、いくつも並行することで待ちの時間がなくなるように調整しています。今は待ちの時間がなくなるように調整しているので、そのサイクルがとても楽しいですね。

期間でいうと、思い浮かんでから試作を作って、1年はかかると思います。アイテムによっては試作を作ったけど放置、みたいなのもあります(笑)。頭のなかでずっと気にはなっていて、寝かせておくみたいな感じです。いいアイデアが思いついたらまた進める、ということもありますね。

RIDGE MOUNTAIN GEARのアイテム展開は、いわゆるアパレルのSSやFWというようにシーズンごとではないので、ゆっくり、納得するものが完成したら販売というイメージです。メーカーはシーズンや年ごとにデザインが変わって、目まぐるしいですよね。服作り自体は好きなので、満足できるスパンでものづくりをしたいと思っています。もちろん季節ものはあるのですが、今年間に合わなければ来年でいいかなとか、夏のものでも冬に販売してもいいので、ある程度は気にしてはいますが自由にやっています。

—YAMAP STOREで取り扱いのあるアイテムをご紹介いただきたいです。

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推しアイテムは「グリッドメリノ イヤマフキャップ」ですね。「ベーシックキャップ」というキャップがベースになっています。展開はワンサイズなのですが、深めの設計になっています。というのも、僕の頭が大き目だったので、これまでフィットするキャップがなかったんです。製品版も自分に合わせて作っているので、販売する前は女性用に小さいサイズを作ろうかと悩んだのですが、ずっとワンサイズで販売しています。コードでフィット感を調整できるので、女性でも大丈夫。絞ると製品自体の形が変わるのもそれはそれで面白いのかなと思っています。

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「グリッドメリノ イヤマフキャップ」は冬に使えるようにグリッド状のメリノウール100%を使用しています。グリッド状なのでムレにくいのが特徴です。停滞時は寒いときもあるかもしれませんが、行動時の着用を想定しているので、快適に登山ができると思います。耳にあたる箇所は生地を二重にして保温効果を高めています。

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こちらは試作品ですが、バックパックを作っています。最大で20リットルくらい、デイハイキングやファストパッキングにちょうどいいサイズです。フロントは巾着型のポケットで、雨蓋をつけてみました。

今まで何度もバックパックを試作してきたのですが、いわゆるULハイキングでよくみる形になりがちなんです。なかなか製品として出そうと思うまでいかないので、一度従来のデザインから離れてみて、違うタイプで作ってみたんです。これはとてもしっくりきたので、まずは小さいバックパックから製品化してみようと思っています。

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—RIDGE MOUNTAIN GEARのアイテムはどんなユーザーに使ってほしいですか?

正直に言うと、全てのユーザーに使ってほしいというのがあります。でも、最初にブランドのコンセプトでも話したとおり、「山と街との境界線をなくしたい」と思っている方でしょうか。

とくに道具を使ってスキルが上がったりするわけではないので、どういう人というのはあまり考えたことがないのですが、山を歩いていて、ちょっと自分のスタイルに行き詰まっている方も試してみてほしいですね。少し山をやってみて、ちょっと億劫だなと思うときがあったり、クローゼットをごちゃごちゃにしたくない、数少ないアイテムを併用したいというような経験ってあると思うんです。そういう方たちの道具選びがスッキリしたら嬉しいですね。

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—今後の展望について教えてください。

今は製品数を増やしてブランドを大きくしたいというよりは、「RIDGE MOUNTAIN GEARはこういうブランドなんですよ」ということをしっかり説明してくことが必要なのかなと思っています。やはり、ひとつの製品に対してどういった素材を使って、どういう工程で、どういう人が作っているのか、そのことをもっときちんと伝えたいですね。

ただ、今年はウェアも展開予定なので、RIDGE MOUNTAIN GEARのアイテムで夏に北アルプスに行けるくらいの装備が揃いそう。これまではアイテムが小物ばっかりだったので、なかなか自分のブランドのスタイルみたいなものを明確に提案できていなかったんですよね。

ウェアやバックパックが揃うことで、トータルにコーディネートできるようになるので、道具やウェアのこと、コーディネートのことはもちろん、山の楽しみ方もしっかり発信していきたいと思っています。もちろん、まずは自分自身で「山と街との境界線をなくせるか」を実践していきたいと思っています。

RIDGE MOUNTAIN GEARの製品は、受注生産で丁寧に作られています。そのため、在庫が無い期間が多くなります。何卒ご了承いただきますようお願いいたします。

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黒澤 雄介(くろさわ ゆうすけ)

黒澤 雄介(くろさわ ゆうすけ)

2019年10月末日に4年間勤務した株式会社山と道を卒業し完全独立、改めてスタートしました。 RIDGE MOUNTAIN GEARは山で過ごす時間や、それにいたる迄の日々の生活をシンプルに過ごす為の道具を作る小さなメーカーです。 山と日常の境界を無くしたい。それはクローゼットの中も同じ事で、道具やウェア選びの煩わしさをいかに無くすか。 そんな事を考えて今は製品作りをしています。

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