軽量&高性能な「サロモン」のシューズを徹底解説
自分の足で「歩く」アクティビティである登山において、快適さや安定感、さらに疲労感の軽減までを左右する非常に大切なアイテムが、シューズ(登山靴)です。
ひと昔前は登山といえば足首周りをしっかりと保護できる剛性のあるミドルカット・ハイカットが望ましいとされてきましたが、シューズ自体が重く硬いため、低山やハイキングでは、かえって疲労の原因になることも。
そうしたシーンであらためて見直してほしいのが、ローカットや軽量ミドルカットシューズです。旅行中に観光と登山を両方楽しむ際や、山中の寺社仏閣への参拝でも軽やかな足さばきが可能で、きっと快適に感じることでしょう。
このジャンルのシューズで注目したいのが、フランスのアウトドアブランド「SALOMON(サロモン)」のアイテム。軽量なだけでなく、快適かつ歩きやすいスペックが満載です。今回は同ブランドの魅力とYAMAP STOREで取り扱っているアイテムを解説します。
登山にもおすすめなサロモン
サロモンは1947年に風光明媚なフランスアルプス山麓の街・アネシーで創業したブランドです。
スキー板の研磨から始まり、当初はウィンタースポーツのアイテムを製造していましたが、1990年代前半にハイキングシューズをリリース。サロモンといえばスニーカー・ランニングシューズが有名ですが、その由来はアウトドアにあるのです。
同じ山のアクティビティでも、トレイルランニングではすでにかなり愛用者が多いサロモン。同社のシューズが登山にもおすすめな理由を紹介します。
洗練されたデザインかつリーズナブルな価格帯
サロモンのスニーカーはファッション性が高く評価されており、人気を博しています。アウトドアシューズも同様で、色づかいやデザインは個性的ながら派手すぎない足元のイメージを演出。
こうした高いファッション性を備えながらも、価格帯は他のブランドのシューズと比べてもリーズナブルな設定。初めての一足や、ハイカットのシューズを持っていて買い足す場合でも、手を出しやすいのが魅力です。
優れた衝撃吸収性と安定感
もちろん、魅力は外見や価格だけではありません。山を走ったり、登ったりすることを想定して作られているサロモンのシューズは、着地時の衝撃や足のブレを抑えるために「シャーシ」や「フィルム」などのパーツをシューズに搭載することで、衝撃吸収性や安定感を高めているのです。
サロモン独自の「クイックレースシステム」
サロモンのシューズの大きな特徴が、特許を取得しているQuicklace™(クイックレースシステム)という靴ひもです。ストッパーをつまんで引くことで、締め具合を細かく調整可能。緩める際もワンタッチです。
登り・下りなどでジャストなフィット感を得られるだけでなく、山小屋や寺院の拝観などでシューズを脱ぐ時にも靴ひもをほどく必要がないため、ストレスが大幅に軽減されるのです。今回紹介する4アイテムのうち3アイテムがこのシステムを採用しています。
目的に応じたぴったりの一足を見つけよう
サロモンのシューズは、ロードランニング・トレイルランニング・ハイキングとアクティビティごとにカテゴリ分けされています。今回の4アイテムでは、「センスライド5」と「ジェネシス」「XAプロ3DV9GTX」がトレイルランニング、「Xウルトラ360ミッドGTX」がハイキングのカテゴリに属しています。
しかし昨今はトレイルランニングシューズで登山する人も多く、必ずしもカテゴリにとらわれる必要はありません。今回はアップダウンの大きな登山にも使用する観点から、筆者が実際に履いて体感したアウトソール(靴底)の硬さにも着目して表にしてみました。
軽快かつ高い堅牢性|ジェネシス
不整地の登山道をハイスピードで駆け抜けるトレイルランニングでの使用を想定して開発されたのが、「ジェネシス」。随所に強靭さや堅牢性を高める工夫が凝らされた一足です。
ジェネシスのアッパーは防弾チョッキにも使用されるアラミド繊維を織り込んだ「Matryx® (マトリックス)」という強靭な生地を採用しています。生地を重ねて縫製したり、オーバーレイ(アッパー生地のいちばん外側に配置される帯状のパーツ)などによる補強が不要なため、シューズ自体の軽量化にも貢献しています。
細かいメッシュ状の生地なので通気性や汗抜けも優秀。大きなアップダウンを歩くような激しい行動をしても、足の蒸れを軽減し快適なシューズ内環境を維持してくれます。
シューズ内部はタン(靴のベロ)の両端と連結された高い伸縮性を備えたメッシュ素材が足底まで配置されています。これは、履いた際に足先が包み込まれるようなフィット感を実現する「EndoFit™(エンドフィット)」と名付けられた構造です。靴ひものクイックレースシステムと相まって、高いフィット感を実現しています。
岩や木の根などとの干渉で傷みやすくケガの原因にもなるつま先部分は、アウトソール(靴底)の素材をせり上がらせ、さらに周囲の生地に樹脂を染み込ませることで、耐久性を高めています。
かかと部分にはActive Chassis(アクティブシャーシ)というシステムを採用。端が高めに湾曲しているので、同じく高く湾曲したつま先と相まって靴底全体がゆりかごのようになり「かかとで接地してつま先で次の一歩を踏み出す」という重心移動がよりスムーズになります。
さらに、かかと上部は高めに設計されているため、足首を後ろからしっかりと支える構造。これによってローカットのシューズでありながらも、心強いフィット感を得ることができるのです。
安心の防水|XAプロ3DV9GTX
今回紹介する4アイテムの中で、もっともソールが硬く安定感が高いと感じたシューズが「XAプロ3DV9GTX」。V9というモデル名の通り、2002年の誕生から第9世代までアップデートされてきた防水性を備えた一足です。
この安定感を生み出す靴底の剛性は、アウトソールとミッドソールの間に挿入された独自開発の薄くて軽い補強材である3D Advanced Chassis™(アドバンスドシャーシ)というファイバーガラスで補強されたプレートによるものです。
不整地の岩場など、大きな段差を越える時などでも足がブレることなく、安定した歩行が可能。また硬い路面での突き上げを緩和して、足の疲労を大幅に軽減してくれます。
ミッドソールには衝撃吸収性と反発力を兼ね備えたEnergyCell™+ (エナジーセル)を搭載しており、長時間の行動や岩場での歩行でも快適な履き心地が持続します。
独自開発のアウトソール素材、All Terrain Contagrip® (オール テレイン コンタグリップ)もグリップ力と耐久性に優れており、クライミングゾーンこそありませんが、アプローチシューズ向けのシーンでも使いやすいでしょう。
アウトソール(靴底)の素材をせり上がらせて、さらに素材自体にも厚みを持たせたことで、つま先の耐久性も抜群です。はじめてローカットの靴を履いて登山する人にも、こうした安定感は安心につながるのではないでしょうか。
靴ひもは同社おなじみのクイックレースシステムですが、靴紐の始点は他のモデルよりもつま先に近い足の親指部分に配置されています。靴ひもをつま先近くから締め上げることで、より高いフィット感が実現するのです。
アッパーのサイドにギザギザに配置されたオーバーレイも靴ひもと連結しており、しめ上げることで足全体をしっかりと包み込むことができます。ライニング(靴の内側)に使用されたゴアテックスで、防水透湿性もばっちりです。
マルチなシーンで活躍|センスライド5
短距離のランニングから長距離歩行、舗装路から登山道まで、距離や路面状態に左右されないマルチなシーンで活躍するのが、「センスライド5」です。その大きな魅力が、すぐれた衝撃吸収性と反発力を兼ね備えたミッドソール。
Energy Foam(エナジーフォーム)とプリントされたミッドソールは、指先で押してみると程よい硬さ。ウレタンのような柔らかさと弾力性も感じ取ることができます。
このため着地した際の衝撃は、ただ吸収されるだけでなく、エナジーフォームによって推進力に変換され、次の一歩を踏み出す際のエネルギーとしても利用されるのです。
シューズの内部を見てみるとタン(靴のベロ)の両端と連結された高い伸縮性を備えたメッシュ素材が足底まで配置されており、足を入れてみるとジャストサイズのスリッパを履いたような状態になります。
これはSensiFit™(センスフィット)と呼ばれる同社独自の構造で、タン自体も圧迫感のない低反発素材で足先が包み込まれるような快適なフィット感を実現しているのです。
アッパーの素材は軽さ・しなやかさ・通気性・耐久性を備えた3Dメッシュ素材を採用。蒸れにくく快適なシューズ内環境が維持されます。もちろん靴ひもはクイックレースシステムを採用しており、細かいフィット感の調整が可能です。
またくるぶし周りの生地は厚みのあるものを採用しているため、足を入れた時に干渉することがなく、歩行中のストレスを解消してくれます。
アウトソールの素材は、サロモンが独自に開発したAll Terrain Contagrip® (オール テレイン コンタグリップ)で、流れるようなラグ(靴底の突起)パターンが印象的です。
これによってどんな路面でも優れたグリップ力を発揮するだけでなく、内蔵されたProfeel Film(プロフィールフィルム)という素材で、ショックから足を守ってくれるのです。
やっぱり安心のミドルカット|Xウルトラ360ミッドGTX
足首周りを保護できないローカットだとやはり不安……そんな人におすすめなのが、「Xウルトラ360ミッドGTX」です。ミドルカットながら軽快な履き心地はサロモンならでは。ゴアテックス使用の防水性で、どんな天候でも安心です。
ミドルカットのシューズを履くことによる安心感は、足首をひねってしまうことによる捻挫などのケガの防止だけでなく、露出したくるぶしへの外部からのダメージ軽減もあげられるでしょう。
アッパーサイドのくるぶし部分には外側からラバー素材が当てられており、岩や木の枝などによるダメージから、くるぶしをしっかりと守ってくれます。
一方でアッパー後部のアキレス腱部分は、大胆なV字型にカットされたデザインです。シューズと当たって痛みの原因になることも多いアキレス腱部分を開放することで、シューズとの干渉だけでなく足首全体の締め付け感の解消も実現しているのです。
靴ひもはクイックレースシステムではありませんが、適度な太さで締めやすい丸ひもを採用しています。
靴ひもを通す穴がアッパーサイドにギザギザに配置されたオーバーレイの先端とつながっているので、靴ひもを締め上げていく過程で足全体がアッパーに包み込まれるようなフィット感を得ることができます。
つま先は「XAプロ3DV9GTX」と同様、せり上がったソールと厚みのある素材で堅牢性を確保。そして大きな荷重がかかるかかと部分には、接地の際の衝撃を前進する力に変換する性能を備えたアドバンスドシャーシが搭載されています。
アドバンスドシャーシ下部のカップも硬めで、かかとをしっかりと固定。歩行時のブレを防止することで、違和感やストレスなく歩くことができるのです。
「サロモン」のシューズで軽快に歩こう!
今回はYAMAP STOREで扱う「サロモン」の全4アイテムを紹介しました。従来の概念では適度なカットの高さと重さで足を保護するのが一般的な登山用シューズですが、ローカットやミドルカットを履いてみると、その軽さや足首の自由度が快適さにつながっていることに気づくでしょう。
もちろん、グリップ力や衝撃吸収性、足の保護などについても細部までこだわったスグレモノ揃い。「サロモン」のシューズで、軽快に山を歩くことの醍醐味を体感してみませんか。
鷲尾 太輔
登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイド・ギアレビューから山登り初心者向けの登山技術・知識のノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」をテーマとした講習会を開催しています。