足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

『登山靴』『レインウェア』『バックパック』は登山の三種の神器といわれ、まず初めに揃える装備として重要なアイテムです。装備を詰めた『バックパック』を背負って自分の足で行動し続ける登山では、『登山靴』が快適さを左右します。

近年人気を集めるのは、トレイルランニングシューズやハイキングシューズといった比較的柔らかいアウトソールの登山靴。その1足で低山から岩場があるような高い山までと、幅広い山域を登る登山者も少なくないようです。

しかし、登山靴にはさまざまな種類があり、それぞれに得意とする登山シーンがあります。

イタリアのドロミテ山脈で創業90年以上の歴史を持ち、登山シーンに合わせたラインナップを揃えている「LA SPORTIVA(スポルティバ)」さんに、登山靴の機能の違いから登山シーンに合わせた靴の選び方まで伺いました。

柔らかいアウトソールの靴でテント泊縦走ができるのか?

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

「トレイルランニングシューズやハイキングシューズなどの、軽量でアウトソールが柔らかい靴は整備された平坦な登山道や木道は歩きやすいのですが、たくさんの細かい小石や砂で滑りやすいザレ場や岩がゴロゴロしているガレ場などの不安定な場所では疲労しやすいデメリットもあります」

そう話すのはスポルティバ営業担当の片野さん。片野さんは大学探検部出身で、現在も山岳会に所属して山に入り浸るほどの山好き。海外の岩壁に誰も登ったことのないクライミングルートを開拓したいという野心を、爽やかな笑顔の下に秘めたクライマー気質の登山者です。

アウトソールが柔らかい登山靴でもアルプスなどでのテント泊縦走ができなくはないといいますが、それは山の知識と経験が豊富で、登山に必要な筋力がしっかりついている登山者ならば、のようです。

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

片野さん「登山靴選びで大切なのは、どんな山を登るのかをイメージすること。どんな登山道なのか、どのくらい標高差があるのか、ULハイクなどどんなスタイルで登るのか。登る山によって違うので、それに合わせて登山靴を履き分けられるようになると、登山はもっと快適で楽しくなります」

たしかに私たちは日常生活でも、シーンに合わせて靴を履き分けています。街ではスニーカー、近所の散歩にはサンダル、雨の日は長靴、浜辺ではビーチサンダルといったように。

では、登山ではどのように靴を履き分けたらいいのでしょうか?

柔らかい靴と硬い靴を履き分けるメリットとは

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あらゆる標高の山を幅広く登るためには、アウトソールの柔らかい靴と硬い靴の2足を履き分けるのがポイント。登山シーンに合わせることで、疲労度合いも怪我のリスクも軽減できます。

片野さん「低山などで整備が行き届いた登山道や木道が多い場合は柔らかいアウトソールの靴を履き、岩場などの不安定な登山道が多い山域や標高差があって荷物も重い山行の場合は硬いアウトソールの靴を履きます」

2足の大きな違いは、ソールの硬さと靴の剛性、グリップ力、足の保護機能です。それぞれの登山靴の特長の知識をもって、しっかり履き分けられるようにしましょう。

ソールの硬さと靴の剛性で考える、歩きやすいシーンや山行

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

片野さん「トレイルランニングシューズやハイキングシューズなどの柔らかいアウトソールは、平坦な登山道で軽快に歩けます。しっかり屈曲して地面を『面』で捉えられるため、蹴り上げしやすく、前へ進む力も強くなります。しかし、段差などを登るときや不安定な場所では、つま先立ちのようになるため、足の筋力を多く使うことになってしまい、疲れやすくなるというデメリットもあります」

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

片野さん「アプローチシューズやアルパインブーツなどの硬いソールは、岩場やガレ場で靴自体が地面と『点』で接していても、足全体が硬いソールの『面』に乗っているため、踏み込みやすく、安定して歩けるのが特長。剛性も高く、重たい荷物を背負っていても着地の衝撃で足がブレないため、余計な筋力を使わず、疲労を軽減できます。しかし、その硬さゆえに平坦な場所ではかえって歩きづらく、低山などではオーバースペックだと感じられてしまうんです」

靴底の仕様でわかる、登山靴のグリップ力

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片野さん「アウトソールのパターン設計とラグ(靴底の突起)の高さはグリップ力を左右します」

トレイルランニングシューズは、推進力を追求したラグパターンで、前後へのグリップ力が高く蹴り上げ抵抗の少ない低めのラグ設計です。

一方、アプローチシューズやアルパインブーツなどの硬い靴は、安定性を重視したラグパターンで、岩場などでも前後左右に滑らないような形状と配置、雨などに濡れた土で滑りやすいマッドコンディションでもしっかりグリップするラグの高さに設計されているのです。

登山では足の置き方ひとつがリスクを伴う鎖場などのシーンもあります。テント泊山行のような重いバックパックを背負った登山では、あらゆるシーンで高いグリップ力を発揮するアウトソールの硬い登山靴のほうが安心です。

アッパーの保護機能が、怪我のリスクを左右する

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片野さん「硬い靴には、SUV車のバンパーのような働きをするカバーがつま先についていて、岩場での行動時には衝撃や尖った岩から足を守ってくれます。ケガが予防できて、安全ですよね」

つま先にカバーがあることで、岩や砂利などの擦れに強く、タフなアッパー素材と掛け合わさって靴の耐久性も高くなります。足を保護してくれるだけではなく、長く愛用し続けられるようになるのもひとつのポイントです。

軽さや通気性を追求したトレイルランニングシューズなどを岩場で履いていると、1シーズンで穴が空いたり、アウトソールがすり減って履き潰してしまうこともあります。

登山を快適にする2足目のすすめ

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片野さん「柔らかいアウトソールの登山靴をすでにお持ちの登山者におすすめの硬いアウトソールの登山靴は、『TX5』か『エクイリビウム』です」

『TX5』は、硬い靴に抵抗がある登山者でも履きやすい万能なアプローチシューズ。『エクイリビウム』は、アルプスのテント泊縦走などにぴったりなアルパインブーツです。

どんな山でも歩きやすく、足馴染みのいい『TX5』

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片野さん「『TX5』は、トレイルランニングシューズとアルパインシューズのいいとこどりのような靴で、低山も岩場のある山域も対応できるやわらかさと安定感を兼ね備えています』

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう
足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

足馴染みのいいヌバックレザーをアッパーに採用し、足にやわらかくフィット。岩場やマッドコンディションでもしっかりグリップするアウトソールは、高い衝撃吸収性も備えているため、ガレ場や急な下り坂の突き上げから足を保護してくれます。

足首をサポートするミドルカットモデルと、軽快な足さばきができるローカットモデルをラインナップしています。

思わずテントを背負いたくなる快適な登山靴『エクイリビウム』

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

片野さん「『エクイリビウム』は、アルパインブーツとは思えないほど歩きやすい登山靴です。曲線で構成されたアッパーは、足が包み込まれるようなフィット感で、試着をされた方はみなさん驚かれます」

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう
足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

フィット感の秘密は足首をフレキシブルに動かせる3Dフレックスシステムによるもの。登りや下り、山の斜面を水平に横断するトラバースなどあらゆる動きに追従し、安全性を高めながら、足への負担を軽減します。かかとを斜めに削ぎ落した「ダブルヒール」は、着地時のグリップ力を高め、意識しなくても歩かされているかのようなスムーズな足運びを実現します。

そしてなによりも目を引くのは、登山靴のイメージを覆すスタイリッシュなフォルム。登山への意欲を掻き立てられる1足です。

登山靴を履き分けると広がる登山の景色

足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

登山靴にたくさんの種類があるのは意味があります。それぞれの得意なシーンを理解して、登山靴を履き分けることで、安全性は高まり快適に山を登ることができるのです。

登山シーンにも自分の足にも合った登山靴があれば、疲れて下を向くことも少なくなり、目の前に広がる雄大な景色を眺めながら歩けます。

登りたい山のイメージに合った登山靴をぜひご用意ください。そして、登る山をイメージするときには、YAMAPの活動記録を参考にしていただけると、うれしいです。

今回ご紹介したアイテム

    紹介したブランド

    • LA SPORTIVA

      LA SPORTIVA

      創業は1928年。北イタリア・ドロミテ山麓に今でも本社オフィス、工場、...

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