これで冬山も快適に!YAMAPスタッフが実践するリアルな「レイヤリング」
季節を問わず、登山道具選びのお悩みとして、YAMAP STOREでもよくユーザーさんからお問い合わせをいただく「レイヤリング」。みなさんは普段、どんなレイヤリングを実践していますか?
基本的なレイヤリングの考え方はなんとなくわかっているけど、実際アイテムを選ぶ時にどれを組み合わせたらいいか、悩む方は少なくありません。
暑がり、寒がりなど、人それぞれの体質などでも適したレイヤリングが変わってくるため、まだ山に登り慣れていない方だと、より一層難しいと思います。
ここで重要になってくるのが、アイテムの特徴を理解してレイヤリングを考えること。
「通気」に優れたアイテム、「保温」に優れたアイテムなど、アイテムごとの特徴を理解することで、自分の体質やその日のコンディションに合わせた組み合わせができるようになり、快適な登山につながります。
今回は、YAMAP STOREのコンテンツ製作を担当している豊島と、YAMAP限定アイテムの商品企画を担当している乙部が、実際に普段山を登る時に行っている「レイヤリング術」をおすすめのアイテムの紹介も交えながら解説していきます。
YAMAPスタッフ豊島が実践しているレイヤリングをご紹介
YAMAP STOREのコンテンツディレクターとして、日々商品の特長や魅力を研究している豊島。週末やロケで山へ足を運び、山道具の研究・テストを行う彼女が辿り着いた「秋冬登山にマルチに対応するレイヤリング」を紹介してくれました。
- 豊島
私が辿り着いた、「冬の雪山でも、低山でも、どこでも使えるレイヤリング」はこちら。最大のポイントは、ミドルレイヤーを2つに分けているところで、これがどんな山でも使える理由でもあります。
このレイヤリングに、防水仕様のアウターシェルを持って登り始め、歩いているうちに脱ぎ着をして調整しています。調節をするのは基本的にふたつのミドルレイヤーだけなので、脱ぎ着の手間が少ないのも特徴ですね。
|1|ドライレイヤーは快適登山の必需品
山では、かいた汗が冷えて体温を奪う、いわゆる「汗冷え」を防ぐため、乾きにくい綿素材の衣類ではなく、化繊やウールの「吸汗速乾素材」の衣類を身につけるのが基本です。しかし、吸汗速乾素材であっても、いったん汗を吸った衣類は乾くまでにある程度の時間がかかり、衣類を常にドライな状態に保つことは、実はなかなか難しいのです。
そんな時に活躍するのが、「ドライレイヤー」。汗を肌から遠ざける機能があり、肌はドライに保たれ、体が冷え体力を消耗し続けるリスクを防ぐことができます。
- 豊島
レイヤリングの一番下、肌に直に触れるウェアに着ているのは「finetrack(ファイントラック)」のドライレイヤー。
ファイントラックのドライレイヤーには、「ベーシック」と「ウォーム」の2種類があるので、登る山の標高や、その日の気温、活動時間などに合わせて使い分けをしています。
たとえば、活動時間が短い雪山ハイキングや、リフトに乗る時間が長いゲレンデスポーツなどの時は、身体がヒートアップすることが少ないので「ウォーム」を使います。逆に、本格的に身体を動かす登山などの時は、冬でも「ベーシック」を使うことも。『秋冬シーズンは「ウォーム」でないと寒そう』と自分も思っていたのですが、ハイクアップ中ってどんなに気温が低くても、体温が上がって暑いんですよね。実際に使ってみて「ベーシック」でも大丈夫だったので、状況で使い分けるようになりました。
- 豊島
また「ドライレイヤーウォーム」は「ドライレイヤーベーシック」に比べて、生地が厚めになっているので、お手持ちのベースレイヤーが薄手なら「ウォーム」、逆に厚手なら「ベーシック」というように、いつも使うベースレイヤーの特徴に合わせて、どちらのタイプを使うか決めるのもいいと思います。
「ウォーム」は寒い季節に特化したアイテムなので、一年通して幅広く使えるものが欲しい場合は、「ベーシック」を選ぶのがおすすめです。
|2|ベースレイヤーは吸水速乾のものを
続いてご紹介するのは「ベースレイヤー」。前述の通り、「ドライレイヤー」には汗などの水分を素肌から離す役割がありますが、離された汗を吸収し、より外に発散する役目があるのが「ベースレイヤー」になります。
そのためベースレイヤーは、離された汗をすばやく吸収する「吸水性(吸湿性)」、吸収した汗がすばやく蒸発して生地が乾く「速乾性」を備えているものを使うとよいでしょう。
- 豊島
素材も厚みもデザインも豊富な「ベースレイヤー」は、本当に選ぶのが難しいですよね。私も色々なアイテムを試してみましたが、ウールの薄手のベースレイヤーをよく使っています。透かすと向こうが薄ら見えるくらい薄い生地なんですが、通年の登山で使えるし、今回のレイヤリングに合わせるなら冬もOK。乾きやすいので手入れもしやすく、ちょうどいいんです。
- 豊島
もちろん、厳冬期のように寒さの厳しい山に行くならもっと厚めのものを選びますが、汎用性の高さでは「リッジマウンテンギアのメリノベーシックTロングスリーブ」や「アイスブレーカーの150ロングスリーブティー」などがおすすめ。素材選びは、肌質との相性や手入れのしやすさ、どんな登山スタイルを選ぶかなどで個人差が大きいので、自分に合ったものは何か?を意識して選ぶことが重要です。
おすすめのベースレイヤー
|3|2つの機能の異なるミドルレイヤーで体温調節
「ミドルレイヤー」は、「ベースレイヤー」と「アウターシェル」の間にレイヤリングする体温調整のためのウェア。ストップ&ゴーを繰り返す登山アクティビティでは欠かせないアイテムです。
最近では、保温性だけでなく、ムレや熱を発散する「通気性」に優れた製品や、稜線の冷たい風から身体を守る「防風性」に優れた製品など、さまざまな特性を持つウェアが登場しています。
スタッフ豊島いわく、今回のレイヤリングでは「特性の異なる2つのミドルレイヤーを使い分けることが重要」なのだとか。
YAMAP別注 アドリフトプラスクルー
- 豊島
内側に着ているのが「STATIC(スタティック)」と一緒に企画した「YAMAP別注 アドリフトプラスクルー」。生地の表面はサラッとしていますが、裏面を見ると起毛した素材が蜂の巣状になっています。これが、通気性を高める仕組みになっているんです。
「アドリフトプラスクルー」では「TEIJIN」が開発した「Octa® CPCP」という新素材が使われています。裏側のフリース部分がデッドエア(動かない空気)を蓄えることで保温力を持つ一方で、フリースの配されていないフラットな部分が通気を促すためオーバーヒートや発汗を少なくしてくれるという仕組みです。
これまでのフリースの多くは「保温」のみにフォーカスしており、この「保温」と「通気」という2つの相反する機能は備えていませんでした。保温と通気の機能を兼ね備えることで、アクティブに体を動かすシーンでもムレを効果的に排出してくれるため、「暑くなりにくく、汗をかきにくい」という効果が得られます。
YAMAP別注ポリゴンライトジャケット
- 豊島
外側に着ているのが「finetrack(ファイントラック)」と一緒に企画した「YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」。薄手の化繊インサレーションジャケットであり、空気をまとっているような「軽い着心地」と「適度な保温力」が特徴のジャケットです。
「YAMAP別注ポリゴンライトジャケット」は、ダウンや化繊綿ではなく「ファインポリゴン®」というファイントラックが独自に開発したシート状の保温素材が封入されています。一般のダウンは濡れたら乾きにくく保温力も失われるというデメリットがあるんですが、「ファインポリゴン®」は水濡れに強いのが大きな特徴。濡れてもその嵩高が維持されることで保温力もそこなわれないので、雨や雪などの外からの濡れ、汗や水蒸気などの内側からの濡れにも強く、保温性能が下がりにくい点がポイントです。
2つのミドルレイヤーをどう使い分ける?
- 豊島
「アドリフトプラスクルー」と「ポリゴンライトジャケット」はどちらも行動中に着る保温着として作られているのですが、「アドリフトプラスクルー」は通気性に「ポリゴンライトジャケット」は「耐風性」により特性があります。
例えば稜線など風が強いところでは、「アドリフトプラスクルー」のように通気に優れたウェアだけだと寒いので、上から「ポリゴンライトジャケット」を羽織ります。
逆に樹林帯など風の少ないところでは、「ポリゴンライトジャケット」を脱いで、通気性の高い「アドリフトプラスクルー」だけにすることで、ハイクアップの熱を効率的に放出することができるんです。
このレイヤリングだと、2つを重ねた時が一番暖かく、状況に合わせて通気性の高い方を残すのか、保温性の高いものを残すのか使い分けられるので、山行中ずっと快適に過ごせます。
【番外編】秋冬シーズンの登山で欠かせないアイテム
1日の寒暖差が激しい秋冬シーズンの登山では、レイヤリング以外でも身体を冷やさない工夫が大事になってきます。YAMAPSTOREスタッフのおふたりに、このシーズンに欠かせないアイテムを紹介してもらいました。
足の体温調節ができる暖かウェア
YAMAP別注 ポリゴンライトパンツ
- 豊島
私は今までインナータイツを使って防寒していたんですが、最近見いだしたのがこの「YAMAP別注ポリゴンライトパンツ」を使ったレイヤリングです。タイツを履くと、暖かいし山までの移動中も快適なんですが、山を登り始めて暑くなった時に脱げないのがネックだったんです。
ですが、「YAMAP別注ポリゴンライトパンツ」ならトレッキングパンツの上から履いておけば、行動して暑くなった時にすぐ脱げるので便利。休憩中など寒くなった時はまた上から履けば保温できます。
- 豊島
中綿が入ったパンツは着膨れするのが嫌で避けていたんですが、この製品はシート状の中綿のおかげで従来のダウンパンツのようなボリューム感がなく、シルエットが綺麗なのですごくおすすめです。
2日経っても冷たくない
山専用ステンレスボトル
- 乙部
「サーモス(THERMOS)」の「山専用ステンレスボトル」、通称「山専ボトル」は冬山登山のマストアイテムですね。先日、山を登った時に山専ボトルにお湯を入れて持っていったんですが、結局山でご飯を食べずに下山して食べたので使わなかったんです。
そのまま2日放置して、出してみたら、なんとまだぬるかったんです。熱くはなかったんですがまだ温かみが残っていて、その保温性能に改めて感動しました。
- 豊島
冬に山登りする人は絶対持っていた方がいいですね。冬山では常に冷たい外気にさらされるので、動いているとはいえどすぐに身体が冷えてしまいます。定期的にお湯などを飲むことで、体を内側から温めることが、活動する時のパフォーマンスにも繋がるので重要ですよ。
レイヤリングに正解なし!自分に合ったスタイルを見つけよう
今回は、YAMAP STOREのスタッフのリアルな体験談と共に、おすすめのレイヤリングをご紹介しました。しかし冒頭でもお伝えした通り、レイヤリングはその方の体質やその日に登る山のコンディションによって合うものが異なります。
一方で、アイテムの機能を正しく理解することで、自分に合ったレイヤリングを見つけることに近づくことは間違いありません。
ご紹介したアイテムが、皆様のレイヤリング探しのお手伝いになれていたら嬉しいです。
実は今回の内容は、YAMAPのInstagramのライブで紹介させていただいたもの。今後もInstagaramにて、皆様のお悩みに対して、YAMAP STOREのスタッフが一緒に考えお答えするライブを実施していくので、ぜひこちらもチェックしてくださいね。