機能とファッションを両立した 山街兼用にオススメな二刀流アウター7選
山だけで着るにはもったいない。そう思わせてくれるようなデザイン性を持ったアウトドアウェアは数多くあります。最近では、純粋に街着としてアウトドアウェアを取り入れている人もたくさんいますよね。中でも、アウターはとくに取り入れやすいアイテム。防寒性などの機能性はもちろん抜群だし、サッと羽織るだけで山感が出せるので、登山趣味を匂わせる小道具としても優秀です。
街でも、かならずどこかにはアウトドアウェアを取り入れたコーディネートを楽しんでいるというライターの櫻井さんに、おすすめのアウターを紹介していただきます。
オーバーサイズシルエットな今風中綿ジャケット
HOUDINI(フーディニ)/ザ クラウド
「フーディニ」は機能性とファッション性の融合という意味では、アウトドアブランドでは屈指の存在です。なかでも「ザ クラウド」は多目的に使えるアウターで、その独特なシルエットは、まるでコレクションブランドのような雰囲気です。
デザイン的に注目したいのは、短めに設定された袖丈です。もともとはキャンプなどでの水周りの作業時の効率性を考えたデザインですが、これが良い具合のデザインアクセントになっていると思います。中に着たウェアがチラッと見えるので、思い切ってビビットなインナーを合わせてインパクトを出しても良い感じになるはず。両サイドはスナップボタンで全開にできるので、寒い屋外から、暖かい電車などに乗り込んだ際に、体温調整ができることも街着として優秀なポイントです。いま流行りのオーバーサイズ気味なシルエットなことも、ちょっとこなれた感じで良いですよね。
軽くなって街にもフィットする、伝説を受け継ぐビレイパーカ
patagonia(パタゴニア)/DAS ライト フーディ
「パタゴニア」の「DASパーカ」といえば、永遠の名作としてパタゴニアファンから支持されているジャケット。もともとはビレイジャケットというガチガチのクライミング系ウェアながらも古着屋さんなどで、過去のモデルにいまでも高値が付いているのを見かけたりします。そんな「DASパーカ」に「DASライトフーディ」が仲間入りしました。
極限まで軽くしたビレイパーカという印象で、もともとがビレイするときにハードシェルの上から羽織ることを想定されているので、ゆったりめなシルエット。これが街でも有効で、どんなインナーにも違和感なくマッチしてくれる汎用性の高さが一番の魅力だと思います。
本来は軽量化を目的とした細かいパーツの省略可も、良い意味での全体のシンプルさに一役買っていて、クセがないぶん、さまざまなパンツにも合わせやすい。そして約320gという軽さかつ、左のハンドポケットに収納できるパッカブル仕様。普段の街着としてはもちろんですが、旅先に持っていくのにもピッタリな一着だと思います。
環境にも配慮した薄手中綿ジャケット
PeakPerformance(ピークパフォーマンス)/アルゴンライトジャケット
一枚持っておくと、山でも街でも重宝するのがちょっと薄手の中綿ジャケット。この「ピークパフォーマンス」の「アルゴンライトジャケット」は、数ある中綿ジャケットの中でも、とくにその美しいシルエットが特徴的です。圧着ではなく、二重織りによる独特なボックス形状は機能性もさることながら、デザイン的にも優れていると思います。封入されているのはダウンではなく化繊なので、洗濯機でガンガン洗えるという点も普段使いに向いているポイントです。
さらに、表地、裏地、そして中綿とウェアを構成するほぼすべてのパーツがリサイクル素材を採用。SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれるいま、こうした取り組みをしているブランドのウェアを着ることって、とても意味があるし、積極的に選んでいきたいものです。見た目だけでなく中身もスタイリッシュ。そんなアウターです。
本格アルパインウェアは街着としても超優秀
Rab(ラブ)/マイクロライトアルパインジャケット
「Rab」はアルパインクライミングに特化したUKブランドですが、機能美という点で街着にも適したアイテムが「マイクロライトアルパインジャケット」。高機能なダウンジャケットはどうしてもモコモコになりがちで、街で着るにはちょっと見た目的にアレだったりするんですが、このジャケットは750fpダウンながら、スッキリとしたデザインに仕上がっています。
細めのブロックパターンも、スタイリッシュな印象。街での中間着やアウターとして大活躍してくれそうな一着です。なによりダウンならではのコンパクトに収納できるという利点があるので、つねにバッグに潜ませておけば、急な気温低下も怖くない。外生地には撥水性もあるので、一体型フードと相まって多少の雨なら問題なしです。山での機能性を考慮したら、いつのまにか街着としてのダウンジャケットの弱点をもクリアしていた、という秀逸なアイテムです。
ミリタリーコートの現代風アップデート
TAION(タイオン)/ミリタリー Vネックダウンコート
インナーダウンに特化したブランドとして人気急上昇中の「TAION」。山でも街でも使えるさまざまなインナーダウンがラインナップされていますが、今回ご紹介したいのは「ミリタリーVネックロングコート」です。ファッションアイテムとして市民権を得たのは、アウトドアよりも、ミリタリーモノが一足先でした。それこそ、モッズコートなんて、一時期は街のいたるところで目にしましたよね。この「ミリタリーVネックロングコート」は、そんな軍モノコートのライナーが現代風にアップデートされた感じです。
封入されるダウンは800fpですから、防寒性という意味でもアウトドアウェアに引けをとりません。もちろん、さまざまなアウターと組み合わせても良いのですが、おすすめはこれ1枚をサラッと羽織るスタイル。両脇はファスナーで開くことができるので、秋から春先まで、長く着用できる点も見逃せません。
デザイン性で定評のあるティートンブロスの新作
Teton Bros.(ティートンブロス)/ホバック プリマ オーバーフーディ2.0
デビュー当時から、山ウェアらしからぬデザイン性の高さも評判だった「ティートンブロス」ですが、それは「ホバック プリマ オーバーフーディ2.0」にもしっかりと反映されています。封入されているのは天然ダウンのような性能を発揮する「Primaloft Thermo Plume」。
大きな特長としては袖口についたジッパーで、袖口をガバッと開くことができます。これは本来、山でミトンなどを着用する際の工夫ですが、街でもちょっと暑いときなどに袖をまくって調整するのにも向いています。ハンドウォーマーポケットは胸元から腰まである大容量。内側にはメッシュポケットが付き、収納力に優れる点も街でもうれしい要素だと思います。もちろん保温性はアルパインスペックなので、街着であれば、アウターはこれ1枚で十分に冬を乗り切れる高性能を誇っています。
最強の極地ジャケットを街着にするという贅沢
THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)/アンタークティカバーサロフトジャケット
アウトドアウェアを、ファッションアイテムとしてイケてる存在に押し上げたのは、間違いなく「ザ・ノース・フェイス」の功績が大きいと思います。いまも街を歩けば、登山とはまったく縁のなさそうな若者たちが、誇らしげに「ザ・ノース・フェイス」をまとっています。
この「アンタークティカバーサロフトジャケット」は、右肩の南極大陸ロゴからもわかるとおり、本来は極地エクスペディション用のフリースですが、毛足の長いスーパーロフトフリースを採用していて、フワッとしたそのルックスは街着としても十分に活躍してくれそうです。極地用に開発されているので、その防寒性能は当然トップクラス。THE NORTH FACE史上最高の温かさと謳われているあたりも、物欲をそそります。
袖口はサムホール仕様のストレッチ素材、脇にはベンチレーションと、寒冷地での使用を最大限に考慮されたディティール群は、街でも十二分に活躍してくれるでしょう。個人的には、首元を覆ってくれる高い襟も、マフラー嫌いな身としては嬉しい要素です。
さて、いかがでしたか? 山での機能を突き詰めた結果、街でも便利というアウターがたくさん存在することを、お分かりいただけたかと思います。実際問題、山のアウターは高機能がゆえにややお高くなってしまうので、できるだけ兼用できるのを選んだほうがお財布にも優しいです。「山では派手なカラーが目立つから良い!」と昔から言われていますが、街でも兼用したいとなるとやはりダーク系の色味のほうがさまざまなコーディネートに取り入れやすいと思います。アウター以外でも、山街兼用で使えるアイテムは数多く存在するので、ぜひ自分のお気に入りの二刀流ウェアを探してみてください!
櫻井 卓(さくらい たかし)
1977年生まれ。「TRANSIT」「Coyote」などの旅雑誌の他、登山雑誌「PEAKS」やアウトドア誌「Be-pal」、ファッションカルチャー誌「Houyhnhnm Unplugged」など多数のジャンルで執筆中。趣味は海外のトレイルを歩くことで、好きなエリアはカリフォルニアのヨセミテ北部。