トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

いつもは登山をする人も、ロードを走る人も、「いつかは山を走ってみたい」、そう思ったことはありませんか? 自然の中を走る爽快感を満喫できるトレイルランニングは、登山とロードランの「いいとこ取り」ができるのが何よりも魅力です。しかし、実際に山を走るとなると足のトラブルが気になるところではないでしょうか?

そんなトレランを、ケガなく長く楽しみながら続けるためには、走る時の姿勢がとても重要。変なクセがつかないよう、トレラン入門者こそ最初に基本をおさえることが大切です。

今回お話を聞いたのは、ランナーのためのパーソナルプログラムジム「TREAT(トリート)」の矢田大(やだ ひろむ)さん。自然な走り方実現し生涯スポーツを提唱するランニングシューズブランド「ALTRA(アルトラ)」の考え方に基づいた、トレランの基本姿勢とシューズの選び方を教えてもらいました。
(インタビュアー:YAMAP 清水直人、記事:上川菜摘、撮影:原光平、モデル:今城岳彦)

ランニングを「生涯スポーツ」として捉えるアルトラの考え方

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

東京都・多摩市にある「TREAT」は、鍼灸マッサージ師である矢田大さん、元々実業団で走っていたアスリートの夕子さん、ご夫妻が営む治療院&トレーニングジムです。

―矢田さんは多くのランナーをサポートされ、ご自身も普段から走ってらっしゃいますよね。

矢田:僕は前職の職場で勧められたのがきっかけで走るようになったのですが、妻は元々トレイルランのエリート選手として走っていて、お互いランナーをサポートするような立場でした。そんなタイミングでアルトラシューズと出会い、そのコンセプトに共感したんです。今は多くの方にその考え方を伝えています。

―アルトラのどのような部分に共感されたのですか?

矢田:アルトラシューズのコンセプトはTREATと同じく「生涯スポーツ」なんです。ランニングを「はじめた時から一生涯楽しめるもの」として捉え、怪我なくずっと走り続けて欲しいというところをコンセプトにしています。

―一生涯ずっと続けていくには、基本が大事ということでしょうか。

矢田:そうなんです。ランニングで悪い走り方をしてしまっていると怪我につながります。また「もっとタイムを縮めたい」、「もっと遠くへ走っていきたい」という思いを持ったときに、怪我なくトレーニングを積んでいくことが重要だと思います。正しいランニングテクニックは怪我予防、パフォーマンスアップの両面に関係しますから。

―今回はぜひそのテクニックの部分を詳しく聞かせてください。

アルトラシューズが提唱する4つのランニングテクニックとは?

矢田:アルトラの提唱する「LTR(Learn To Run)」は、「走る」「歩く」という本来人間に備わっている機能を活かせるよう、ランニングによるケガ予防や、効率的に走るためのテクニックの習得を目指したものです。パートナーを見つけて姿勢をチェックすることをおすすめします。4つのポイントがあるので、一つずつ見ていきましょう。

テクニック1:バランスの取れた前傾姿勢

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック頭からかかとまでが一直線に並んでいることを確認しながら前傾姿勢をとる

矢田:まず1つ目は姿勢です。頭から踵まで、一直線状態で前傾姿勢が取れるかどうかを確認してください。パートナーがいれば、肩を支えてもらうと分かりやすいですよ。

まずは背筋を伸ばしてまっすぐ向き、足首から前方へゆっくり重心を傾けます。この時、足首からではなく腰から前傾姿勢になると、重心よりも前方で着地する体勢になりやすいので注意しましょう。

テクニック2:重心の真下に近い接地位置

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック左)腰から曲がっていてる悪い例 右)前傾するタイミングで出る足の位置が重心に近い

矢田:次に、足部の接地位置を確認してください。足は、前傾姿勢を保ったまま重心の真下に下ろすのが理想です。

背筋を伸ばして直立した状態から前方へ倒れ込むときに、体を支えるために出る足の位置が重心の真下に近いです。その位置を意識しながらゆっくり走り始めましょう。

つま先から接地しても踵から接地しても、体より前に足が接地してしまう事を、オーバーストライド(接地位置が重心の前方)になってしまいます。これではブレーキがかかってしまいますよね。

接地時の衝撃の強さを軽減させるためにも重心の真下に近い位置で接地しましょう。

優しく音を立てないように意識して走ると、自然と重心の真下に近い位置で接地できますよ。

テクニック3:180のケイデンス

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

矢田:体への負担を軽減するには、1分に対し、180ステップのケイデンスを心がけましょう。ケイデンスはペダルの回転数のことで、ランニングでは足の回転数をあわらします。

ペースには個人差があり、ケイデンスのテンポが合う・合わないなどもあると思います。175〜185くらいの間でベストなケイデンスを探しましょう。

ケイデンスが少なくなり過ぎると、1回1回の足の接地時間も長くなり、足の負担も増えてしまいます。軽く柔らかく、早い足の運びをしましょう。

―ケイデンスは、どうやって測ったらいいのでしょう?

矢田:ケイデンスを測るのにメトロノームを使ったりしますが、同じリズム音に飽きてしまう人もいると思います。音楽のテンポを表す「BPM」というワードと「180」を入れてwebで検索するといろんな音楽が出てくるので、音楽を聴きながら走るのもおすすめですよ。

テクニック4:コンパクトアームスイング

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック大きく振らず(上)、180ステップのケイデンスのリズムに合わせてコンパクトに振る(下)

矢田:4つのテクニックは、1つだけやればいいというものではなく、全てが繋がっています。よってアームスイングは180のリズムに合わせ、コンパクトに振りましょう。腕を大きく振りすぎると疲れてしまいます。

短くリラックスした腕の運びを意識し、肘はウエストの横で、身体の後ろで振ります。胸を張った状態で肘を引きつけ、前方に戻ろうとする反力を利用するとやりやすいです。また、肘関節の曲げ伸ばしがないよう、肘関節を固定して腕を振りましょう。

ペースの速さは個人差がありますが、基本的にはコンパクトにするというのがセオリーです。腕の動きによって上体がぶれないように体幹を保持しましょう。また横には振らず、引くように振ってくださいね。

家で簡単にできるセルフチェックポイントを伝授

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

―走り方って、癖がついてしまうとなかなか抜けにくいですよね。セルフチェックをするには、どんなやり方がありますか?

矢田:壁を使って前傾姿勢を確認するのが簡単でいいと思います。壁を使ってまずは「まっすぐ立てているか」を確認します。

その後、前傾姿勢が保てているか、腰が引けてないか、足首から体がまっすぐになっているかなどをチェックしてみてください。

自然な走りをサポートするアルトラシューズの特徴とは?

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

―アルトラシューズの特徴を教えてください。

矢田:1番の特徴はバランスクッションです。ほとんどのシューズはヒール部分が高くなっていますが、アルトラはヒール部分もつま先部分も、地面からの距離が同じなんです。ビデオ解析などでも、この構造は「ヒールストライク」を減少させ、自然と正しい姿勢になることが証明されています。裸足で履いているのと同じような構造になっているので、人間の自然な走りを実現してくれるんです。

―なるほど。世の中には踵が高い靴が多いですが、そんな靴を履くと、どういう現象が起きるんでしょうか?

矢田:踵が高いと、女性がヒールを履いたような状態になりますよね。中にはうまく走る方もいらっしゃいますが、膝とか腰で安定性を取ろうとするので、どうしても負担がかかってしまうんです。それにより、姿勢も悪くなってしまいます。

―アルトラのバランスクッションは均一の高さなので、負担がかからないということなんですね。他の特徴も教えてください。

矢田:トゥボックスが広いことが挙げられます。足指部分が自然に広がり、足の指が使いやすいんです。

つま先にかけて細くなるシューズは足がその形に対応してしまい、バランスを崩してしまうことが懸念されます。アルトラの靴底には足形がプリントされていることからもわかるように、しっかりと足裏の機能が考慮されているんです。リラックスすることで、バランスと安定感を得ることができるのが特徴です。

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

TREATを立ち上げた背景、そして矢田夫妻の想い

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

―「TREAT」はお二人がどんな想いで立ち上げられたのですか?

矢田:以前の職場では、周りに走る人がたくさんいる環境でした。そんなこともあって僕は社会人になってから走り始めたのですが、最初は登山でもゼエゼエ言ってしまうほどだったんです。今でこそレースに出たりもしますが、一からはじめて走れるようになる過程を体験しているので、初心者の気持ちが分かります。一方妻はエリート選手として走っていて、その領域までいった人にしか分からないこともあり、そんな自分たち二人だからこそ伝えられることもあると思っているんです。

―お二人は鍼灸マッサージ師でもあり、治療のアプローチでもランナーを支えてらっしゃいますね。いろんな理由で怪我をしたり不調を抱えたランナーをケアして、どんなことを感じますか?

矢田:実際鍼灸マッサージ師の免許を取って、治療院に勤める中で、施術ばかりしていてもよくならないという方もいらっしゃって。治療は大事ですが、治療したことによって正しい動作に変えていこうとする機会を失ったりするんじゃないかと思う側面もあります。

―なるほど。それがトレーニングジムを併設する理由でしょうか。

矢田:そうですね。動作の改善をできるエクササイズを家に持ち帰っていただいて、それを日々やっていただく。自分で正しく動けるようになってもらう方が、長い目で見た時に健康になっていくと思うんです。そういったサポートが、僕たちができることなんじゃないかと思っています。

歩いてもいい。トレランを「楽しむ」ことが大事

トレラン入門者に知ってほしい、山を自在に走るための4つのランニングテクニック

―トレランをはじめてみたいと思っている人にメッセージをお願いします。

矢田:まずは怖がらず、歩くことも含めてできる範囲からやってみませんか? トレラン=走らなければいけない、という決まりはありません。きつかったら歩いてもいいし、顔を上げて景色を楽しむのは心地いいですよ。普段ロードを走っているお客さんがトレランを体験してみて、「山を走るのってこんなに気持ちいいんだ」と笑顔になるのもよく見ています。

楽しむということは、健康にとっても継続するという意味でも重要なこと。みなさんぜひ、トレランを楽しんでみてください。

ALTRA商品はこちら

取材協力:TREAT
https://treat-running.com/
TEL 042-400-6397
〒206-0002 東京都多摩市一ノ宮2-6-39 IMビル2・3F
京王電鉄京王線「聖蹟桜ヶ丘」駅より徒歩4分

    紹介したブランド

    • ALTRA

      ALTRA

      「自然な走り方」ができる究極のシューズ。 アルトラのシューズは、『ヒー...

    • Teton Bros.

      Teton Bros.

      こだわり続けた一枚のジャケットから・・・ アウトドアの聖地、米国ワイ...

    • patagonia

      patagonia

      パタゴニアは、1957年にイヴォン・シュイナードが、ロッククライミング...

    • OMM

      OMM

      過酷な山岳レースのためのFAST&LITEでハイパフォーマンスなギアを...

    • PAAGO WORKS

      PAAGO WORKS

      パーゴワークスは2011年にスタートした日本のアウトドアブランドです。...

    • Rab

      Rab

      Rabは、1981年英国を代表するアルパインクライマーの一人、Robe...

    • finetrack

      finetrack

      「本当のアウトドアウエアとギアを創れるのは、本気で遊べる者だけ。」 f...

    関連する記事

      関連する記事は見つかりませんでした