ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

自身のアウトドアでの経験をもとにプロダクトを制作し、ユーザーの声を交えてアップデートしていく。小規模でありながらも、ユニークな機能やデザインを備え、高いクオリティの製品を送り出すガレージブランドとして高い評価を受けているWANDERLUST EQUIPMENT(ワンダーラスト エクイップメント)。ブランドの代表であり、すべての製品のデザイナーである、粟津創さんに、ブランドの立ち上げから、YAMAP STOREで取り扱う別注モデルのアイテムの開発秘話を伺いました。
(インタビュアー:YAMAP 清水直人、記事/撮影:小林祐)

自分が山に行って、必要だと思う機能やスペックがあって、それを製品に落とし込む。「使う人自身が作る」ことが、ガレージメーカーのいいところかなと思います。

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

—WANDERLUST EQUIPMENTの立ち上げのきっかけを教えてください。

実は、登山をはじめたのがちょうど30歳くらい。20代までは会社に勤めていて、なかなかアウトドアで遊ぶ時間もなかったんです。学生の頃は海外旅行が好きで、いわゆるバックパッカーだったんです。でも、仕事をしはじめると海外へ旅行に行くこともできない。せめて土日の休みを使って行ける場所で、楽しいこと何かと考えたときに、「日本の山」に辿り着きました。

登山はすぐにのめりこんで、雪山にいったり、クライミングやバリエーションルートなどのテクニカルなことも楽しみました。でも、そこで気づいたのが、やっぱり雪山もクライミングも、荷物が重いとパフォーマンスが落ちてしまうということでした。

ガチの山ヤさんだとあまり気にしないのかもしれませんが、僕はもともと登山をやっていて体力があるわけでもないので、荷物を軽くするというのが大きな選択肢だったんです。そこでお店で売っている道具を買っては使って、アップデートしていく。でも、もうキリがなくなってしまって、だったら自分で作ればいいんだと(笑)。


—装備を軽くするという大切さに気づいたと同時に、UL(ウルトラライト)の要素も取り込んでいくんですね。

ULは、もともとアメリカでロングトレイルを歩くハイカーたちが、ベースウェイト(食料と燃料以外の装備)4.5kg以下に抑えましょうという考え方。僕は日本でロングトレイルをやっていたわけではないのですが、雪山に行ったり沢登りに行ったり、そういったアクティビティをするときに、装備を軽くしていくULの考え方は役に立つなと感じました。

つまり、ULを日本のアクティビティに合わせてやってみようということ。そこでまずはいろいろな道具を試してみて、そこから自分で生地を買って、道具を作って、というような感じですね。それがWANDERLUST EQUIPMENTのはじまりです。

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

—製品開発はどのように行なっているのでしょうか?

自分でいろいろな山道具を使ってみて感じたのは、ひょっとしたら「山を登らない人が作っているモノ」があるのかも、ということでした。不要な機能だったり、使ってみるとおかしいデザインだったりというのは結構あって。

WANDERLUST EQUIPMENTは、自分が山に行って、必要だと思う機能やスペックがあって、それを製品に落とし込む。そして、自分だけでなく、もちろんお客さんに使ってもらうというところまでを考ています。モノヅクリの本質ではあるのですが、WANDERLUST EQUIPMENTでは、その本質を大切にしたいと思っています。「使う人自身が作る」。それがひとつのガレージメーカーのいいところかなと。

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ
ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

—ご自身で製品を作りはじめて、WANDERLUST EQUIPMENTがブランドとして創立するまでは?

期間としては、3年くらいでしょうか。当初は仕事を辞めて、これで生計を立てていこうという志はなくて(笑)。試しにウェブサイトを作ってみて、反応あるかなとかそういう感じでした。でも、ありがたいことに、そうこうしているうちにオーダーをいただくようになりました。

アウトドアの道具には、MYOG(Make your own gear)という、自分たちで作るカルチャーがあります。僕のように自分で作っている人というのは他にもいて、SNSやブログなどで繋がっていたんですよね。そういう仲間たちと、一緒に製品を作れて、売れる場所があったらいいなと設けたのが、このMT.FABsなんです。WANDERLUST EQUIPMENTにとっては、工房兼ショールームの役割になってくれる場所です。

ここには生地やパーツ、ミシンもあって、基本的にここですべての製品を作ることができます。数が多いものなどはリモートで縫い子さんに手伝ってもらっています。

—YAMAP STOREで取り扱うアイテムについて、ご紹介いただけますか?

自立する保温ポーチ「スタンドコジー」

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

「スタンドコジー」は、山でよく使うフリーズドライ食品のための保温ポーチです。フリーズドライ食品は、沸かしたお湯を入れて一定時間戻さなければなりません。そこでポーチに保温性を持たせて冷めにくくし、自立するスタンド型にすることで使い勝手もよくしています。

また、一般的なアウトドア用ドライフードと、ジップロックのMサイズにフィットするようなサイズになっています。市販のものはもちろん、自分でアレンジしたドライフードをジップロックに入れていけば、長い日数のハイキングにも対応できます。

自分自身でフリーズドライをミックスして作るのもオススメです。お米に乾燥野菜、ダシを入れたり。必要な栄養素と味を揃えることができます。袋麺なんかもこれで作れてしまうので、見た目以上に便利なアイテムだと思います。また、鍋を洗う必要もないので、行動がスムーズになるというメリットもあります。ちなみにサイドのループはコジーを持っているときにひっくり返さないようにするためにつけているんです。

スプーンやフォークをひとまとめにできる「カトラリージップポット」

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「カトラリージップポット」は、いわゆるカトラリーケース。スプーンやフォーク、お箸、鍋つかみなどをまとめて入れられます。小物類って、スタッフバッグのなかでバラバラしがちなので、シンプルで軽くて、ひとまとめにできるものとして開発しました。素材はハイブリッドキューベン。ツルツルの素材に表面にナイロンを貼り付けてあり、裏面は撥水・防水なので汚れもつきにくくて衛生面でも優れています。カラビナをつけてぶら下げられるようにループをつけてあります。

山で箸を片一方だけなくしてしまったり、調理のときにライターがないとか、そういうことってよくあると思うんです。でも、雪山登山とかクライミングだと、いかにストレスをなくしていけるかがとても大事になってきます。雪山で雪を溶かしてお湯を作って調理して、というのは大変なこと。そういうときにこそ、少しでもストレスを軽減したいと思って開発したアイテムですね。

革新的なスタッフサック「ワイドマウス・スタッフサック」

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「ワイドマウス・スタッフサック」は、いろんなものを入れたときでも、口を広げれば中身が一目瞭然。上から覗き込むと全体が見えて、何がどこに入っているかがよくわかるので、テントのなかを散らかさなくてすみます。

素材は、上がシルナイロン、下がダイニーマグリッド。どの袋に何が入っているか、色で判別できるようにしたいので、カラーが目立って、パッと見て使い分けできるようになっています。また、地面に置くことを想定して、下は耐久素材を使用しています。

Sサイズは容量が2Lほどで、カトラリーやストーブ類、一泊分の食料、ヘッドライトやバッテリーなどのアクセサリー類を収納できます。長方形なのですが、メスティンSにフィットします。Mサイズは5Lで、数日分の食料、クッカーセット、着替えやグローブ・ゴーグルなどのギア類を収納できます。こちらはメスティンMにぴったりです。

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

—軽く、というのが基本のコンセプトですが、なぜ多くのガレージメーカーは軽量の特殊素材を使うのでしょうか?

軽い素材というのは、ただ薄いだけではなくて、むしろ耐久性と強度に優れる特殊素材だったりするんですよね。X-pacはダイニーマという高強度素材ですし、シルナイロンも一般のアウトドア製品に使われている生地よりもかなり強いんです。

実は、大手のメーカーはコスト面などでなかなか使うことが難しいのですが、ガレージメーカーのような小さなメーカーは仕入れや製造のコストを抑えられるので積極的に使うことができます。直販がメインなので、流通コストもあまりかかっていないというのもありますね。

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

—これからWANDERLUST EQUIPMENTとして取り組んでいきたいことは?

ブランドを立ち上げてからずっと忙しくて、バックパックなど出したいと思っている製品がたくさんあります。ひとつひとつ、いい製品を作って、生産体制も整えて、しっかり販売していきたいですね。テストしている試作品がたくさんあるので、いずれは製品化したいと思っています。

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

MT.FABsって、山が好きな人、自分なりの山をやりたい人、創意工夫をしていろんなことをやってみたいと思う人が集まる場所なんです。そういう方たちに使ってもらえるようなアイテムを、「この道具があったらこんなことできるよね」ということを話しながら届けていきたいですね。

「バックパックを買って、靴を買って、さあ登山いきましょう」というスタイルではなく、もっと自由にやってもいいのかなと。マニュアル通りに道具を揃えるのではなく、自分で考えて面白いことをやっていく人に提供できたらと思っています。

ガレージメーカーとしてアウトドアを支える、WANDERLUST EQUIPMENTのモノヅクリ

—あらためて、ガレージブランドの魅力、WANDERLUST EQUIPMENTの思いを教えてください。

生産を完全に工場にしてしまうのではなく、ガレージとして道具を使っている人が考えてものをつくって、販売する。そういう一連の流れが魂なのかなと思っています。ギアを自分でデザインして、作って、売っている場所ってあまりないと思うんです。

場所があることで、道具を手に取って、意見を言ってフィードバックできる。こじんまりとした規模ですが、工房となっているMT.FABはそういう場所でありたいです。ブランドの名前になっている「ワンダーラスト」という言葉の意味は、「旅に出たい情熱」なんです。道具を見て、旅に出たいな、山に登りたいと思ってもらえたら嬉しいですね。



MT.FABs
162-0811 東京都新宿区水道町1-18-2F
有楽町線江戸川橋駅 徒歩5分
東西線神楽坂駅 徒歩5分
営業時間
水木: 16:00 – 21:00

WANDERLUST EQUIPMENT(ワンダーラストエクイップメント)商品一覧

粟津 創 (あわづ そう)

粟津 創 (あわづ そう)

ULハイカー、クライマー。ガレージメーカーWANDERLUST EQUIPMENT(ワンダーラスト エクイップメント)を創業。米国発のロングトレイルを歩くための方法論としてのULをもとに、軽量装備での縦走登山・冬山・アルパイン・沢登りなど日本の環境に応じたアクティビティを実践しそのための軽量な道具を自らデザイン・制作する。東京江戸川橋にガレージメーカーが集う工房兼ショールームのMT.FABsを主催する。ブランド名であるワンダーラストの意味は"旅に出たい情熱"。手にとるだけで旅に出たくなる気持ちを起こさせるような道具を作ることが目標。

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