【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

赤黄に色づく山肌に、ひんやりと心地いい空気。夏とはひと味違った醍醐味がある「秋の山」。しかし、朝夕の気温差が大きくなる分、より一層気をつけなければならないことも。10月以降の山行は夏山登山とは別物。ウェアや装備の見直しをおこないましょう。

今回は、汗冷え対策の要となる「ベースレイヤー」に着目し、素材ごとの特長、選び方のポイントを解説。さらに、「秋」という標高やエリアによって暑いと寒いが混在する季節にフォーカスを当て、おすすめのレイヤリングをご紹介します。

「ドライ系アンダーウェア」って何? ベースレイヤーの重ね着事情

登山ウェアには、役割ごとカテゴリーがいくつもあります。ベースレイヤー、ウィンドシェル、インサレーション、レインウェア…。登山では重ね着(レイヤリング)が基本となるため、役割の異なるウェアがたくさん登場します。

なかでも「ベースレイヤー」は、素肌の上に直接着る「1枚目のウェア」でしたが、近年「ドライ系アンダーウェア」が登場したことにより、レイヤリングにおける「2枚目のウェア」という位置付けに変わってきました。

本題に入る前に、まずはそれぞれの名称を整理しておきたいと思います。

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

■ベースレイヤー(画像左)
インナーウェアとも呼ばれる、いわゆる“Tシャツ”的存在。素材によって速乾性に長けていたり、防臭性に優れていたりと得意分野が異なる。

■ドライ系アンダーウェア(画像中央)
下着のさらに下に着用するメッシュ構造のウェア。ここ5年くらいで台頭した新しいジャンルで、アンダーウェアに分類される。メーカーによってはTシャツやタンクトップの他、ボクサーパンツやブラ&ショーツなど、下着を兼ねたモデルも展開。

■下着(画像右)
ボクサーパンツやブラ&ショーツのこと。アンダーウェアと呼ばれることもある。

秋冬の登山には「ドライ系アンダーウェア」をプラスしよう

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

ドライ系アンダーウェアの役割は、汗を素早く身体から引き離して肌の表面をドライに保ち、汗冷えを軽減することです。

夏はさほど気にならなかった、汗による冷え。ですが、気温が下がる秋以降の登山では汗が冷えに繋がりやすく、体温と体力を急激に奪います。ときには重大な事故の引き金となることもあり、汗冷えの放置は禁物です。

そこで出番となるのが、このドライ系アンダーウェア。ベースレイヤーだけでは処理しきれなかった汗の吸汗速乾を促し、安全性と快適性をアップ。ベースレイヤーの機能を最大限に高めてくれます。

◯ドライ系アンダーウェアを着るときの3つのお約束

個人的には「着て後悔なし」と思っているほど画期的なアイテムですが、ただ単に着ていればいいというわけではありません。ドライ系アンダーウェアを着るうえで外せないポイントは、3つ!

①下着はドライ系アンダーウェアの上から身にまとう
②その上に着るベースレイヤーは身体にジャストフィットするサイズを着る
③下着もベースレイヤーも、吸汗速乾性に優れたものを着る

この3つが揃ったときに、はじめてドライ系アンダーウェアの機能が100%発揮されます。意外と見落としがちなので、覚えておきたいポイントです。

YAMAPSTOREのロングセラー商品「finetrack(ファイントラック)/ドライレイヤー」

年々進化し続ける最新ベースレイヤーを「素材別」に解説!

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

近年は繊維加工技術の向上に伴い、ベースレイヤーも進化。化繊やウールといった素材に加え、「ハイブリッド」と呼ばれるジャンルが台頭。「最適な汗の処理を促す」役割は同じですが、それぞれメリット・デメリットがあり、状況や体質に合った素材を選ぶことで、より最適な衣服内環境をつくることができます。

ここでは3つの素材の特長に触れながら、YAMAP STOREおすすめの新作モデルをご紹介します。

素材1|化繊の特長

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

化繊は、化学繊維の略称。ポリエステルやナイロンをはじめ、ポリウレタン、ポリプロピレンも化繊の一種。登山用ベースレイヤーにはポリエステルが採用されていることが多いです。

■化繊のメリット
・軽くて丈夫
・汗などで濡れたときに乾くスピードが速い
・ウールなどの天然素材より安価なことが多い
■化繊のデメリット
・天然素材と比べるとニオイやすく、静電気がおこりやすい(そのため、近年は防臭加工や帯電防止加工を施しているモデルが増えている)
・敏感肌の方は摩擦などにより肌荒れをおこす場合も(YAMAP編集部談)

秋冬新作!おすすめ化繊ベースレイヤー

素材2|ウールの特長

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

ウールは、羊などからとれる天然繊維の一種。ウールのなかでもよりキメの細やかなメリノウールがベースレイヤーには使われています。なめらかな質感が特長的です。

■ウールのメリット
・繊維の表面がうろこ状で水を弾いて肌と汗が直接触れるのを防ぐため、汗をかいてもひんやり感じにくい
・抗菌性に優れるため菌が繁殖しにくく、防臭性にも長けている
・肌触りがよく、デリケートな肌質の方も取り入れやすい
■ウールのデメリット
・化繊と比べると耐久性に劣る
・乾くスピードは緩やか
化繊より価格が高め

秋冬新作!おすすめウールベースレイヤー

素材3|ハイブリッド素材の特長

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

ハイブリッド素材は、化繊とウールを混紡したものを指します。製品によって化繊とウールの混紡率が異なるため、体質や好みにあわせて選ぶことができます。

■ハイブリッド素材のメリット
・ウール特有の柔らかな質感をもたせつつも、化繊を混紡して耐久性を向上させるなど、双方の良さを両立している
■ハイブリッド素材のデメリット
・化繊と比べて価格が高め
敏感肌の方は摩擦などにより肌荒れをおこす場合も(YAMAP編集部談)

秋冬新作!おすすめハイブリッドベースレイヤー

何を優先する? シーン別おすすめの組み合わせ

それぞれの素材の特長が分かったところで、次はレイヤリングのコツ。ひとくちに「秋の山」といっても、風に吹かれて寒かったり、汗をかいて暑かったり、状況はさまざま。今回は3つのシーンに分けて、ドライ系アンダーウェアとベースレイヤーのおすすめの組み合わせをご紹介します。  

シーン1|「涼しい・寒い山」は、汗冷え対策を優先する

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

稜線歩きが多い山・標高の高い山は、気温が低かったり、風に吹かれることが多かったり、体への負担が大きく体力消耗に繋がるため、汗冷え対策を優先しましょう。

◯おすすめの組み合わせ:「ウール」ベースレイヤーとドライレイヤー「ベーシック・ウォーム」

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

ウールはひんやりと感じにくい特性がありますが、一定時間保水はします(乾くスピードが緩やか)。そのため、ウールのベースレイヤーの下にファイントラックのドライレイヤー「ベーシック」を合わせることで、肌から汗を素早く遠ざけ、ドライに保ちます。これぞ汗冷えを防ぐ最強タッグ!

なお、気温が氷点下になるようなシーンでは、より温かいドライレイヤー「ウォーム」もおすすめです。

シーン2|「暑い山」は、速乾性を優先する

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

登りが長い山・標高の低い山は、発汗量が増えるので速乾性を最優先する組み合わせがおすすめです。

◯おすすめの組み合わせ:「化繊」ベースレイヤーとドライレイヤー「ベーシック」

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

ベースレイヤーと下着、どちらも化繊を選ぶことで、素早く汗を吸収して外側へと発散し、肌面の濡れを軽減します。

化繊だとニオイが気になるな…という方は、制菌加工や防臭加工を施しているモデルを選ぶと、不快なニオイ
を軽減できます。

シーン3|「ハイブリッド山」は、 汗冷え対策と速乾性、どちらも大切

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

ここでいう「ハイブリッド山」とは、樹林帯と稜線、どちらも同じくらいある山、もしくはルートを指します。

樹林帯と稜線では、風の強さや標高の高さの違いなど取り巻く環境が異なるため、速乾性と汗冷え対策どちらも大切な要素。これらを両立する素材を選ぶことが、快適さを得るカギです。

◯おすすめの組み合わせ:「ハイブリッド」ベースレイヤーとドライレイヤー「ベーシック」

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

ハイブリッド素材のベースレイヤーは、前述したように化繊とウールのいいとこ取り。速乾性と調湿性に優れているので、気温差や活動量に応じて最適な衣服内環境をつくります。

製品によって混紡率が異なるので、寒がりな方はウールの混紡率が高いモデルを、汗かきさんは化繊の混紡率が高いモデルを選ぶとなお◎。さらに、ドライレイヤー「ベーシック」をプラスすると肌から汗を素早く遠ざけてくれるので、よりストレスフリーです。

どの素材を選び、組み合わせるか。これが秋登山のキーワード

【進化する登山ウェアの最新事情】秋のおすすめベースレイヤーをシーン別でご紹介

速乾性の高い「化繊」、汗で濡れてもひんやり感じにくい「ウール」、双方のいいところ取りをした「ハイブリッド」、汗冷え回避に威力を発揮する「ドライ系アンダーウェア」。それぞれ特性があるので、自分の体質や山のシーンに合わせて組み合わせ、秋のハイクを安全・快適に楽しみましょう。

むろん山の天候は変わりやすく、天気次第で山のコンディションが大きく変わるので、登る直前の最終チェックも怠らず……!

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