冬山は強烈な寒さ、時には汗ばむことも。【天候に合った防寒小物】で、快適な冬山ハイクを
夏の山と同じように、冬の山も天候によって体感温度が大きく変わります。晴れていて穏やかな天気だなぁと思ったら、急に風が強くなったり、雪やみぞれに見舞われたり…。
とくに手先、耳や鼻といったカラダの末端部分は、外気にさらされて冷えやすい部分。そこをしっかりと覆うことで、冬の山歩きはより一層ストレスフリーなものになります。
今回は、冬の山の天候を【雪・雨のとき】、【風が強いとき】、【晴れのとき】に分け、それぞれに適したおすすめの防寒小物をご紹介します。
また各アイテムの役割もまとめているので、"そろそろ冬山デビューしたいなぁ"という方はアイテム選びの参考に、冬山に慣れている方は知識のおさらいとして読み進めていただければと思います。
①冬山【雪・雨のとき】|「防水性」と「保温性」を優先する

登る山に積雪がある、もしくは途中で雪が降るかもしれない。または雪が雨に、雨が雪に変わるかもしれない。そういった状況下で優先すべきは、「防水性」と「保温性」です。
必要な防寒小物を「手」「頭」「首・顔」に分け、それぞれのチェックポイントと、YAMAP STOREおすすめのモデルをご紹介します。
手|防水透湿素材のグローブ

雪山用グローブの役割は、手を濡らさずに冷えから守ること。そのため、防水透湿性を備えていること、保温性があること、雪が袖口から入らないように長めの仕様になっていること、この3つが最低限求められます。
【冬のグローブ豆知識1】
防水透湿性素材を使用していても、縫い目まで防水処理を施している「完全防水」と、そうでない「撥水(生活防水)」があります。湿った雪なら完全防水がおすすめ。しかし撥水にも利点があり、防水処理によるごわつきが少なく、低コストといった面も。用途に応じて選びましょう。

おもに雪山用グローブは、「防水・防風性を担うアウター層」と、「保温性を担うライナー層」の2層構造です。この2つが一体型のものもあれば、取り外しできるセパレート型もあります。なかにはアウター層単体だけのモデルも。この場合は、別途好みのライナーグローブを用意して使います。
✔︎チェックポイント
・防水透湿性はあるか
・縫い目は防水処理されているか
・高い保温性があるか
・指先の操作はしやすいか
・片手でフィット感を調整できるか
・着脱時の紛失を防ぐリーシュコードがついているか
・タッチスクリーンに対応しているか
【冬のグローブ豆知識2】
"防水透湿素材なら濡れないでしょ?" と思いがちですが、前述したように「撥水」モデルであれば縫い目からの浸水は免れません。また「完全防水」であっても、手のひらからかいた汗などの水分によって、どんなに注意していても濡れたり湿ったりしてしまいやすいのがグローブ。一度濡れてしまうと乾かすのは難しく、濡れたままでは凍傷のリスクが高まるため、予備のグローブは必携です。
頭|保温性に優れるビーニー

ヘッドウェアの役割は、頭、額、耳を温め、寒さから身を守ること。体温の20%もの熱が頭部から逃げていくと言われるほど、頭部は身体の中で一番熱を奪われやすい部位。だからこそ覆うことで、保温力をアップできます。

積雪のある寒い山では、耳はもちろん、後頭部までしっかりと覆える深めのモデルを選びましょう。
✔︎チェックポイント
・耳、後頭部をしっかり覆えるか
・頭部に心地よくフィットするか(きつすぎず、ゆるすぎない)
・保温性の高さ
首・顔|保温性に優れるネックゲイター

ネックゲイターの役割は、首元から冷気が入るのを防ぎ、首を温めること。首には血管が多く集まっているため、首を保温することで温まった血流をカラダに循環させることができます。
そして鼻や頬も、しもやけになりやすい部分。そういった部位をカバーし守る役割もネックゲイターは担っています。

ネックゲイターで口元を覆うと、どうしても呼気で結露しやすくなります。だから素材も重要。濡れてもひんやり感じにくいメリノウールや、結露しにくい構造のモデルがおすすめです。
【メリノウールの豆知識】
メリノウールは薄手であっても高い保温性を持っています。それに汗だけでなく湿気(水蒸気)をも吸う力があるため、肌に水分を残さずドライに保ちます。だから汗冷えしにくいと言われている素材なのです。
✔︎チェックポイント
・鼻上まで覆えるか
・ウェアの中にインしやすいか
・濡れてもひんやり感じにくい素材か
・保温性の高さ
・頭頂部から首元まで隙間なく覆えるバラクラバも重宝する
②冬山【風が強いとき】|「防風性」と「保温性」を重視する

雪や雨でなくても、稜線のある山や見晴らしのよい山では、冷たい風にさらされ、強烈な寒さを感じることがあります。
標高と気温同様、風の有無も体感温度を大いに左右します。風にさらされれば体感温度はグッと下がり、寒さも感じやすくなります。そのため、「防風性」と「保温性」に着目して選ぶことが大切です。
手|防風素材のグローブ

冬山の風はとても冷たいので、ゴアウィンドストッパーやネオプレーンなど、防風性の高い素材を使用したグローブが快適のカギに。さらにタッチスクリーン対応モデルなら、写真を撮るときや地図アプリを見るときもスムーズ。いちいち着脱する必要がないので、快適度はぐんとアップします。
【防風素材グローブの豆知識】
意外と見落としがちなポイントですが、防風素材を使用したグローブといっても、実際には風が当たりやすい手の甲にだけ防風素材を使っている場合も多くあります。手のひらからもカラダの水分が蒸発すること(蒸れやすい)、操作性も考慮すると、部分的に素材を変えるのは理にかなっているといえます。どうしても寒いときはグーにして手のひらを覆い隠すと◎。
✔︎チェックポイント
・防風性はあるか
・保温性と操作性のバランス
・タッチスクリーンに対応しているか
頭|防風性と保温性に長ける耳当てつきキャップ

【雨・雪】の章で紹介したビーニー+アウターシェルのフードをかぶるというスタイルでも、頭部の防風性と保温性を高めることができますが、耳当てつきキャップもおすすめです。
風を通さないポリエステルやナイロン素材に、フリースやファーの耳当てを装備したキャップは、まさに防風性と保温性を兼ね備えたアイテム。耳もしっかり温めることができます。

顎にストラップやスナップボタンがついているので、風に飛ばされる心配もなし。さらに、キャップのツバは冬特有の光のまぶしさを遮ってくれる機能も。
耳当てつきキャップは取り入れにくいと思ってしまいがちですが、じつは寒いシーンで大活躍するアイテム。もちろん、雪のあるときにも◎です。
✔︎チェックポイント
・防風性はあるか
・保温性の高さ
・保温ライナーの範囲が状況に合っているか(耳だけorキャップ全体)
首・顔|防風性に優れるネックゲイター

首元はアウターシェルによって防風できても、頬や鼻まではカバーしにくいため、ネックゲイターに防風性があるとさらに快適になります。
防風を意識するならば、風を通しにくい化繊素材を選ぶのがおすすめ。もちろん【雨・雪】と同様のメリノウールでも良いのですが、ウールは風を通してしまうため、もしウールを取り入れるのであれば厚手で目の詰まったモデルがおすすめです。
✔︎チェックポイント
・風を通しにくい素材、構造か
・鼻上まで覆えるか
・ウェアの中にインしやすいか
・保温性の高さ
③冬山【晴れのとき】|「通気性」を意識する

標高や風の有無によっても体感温度が変わるため一概には言えませんが、晴れの日は行動中に体温が上がりやすいため、暑くなりすぎないよう「通気性」を優先した小物選びが快適登山のカギになります。
薄手であっても、手首と頭周りを覆うだけで"あったかいな"と感じられるので、素材とデザインに注目して選びましょう。
【快適ハイクの豆知識】
冬の晴天時かつ、〜2,000m未満の森林限界を超えない場合は、樹林帯がメインとなり風の影響が少なくすむため、気温は低くても歩き続ければ発汗し、オーバーヒートしやすくなります。オーバーヒートは汗冷えに繋がるので、汗をかかない程度の保温を維持することがポイントです。
手|適度な保温性と通気性を両立する薄手グローブ、リストゲイター

効率よくカラダを温められる手首をしっかりと覆いつつ、指先をフリーにすることで熱をこもりにくくし、なおかつ操作性も高い「リストゲイター」。もちろん薄手のグローブも活躍しますが、晴れの日ならリストゲイターも選択肢のひとつです。
袖口がスースーして寒いけど、手先の操作性を優先したいからグローブはしたくない。汗っかきだからグローブ内の湿気が気になる。そんな方はぜひリストゲイターを取り入れてみてください。もし指先が冷たくなったときは、指をしまってグーをつくればOK!
✔︎チェックポイント
・手に汗をかきやすい方はリストゲイターも選択肢のひとつ
・グローブ派なら薄手タイプがおすすめ
・より隙間の少ないフィンガーレスグローブもあり
頭・首・顔|適度な保温性と通気性を両立するビーニー、ヘッドバンド

【雨・雪】の章でも触れたとおり、頭部は身体の中で一番熱を奪われやすい部位。ということは、通気性の高いヘッドウェアにすれば体温コントロールがおこないやすくなる、ということでもあります。
素材は、通気性と保温性のバランスが取れたフリースや、調湿性に優れる薄手のメリノウールがおすすめです。

耳だけ冷えないようにしたいという方は、ヘッドバンドを選ぶという手も。ひとつで三役(ビーニー、ネックウォーマー、ヘッドバンド)になる多機能モデルも重宝するでしょう。
✔︎チェックポイント
・通気性の高い素材を選ぶ
・頭はかぶらず、しもやけになりやすい耳や鼻だけを覆うのもあり
すべての天候が予想されるときは…?
雪・雨、風、晴れ。すべての天候が予想される日もありますよね。そういうときは、最もリスクが高い【雨・雪】をベースに、防寒小物を装備し、予備を兼ねてプラスαを持っていくと安心です。
たとえば、登り始めは晴れている樹林帯で、山頂付近が雪+風の稜線ならば、
手|防水透湿素材のグローブ(セパレート型)、予備として薄手グローブ
頭|保温性に優れるビーニー もしくは 防風性と保温性に長ける耳当てつきキャップ
首・顔|保温性に優れるネックゲイター
樹林帯で暑いときは、手は予備の薄手グローブにしたり、頭や首は取り外すことで対応できます。ダメージが大きいシーンに合わせた装備が吉。
天候に合った防寒対策で、冬も心に余裕を

山の天気は変わりやすく、とくに冬場はちいさなミスが致命的になることもあります。しかし、予想される天候、山容にあった防寒アイテムを装備すれば、冬の山歩きはもっと快適で安全なものになります。
ワンランク上の防寒対策で、この冬も意のままに楽しみましょう!