開発者が語るYAMAPオリジナルアイテム|登山者に寄り添うものづくり

YAMAPは、安全な登山をサポートするだけでなく、登山をより豊かにするオリジナルアイテムを日々、開発・販売しています。

今回は数あるYAMAPオリジナル商品について、その裏側に込められた想いを深掘りすべく、商品の企画・開発を担当している乙部 晴佳(おとべはるか)にインタビュー。商品が生まれるまでの秘話や、それぞれのアイテムのストーリー、そしてものづくりに対するこだわり。そのひとつひとつをを紐解いていきましょう。

YAMAP STORE 商品企画

乙部 晴佳(おとべ はるか)

YAMAP STOREの商品企画担当。アウトドアブランドのMDを経て2021年YAMAPに入社。現在は様々なブランドさんとの共同企画商品や、ユーザーさんのお悩みに寄り添うオリジナル商品の開発に日夜明け暮れています。衣食住を背負って移動する縦走登山やバイクパッキングが好き。今年は伊藤新道を歩きに行きたいです。

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登山者の悩みを解決するための製品づくり

開発者が語るYAMAPオリジナルアイテム|登山者に寄り添うものづくり

──YAMAPオリジナル商品のアイデアはどこから生まれるのでしょうか?

乙部:私自身が山を登って感じたことや、YAMAPスタッフとの会話、そしてユーザーさんの声がアイデアの源になることが多いです。特に「汗染みが恥ずかしい」や「敏感肌で化繊が着られない」といった、登山者が実際に抱いているリアルなペイン(悩み)が、製品開発の大きなヒントにつながります

ユーザーさんにアンケートをとることもありますが、レビューやモーメントで何気なく投稿されたコメントに、価値のある情報が転がっているのではと思っています。

日焼け止めを「着る」という発想の「サンブロック」シリーズ

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乙部:例えば、サンブロックシリーズは「山で日焼け止めを塗り直すのが面倒」という悩みから生まれた製品です。でも山は日差しが強いし、絶対に焼けてしまう。それを着ることで解消できたら楽だな、という発想がスタートしています。シリーズすべてUPF50+の紫外線カット効果のある生地を採用していて、着るだけで紫外線対策ができるのが一番の特徴です。また、高い遮熱性で体感温度が上がりづらいのもポイントです。

「サンブロックロングスリーブフーディー」は頭や首の後ろをカバーするフードを付けたり、ハーフジップで気候に応じて体温調整できるようにしたり、暑い季節でも快適に使えるような工夫を盛り込みました。

開発者が語るYAMAPオリジナルアイテム|登山者に寄り添うものづくり

そこから派生して生まれたのが、「サンブロックロングスリーブ」や「サンブロックTシャツ」です。これは社内の声やユーザーさんのリクエストに応えて誕生したウェアで、山行や季節に合わせて選んでもらえたらと思います。

ウール特有のチクチク感を抑えた「スーパーエクストラファインメリノ」

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乙部:「スーパーエクストラファインメリノ」シリーズも開発のきっかけは、羊毛(ウール)特有のチクチクが原因により「肌が弱くてウールを着られない」というスタッフの悩みでした。とはいえウール自体は防臭・保温・透湿効果の高く、汗をかく山登りには理想的なウェアです。ウールの良さは理解していましたが、私自身、あまりウール製品に対して知見がありませんでした。

そんなとき、偶然にもウール工場を見学する機会に恵まれて。そこでウールにもさまざまなランクがあるのを知りました。とくに繊維がもっとも細くて滑らかな肌触りの「スーパーエクストラファインメリノ」を使用した高品質のウールは、アウトドアカテゴリーではあまり使用されていないことを知り、どうにかYAMAPで実現できないか。調べた先に出会ったのが、福井県の老舗トータルニットメーカー「アタゴ」さんでした。

開発者が語るYAMAPオリジナルアイテム|登山者に寄り添うものづくりメリノウール繊維の中でももっとも細いとされる5.5μmという超極細繊維を使用

北陸はもともと合成繊維業が盛んな地域で、半世紀以上にわたって生地開発や素材研究が行われています。そんな地域で、生地開発から製品の縫製まで一貫して行っている「アタゴ」さんの高い技術により、「スーパーエクストラファインメリノ」シリーズが誕生しました。

「スーパーエクストラファインメリノ」で採用した生地も「アタゴ」さんが開発したもの。登山者の悩みと、専門メーカーさんとの出会いによって生まれた、自信のある製品です。

国内専門メーカーの高い技術力が叶える品質

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乙部:信頼できる工場との出会いがあったからこそ生まれた製品もあります。例えば、YAMAPでロングセラーを誇る「トレイルソックス」シリーズです。

登山に必要な機能を盛り込んだ「トレイルソックス」シリーズ

乙部:トレイルソックスは、登山中の足と靴下のズレや脱げを防止する「脱げないヒールロック」や、衝撃を緩和する「かかとのクッション」、長時間行動をサポートする「テーピング効果」などを備えることで、登山で役立つ機能を分かりやすく打ち出しています。

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そしてこれらを高い技術力で実現したのが、高機能靴下を専門に製造する奈良県の「西垣靴下」さん。YAMAPは企画開発はできるものの、製品づくりのノウハウは持っていません。なので、西垣靴下さんのように、長年製品づくりにこだわってきたメーカーさんと協業することで、YAMAPオリジナル製品は成立しています。

──企画開発と技術力が重なることで、生み出されているのですね。

乙部:もうひとつ、YAMAPの強みに「単品勝負」ができるという点があります。一般的なアウトドアメーカーは、シーズンごとにさまざまなアイテムをリリースしなければならないため、このような靴下だけといった単品推しはなかなかできません。私たちは登山者に対してその価値を直接届けられるので、YAMAPの企画開発の力と、専門メーカーさんの技術力を合わせて山に特化した製品をつくり、確実にニーズへ届けることができるんです。

定番として存在し続ける普遍的なデザイン

──YAMAPオリジナルのウェア類には、ベーシックな形が多いと感じています。ここにもこだわりがあるのでしょうか。

乙部:そうですね。あえて特徴的なデザインを入れないことで、ずっと定番として使ってもらえるようにしたいなと。凝ったデザインをしてしまうと、特定のシーンでばかり使ってしまって、日常的に使いづらくなってしまう。そういう良さもあるのですが、私は、山だけでなく普段使いできるようなウェアを作りたいと考えています。

地球にも人にも優しい「プラックスウール200ロングスリーブT」

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乙部:特に「プラックスウール200ロングスリーブT」は、山でも街でも着られるウェアをコンセプトに掲げています。カラーリングは他メーカーの長袖Tシャツではあまり見られないようなアースカラーを中心に採用。アウトドア感を払拭し、ちょうど「その色いいね」と言われるラインを追求してみました。

──山でも街でも、老若男女問わず着用できるのが持ち味なんですね。

乙部:さらに注目してもらいたいのが「プラックスウール」という素材です。防臭効果の高いウールの持ち味を生かしながら、アウトドアで求められる速乾性などの使い勝手を叶えています。

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それまで、天然素材であるウールに化学繊維を混紡することに抵抗感がありました。そんな中で出会ったのが、サトウキビを原料とした「PlaX(プラックス)」という繊維。天然由来の地球に優しい素材ながら、疎水性であるため濡れを素早く乾かすことができるんです。ウールの弱点である保水性をプラックスで解消する──機能性と環境配慮を両立したウェアとなりました。

スタイルに悩みがある人のための「ベーシックトレイルアンクルパンツ」

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──「ベーシックトレイルアンクルパンツ」にテーパードがかかっているのには理由はあるのでしょうか?

乙部:これは私自身の経験に理由がありまして。というのも、私がアウトドア業界に入ったとき、市場にはボディラインをしっかり拾ってしまうストレートのパンツが圧倒的に多かったんです(笑)。当時、在籍していたメーカーで、腰回りにゆとりが生まれやすいテーパードパンツに変えたら皆に喜んでもらえたという体験があり、今回も採用しています。

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また9分丈にしているのもポイントです。どのパンツも丈が長くて困っているというスタイル的な悩みに応えるべく、短めに設計しました。体型やスタイルに悩んでいる人に寄り添うデザインを目指しています。

“ありそうでなかった” YAMAPの山道具たち

──幅広い製品を手がけてきた中で、特に思い入れのあるアイテムはありますか?

乙部:個人的には「YAMAP別注 吸水ショーツ」ですかね。「ハイカーズバッジコレクションケース」も思い出深いアイテムです。

女性登山者へ贈る「YAMAP別注 吸水ショーツ」

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乙部:登山業界は基本的に男性ユーザーの方が多いんです。女性向けアイテムはニーズが多くないから、売れる枚数が少ないため、どうしてもアイテムの開発が遅れがちになってしまいます。そんな状況の中、いち女性登山者としても、女性向け吸水ショーツの企画が採用されたことがまず嬉しかったですね。

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女性特有の悩みを解消するために、フェムテックブランド「hogara(ホガラ)」さんと一緒に取り組み、これまで実現できなかった登山専用の吸水ショーツを開発しました。個人的にもとても良いアイテムになったと感じていますし、登山を楽しむ多くの女性に届いてほしいと願っています。

リアルでバッジ収集の楽しさを!「ハイカーズバッジコレクションケース」

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乙部:YAMAPのユーザーさんの中には、デジタルバッジの収集を楽しみにしている方も多くいらっしゃいます。デジタルはもちろんですが、「リアルでの山バッジ収集も楽しいよ!」という提案をしたくて開発したのが「ハイカーズバッジコレクションケース」です。

山バッジという文化は登山ではメジャーですが、意外と専用バッジケースは世の中になくて。専用ケースを作ったら喜んでもらえるんじゃないかと思ったのが開発のきっかけでした。ぜひコレクションケースを使って、リアルで山バッジを集めてほしいです。

アイテムから安全登山をサポート

──YAMAPオリジナルアイテムの今後の展開をお聞きしてもいいですか?

乙部:いま積極的に開発を進めているのが、「YAMAPアウトドア保険※」のイメージキャラクター「ライすけ」をモチーフにした安全登山グッズです。YAMAPの根底には、安全に山から帰ってきてほしいという願いがあり、ライすけが誕生したことで「安全登山の啓発を根幹としたオリジナル商品開発」という文脈が生まれました。すでに、モバイルバッテリーや手ぬぐい、保温ボトルが販売されていますが、これからも安全登山をサポートするアイテムが続々と登場する予定ですのでお楽しみに!


※YAMAPグループが提供する保険の総称です。

作り手とともに歩むYAMAPの製品開発

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──開発者の立場から、ユーザーさんに伝えたいことはありますか?

乙部:私たちは一緒に製品を作ってくれるメーカーさんを非常に大切にしてますし、同時にリスペクトしています。YAMAPには企画力があっても製造力はないので、「作れる人たち」は不可欠な存在です。だからこそ、信頼できる工場と協業し、丁寧にものづくりをしている──。改めて皆さんにその想いをお伝えしたいです。

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──「メイドインジャパン」へのこだわりも感じますが、その理由を教えてください。

乙部:日本の気候や風土、日本人ならではの悩みにあった商品を作るには、やはり日本のメーカーさんにお願いしたいという考えがあります。さらに日本各地には、細い繊維は北陸、ウールは尾州といったように、地域ごとの繊維産業の強みがあります。そうした日本の産地や生産者さんにもっと光が当たってほしいという願いも込められています。


これからもYAMAPでは、登山者のお悩みに寄り添うアイテムを開発・発売して行く予定です。ぜひ一緒に、日本の山歩きを楽しみましょう!

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      YAMAP

      「つづく、つながる、ものがたる」を大切にしているYAMAP STORE...

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