「インソールで足の悩みを改善したい」|足裏から健康を支える専門メーカー・BMZの挑戦
2018年に、インソール専門メーカー・BMZ(ビーエムゼット)とYAMAPの共同開発で誕生した「山を歩くインソール」。
特許を認められたBMZ独自の「キュボイド理論」に基づいたインソールは、足がもつ本来の機能を取り戻すことで不調を改善し、パフォーマンスを向上させる効果を備えた革命的なアイテムとして、多くの登山者から愛用されてきました。
今では、トレイルランニング向けのモデルから、日常生活でのトレーニング効果のあるモデルまで、バリエーションも充実しています。
今回は、皆さんにあらためてインソールの大切さを知っていただくために、BMZのインソール開発担当者である山中 保副社長にインタビューを敢行。BMZのインソールづくりの哲学と山道具としての機能や魅力について迫ります。
特許を取得。革新的なインソール理論
— 「山を歩くインソール」は、YAMAPのベストセラーアイテムになっています。改めて、BMZのインソールについて教えてください
BMZのインソールはすべて、立方骨という足の外側にある骨を支える「Cuboid(キュボイド)理論」に基づいています。キュボイドとは立方骨という意味で、足の骨格の基盤となる大切な骨のこと。足は26個の骨で構成されているのですが、この立方骨が足を支えることで、土踏まずのアーチが自然に形成され、指もしっかり動かせるようになります。
一般的なインソールは、土踏まず全体を固めることで安定感を高めているのですが、それだと足の自由度が失われてしまいます。ギプスをイメージしてみてください。 固定により最初は安定感があるのですが、着地時の衝撃吸収や踏み出しが正しく行われません。むしろ疲労しやすくなったり、不自然な歩き方により腰痛や膝痛を引き起こす可能性もあります。
実は、BMZも立ち上げ当時は、このギプスタイプのインソールを作っていました。しかし、足が固定されすぎることで怪我のリスクがあることに気づき、立方骨を支える仕様の開発が進みました。最初は折ったティッシュを入れたりして効果をテストしていたんです。
立方骨を支えることで、体重がかかっても足の指が柔軟に動くため、体を左右に動かしても足にしっかり力が入り、バランス感覚もよくなります。この「キュボイド理論」は、2012年に特許を取得し、BMZのインソールのみに採用されています。
— 足本来の力を目覚めさせるインソールと言ってもよさそうですね。ほかにも、BMZのインソールならではの特徴はありますか?
目的や用途に合わせて、さまざまな素材を使用していることでしょうか。
たとえば、スタンダードモデルの「山を歩くインソール ベーシック」には、「ポロン」という高反発のウレタン素材を使っています。登山では、重い荷物を背負って長時間歩くこともあり、足に大きな負荷がかかってしまいます。とくに下山時は、登りよりも大きな衝撃に耐えなければなりません。
そこで、ポロンが衝撃を適度に吸収し負荷を軽減することで、足裏の痛みや膝への衝撃を緩和してくれます。実は、このポロンをインソールで使ったのはYAMAPさんとの共同開発モデルがはじめてだったんです。とても高価なのですが、これ以上マッチする素材はありませんでした。
一方、インソールの表地には「ラコルト」というスエードのような生地を採用しているのですが、この素材に行き着く過程にも苦労がありました。
ポイントは「適度なグリップ力」。登山道には、平らなところもあれば複雑な地形もあります。靴が傾くと、足が滑ってしまい力のロスが生まれてしまいます。そこで、滑らないようにグリップ力が必要なのですが、摩擦が強過ぎると豆ができたり、靴擦れを起こしてしまうんです。様々な素材の試作品でテストを行い、ようやくラコルトでいい結果が得られました。
最上位モデル「山を歩くインソール カーボン」では、カーボン素材の厚みや形状、柔らかさや反発性などを見極めたり、トレランモデル「山を走るインソール」では、汗を吸いにくく滑りにくいEVAを用いるなど、モデルごとに最適な素材選びをしています。
ほかにも、「山を歩くインソール 」では、足裏の曲げ具合を調整するために硬さのある芯材を挟み込むなど、一枚のインソールに4つの素材を組み合わせているんです。そして、この素材の張り合わせは全て手作業。とても手間がかかる作業なのですが、目指す機能を実現するにはこれしかない。素材の張り合わせが少なければコストは下がりますが、どれかひとつでも欠けてしまうと、インソールとしての効果を発揮できないのです。
ちなみに、素材の両面に糊付けをして、乾燥させたものを機械でプレスして製造しているのですが、接着剤選びも試作を繰り返しながら選びました。登山中に剥がれてしまったら大変。耐久性も含め、テストにも力を入れています。
年配の方こそ試してほしい
— インソールを替える必要性を感じていない方も多くいます。BMZのインソールはどのような人にメリットがあるのでしょうか?
ほとんどの登山者の方には効果を実感いただけると思っていますが、年配の方にはぜひとも試していただきたいですね。やはり、20代以降はどんどん筋力が落ちてきます。60代になると、おおよそ半分になってしまうとも。膝が痛くなったり、体のバランスが悪くなったりと、いろいろ問題や不調を感じている人も少なくないはずです。足の機能を取り戻して不調を解消することができれば、これからも山をもっと楽しめると思います。
一方、不調がない人にも効果的です。山歩きがもっと快適になりますし、足を支えることで歩きやすく、姿勢が改善され、少ない力で登ることができます。縦走登山や体力勝負の山など、パフォーマンスを高めるという意味でも、メリットを感じていただけるでしょう。
自分に合ったインソールを選ぶには
— 「山を歩くインソール」には、様々なバリエーションが増えました。「どのモデルが自分に合っているのだろう?」と疑問に思っているユーザに向けて、それぞれの特徴について教えてください
登山がより快適になる「山を歩くインソール ベーシック」
もっともスタンダードなモデルで、ほとんどの登山で活躍します。クッション性の高いポロンを使用しているのが特徴で、接地時の衝撃と負荷を吸収してくれます。1日に何万歩も歩く登山では、小さな衝撃でも蓄積すると大きなダメージになってしまいますが、このポロンのおかげで足裏の疲れが軽減できます。
表生地には「ラコルト」と呼ばれる素材を使用。若干起毛したようなスウェード調の素材のおかげで靴下との間に摩擦が生じ、シューズ内での足のズレを軽減します。「ラコルト」は汗の吸収が早く、肌触りにも優れているので、快適な履き心地が持続するのも魅力です。
「ベーシック」は12月に再入荷を目指して、ひとつひとつ真心を込めて生産いただいております。気になる方は、ぜひ入荷通知にご登録いただきお待ちください。
縦走登山や長距離山行を支える「山を歩くインソール カーボン」
シリーズの最上位モデルです。反発性の高いカーボンをインソールの中央に配置しているのが大きな違いで、バランスの向上、衝撃の吸収、歩くための蹴り出しなど、足の機能のサポート効果があります。
登山シーンであれば、長距離を歩く縦走や重い荷物を担いでの山行に最適ですね。もちろん日帰り登山でも使うことができますが、ハードでタフな登山でこそ本領を発揮するインソールだと思います。足にかかる負荷は体重に比例するため、とくに下りなどで足が疲れる、辛いと感じている方はぜひとも試していただきたいですね。
BMZで使っているカーボンは繊維を綾織りにした生地に樹脂を含浸させたタイプ。織りによりしなやかさが生まれ、樹脂の硬さを調整することでたわみの度合いに変化を持たせています。
カーボン繊維の製造は日本で、樹脂の含浸工程はドイツで行っています。日本には安定した品質で樹脂を含浸させる技術がないため、わざわざドイツまで送って、それをまた日本に戻してもらっているんです。性能とコストで言えば、性能を優先した生産を行なっています。
トレイルランニング向け「山を走るインソール」
その名のとおり、トレイルランニングをターゲットとしたインソールです。走ることで発汗量が多くなるので、水分を吸収しないEVA素材を使用し、ムレを軽減する通気穴を空けています。衝撃吸収効果を高めるために、クッション性の高いウレタン素材を挟み込んでいます。
踏み込みを改善するために少しかかと部分を高くしていることと、着地時のバランスをとりやすくするために足指に力が入りやすい設計を採用しているのがポイントです。トレイルランニングはもちろん、登山で使っていただいてもOKです。素材に断熱性のあるEVAを使用しているので、冬場は暖かくていいかもしれません。また、水を吸わないので、丸洗いしても拭くだけというメンテナンスのしやすさも魅力ですね。
足の機能を整える「山を歩くインソール 足トレ」
「足トレ」は、普段の街歩きで山登りのような歩き方ができるインソールです。山登りためのトレーニングインソールという位置付けですね。BMZの登山用インソールはつま先とかかとが平行になるフラット設計ですが、「足トレ」は中心を少し高くしています。これは、インソールを着用することでシューズ内に山の斜面を再現するため。履いてみると少し前が上がるような設計になっているので、普段使っている靴で街歩きをするだけで登山時のような歩行ができます。
また足裏の中心を膨らませるフォースパッドを配置することで、指先が自由になり、指が使えるようになります。指で地面を掴んで歩けるようになるので、バランス感覚を高める効果があります。足を捻りやすい、捻挫をしてしまうという方は普段の生活で「足トレ」を使っていただくことで改善できると思います。
— ありがとうございました。BMZのインソールは発売以来好評で、ときには売り切れになってしまうほど好評です。最後に、YAMAPユーザーからのアンケートで、インソールについての質問があったのでお答えいただけますか?
Q. インソールはいつまで使えばいいのですか?
A. 足の機能は、日々使うことがとても大切です。使わなければ退化していってしまいますし、使うほどに健康になっていくもの。トレーニングによって筋肉がつくのと一緒です。なので、基本的には不調がなくてもインソールを使いつづけていただきたいと思います。
慣れてきたら、インソールを戻して履いてみてください。BMZ以外のインソールでは正しい足の形がつくられないので、おそらく違和感を感じると思います。でもそれは足がしっかりと整っている証拠です。
Q. どのくらいの期間で効果がわかるのでしょうか?
A. すぐ、感じていただけると思います。インソールを入れたらすぐに姿勢が変わるのを実感できるでしょう。歩く量にもよりますが、1日目、2日目で筋肉痛になる人もいます。これはインソールの効果が出ているということ。1週間もすれば足が正しく調整され、筋肉痛にはならないと思います。人間の細胞は、3ヶ月で入れ替わると言われています。膝の痛みや浮指などは、3ヶ月程度で改善の傾向がみられ、半年、1年経てば足がもつ本来の機能を取り戻せているはずです。
大学生に協力してもらったモニタリング調査では、足の指の設置面積が3ヶ月で28%から62%まで改善されたというデータもあります。指が使えることにより、バランス感覚が高まり、蹴り出しの力も強くなっていると考えています。
Q. 履いていて違和感がある場合はどうしたらいいのでしょうか?
A. BMZのインソールの仕組みは、歯の矯正と近い考え方です。最初は違和感や痛みを感じることもあります。でも少しずつ慣らしていくことで、足の機能が正常になり、違和感や痛みを感じなくなってくるはずです。まずは2日に1度でもいいですし、少しずつでもいいでしょう。
それでも違和感や痛みが出るようであれば、おそらく靴が足に合っていないのだと思います。インソールを靴から出して地面に置いて乗ってみてください。きっと違和感はないはずです。よくある事例としては、先が細くなった登山靴、タイトな登山靴、甲高な足にスリムな靴を履いているケース。シューズを見直してみることをオススメします。
Q メンテナンス方法、取り替え時期は?
交換時期は、使用頻度や期間により異なりますが、「ベーシック」については4ヶ月から半年、「カーボン」は半年~1年、「足トレ」については3ヶ月を推奨しています。「山を走るインソール」は着用して500km程度。トレイルランニングシューズの寿命と同じくらいです。
インソールは発泡材を使用しているので、履いているうちに潰れてしまいます。使っているうちに硬くなっていくので、購入時のような柔らかさがなくなってきたと感じたら、取り替えの目安です。
メンテナンスは、家に戻ってきたらインソールを靴から出して陰干ししてください。汗や汚れが目立つようであれば、中性洗剤で手洗いをして陰干しすればOKです。
足本来の機能を取り戻して、いつまでも登山を楽しんでほしい
2018年に登場したYAMAPとBMZが共同開発したインソールは、いまとなってはベストセラーアイテムとして多くの登山者に愛用されています。「山を歩くインソール ベーシック」にはじまり、本格登山向けの「山を歩くインソール カーボン」、トレイルランニングをターゲットとした「山を走るインソール」、そして日常でのトレーニングを目的にした「山を歩くインソール 足トレ」など、バリエーションは増えましたが、一貫しているのは、「登山を楽しめる足の健康を取り戻したい」という思い。足や膝の不調を感じている方はもちろん、より快適に歩きたい、登山人生をもっと楽しみたいという方にもぜひとも使っていただきたいアイテムとなっています。
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