足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

登山靴に入っている「インソール」。多くの方が、登山靴を買ったあとは、そのままインソールを変えることなく使っていると思います。しかし、このインソールに着目したブランドがあるのです。
それはBMZ(ビーエムゼット)。2004年にインソール専門メーカーとしてスタートし、スキーやスノーボードといったウインタースポーツをはじめ、サッカーやテニスなどの一般スポーツ向けの高機能インソールを開発してきました。その性能はトップアスリートがオーダーメイドモデルを依頼するほど。

YAMAPはそんなBMZのインソールに注目し、2018年には登山用のコラボモデルを共同開発しました。そして2021年、これまで販売してきた「ベーシック」に加え、本格登山向けの「カーボン」と街使いで登山トレーニングができる「足トレ」も新たに開発しました。

山歩きをより楽しく、アクティブに、そして健康にしてくれるBMZのインソール。そのブランド哲学、開発にかける思い、そして最新モデルである「カーボン」と「足トレ」について、BMZの本社で統括管理部の髙橋さん、製造部の林さんにお伺いしました。
(インタビュアー:清水直人、記事/写真:小林昴祐)

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

—BMZがインソールに着目した理由、そしてブランドへと成長するまでにはどのようなストーリーがあったのでしょうか?

BMZの創業者である高橋毅自身が、スポーツマンで、高校時代はプロサッカー選手を目指していたほどでした。しかし怪我によって選手の夢を諦めることになってしまいます。それでもスポーツに関わりたいと、ねんざや膝の炎症といった予防を独自に研究するようになったんです。シューズにはかなりこだわりがあったようなのですが、シューズのパフォーマンスを向上させるカギがインソールにあると着目し、研究・開発を重ね、2001年にはBMZとしてプロショップを立ち上げました。

YAMAPのユーザーさんにとっては、BMZと言えば「登山用のインソール」というイメージを持っていると思いますが、ブランドとしてはスキーやスノーボードといったウインタースポーツやサッカー、テニスといったスポーツ全般のインソールを手がけています。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

BMZ立ち上げ当時は、「ギブスタイプ」と呼ばれるインソールを作っていました。シューズと足の隙間を埋めるような、みなさんがインソールと聞いてイメージするようなものです。

しかし、そのギブスタイプだと足が固定されすぎてしまい、怪我のリスクがあることに気づきました。ある時、足の中心あたりにある立方骨という骨を支えることで足のアーチが整うと体のバランスが良くなるという話を高橋が聞いて、インソールでそれができないか考えたんです。最初は折ったティッシュを入れたりして効果をテストしていました。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

立方骨をサポートすると足のアーチが上がる。でも、固定が強いと自由度がなくなってしまう。そこで、足がロックされないように立方骨のサポートはそのままに、土踏まず部分のふくらみをなくした形状にたどり着きました。これが今のBMZのインソールの基盤になっています。

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シューズの中で足を完全に固定しないので、体重がかかっても足の指が柔軟に動くのが特徴です。これにより体を左右に動かしても足にしっかり力が入るので、バランス感覚もよくなります。以前のギブスタイプのような足全体と土踏まずをサポートするタイプだと、体重がかかったときに動きが制限されてしまい、足本来の機能が発揮できないんです。これが他社とBMZのインソールの大きな違いです。

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—インソールと聞くと、シューズ内のフィット感を高めるものだと認識していました。

実際、ギブスタイプのインソールは、膝に炎症を抱えていたり、骨折をした人にとっては歩きやすくなるというメリットがあります。ただ、固定されすぎるがゆえに足の機能がどんどん衰えていくデメリットも否めません。

BMZでは、「人間の足の機能を高める」ことを目標としています。インソールを通じて、本来、足が持っている機能を取り戻したいと考えています。

ちなみに先ほどお話したBMZ独自の立方骨を支える考え方は「Cuboid理論」と呼んでいるものなのですが、2010年に特許を取得し、採用したインソールがグッドデザイン賞をいただいています。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは中央のわずかな膨らみが立方骨を支えてくれる。

実は、BMZには2018年にYAMAPさんとコラボモデルを作るまでは、登山用のインソールはなかったんです。スポーツ向けのものをベースに、登山というアクティビティに合わせて素材や細かい設計を変えていきました。

登山用インソールの大きな特徴は、ポロンという素材を使っていることです。このポロンなのですが、インソールで使ったのはYAMAPさんが初めてだったんです。ポロンは高反発性のクッション素材で、接地時の衝撃を吸収してくれる効果があります。

そして表面にはラコルトというスエードのような生地を使っています。登山の場合はシューズ内で足が多少滑った方がいいんです。グリップ力が強すぎると靴擦れや豆の原因になってしまいます。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

—今回、これまでの「ベーシック」に加えて、本格登山用の「カーボン」とトレーニング用の「足トレ」の3つが登場しました。それぞれの特徴や用途について、ポイントを詳しくお聞きしたいです。

山を歩くインソール カーボン

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

まずは「カーボン」。シリーズの最上位モデルなのですが、カーボンをインソールの中央あたりに内蔵することで、足の機能を高めてくれます。

足の機能は、バランスを取る、衝撃を吸収する、歩くために蹴り出す、この3つを同時に行います。「同時に」というのがポイントです。登山では、衝撃を吸収しながらバランスを取り、蹴り出すという、かなり難しいことをやっているんです。世の中には様々な素材がありますが、軽くて、3つの役割を果たせる唯一の素材であり、かつ足の機能に近い素材がカーボンだったんです。

ちなみにBMZでは、2014年のソチオリンピックの前からインソールにカーボンを使用しています。ソチオリンピックでは、日本の選手が取った8つのメダルのうち4つがBMZのインソールを使用していました。メダルに貢献できたということは、結果を出せた素材。世界で戦える素材だということです。

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もちろんカーボンと言っても様々なタイプがあります。BMZで使っているカーボンは洋服のように長い繊維を綾織りにして生地にして樹脂を含浸させたものです。織りにすることでしなやかにたわませることができ、樹脂の硬さを調整することでたわみの度合いに変化を持たせることができます。

実は、インソールに使われているカーボンですが、繊維は日本で、樹脂の含浸はドイツで行っています。日本には安定した品質で樹脂を含浸させる技術がないため、わざわざドイツまで送って、それをまた日本に戻してもらっているんです。性能とコストで言えば、性能を取っている感じですね。

—カーボンにはどのような効果があるのでしょうか?

BMZのインソールでは、立方骨を支えるためにカーボンを使用しています。登山では、歩行時に足の裏には体重の2倍、3倍といった大きな力がかかります。それを支えるにはしっかりしたものではないと崩れてしまいます。しっかり支えて、反発させることで立方骨をサポートしているんです。

また、カーボンに加えて弾力性のあるポロンを使うことで衝撃吸収性も高めています。筋トレと一緒で、BMZのインソールを使えば使うほど足が健康になります。足を健康にして、100歳まで自分の足で登山をしてほしいという思いがあります。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

—どういった登山シーンにふさわしいモデルなのでしょうか?

登山シーンであれば、長距離を歩く縦走や重い荷物を担いでの山行ですね。もちろん日帰り登山でも使うことができますが、ハードでタフな登山でこそ本領を発揮するインソールになっていると思います。

カーボンの方がサポート力が強くなっているので、体重が重い方にも最適です。足にかかる負荷は体重に比例するため、とくに下りなどで足が疲れる、辛いと感じている方はぜひとも試していただきたいと思います。

山を歩くインソール ベーシック

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

—つづいて、あらためて「ベーシック」についてもお伺いしたいです。こちらは2018年からつづくモデルですね。

やはり、クッション素材であるポロンを使用しているのが特徴で、足が地面に着地したときの衝撃をしっかり吸収してくれる効果があります。登山は1日に何万歩も歩くことがありますが、小さな衝撃でも蓄積すると大きなダメージになります。その衝撃を和らげてくれるのがポロンなんです。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

BMZのスポーツ用のインソールではグリムウェアという人口皮革を使っているモデルが多いのですが、その理由はグリップ力が強いから。走り込んだり、強く踏み込んだときにスピードを落とさず、パフォーマンスを逃さないためのものなんです。しかし登山ではグリップ力が強すぎると足裏に豆ができてしまったり、靴擦れの原因になってしまうため、ラコルトというスエードのような素材を使っています。

山を歩くインソール 足トレ

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

—新しく加わった「足トレ」は登山のトレーニング用というユニークなモデルですね。

「足トレ」は、普段の街歩きで山登りのような歩き方ができるインソールです。山登りためのトレーニングインソールという感じです。

「ベーシック」も「カーボン」も、BMZの登山用インソールはつま先が高い、踵が高いといったことはなく、フラットに設計しています。他社のインソールはかかとを上げることで前に進む力を持たせているものもありますが、BMZとしては、やはり自分の足で歩いていただきたい、足本来の機能を高める効果を持たせたい、ということでフラットにしているんです。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

しかし、唯一「足トレ」は足のサポートのために中心を少し高くしています。これは、インソールを着用することでシューズ内に山の斜面を作ろうとしているんです。履いてみると少し前が上がるような設計になっているので、普段使っている靴で街歩きをするだけで登山時のような歩行ができるようになっています。

また足裏の中心を膨らませるフォースパッドを入れているので、指先が自由になり、指が使えるようになります。指で地面を掴んで歩くようなイメージですね。

—「指を使う」というのはどういうことなのでしょうか?

立方骨を支えると指に力を入れられるようになります。ベタっと足を地面に着けただけだと力が入りません。指に力が入ると、靴の中で足が安定するんです。

みなさんの靴を見ていただくとわかると思うのですが、ウインドラストといってつま先が上がった形状になっていると思います。これではシューズ内で足が反った状態になり、歩行時に力が入りません。そこで「足トレ」では中央部を少し盛り上げることで指を自由にして、足本来の機能を取り戻す効果を持たせています。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

人は普段の生活で1日平均7000歩ほど歩きます。その歩行をトレーニングにしてしまおうというのが「足トレ」。通勤や通学が山登りのトレーニングになるインソールですね。

ちなみに表面に使っているのは人工皮革のグリムウェアという素材です。グリップ性があり、毎日使ってもへこたれない耐摩耗性があります。BMZのスポーツ用のインソールに使われている素材なのですが、表面に細かい無数の穴があるので汗をかいても吸ってくれ、快適性を維持する効果もあります。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

裏側の素材は、ベーシックとカーボンがEVAなのに対して、PU(ポリウレタン)を使用しています。PUも空気が抜けやすく、またスポンジのように汗を吸ってくれるため、シューズ内の快適性に貢献してくれるメリットもあります。

足裏から登山を見直したい。インソールメーカー・BMZが挑む「歩きの革新」とは

—メンテナンス方法、取り替えについて教えてください。

交換時期は、使用頻度や期間により異なりますが、「ベーシック」については4ヶ月から半年、「カーボン」は半年〜1年、「足トレ」については3ヶ月を推奨しています。

インソールは発泡材を使用しているので、履いているうちに潰れてきます。使っているうちに硬くなっていくので、購入時のような柔らかさがなくなってきたら取り替えの目安です。

メンテナンスは、家に戻ってきたらインソールを靴から出して陰干ししてください。汗や汚れが目立つようであれば、中性洗剤で手洗いをして陰干しでOKです。

—もともと登山用のインソールはYAMAPとBMZの共同開発としてスタートしたこともあり、インソールを変えることでより登山が楽しく、快適になるという効果や魅力について発信していきたいと思います。ありがとうございました。

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