ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを

記事:低山トラベラー 大内 征

山に行けない日って、ありますよね。
時間も体力も余裕があるのに、自分自身の気持ちが乗り気じゃない日。あるいは、ここ最近だと外出を控える世情が影響していることも、その背景にはあります。もちろん、仕事が立て込んでいたり、準備不足や体調管理の問題もあったり。まあ、タイミングが合わないときは、とことん合わないものです。

そんな時、ぼくはちょっとした「山道具」の準備をして、お気に入りの場所を目指します。時には車で、時には公共交通で。登山はしなくとも、山を眺めに出かけるという行為そのものが、ぼくにとって最高の気分転換になるからです。

向かうのは、山岳展望に優れた眺めのいいスポット。山を間近に眺めながら、息抜きにコーヒーを飲む。ただそれだけを求めて。

登る山と、眺める山と、その両方と

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを

二時間ほどのドライブで行けて、山の眺めがよくて、のんびりできるところ。となると、ぼくのお気に入りのひとつが八ヶ岳の山麓。この日は清里エリアが晴れる予報だったので、目の前に巨大な八ヶ岳が横たわる「平沢峠」の駐車場にやってきました。ここ、好きなんですよね。

運転している道中から、山と街の景色に心が躍ります。東京から中央道を利用して山梨に向かう途中、相模湖や大月のあたりで何度か富士山の姿を認めることができます。ぼくにとっての富士山は「登る山」ではなく「眺める山」で、富士山を眺めるために周辺の山々ばかり登っていたりして。

高い山から眺める麓の景色の中には、必ずと言っていいほど気になる低山を見つけます。形や位置関係を覚えておいて、あとから山名を調べるのが楽しくて。ぼくは日本中の低山を歩いてその魅力を伝えることを生業にしているため、そういう山を無数にリストアップしています。もちろん、あらためて歩きに行くために。八ヶ岳は、その意味で「登る山」でもあり「眺める山」でもあります。

逆に、低山や峠などから山岳霊峰を仰ぎ見ることも大好きで、麓からその高き頂を眺めながらいろいろなことを想像しています。たとえば「あそこに登れば向こう側がよく見えるな」とか、「この低山の全容を撮るなら、向こうの高山からのアングルが良さそうだな」とか。

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを

平沢峠にやって来ると、広い駐車場にはすでに何台かの車が入っていました。ぼくと同じように八ヶ岳を眺めに来ている人がいれば、仕事中なのか休憩している人もいたりして。手軽なわりに360度の大展望で知られる飯盛山の登山口がここにあるため、早春の山歩きを楽しんでいる人もいるようです。それぞれがそれぞれの世界に没入する、そんな雰囲気が心地よく感じます。

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを
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到着するなり、ひとりラゲッジルームに腰掛けてコーヒーの準備をする時間を味わいます。YAMAPの「KOMOREBI」はコーヒーバッグ式だから淹れるのがとても楽。ゴミとして持ち帰るにも便利です。おまけにデカフェなので、カフェインを気にする人にはぴったり。それでいて濃いめのテイスト。いい商品が登場したものです。

こういう時はバーナーでお湯を沸かすのではなく、自宅から保温力抜群の「サーモス 山専用ステンレスボトル(750ml)」に熱湯を入れて持ってくるのが気分。到着したらすぐにコーヒーを作れるから、ドライブでもキャンプでも登山でも重宝すること間違いなし。これからの季節ならお花見なんかにもいいですね。

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを

街と高山をつなぐのが低山や峠だとするならば、それぞれの営みがそこで“交わる”ことになります。ここ平沢峠は、かつて佐久往還と呼ばれた交通の要衝で、山梨県韮崎市の甲州街道と長野県佐久市の中山道とを結ぶ、重要な峠でした。距離が長く難路でもあったこの道を往来する旅人のために、宿屋もあったと言います。

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを

この峠を歩いた古の旅人は、八ヶ岳を目の前にした時にどう思ったんでしょうね。近代アルピニズムの夜明け以前は、修験や密教などの行者でもなければ八ヶ岳に“登山”する人はいなかったでしょう。山を神と崇め、人の立ち寄れない(冒さない、汚さない)神域とする態度もあったと思います。逆に言えば、こうして麓から神なる山嶽を仰ぎ見ることにとどめて、昔の人も山岳展望を楽しんだのではないでしょうか。

なんてことを考えながらコーヒーを啜り、静かに過ぎゆく時間を楽しむ。山を眺めながらコーヒーを飲んでいるだけなのに、なんとも贅沢なひとときです。

獅子岩に立ち、夏の八ヶ岳山行に思いを馳せる

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平沢峠の駐車場のすぐ隣には、その形から獅子岩と呼ばれる大きな岩が独特な存在感を放っています。手がかり足がかりを見定めれば誰でも立つことができる手軽な岩場ですが、眺めは一級品。この夏はあそこの尾根を歩こうかなあ、なんて夏の八ヶ岳山行を想像するのも楽しいひととき。

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを
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こんな時のために、軽く山歩きができる準備は、ぜひしておきたいところ。軽めの行動なら風を防ぐ薄手のウインドシェルはとても便利です。着ていたダウンジャケットをケースにしまって、代わりにシェルに羽織り直し、軽装で獅子岩へ。ここから眺める八ヶ岳、本当に最高なんですよね。

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを
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パタゴニアのフーディニジャケットは、超軽量の耐風ジャケット。胸ポケットに押し込みながら収納できるパッカブル仕様なので持ち運びがしやすく、ウエストバッグにも入ってしまう小ささ。逸品中の逸品です。薄手とはいえ、これ一枚を羽織るだけで相当な違いが体感できますし、しかも動きやすく、言うことなし。天候はよくとも風は冷たいという時など、本当に重宝します。

仕事用のバッグに常備しておけば、エアコンの効いた夏場のデスクワークや出張や移動の飛行機などできっと役に立ちます。ちょっとした雨のときにはフードが活躍するので、ぼくは薄手のウィンドシェルはどんな時にも必ず持ち歩いているほど。

ちょっと山の近くまで。圧倒的な山岳展望とおいしいコーヒーで贅沢な息抜きを

あらかじめ小型のザックも用意しておけば、急きょ“山歩き”に変更する時にも対応できます。ウエストバッグはさすがに容量に限りがありますが、これなら保温ボトルも薄手のシェルも余裕で入りますね。

このコトパクシのシリーズは、独自の色味がひと目を引きます。ザックで他の人との違いにこだわりたい人にはピッタリ。室内は使い勝手のよい区切りになっていて、まるでスーツケースのように機能的。これ、仕事のバッグとしても使えそう。

八ヶ岳に沈む夕陽が破格の美しさ

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そうそう、ここ獅子岩は八ヶ岳に沈む夕陽の美しさが随一で、朱に染まる山容を眺めるために訪れるだけでも、その価値があります。その昔、ここで眺めた落日の見事さに感動し、今度は“あっち”でこの夕陽を眺めたい――そう思って、赤岳に登ったことを思い出しました。

愛用する山道具を手繰り寄せてザックに詰め込めば、旅はもう始まっています。自分が元気になれる山の展望スポットを見つけて、山に行けない時の新しい過ごし方として、ぜひ試してみてください。保温ボトルとコーヒーも、お忘れなく。

あ、いい山岳展望スポットを見つけたら、ぜひ教えてくださいね。

大内 征(おおうち せい)

大内 征(おおうち せい)

低山トラベラー、山旅文筆家。歴史文化や神話民話を辿って日本各地の低山霊峰を歩き、ローカルハイクの面白さを探究。ピークハントだけにとらわれない“知的な冒険”を山旅に求め、文筆と写真と小話とでその魅力を伝えている。 NHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」レギュラー、著書に『低山トラベル』シリーズ(二見書房)、『低山手帖』(日東書院本社)など。YAMAP MAGAZINEで連載中の「低山トラベラー大内征の旅する道具偏愛論」が好評。

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