必ず持っていく山道具 “Every Mountain Carry”を楽しもう!

記事:低山トラベラー 大内 征

“Everyday Carry”と聞いて、ああEDCね!と即答できる人は、かなりのギア好きでしょう。文字通り“毎日持ち運ぶ“ことを意味するEDCは、出かける時にポケットやバッグに必ず忍ばせておく、日常使いしているお気に入りの道具のことです。

それゆえにオーナー等身大のこだわりが色濃く表れるもので、EDCの本場アメリカでは自分のポケットの中身を見せ合ったりSNSで情報交換することが定着しています。試しにYouTubeで 「EDC」と検索してみると、さまざまな国のギアマニアたちが、自慢の「日常使いしているお気に入りの道具」を投稿しているのがわかるでしょう。眺めていて飽きないし、この行為そのものがギア好きの心をくすぐるカルチャーだと言えます。

必ず山に持っていく、便利で大切で大好きなギア

必ず持っていく山道具 “Every Mountain Carry”を楽しもう!

そこで、日常使いしているお気に入りの「山道具」について、ぼくなりに考察してみたいと思います。読者のみなさんにも、山に行く時は必ずザックに入れておく道具セットがありますよね。

たとえばぼくは、貴重品、衛生用品、それと緊急時用の道具を毎回必ずセットで持ち歩いています。その取捨選択は絶えず見直して洗練させているつもりですが、どうもしっくりこなくて別の道具に入れ替えたり、ときには買い直したり……。ゆえに、ほかの山仲間が大切にしている道具の話はとても興味深く、キャンプなどで火を囲みながら語り合う道具論は、とても面白く感じます。

いまや登山の楽しみ方は多様で、あらゆるテーマを掛け合わせた多彩な切り口があり、自分らしい視点で山を歩くハイカーが増えています。その意味で「道具から楽しむ登山」という視点があってもいいと、ぼくは思うのです。

そんなわけで、日常使いしているお気に入りの登山道具、いうなれば「Every Mountain Carry(EMC)」から、登山を楽しむという試みをしていきます。

貴重品は常に“身につける”

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常に持ち歩くEMCといえば、まずは貴重品の類。たとえば山小屋にいる時、あるいはテントにいる時、寝る時、トイレに行く時、はたまた登山口までの移動の時など、みなさんはどのようにして携帯しているでしょうか。

山で貴重品を失くした時の絶望感は味わいたくないですから、ぼくはぶらさげるタイプより身体に密着するものを好んで使っています。身体にフィットするバッグやサコッシュは盗難予防に適していること、肩掛けしたままザックを背負っても邪魔にならず、落としてもすぐに察知することができるからです。

バッグはできるだけ小さなものを選んでいるので、必然的に中に入れる道具も小さなものに揃える必要があります。そうやってお気に入りを設えるプロセスが、これまた楽しいんですよね。

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小さなバッグなら、パタゴニアの「ウルトラライト・ブラックホール・ミニ・ヒップ・パック」がとてもいい調子です。容量なんと1Lと限られたものしか入らない小ささで、ベルトは肩掛けするとぼくの身体ひとまわり程度の長さ。それがかえって密着感を生むため安心感につながり、EMCとしては最適なのです。

  • ◎コインケース(日常でも使っている)

運転免許証や保険証、小銭、キャッシュレスに対応するカード類


紙幣、温泉や商業施設などで特典の多いJAFカードやモンベルカード等


  • ◎防水ケ―ス

車のキーなど、濡らしたくな小さな小物、乗り物のチケット類


  • ◎メモ帳とペン

取材のメモや情報交換などに使用


  • ◎LEDライト

緊急時などの備えてとして(ヘッドランプは別に持つ)


  • ◎常備薬の類

ぼくは目薬とリップクリームを必ず持つ


  • ◎その他

携帯用のエコバッグ、取材の時は名刺ケースとボイスレコーダーも


……と、こうしてリアルに持ち歩いている自分のEMCを広げるのはなんだか恥ずかしいものですが、そういえば山好きの人って道具を並べて写真撮るよなーと、この写真を撮りながら思ったりして。その気持ち、なんかわかるかも!笑

コロナ時代の新様式、衛生用品を“身につける”

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新型コロナウイルスによる影響の大きさは、ハイカーの持ち物にも及んでいます。少なくともマスクの予備は、みなさん必ず持ち歩いているのではないでしょうか。山中には街のようにお店があるわけではなく、山小屋や茶屋にだってなんでもかんでも売っているわけではありません。事前に衛生用品を準備をして持ち歩かなければならないため、実は備えそのものをしていない……という人もいることでしょう。

ケガをしなければ使う機会の少ないファーストエイドキットに比べれば、出番の多い衛生用品はそのまま日常生活に役立てられるため、揃えておけば一石二鳥。ドラッグストアやホームセンターなどを定期的にチェックしに行くことも、ある意味で“登山のうち”です。

必ず持っていく山道具 “Every Mountain Carry”を楽しもう!

パーゴワークスの「ダブルフェイススタッフポーチ」は、ちょうどマスクが入る幅で扱いやすく、マチがあるから収納力もあります。そのままポーチとしてザックに入れてもよし、手持ちのストラップをつけてサコッシュのように使ってもよし。


  • ◎予備のマスク、用途別のマスク

山行用、就寝用、汚れた時などの予備用


  • ◎手ぬぐい

いろいろ使える万能アイテム。忘れた場合は山小屋で購入!


  • ◎ティッシュ

ポケットタイプに加え、除菌用のウェットティッシュも常備


  • ◎消毒液と体温計

小分けした液体やジェル状の消毒液。体温計は短い時間で測れる短めのタイプ

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ちなみに、液漏れや破損に備えるなら、ノバスコシアフィッシャーマンの「トラベルソープバッグ」が便利です。もともと石鹸用の小型バッグなので、固形石鹸そのものを持ち歩くために丈夫に作られています。こういう日用品から山に適したものを応用する発想は、日ごろの家事の経験が活かされることでしょう。


  • ◎その他

捻挫などに使う応急テープ、絆創膏、貼るタイプのカイロは常備。場合によって、三角巾や蘇生用マウスピースも


……と、ぼくが山に持ち歩く衛生用品はこんなところでしょうか。もちろんファーストエイドキットは別に持ちます。やや荷物にはなるけれど、そのために日ごろから見直しは欠かせません。それにしてもこのポーチ、なんともいい具合のフィット感。

緊急時の強い味方を“身につける”

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登山にしても、テント泊にしても、キャンプや野営にしても、緊急時に使う道具をまとめておくとイザという時に強いというもの。特に屋外ではナイフの出番が多くなるため、バッグに入れて身につけておくと便利です。

必ず持っていく山道具 “Every Mountain Carry”を楽しもう!

これもパタゴニアの「ウルトラライト・ブラックホール・ミニ・ヒップ・パック」で、軽いわりに生地が強くてしっかりした作り。ゴツゴツしがちな道具が多い緊急用のEMCにちょうどいいバッグです。


  • ◎ナイフ、ファイヤースチール

調理、整地、焚き火などの必須道具。登山では折り畳み式のナイフを

※銃砲刀剣類所持等取締法第22条において、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物携帯は禁止されています。ナイフの携帯は登山やキャンプの時のみにしましょう


  • ◎ホイッスル、温度計、熊鈴

地図読み、クマよけ、緊急時に使用


  • ◎マルチツール

特にハサミは便利なアイテム


  • ◎その他

ライター、岩塩、バッテリーの他、鏡、絆創膏、ポイズンリムーバーなども

必ず持っていく山道具 “Every Mountain Carry”を楽しもう!

ザックにしまう場合も、雨蓋などのポケットにちょうど入るくらいの大きさです。ぼくの愛用しているミステリーランチのクーリー40のトップポケットにも、こんな具合にシンデレラフィット!

地図や本を“身につける”なら、大きめのサコッシュが便利

必ず持っていく山道具 “Every Mountain Carry”を楽しもう!

ぼくは、山と高原地図や国土地理院の紙地図は必ず用いています。ときにはガイド本も。これらは登山計画に必要ですし、予備の計画を立てておくためにも必須。紙の地図を大きく広げて山域全体を把握しておくためでもあります。そのうえで、行動中はYAMAPも活用し、現在地とコースをまめに確認するわけです。とはいえ、これがちょっとかさばって重いのは、みなさんも同じ意見でしょう。

RIDGE MOUNTAIN GEARのショルダーパックは、X-Pacという丈夫な生地で作られています。容量は4Lとちょっと大きめですがスマートなスクエア型なので、地図やガイド本、長財布もそのまま収納できます。収納するギアによっては、大きめのバッグも選択肢のひとつでしょう。

さてさて、いつも持ち歩く登山道具ということで、ここまで個人的なEvery Mountai Carryとその身につけ方を考察の材料にしてみました。どんな状況に備えて、どんな道具を持ち歩き、どんなバッグに収納するか。そういうことを“自分で考えて買い揃える”という一連のプロセスは、楽しいに違いありません。

新しいザックを購入したら試しにパッキングしてみるのと同じで、小さなバッグやサコッシュを用意したら「日常使いしているお気に入りの登山道具」を整理し、実際に収納してみると、なにか着想や気づきがあることでしょう。こう書きながら、ぼく自身もちょっとした新しい閃きがありました。道具と“夜更かし”は相性がいいもの。今夜はビールでも飲みながら、夜な夜な自分の「EMC」に磨きをかけようと思います。

2023年VerのEMCはこちら
大内 征(おおうち せい)

大内 征(おおうち せい)

低山トラベラー、山旅文筆家。歴史や文化を辿って日本各地の低山をたずね、自然の営み・人の営みに触れる歩き旅の魅力を探究。ピークハントだけではない“知的好奇心をくすぐる山旅”の楽しみ方について、文筆・写真・講演などで伝えている。 NHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」コーナー担当、LuckyFM茨城放送「LUCKY OUTDOOR STYLE~ローカルハイクを楽しもう~」番組パーソナリティ。NHKBSP「にっぽん百名山」では雲取山、王岳・鬼ヶ岳、筑波山の案内人として出演した。著書に『低山トラベル』(二見書房)シリーズ、『低山手帖』(日東書院本社)などがある。宮城県出身。 YAMAP MAGAZINEで連載中の『大内征の超個人的「どうする家康」の歩き方』が好評。

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