PAAGOWORKS デザイナー・斎藤徹がトレランパック「RUSH」開発にかける思い

今シーズン、パーゴワークスが展開するトレイルランニングパックシリーズ「RUSH」がフルモデルチェンジ。YAMAP STOREでも、全5アイテムの取り扱いがスタートしました。そこで、あらためて多くの人に「RUSH」について知ってほしいと、パーゴワークスの代表でありデザイナーである齋藤徹さんにお話を伺いました。「RUSH」を開発したきっかけからモデルチェンジまで、「RUSH」の歴史を振り返る貴重なインタビューをお届けします。

< 新型「RUSH」シリーズ >

— 「RUSH」のデビューは2014年ですが、どのようなきっかけで、開発をしようと思ったのでしょうか?

原点を遡ると、1993年から開催されているトレイルランニングのレース「ハセツネカップ(日本山岳耐久レース~長谷川恒男cup)」というのがあって、そのレースに出場する仲間のランナーにレース用のバックパックを作っていたことがあったんです。まだ、パーゴワークスがはじまる前、フリーランスでデザイナーをやっていた頃の話です。

それから2011年にパーゴワークスを立ち上げて、ハイクやキャンプのギアを展開しはじめていたのですが、ちょうどトレランシーンの盛り上がりがあった時期。アウトドア仲間とも走りにいったり、レースに出たりしていて、「やっぱりトレランは楽しいな」とあらためて感じていたんですよね。

PAAGOWORKS デザイナー・斎藤徹がトレランパック「RUSH」開発にかける思い

トレランパックは当然ながら「走る」ためのバックパックなので、いかに体へのストレスを減らせるかが大事。ハイキング向けのパックよりも、背負い心地や機能性など、デザインで良し悪しが決まるアイテムなんです。つまり、デザイナーとして大きなやりがいがある。パーゴワークスとして、トレランパックづくりに挑戦してみたいという思いが芽生えてきました。

— 当時はどのようなトレランパックがあったのですか?

ヨーロッパやアメリカのブランドが主流。しかも、レース向けのベスト型のモデルが流行っていました。当時はまだソフトフラスク(トレラン向けの柔らかく軽量なボトル)がなくて、ハイドレーションパックを使うのが一般的でした。

また、海外ブランドのトレランパックのほとんどはレース向けのスペックだったので、着用の仕方や調整方法が複雑。わかっている人は使いやすいけど、初心者からしたら敷居が高すぎる代物でした。しかも、ランの人は走ることが目的なので、ギアに詳しくない人も多かったんですよね。調整のコードがあっても、使い方を知らない人もたくさん見かけました。だからこそ、パーゴワークスとしてトレランパックを作るなら、もっとカジュアルに、簡単に使えるものを作りたいと思いました。

— これまでにない全く新しいトレランパックの開発に取り掛かったわけですが、初代RUSHの特徴について教えてください。

PAAGOWORKS デザイナー・斎藤徹がトレランパック「RUSH」開発にかける思い初期モデル「RUSH 7」

初期モデルは、伸縮性のあるライクラという生地を採用しました。伸びることでパッキングのしやすさを狙ったんです。荷物が少なければコンパクトになるし、いっぱい入れても生地が伸びるので対応幅が大きい。作りがしなやかなので体にフィットしてくれるのも魅力です。

肩のハーネスにフォームを入れたのも、ランナーの負担を減らす工夫。レーシングモデルは、ハーネスの素材がペラペラなので肩が痛くなるという声がたくさんあったんです。デザイナーとしてのこだわりは、表からステッチが一切見えないよう全部内縫いにしたこと。シンプルですっきりした見た目にしたかったのですが、工場としては生産が難しく苦労したみたいです。

PAAGOWORKS デザイナー・斎藤徹がトレランパック「RUSH」開発にかける思い

従来のトレランパックに不満を抱えていたユーザーは多く、「これが欲しかった」という声をたくさんいただきました。狙ったとおり、ビギナーや女性からの評判はよかったですね。

「RUSH」を作って、トレランシーンに飛び込んで感じたのは、レースやコミュニティーにしっかりとコミットしているブランドが受け入れられるということでした。ただ、モノをつくるだけじゃダメ。ランナーと一緒になってシーンを盛り上げていくことが大事なのだとあらためて感じました。

— 限定のレースモデル「UT」を発売するなど、新しいモデルもどんどん開発し、「RUSH」のラインナップは増えていきましたね。

2016年に、世界的なトレイルランニングの大会「UTMB」に視察に行ったんです。そこでヨーロッパの素晴らしい山岳景観、かっこいいトップランナー、街全体でシーンを盛り上げる雰囲気を感じて、「UTMBの表彰台にRUSHを乗せたい!」と、ふたたびデザイナー魂に火がついてしまって。

ヨーロッパから帰国して、まず取り掛かったのが、「UT」というモデルの開発でした。これは100マイル(160km)レースをターゲットにしたモデル。一般発売はせずに、100マイルのレースに出場するランナーに向けて、100個限定でリリースしました。宣伝もほとんどせずに、限定したトレランショップだけで販売するという、特殊なスタイルでの展開をしたんです。

PAAGOWORKS デザイナー・斎藤徹がトレランパック「RUSH」開発にかける思い

「UT」を使ってくれたランナーとコンタクトを取って、フィードバックもらい、よりよいトレランパックを作りたかった。「UT」というひとつのプロダクトを中心にコミュニティーを作りたかったんです。

この「UT」のおかげで海外レースに挑戦するトップランナーと出会うことができ、コミュニティも広がっていきました。大手のメーカーであれば、速いランナーをみつけてスポンサードして、背負ってもらうことはできる。でも、パーゴワークスとしては、トップを目指す人と一緒に成長していきたかったんですよね。

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— そして、2023年。満を持して「RUSH」のフルモデルチェンジに取り掛かると。

初代「RUSH」を発売してから約10年。トレイルランニングのシーンもランナーも成長してきて、「RUSH」も「次」を求められているのかなと感じていました。定番的に同じものを作りつづけるのもいいけれど、根がデザイナーなんですよね。現状に満足せず開発をしていたい。新しいプロダクトを作っていたいんです。

PAAGOWORKS デザイナー・斎藤徹がトレランパック「RUSH」開発にかける思い

モデルチェンジでは、ラインナップを整理し、100マイルレースまで対応する本格モデルの「RUSH 7R」と「RUSH 11R」、レギュラーモデルの「RUSH 10」「RUSH 20」「RUSH 30」という5アイテムに落ち着きました。これまで培ってきたトレランパックづくりのノウハウを全て注ぎ込み、それぞれに目的と最適な機能を盛り込みました。

PAAGOWORKS デザイナー・斎藤徹がトレランパック「RUSH」開発にかける思い左上:開発に携わったランナーたち、右下:完成までに作られた数々のプロトモデル

初代「RUSH」を作ったときと今で大きく違うのは、たくさんのランナーとのつながりがあること。「UT」を出したことで、トップランナーからの貴重な意見を聞くことができました。細かな機能や使い勝手で、レースの結果が左右されるようなシビアな世界。そんなランナーたちにヒアリングをして、アドバイスをもらい、プロトタイプをフィールドテストしてもらうことで、より実用性の高い「RUSH」が完成したのだと思います。

そういう意味でも、今回のモデルチェンジで展開する5アイテムは「RUSH」シリーズの集大成。これまでにない背負い心地のよさ、レースでも使える機能性の高さを、体感していただきたいと思います。

< 新型「RUSH」シリーズ >

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日本人向けに開発されたフィッティング設計、レースで活躍する豊富な機能性を備え、ビギナーからトップアスリートまで幅広いランナーの支持を集めてきた 「RUSH(ラッシュ)」シリーズのフルリニューアルに先立ち、パーゴワークス代表/デザイナーの齋藤徹さんにインタビューを敢行。どこよりも早く、5アイテムそれぞれの解説に加え、新型RUSHシリーズの開発に込めた思いをお届けします。

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