日帰りで楽しむ湿原ハイク「尾瀬ヶ原」|【山歩しよう in 尾瀬】モデルコース①
初めての尾瀬、またはハイキング初心者ならば、やはり定番コースを選ぶのがおすすめ。どの時期・季節でも楽しむことができ、体調や天候に合わせてその場でコースの変更も出来ることが定番たる所以です。今回のモデルコースは、「鳩待峠から尾瀬ヶ原まで」。尾瀬を訪れる方のおよそ4割の方がこのコースを歩きます。本記事ではコースの概要と YAMAP STOREセレクトの厳選山道具をあわせてお届けします。
「鳩待峠〜尾瀬ヶ原」定番山歩コースの特徴
■モデルコースの詳細情報
・所要時間:4~7時間程度
・歩行距離:およそ7~17km
・標高差:約250m
群馬県側の登山口である鳩待峠から、尾瀬ヶ原の玄関口「山ノ鼻」を経由して尾瀬ヶ原を周遊するコース。基本的に整備された木道を歩くので、ビギナーはもちろん体力などに不安がある方でも安心です。到着が遅れるなどの理由で山行予定が後ろ倒しになった場合でも、牛首分岐で引き返せば4時間強、歩行距離は11kmほどに短縮できます。コースに決まり事はありませんので、行ってみて、歩いてみて、当日の天候や体調次第で変更するのもOK。自分や状況に合わせて臨機応変に自然を楽しむのが「山歩」のたしなみ方です。
7:30 戸倉駐車場から鳩待峠へ
登山口である「鳩待峠」までは、4月下旬から11月初旬までの期間、戸倉駐車場(有料)からシャトルバスが運行しています。尾瀬では環境保全のためにマイカー規制が定められている登山口が多く、ハイシーズンは駐車場からバスを活用するのが一般的。荷物をパッキングしたらチケットを購入し、バスに乗り込みます。
ちなみに、公共交通機関を利用する場合はJR沼田駅から路線バスを活用するか、新宿などから「戸倉・大清水」行きの高速バスに乗車し、戸倉で鳩待峠行きのシャトルバスまたは乗合タクシーを利用するのが一般的です。
戸倉駐車場からのシャトルバスは、乗客が多い場合にはダイヤに関係なく増発を行っていますのでご安心を。時刻表を目安にしつつ、焦らずに向かいましょう。
【TIPS】活動前の朝は気温も低い。防寒着を着用し身体を冷やさないことが大切
特に早朝の時間帯は気温も低く、歩き出す前のため身体もあたたまっていないことがほとんど。防寒着となるミドルレイヤーや、必要に応じてレインウェアを重ね着することで身体の冷えを最小限にすることが大切です。ミドルレイヤーは、持ち運びに便利な「軽さ」「コンパクトさ」を重視して選ぶのがベスト。活動中の細かい休憩時にも役立てられるように、厚手すぎるものは避けましょう。
8:00 鳩待峠登山口から山歩きスタート!
蛇行する山道をシャトルバスに揺られておよそ30分で鳩待峠へ到着。この日、現時点での天候はあいにくの雨。しかし、天候が刻一刻と変化していることは、空を流れる雲の速さからも感じられます。
尾瀬ヶ原に着く頃には晴れ間が見えるかも?と期待を胸に、いざ出発!
登山口から「山ノ鼻」までの木道は、木々の生い茂る樹林帯のなかを通っています。多少の雨であればびしょ濡れになる心配はないですが、こんな時でも防水透湿性に優れたレインウェアを持っていれば安心です。寒さ対策や泥よけの目的も込めてジャケット・パンツの上下で着用し、木道を進みます。
尾瀬ヶ原までの道中には、春の尾瀬の風物詩「ミズバショウ」の群生地が。まさに見頃といった様子で、雨露を浴び生き生きとした姿を見せてくれました。こういった土地ならではの植物を楽しむのも、山歩の醍醐味と言えるでしょう。
【TIPS】木道歩きに適しているのは、ソールの硬すぎない登山靴
舗装された木道は、比較的平坦で歩きやすいという利点がある反面、雨などで濡れている場合には大変滑りやすいという注意点があります。そんな木道歩きに適しているのは、ソールが硬すぎず、グリップ性能の高い靴。硬いソールの登山靴は、不安定な岩場などでは衝撃を和らげ歩きやすさをもたらしてくれますが、平坦な道では滑りやすいというデメリットがあります。エントリーモデルのトレッキングシューズを選んでおくと安心。防水/非防水は必ず確認しましょう。
9:00 山ノ鼻に到着!
木道を歩くことおよそ1時間で、 尾瀬ヶ原の入り口に位置する「山ノ鼻」に到着。たった1時間のあいだに雨雲は流れ、到着時にはあたたかな木漏れ日が差し込んでいました。こんな激しい天候の変化も、山特有のもの。
山ノ鼻はビジターセンターや山小屋、公衆トイレがあるため、ハイカーたちの憩いの場として賑わっています。本日の目的地「尾瀬ヶ原」の手前、最後のトイレ休憩スポットですので、必ず立ち寄っておきましょう。
森を抜け、ここからはいよいよ待ちに待った湿原エリア「尾瀬ヶ原」。天気も好転し、絶好の景色を楽しめそうな予感。ここまでの山歩きで身体もあたたまったので、レインウェアは脱いで軽装に。目的地を地図で確認して、早速向かいましょう!
【TIPS】山のトイレはチップ制。小銭を忘れずに持っていこう
標高が高く設備の整わない山中の施設は、建設費や維持管理費にとてもお金がかかっています。そのため山のトイレでは、1回100円のチップ制が採用されてる場所がほとんど。山小屋も、電波の入らない場所では現金決済が主流なため、小銭やお札は忘れず携行する必要があります。しかし、街用のお財布は重たく荷物になるので、山専用のコンパクトなお財布に、必要最低限のカードやお金を入れて携帯するスタイルが人気。ミニマル財布の使い勝手の良さに、街でも山ザイフ派というハイカーが増えています。
9:30 いざ、尾瀬ヶ原へ!
山ノ鼻を出発し白樺の林を抜けると、大きな木々は姿を消し、広大な湿原が広がります。ここが、古くから多くの人々を魅了してきた日本最大級の高層湿原「尾瀬ヶ原」です。見渡す限りの湿原の先には、日本百名山のひとつでもある名峰「燧ヶ岳(ひうちがたけ)」の姿が見えます。
湿原内にはたくさんの池が見られ、これらは「池塘(ちとう)」と呼ばれます。湿原の泥炭層にできる、雨水や雪解け水が溜まった水たまり。そんな「池塘」が点在する景色もそうですが、水面に青空とそこに浮かぶ雲を写し出す様子はとても美しく、これまた圧巻の景色。前後左右だけでなく上下まで、どこを見渡しても大自然。まるで異世界に飛び込んでしまったかのような感覚です。
雄大な自然に囲まれ、時間をすっかり忘れていましたが、すでに出発からは3時間以上が経過。このあたりでしっかりめの栄養補給をしておきましょう。水分補給はもちろん、こまめに摂取できるゼリーやナッツ類などの行動食を定期的に摂取することも忘れずに。
【TIPS】温かいスープや飲みものを手軽に楽しむなら専用の保温ボトルを
街中より気温の低い山では、夏でも震えるような寒さを経験することがあります。休憩時は特に、かいた汗の気化熱によって身体が冷やされ、寒さを感じることが多いでしょう。そんな休憩時でも身体を冷やさないためには、あたたかい飲みもので内側から身体をあたためるのがGOOD。保温機能の搭載されたボトルに熱々のお湯を仕込んでおけば、短い休憩時間でもホッと一息つくことができますよ。
15:00 山ノ鼻へ帰還
牛首分岐を起点に、竜宮分岐、ヨッピ吊橋の三点を回って、「尾瀬ヶ原」をぐるりと周遊ハイク。木道を踏む感覚や異世界のような見慣れぬ景色を満喫しながら、一緒に訪れた友人や仲間との会話を楽しむもよし。遠くの木道を歩く人影を探すのも、尾瀬ならではの楽しみかたです。
山ノ鼻から始まる尾瀬ヶ原の周遊ハイクの総歩行時間はおよそ5時間。しかし、歩行に自信の無い方やここまでのコースタイム次第では、途中で引き返せば1〜3時間程度に短縮もできるのが嬉しいポイント。尾瀬ヶ原ハイクはサクッと短く楽しんだうえで、山ノ鼻の山小屋で軽食を食べたり、ビジターセンターに立ち寄って土地について学んだり、ゆったり過ごすのもおすすめです。
尾瀬ヶ原から山の鼻方向に戻る際には、尾瀬のもうひとつの百名山「至仏山(しぶつさん)」が眼前に広がります。5月下旬であっても、山頂付近にはまだ雪が残っています。至仏山は、鳩待峠と山ノ鼻の両方の地点から入山が可能ですが、植生保護のため、ゴールデンウィーク以降から6月いっぱいは基本的には入山規制がかかっています。次に訪れる際には、至仏山の山頂から広大な尾瀬ヶ原を見下ろしてみるのも良いかもしれません。
【TIPS】山歩きの持ち物管理は鉄板の「バックパック」スタイル◯
ウェアや飲料水、食料などの持ち物を管理するバックパックは山歩きのマストアイテムであり、レインウェア、登山靴とならぶ「登山の3種の神器」とも呼ばれています。片方の肩で荷物を担ぐショルダーバックやトートバックは一点に疲労が溜まりやすいのでNG。両肩に荷重を分散し、「歩く」という動作を妨げないバックパックスタイルを選びましょう。日帰りであれば、20リットル前後の容量が背負いやすく、荷物もそれに収まるようにコンパクトにまとめるのが吉。
15:15 鳩待峠へ
山ノ鼻まで戻ってきたら、最後のトイレ休憩を済ませて鳩待峠へ戻ります。行きは緩やかな下り坂だった山ノ鼻〜鳩待峠の道は、最後は緩やかな登りに。今日の山歩きや尾瀬の雄大な景色に思いを馳せながら帰りましょう。ハイクアップで身体が暑くなってきたら、レイヤリング調整を忘れずに。
ところどころにあるベンチで小休憩を挟みながら歩きます。行きは雨で座れませんでしたが、帰りは疲れた足を癒すオアシスに。『どこの温泉に立ち寄ろう?』『頑張った自分へのご褒美に何を食べよう?』と下山後の過ごし方を考えていたら、ゴールはもうすぐそこ。
鳩待峠に着けば、今回の日帰り湿原山歩コースは終了!お疲れ様でした。乗合バスの最終便は16:40ですので、日帰りの方は最終便には間に合うよう計画的にハイキングを楽しみましょう。関東近郊から足を運ぶ方は、尾瀬近郊の温泉旅館などで一泊してからゆったり帰るのも選択肢のひとつ。次はぜひ、尾瀬国立公園内の山小屋泊にも挑戦してみてくださいね。
日帰り湿原ハイク・コーディネートをご紹介
快適かつ安全な山歩を楽しむためのおすすめアイテムをご紹介。山の天気は変わりやすく、晴れ予報でも突然の雨に降られたり、街中とは比にならない寒さに震えてしまったりと、リスクは否めません。一方で、強い日差しによる暑さや汗による不快さなど、野外アクティビティ特有の悩みもあります。
日差しと紫外線をブロック! 日焼けと熱中症対策に欠かせない「帽子」
ハイキングに必須の帽子。直射を避けることは疲労感の軽減にも効果があります。なかでもハットは太陽光を遮る効果が高く、顔だけでなく首周りの日焼けを抑えてくれるスグレモノ。
なんでもいいわけじゃない?!侮れない「ベースレイヤー」の大切さ
登山時のウェアリングテクニックのひとつである「レイヤリング」。そのなかでも、最も肌に近いのが「ベースレイヤー」です。かいた汗を瞬時に吸収し、ゆるやかに発散することで汗冷えを防ぐだけでなく、ベタつきによる不快さを軽減してくれる大切なアイテムです。そんなベースレイヤーですが、登山のスタイルに合わせた素材やデザイン選びが大切。夏は速乾性を重視しつつ、目的にマッチしたアイテムをセレクトしましょう。
急な天候変化に備えた「雨対策グッズ」は必携品
「登山の三種の神器」のひとつ「レインウェア」。雨だけでなく、防風、防寒性能を備え、急な雨はもちろんのこと、稜線上での雨風や朝晩の冷え込みなどから身を守ってくれる大切なアイテムです。ポイントはしっかりとした「防水」と「透湿(蒸れ抑制)」機能を備えていること。晴れの予報でも、確実に携行しておきたい、山歩のマストアイテムです。
コーデで使用したアイテムはこちら