「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

山でも手軽でおいしい料理を作りたい、ヘルシーで栄養価が高いものを食べたい、そんな理想をかなえるために、2つの食のブランドとYAMAPがコラボして、オリジナルのカレーキットを作りました。

『理想の山ごはん』を目指した本格スパイスカレーのキットには、それぞれのブランドが商品に託す、未来への願いが込められています。ビーガンフードを使った山食をクリエイトする「ウルトラランチ」の近田耕一郎さん、おいしさにこだわる大豆ミート「ソイクル」を製造販売する、「株式会社 上向き」の白坂大作さん、YAMAPの商品企画担当、乙部晴佳さんが集まって、このコラボキット誕生のいきさつや、そこに込められた想いを語ります。

(執筆:小川郁代、撮影:藤田慎一郎)

誕生のきっかけは、YAMAP社長の一言

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

―まずは、今回の3社コラボが実現することになったきっかけから教えてください。

乙部(YAMAP):私と近田さんは、もともとトレイルランニングつながりの知り合いで、ウルトラランチさんの商品に「ビバークレーション(登山などの厳しい環境下にも対応する超軽量な主食キット)」という山ごはんがあるのを知っていたので、「いつか一緒に何か商品づくりができたらいいね」と、以前から話していました。

白坂さんとは、今回のコラボでご一緒するのが初めてですが、ある日YAMAPの春山(社長)から、「大豆ミートを使った山食の開発ができませんか?」と話があり、東京オフィスに「ソイクル」のサンプルが送られてきたのがきっかけです。

実は、私はそれまで「大豆ミート」の存在は知ってはいましたが全く馴染みがなくて。最初はどうやって使うのか、何を作ればいいのかと戸惑ったのですが、いろいろ調べていくうちに、2つのブランドが私のなかで結びついて、ソイクルを使った山食メニューが考えられないかと、近田さんに相談したのが始まりでした。

近田(ウルトラランチ):乙部さんからソイクルを送ってもらうまで、うちの商品と大豆ミートを、組み合わせようと考えたことはありませんでした。もちろん、ビーガンフードである大豆ミートの存在は知っていましたが、「ビバークレーション」にしても、今回コラボした「マサラベース」にしても、ウルトラランチの商品は「手早くおいしく食べられること」がテーマなので、「大豆ミートは戻すのに水もたくさん使うし時間もかかるから、うちの商品には合わない」と思い込んでいたんです。

ところが、送ってもらったサンプルを試したら、水で戻さずに使えるし、いやな味のクセがまったくない。「マサラベース」ととても相性がよくて、絶対においしいカレーになると確信し、すぐにコラボしたいと思いました。

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

白坂(ソイクル):うれしいです。もともと私もソイクルは、山やキャンプでも使いやすいんじゃないかと思っていたので、すごくありがたいお話でした。大豆ミートを多くの人に知ってもらう、とてもいい機会だと思います。

乙部(YAMAP):白坂さんの会社があるのは、YAMAP本社と同じ福岡ということですが、社長の春山とは、地元関係のお知り合いなんですか?

白坂(ソイクル):そうではなくて、僕が所属していたソーシャルビジネスの起業家育成アカデミーで、起業プランのコンテストがあって、僕がそのファイナリストになったときに、審査員として参加されていた春山さんが、ソイクルに興味を持っていただいたのがきっかけです。

乙部(YAMAP):そうなんですか。勝手に地元つながりのお知り合いなのかと思いこんでいました。


ウルトラランチとソイクルの共通点『ビーガンフード』

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

―ウルトラランチとソイクルには、ビーガンフードであるという共通点があると思うのですが、ビーガンに注目されたのにはどんな理由があるのでしょう? 

近田(ウルトラランチ):うちの製品やケータリングは、肉や魚、卵などを使わないビーガンですが、僕自身は肉食を否定しているわけではありません。ただ、毎日3食必ず肉や魚がないと食事が楽しくない、満足できないというのではなく、野菜や穀類だけで作った食事が、こんなに豊かでおいしいということを多くの人に知ってほしいと思ってビーガンフードを扱っています。ビーガンは料理のジャンルのひとつであり、ビーガンで得られる食の楽しさを紹介するのが、うちのブランドのキャラクターだという意識です。

白坂(ソイクル):大豆ミートは、肉の代替品として、ビーガン食品の代表のように紹介されることが多いですが、ソイクルは、あまりそのことを前面には出していません。おいしくてヘルシーで、環境にも優しいものを作ろうとしたら、大豆ミートに行きついたという感覚です。ビーガンであることにとらわれず、一つの食材として楽しんでもらいたいと思っています。

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割左上:「ソイクル」の白坂大作さん、右下:「ウルトラランチ」の近田耕一郎さん

乙部(YAMAP):最近は世界的にもビーガンが注目されていますが、一般的にはまだ、少しハードルが高いイメージもありますよね。私は、はじめて近田さんの作った料理を食べさせてもらったとき、すごくおいしくて、それがビーガンだと聞いて本当に驚いたのを覚えています。ビーガンかそうでないか、肉を使っているとかいないに関係なく「おいしい」って大切だと感じました。

近田(ウルトラランチ):まさにそこですね。ビーガンは肉や魚をガマンするためや、環境のためのストイックな主義としてとらえられることもありますが、、「おいしい」ことを実感してもらえれば、ビーガンをもっと身近に感じられると思っています。

乙部(YAMAP):今回の開発で試作品をスタッフに試食してもらったところ、「以前食べた大豆ミートの悪いイメージが完全に覆された」とか、「今まで食べた大豆ミートのなかでソイクルが一番おいしい」と口を揃えて言うのですが、ソイクルとほかの大豆ミートとでは、なにが違うのですか?

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白坂(ソイクル):材料に、発芽大豆を使っていることですね。従来の大豆ミートは、食物油の製造過程でできる、油を搾ったあとの脱脂大豆を原料とするのですが、どうしても独特のくさみや食感の違和感があり、それが「大豆ミートはおいしくないのでは?」というイメージにつながっていると思います。また、くさみを消したり食感を肉に近づけたりするために、人口の添加物を加えることも多く、それが問題視されることもあります。

ソイクルは、特殊な製法で大豆を発芽させてから大豆ミートにするのですが、大豆は発芽するときに、うま味成分であるグルタミン酸や、栄養価が大幅に増えるので、余計なものを何も加えずに、クセがなくうまみがしっかりとある、おいしいものを作ることができました。


多忙な飲食店での経験が、『山ごはん』へとつながる

―マサラベースはどのようにして誕生したのですか?

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近田(ウルトラランチ):これは、以前飲食店をやっていたときに、自分が店を離れるために作ったのがきっかけです。飲食店って、仕込みから店じまいまで拘束時間が長くて、なかなか外に出られない。とくにカレーは、スパイスのバランスや、それぞれの特徴に合わせた火の入れ方などが難しいので、アルバイトや経験の浅いスタッフに仕込みを任せることはできません。どうしても店を離れなきゃいけないときに、最低限の調理でいつもと同じ味が出せるように考えたのが、マサラベースの原点です。

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

そこから、アウトドアで使うことを考えて、少しずつレシピを改良して、13種類のスパイスを配合した、今のマサラベースになりました。難しいところは全部済ませてあるので、具材と合わせるだけで味が決まり、アレンジもできるというのが特徴です。

―今回のコラボ商品のポイントはどんなところでしょうか?

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乙部(YAMAP):山の食事にはいろいろと制限が多くて、どうしてもレトルトやインスタントが中心になりがちです。ちゃんと料理をしておいしいものを食べたいと思っても、荷物の量や重さ、日持ちの問題などがあって、使える食材もメニューも限定されてしまう。1日くらいならカップラーメンもおいしいけれど、縦走などで行程が長くなるほど、本当においしくて身体に良いものを食べたくなります。そういう希望をかなえられる、理想の山ごはんを目指しました。

ウルトラランチさんでは、マサラベースに生のトマトとひよこ豆の水煮缶を加えるレシピを紹介されていますが、YAMAPでは、ソイクルとトマトジュースを使うオリジナルレシピを提案しています。

ポイントは、簡単だけれど、少しの手間と材料を加えて、自分で完成させること。レトルトやお湯を注ぐだけのものから一歩進んで、「作る楽しみ」も味わうことができます。そして、軽量コンパクトで、保冷などに気をつかう必要もないから夏場の縦走の後半にも楽しめて、スパイシーでご飯が進む、理想的な山ごはんの提案ができたと思います。

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

近田(ウルトラランチ):インスタントにはない、ちょっとしたごちそう感がいいですよね。味はもちろんですが、マサラベースは、とにかく調理時間が早いことも自慢です。お客さんから「カレーにごはんが間に合わない」というクレーム(?)が寄せられるくらい。ソイクルも、そのままでも食べられるスピード感が、とても相性がいいと思います。

乙部(YAMAP):確かに、ごはんは先に用意を始めないといけませんね! 疲れていてもすぐに用意ができて、でもちゃんと料理した感があって、さらにカロリーもしっかり摂れるので、満足度が高いと思います。

白坂(ソイクル):ソイクルは軽くて常温保存できるので、アウトドアシーンにはもってこいです。植物性のタンパク質が豊富なうえに、大豆を発芽させることでタンパク質が低分子化するので、消化吸収が早まって胃もたれしにくいから、登山やトレランなどにもいいと、アスリートの方からの評判もいいんですよ。

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

近田(ウルトラランチ):食感も食べ応えがあるのがいいですね。マサラベースも軽くて常温保存できるから、本当に山向きのキットだと思います。

乙部(YAMAP):私のように、大豆ミートを知らない人や、どうやって食べたらいいかわからないという人にも、ぜひ試してほしい。

白坂(ソイクル):そうですね。一度食べてみるのが、どんな説明よりもわかりやすいと思います。それに、ソイクルは料理に使う以外にもいろいろな使い方ができます。このキットで食べて気に入ったら、サラダのトッピングにしたり、そのままおつまみとしても食べたり、デザート系にも合うので、ほかのアレンジも試してもらえたらうれしいです。


『おいしい』を通して、環境問題への意識を広げたい

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

近田(ウルトラランチ):そうやってこの商品が入口になって、ビーガンに関心を持ってもらうことが、僕たちが本当に伝えたいことにつながっていくんですよね。最初から環境問題を語っても、なかなか意識を広げることはできないけれど、おいしいから、軽くて便利だから、食べてもらう、喜んでもらうことはできる。それが、環境を考える機会を増やすことになる。それが、このコラボをやる本当の意味だと思います。

白坂(ソイクル):僕も同じです。ソイクルの事業は、売れることがゴールではありません。この商品をきっかけに、環境問題に興味を持つ人を増やすことが本当の意味でのゴールなので、ソイクルは商品であると同時に、メディアであり情報発信のツールです。ソイクルを買っていただいた方には、大豆ミートがなぜ環境にやさしいのか、自分が環境のためにできることが何かを、少しずつ伝えられるようにしています。

―少し話が戻りますが、白坂さんがアカデミーでソーシャルビジネスを学ばれて、実際に事業を起こす際に、たくさんあるソーシャルビジネスの領域のなかから、社会課題を解決する手段として、ソイクルの製造販売を選んだ理由は何ですか? 

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白坂(ソイクル):今の会社は、アカデミーの受講中に設立したのですが、最初からソイクルを事業にしていたわけではありませんでした。実は、起業したばかりの時に子どもが大きな病気にかかってしまい、1年ほど事業をストップせざるを得なくなったんです。幸いなことに今は元気になりましたが、そのときに、「この子のためにできる事業をやろう」と決めました。生かしてもらえた命の未来のために、何が一番大切かを考えたとき、環境問題にアプローチしたい、健康のためにできることをしたいと思い、「環境×健康」という指針ができました。そうしてたどり着いたのがソイクルです。

また、食品だったら、日常のなかにすんなりと入り込めるし、おいしくて健康にいいことなら、無理なく楽しく続けることができると思いました。つまり、環境に事を考えるきっかけが作りやすく、持続しやすいということです。

―このカレーキットには、ワンランク上の山ごはんが作れるだけでなく、ユーザーが意識しないところでも、ビーガンや環境について考える機会を広げる役割があるようですね。



YAMAPオリジナルレシピのカレーを実食!

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

―では、お話はこれくらいにして、実際にキットを使ったオリジナルカレーを試食しましょう。

近田(ウルトラランチ):以前作った時は生のトマトを使ったので、トマトジュースを使ったYAMAPレシピは初めてです。

白坂(ソイクル):おいしい! マサラベースを送っていただいて自分でも作って食べたんですが、これのほうがおいしい気がする。自分のつくったソイクルが、こんなにおいしくなって、なんだかちょっと感動しています。

近田(ウルトラランチ):生のトマトを使うと、トマトによって味が変わるので、トマトジュースのほうが安定感はありますね。好みで味が濃いようなら水を加えてもいいし、水煮のトマトパックを使うのもいいと思います。

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

乙部(YAMAP):私は何度も食べていますが、クセになる味ですよね。やっぱり、しっかりひき肉感があるなあ。注意事項があるとしたら、おいしすぎてすぐに食べ終わってしまうのと、ご飯が足りなくなりがちなことですね。今のように全員が思わず「おいしい」と口にする光景が、山の上でも繰り広げられるのを想像すると、夢が広がります。ビーガンや、環境や、食について考える機会も、「おいしい」の言葉と同じように、みんなに伝わっていくといいですね。

実際のお味は、まさに本格的なスパイスカレー。コリアンダー、クミンなど、複雑に入り組んだスパイスの香りと、たまねぎやニンニクのコクが、さわやかなトマトの風味とよく合って、ひき肉そっくりなソイクルの食感で、食べごたえもしっかり。どんどんごはんが進みます。

そしてこのカレーキットには、環境の話や、ヘルシーでおいしい食事や、食品の軽量化や持ち運びなど、さまざまな話のネタも詰まっているのです。このカレーをきっかけに、仲間といろいろな話をしてみるのはいかがでしょう。大豆ミートが初めての方へのお試しとしても、自信を持っておすすめします。

これまでとは少し違う、優しい本格山カレー。ぜひ、フィールドで体験してみてください。


紹介した商品はこちら

「オリジナルマサラベースソイクルセット」の調理におすすめの厳選ギア

撮影協力|Mt.TAKAO BASECAMP

「おいしい」が地球を救う。本格スパイスカレーが担う、未来のためのもうひとつの役割

東京・高尾山で”山のライフスタイルとカルチャーを発信”する麓の山小屋
アウトドア・アクティビティや地産の新鮮な食材を使った料理を軸に、多彩な山のコンテンツを発信。山のライフスタイルとカルチャーに魅了された人々が集うためのベースキャンプです。

東京都八王子市高尾町1799-3
TEL: 0426-73-7707
https://www.instagram.com/mt.takaobasecamp

ウルトラランチ / 近田耕一郎、ソイクル /  白坂大作、 YAMAP STORE / 乙部晴佳

ウルトラランチ / 近田耕一郎、ソイクル / 白坂大作、 YAMAP STORE / 乙部晴佳

【近田耕一郎(ちかだこういちろう)】 ヴィーガン食品メーカー『ULTRA LUNCH』代表。あだ名は『ドミンゴ』。1972年大阪生まれ、ソウル・ミュージック育ち。大阪大学人間科学部を卒業後、大阪、シンガポール、ロンドン、東京などでラジオDJ、レコードレーベルのディレクター、カリグラファーとして活動。 2007年に趣味でランニングを始め、2011年に山道を走るトレイルランニングを初めて体験する。これをきっかけに、人間が走り続けるために欠かすことのできない食べることについての研究・開発を始める。2013年に『ULTRA LUNCH』を設立、飲食店運営、ケータリング事業を経て、現在は東京都八王子市、高尾山の麓に工房を構え、食品メーカーとしての事業を展開している。 【白坂大作(しらさかだいさく)】 千葉県出身。フィットネス業界・事業プロデュース業等の経験を経て、株式会社ボーダレス・ジャパンが運営する「ボーダレスアカデミー」にて本格的なビジネスプランに着手。 2019年7月に株式会社上向きを創業、代表取締役に就任。息子の病気をきっかけに、事業指針を「環境×健康」と定め、大豆ミートブランドの開発へ。「環境に配慮したライフスタイルを日本のスタンダードに」をパーパスとし、環境と健康へアプローチをする事業として大豆ミートブランドSOYCLE(ソイクル)を展開している。 【乙部晴佳(おとべはるか)】 アウトドアブランドのアパレルMDを経て2021年9月にYAMAPに入社。登山をメインに、スノーボードからトレイルランニングまでアウトドアを全方位楽しみながら、フィールドで得た気づきを生かして商品企画を行う。

    紹介したブランド

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