こんなはずじゃなかった……山ごはん失敗談4つ|こんなときの解決策は?
思いのほか風が強くて料理に時間がかかってしまった。地面がガタガタでクッカーごと倒してしまった……。不便なことが多い山での調理に、トラブルはつきもの。
今回は、登山歴15年の筆者がこれまでに直面した「山ごはんのギアにまつわる失敗エピソード」を4つご紹介。人のふり見て我がふりなおせ。みなさんはこのようなトラブルがないように、うまく回避してくださいね。
失敗談その1|強風で火が煽られて、調理に時間がかかってしまった
山の天気は変わりやすく、無風であることはほとんどありません。なるべく直風が当たらない場所で調理しようと思うものの、それが叶わないときもあります。
風防を使ったり、石などを組んだりする術もありますが(*1)、そんな知識を持ち合わせていなかった登山1年目の頃。強風で火が煽られては消え……の繰り返しで、調理に時間がかかってしまったことがありました。待てど暮らせど沸かないお湯を前に、お腹はグゥとなるばかり。仕方なしにぬるめのお湯で作ったカップラーメンの麺の硬さは、今でもよく覚えています……。
(*1)ガスカートリッジを風防などで囲うと輻射熱により熱がこもって破裂の恐れがあるため、囲い方には十分ご注意ください
じつは「風に強い」シングルバーナーがある
風に強いつくりのシングルバーナーを持っていれば、「いつまでたっても湯が沸かない」、そんな事態は避けられます。SOTO(ソト)の「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」は、その名の通り「風に強い」がコンセプト。
でも、なぜ風に強くできるのか? そのヒミツは、炎の出る部分(バーナーヘッド)の形にあります。中央に向かって低くなる「すり鉢状」にし、フチの側面も高くすることで、横風の影響を受けにくい構造になっています。
上の画像のように、炎が左右に広がらず、中心に向かって立ち上がります。炎の中心が風に流されないため、強風時でも点火状態を維持できる、というわけです。
寒さにも強く、オールシーズン活躍
そして、「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」は軽さも魅力。本体は60gで、付属の3本ゴトクはわずか7g。合わせても納豆1パックほどの軽さながら、発熱量は最大で2800kcal/h。一般的な登山で必要な火力を備えています。
スマホと比べるとこのコンパクトさが伝わるでしょうか。こんなに小さくても、じつにパワフルな持ち主なんです。
さらに、寒さに強い「マイクロレギュレーター」を搭載しているので、冬の使用もOK。環境の影響を受けにくく、オールシーズン使いまわせる「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」は、ハイカーの胃袋を温めるべく、今日もどこかでたくさんの方々のお役に立っていることでしょう。
失敗談その2|せっかく作ったのに……。うっかりクッカーごと倒してしまった
「食事」を山での楽しみのひとつにしているハイカーは、きっとたくさんいるはず。かくいう筆者もそのひとりで、誰とどんな山を登るか、山行プランに合わせて山ごはんを楽しんでいるのですが、ある日おこしてしまったのです、クッカー転覆事故を……。
作ったばかりの夕食をクッカーごと倒してしまい、今夜の晩御飯は「行動食だけ!?」という事態に。運よく、多めに作っていた友人のごはんをお裾分けしてもらうことができ、行動食もフル動員してなんとか事なきを得ましたが、山小屋が近くあるテントサイトではなかったこともあり、これがもしソロテント泊だったかと思うと、ゾッとしてしまいました。
「重心が低く、ゴトクが大きい」バーナーは安定感が高い
「山での調理はなるべく平らなところを探しておこないましょう」と登山本には書いてあるけれど、山によっては水平な地面を探すのって難しいときもありますよね。調理における安定性を優先するならば、SOTOの「レギュレーターストーブ」といった重心の低いシングルバーナーが頼りになります。
先ほど紹介した「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」のようなシングルバーナーと比較すると、軽さ&コンパクトさは二の次になりますが、安定感は格段にアップします。ゴトクも大きくなる分、面積の広いクッカーを載せやすいので、複数人分の山ごはんを作るとき、ラーメンや煮込み鍋といった汁物を調理したいときにも◎です。
「コンパクトテーブル」を使う手もある
不整地でも、山ごはん作りを快適に、楽しみたい。そんな願いがある方は、折りたたみ式のミニテーブルを持っていくのもアリ。SOTOの「フィールドホッパー」は、組み立て1秒・撤収5秒。ワンアクションでパパッと使えるので、山で気軽に使いやすいテーブルです。
不整地でなくとも、地面が土や砂の場合、調理ギアの底面が汚れてしまうことがあります。拭いたり払ったりして落とせばいいだけの話なのですが、それすら面倒に感じることもあり……。でもテーブルがあれば、汚れるのはテーブルの脚だけ。スプーンや行動食なんかを置くスペースも確保でき、食事のQOLは爆上がりです。
「フィールドホッパー」の重さは、395g。登山向けに作られているテーブルのなかには、これよりもっと軽いモデルもありますが、あまりにも軽いと風で飛ばされてしまう心配があるので、個人的にはこれくらいの重さがあった方が安心だなぁと思います。
スリムに収納できるため、バックパックのスキマに入れて持ち運べます。荷物はひとつ増えますが、調理中の安全性と快適性が上がることを踏まえたら、これは「あっていいアイテム」。
失敗談その3|「輻射熱」のことを知らずに、シングルバーナーで鉄板を使いそうになってしまった
皆さんは「輻射熱(ふくしゃねつ)」をご存じでしょうか。「輻射熱」とは、燃焼したガスから発生した熱が周囲に放射される現象のこと。この熱は上にも地面にも放射されます。
とくに鉄製品は蓄熱性が高く、火にかけると高温になり冷めにくい性質があり、不適切な使い方をするとガスカートリッジが加熱され、破裂してしまう恐れがあるので注意が必要です。
毎年アウトドアシーズンになると、「カセットコンロを2台を並べ、その上に大きな鉄板をのせて調理していたところ、カセットガスが爆発しやけどを負ってしまった」といった悲しいニュースを耳にします。山ではそんな大袈裟なことしないから……と他人事に感じてしまうかもしれませんが、うっかり直結型のシングルバーナーに鉄板をのせてお肉を焼いたり、ダッチオーブンやスキレットで調理したりしていませんか? じつはこれも危険な使い方。
実際、筆者のヤマ友は「輻射熱」のことを知らず、直結型のシングルバーナーに鉄板をのせてお肉を焼こうとしていたので、慌てて止めたことがあります。「すぐ焼けるから大丈夫」なんて思わずに、正しい使い方で安全に楽しみましょう。
鉄板を使うなら、バーナーは必ず「分離型」で
鉄板で肉を焼きたい! そんな方は、上の画像のようにバーナーヘッドとガスカートリッジが分離しているモデルを選びましょう。
でも、分離型のシングルバーナーは「かさばる」「重たい」というイメージを持っている方もいると思います。以前は筆者もそう感じていたので、「登山で使うなら直結型のシングルバーナー一択!」という考え方でしたが、そのイメージを変えてくれたのが、SOTOの「マイクロレギュレーターストーブ フュージョントレック」です。
重さの差は、キウイフルーツ1個分
試しに、直結型の「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」と、分離型の「マイクロレギュレーターストーブ フュージョントレック」を比較してみたいと思います。
まず、ゴトク込みの重さ。「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」が78g、「マイクロレギュレーターストーブ フュージョントレック」が182g。その差は104gで、キウイフルーツ1個分ほどの差です。手に持ってみた感じは、そこまで「重すぎる」という感覚はなく、むしろ「分離型だけど意外と軽いんだな」と感じました。
薄型ゴトクだから、クッカーに収めやすい
次に、収納時の様子。同じ鍋(ナビゲータークックシステムの小さい方)に同じアイテムを収納してみました。
ぱっと見はわかりにくいですが、「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」はスッキリ収まるものの、「マイクロレギュレーターストーブ フュージョントレック」はフタが閉まらない(浮いてしまう)結果に。ですが、ゴトクが大きいながらも薄く折りたためるため「意外と携行性が高い」です。
また、これまで分離型シングルバーナーというとCB缶を使用するタイプが主流でしたが、SOTOの「マイクロレギュレーターストーブフュージョントレック」はOD缶が使えるところがミソ。ハイカーの多くは、屋外でも出力が安定しやすいOD缶タイプのバーナーを持っていることが多いと思うので、ガスカートリッジを使い分ける必要がないところも便利なポイントです。
失敗談その4|食べたいごはんのためにクッカーを揃えたら、いつの間にか増えてしまった
これは“失敗”というわけではありませんが、今となっては他の選択肢もあったな……と思ったのでご紹介。
登山初心者からステップアップしていくにつれて、ギアを増やしたり、買い替えたりすることはよくあること。クッカーにおいても、ソロのテント泊、大人数でのグループ登山、食事目的ののんびり低山ハイキングなど、どんな料理を、何人分作りたいかで「ちょうどいいクッカー」は変わるもの。
その結果、筆者はクッカーにウン万円と投資したことになるわけですが、もし自分がまだクッカーを持っていない立場だったら、「オールマイティーに使えるものがほしい」と思うでしょう。もちろん、シーンに応じて複数のクッカーを使いこなす楽しみもあるのですが、やはり「マルチに使える」点は強みだと思うのです。
「アルミのクッカーセット」があれば、あらゆるスタイルに対応できる
ソロでも行くし、グループでも行く。登山もやるし、キャンプもやる(やりたい)。山でお米を炊きたいし、パスタも食べたい。とにかく、いろいろなバリエーションのごはんを作りたい。いつかは家族と一緒に、アウトドアアクティビティを楽しみたい……! という方に、声を大にしておすすめしたいのが、SOTOの「ナビゲータークックシステム」です。これさえあれば、上で挙げたような願いはすべて叶えてくれます。
「ナビゲータークックシステム」のセット内容は、全9点。1.8Lの大型鍋と、1.3Lの中型鍋、それらにフィットする樹脂製のフタ。そのほか、鍋つかみ、保温に役立つケースと断熱ディスク、これらをひとまとめにできる収納ケースなど、寒いシーズンの調理も支えてくれる便利アイテムがひとセットになっています。
鍋は、焦げにくく、熱効率の良いアルミニウム製にハードアナダイズド加工を施すことで、サビに強く、強度もアップ。つまり「長く愛用できるクッカー」です。
登山向きのクッカーにはチタン製もありますが、軽量性こそチタンに劣るものの、アルミニウムは焦げにくい=料理に失敗しにくい点が何よりの強み。総合的な扱いやすさは、アルミニウムに軍配が上がるでしょう。
「フタ」はただのオマケじゃない。ひとつ5役のスグレモノ
「ナビゲータークックシステム」の使い勝手をよりアップしているのが、「フタ」の存在。湯沸かしを早くしたり、虫やホコリが入り込まないようにしたりするだけではありません。湯切り、まな板にもなるんです。
ほかにもユニークなギミックが。フタを裏返すと、突起が6箇所あります。ここにガスカートリッジが収まるようになっていて、バーナーの安定感をアップすることができます。
使う“かもしれない”ためだけにテーブルを持っていくのは億劫ですが、フタを持っていく感覚で、いざというときは台座(スタビライザー)として使えるというのは心強いポイント。ごはん作りの安全性を高めてくれます。
ひとまとめにできてパッキングもスマート
セット一式の総重量は480gで、500mlペットボトル1本分ほどの重さ。収納はこのようにスマートになり、シングルバーナー、105gのガスカートリッジも一緒にパッキングできます。
もちろん、毎度セット一式を持っていく必要はなく、小さい方の鍋だけでもいいですし、なんなら鍋つかみだけを活用する、なんてことも筆者はあります。ミニサイズの鉄板をつかむときにもこの鍋つかみが便利ですし、トングにもなるのでパスタを茹でるときやお肉を焼く際にも活躍します。
一式セットで8,250円。コストパフォーマンスもすばらしい
あらゆるスタイルに適応できるセットながら、価格もお手頃。登山歴15年、キャンプも楽しむ筆者からしてみると、今となっては「最初からこれ買っときゃよかった」というのがホンネ(当時はまだ販売されていませんでした)。
さすがに「ソロにこの大きさはいらない」と思うかもしれませんが、パスタがお好きな方は、大きい方の鍋でパスタを茹で、その茹で汁を使って小さい方の鍋でスープを溶く、という使い方もおすすめ。麺を茹でると吹きこぼれがネックですが、「ナビゲータークックシステム」のように大きさに余裕のある鍋を使うことで、吹きこぼれを防ぐことができます。
いますぐに全てのアイテムを使いこなさなくとも、長い目で見たときに「持っててよかった」が詰まっている「ナビゲータークックシステム」。山ごはんを愛するみなさんはぜひ知っておいていただきたいな、と思います。
いろいろあったけれど……失敗は成功のもとである
今となっては、そんな失敗も経験値のひとつになっていますが、人の失敗談から学ぶことはあると思うので、みなさんはそんなトラブルに出くわさないよう、今回紹介したアイテムをうまく取り入れて楽しい山ごはんタイムをお過ごしください!
写真:茂田羽生
山畑 理絵(やまはた りえ)
登山歴15年のライター・編集者。元アウトドア用品専門店スタッフ。のんびり日帰り低山から、山小屋グルメ堪能ハイク、テント泊縦走まで楽しむ。ホームマウンテンは奥武蔵。現在は3歳の娘と山歩きとクライミングジム通いに没頭中。