これが日本の山道具!登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目


登山ギアにも産地がある


日本各地には地域ならではの歴史と、技術に裏打ちされた地場産業があり、それぞれが得意とする製品を生み出してきました。

YAMAP STOREではこうした「地域が得意な分野」にフォーカスし、各地のメーカーやブランドと共同でアイテム開発に取り組んでいます。

例えば、奈良県は靴下、グローブ(手袋)は香川県など、登山ギアにおいても日本のものづくりの力が息づいているのです。今回は、地域を盛り上げながら登山者にとって価値のあるプロダクトを作り続けるブランドとアイテムをご紹介します。

(構成/執筆:大城実結)

登山に最適化された靴下を|奈良県

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

靴下は日常生活から登山シーンまでなくてはならない小物です。そんな靴下ですが、奈良県が一大生産地であることをご存知でしょうか。

奈良県の靴下産業は今から100年以上前にはじまり、以来地場産業として根付いてきました。1951年(昭和26年)にはこれまでの綿やレーヨンに代わる靴下としてウーリーナイロン(ナイロンの伸縮性と柔軟性を生かし、ウール状の加工を施した素材)が大ヒットして以来、国内一の生産地として名を馳せてきました。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

高機能靴下を専門につくる「西垣靴下」も奈良県に拠点を構えるメーカーです。山登り好きの社長を中心に、登山用の製品開発を長年続けてきた実績もあり、あらゆる特許技術を有している靴下工場なのです。

YAMAPオリジナル トレイルソックスシリーズ

西垣靴下とYAMAPが開発したのが「トレイルソックスシリーズ」です。

山を歩くために開発されたこの靴下は、YAMAP STOREでも長年のベストセラー商品。年々ラインナップを増やし、現在では足袋型や5本足型のつま先形状に加え、ウールやコットンなどの素材、さらにはイージーフィットなどお悩みに合わせて選べるようになりました。

これが日本の山道具!登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目
これが日本の山道具!登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目

根底にあるのは登山者ならではのリアルなニーズと西垣靴下の技術力。

例えば安定的に歩行するため、つま先は足袋型または5本指型に限定。足のアーチをサポートする特許技術の「テーピング構造」を採用し、足裏の負担と衝撃を和らげます。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

つま先とかかとにはフワフワのパイル編みを施し、シューズと足の間の摩擦を防止。さらには細いゴム糸を直接靴下に編み込む手法を用いて、靴下の表裏どちらにも滑り止め効果を発揮しています。

これにより足、靴下、インソールが一体化したような歩き心地に。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

トレイルソックスには、西垣靴下がこれまでに企画、製造してきたスポーツ向けソックスから生まれた特殊な技術が多く採用されています。

「西垣靴下がスポーツ向けの靴下向けに開発してきた特殊な技術は、アクティビティに集中できることを目的に考えられています。

アクティビティに集中してもらうためには、足に余計な負担やストレスを与えないことが大切。そもそも『履いていることを忘れてしまう』ような状態が理想です。

ここから、足、靴下、靴がズレることなく一体化した状態を靴下の製造技術で作れないかと考えました。そして、もうひとつの考え方が、足が本来の機能を取り戻すためのサポートもできる靴下です。」と西垣靴下の西垣さん。

まさに「山を楽しむための靴下」がトレイルソックスシリーズです。試しに履いてみれば、きっと西垣靴下の技術力が感じられるはず。

トレイルソックス工場レポート

日本の靴下で、日本の山に登ろう|YAMAPスタッフの「TRAIL SOCKS」工場レポート


スポーツてぬぐいで次世代へ|大阪府

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

汗を拭いたり、下山後の温泉で体を洗ったり、時には緊急時の三角巾になったり。「てぬぐいは登山のマストアイテム!」という人も少なくないでしょう。

手ぬぐいの産地として有名なのが大阪府です。特に、大都市圏と綿の名産地こと泉州の間に位置する堺市では、てぬぐいや浴衣といった木綿織物の産業が発展してきました。

現在では、次世代にてぬぐいを伝えていくことを目的に「てぬぐいフェス」などのイベントが開催されたり、ライフスタイルやニーズに合わせた新製品が開発されたりと、新しい風を呼び起こしています。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

「CHAORAS®(チャオラス)」のスポーツてぬぐいもそのひとつ。伝統的なものづくりと新しいアイディアで、次世代につなぐ。使いやすさと心地よさを両立したてぬぐいに注目です。

YAMAP限定スポーツてぬぐい

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

一見すると普通のてぬぐいに見えますが、日頃から手ぬぐいを愛用している方なら、いくつかの違いに気づくはずです。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

まず異なるのがサイズ感。一般的なてぬぐいの規格が長さ90㎝であるのに対して、スポーツ手ぬぐいは110㎝と少々長め。これは首から掛けたり、頭に巻いてヘアバンドスタイルにしたり、アウトドアシーンでよくある使い方を考慮したものです。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

そしてもうひとつ見た目で違うのが端の処理です。一般的な手ぬぐいは短辺側が切りっぱなしになっていますが、スポーツてぬぐいはほつれ留めのロックミシンを施しました。もちろん切りっぱなしならではの味もありますが、より幅広いシーンでかっこよく使えるよう現代風に仕立ててあります。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

た目では分からない特徴も。縦糸に綿、横糸に竹を素材としたレーヨン糸を使って織り上げたことにより、一般的なてぬぐいより優れた吸水性を叶えました。

そして加工技術による柔らかさと抗菌性にも優れているため、汗を多くかくシーンでも心強い1枚に。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

今までてのぬぐいは綿100%でした。

チャオラスの宮本さんが新たなてぬぐい作りに挑戦されたのは、「日本の伝統的なものづくりから生み出される製品の良いところを、新しいアイデアで現代にマッチさせ、次世代につなぐ。Tradition(伝統) & Innovation(革新)にチャレンジするブランドをつくりたい!」との思いがあってのこと。

山を趣味にしてから、どんどんてぬぐいが増えていく。そんな登山者にこそ手に取っていただきたいこだわりの1枚。柔らかで使いやすく、ちょうど良い長さのてぬぐいは、まさに伝統に革新を感じさせる新しい風です。

ブランドインタビューはこちら

山てぬぐいに変革を起こした「チャオラス」|『伝統&革新』コンセプトの深部に迫る


“手袋のまち”から届ける温もり|香川県

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

香川県の東端に位置する東かがわ市は、130年の歴史を誇る「手袋のまち」。日本国内で生産される手袋のうち、90%以上の生産量を誇るほどの一大生産地です。明治時代に始まって以来、時代のニーズに合わせて常に新しい挑戦を続けています。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

YAMAP STOREでも人気のグローブブランド「handson grip(ハンズオングリップ)」も、東かがわ市に拠点を構えるメーカーのひとつ。創業60年以上のノウハウを生かし、関節が多く、常に細やかな動きが求められるグローブの開発・生産をしています。

YAMAP別注 オープンミトングローブセット

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

保温と換気を両立することで指先を守りながら、ストレスなくスマートフォンやカメラを操作できるグローブとは、一体どのようなものなのか。YAMAPとハンズオングリップがタッグを組み、開発したのが「YAMAP別注オープンミトングローブセット」です。

インナーグローブとアウターグローブ、リーシュコード、カラビナがセットになったこのグローブ。発想の原点となっているのが、ウェア選びでも大切な「レイヤリング」の考え方です。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

インナーグローブには、ベースレイヤーの素材としてもよく使用されるポーラテック®︎社の機能素材「パワードライグリッド」を採用。速乾性に優れており、濡れや湿気を外に放出する機能を備えています。

左右の親指と人差し指はオープンにできるため、グローブを付けたままストレスなくスマートフォンの操作も可能です。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

その上からミトン型アウターグローブを組み合わせれば、保温性に優れたレイヤリングに。親指以外の4本をまとめて保温することで、外気との間の保温層を強化できるのがミトン型のメリット。

個別に指を動かせないというデメリットは、指の付け根から大きく開く仕様を採用することで解消しました。もちろんこのカバーは、汗で指が濡れたときにベンチレーションとしても活躍します。

指先にしなやかさと温もりを。ハンズオングリップとYAMAPがお届けする、秋冬グローブの答えです。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

ハンズオングリップの製品は企画から製造まで一貫して国内生産がメインですが、一部製品は国外生産になります。

ですが、ハンズオングリップの内海さんは自信を持って言います。

「手袋は衣料品の中でもかなり小さく、縫製にはピンセットを用いるほど細かく繊細な作業と技術が必要とされるんです。

僕たちは本社に生産体制をもっているため、MADE IN JAPANグローブの生産も可能ではありますが、中国にも30年以上のお付き合いのある工場があるんです。長年、ほぼ僕たちの仕事だけを受けてくれている工場さんなので、品質は国内生産と同じ基準であることが保証できます。

国外生産であっても、開発と最終検品は必ず自社工場で行っています。生産体制があるため、リペアも国内でできるんです。」

ブランドインタビューはこちら

グローブメーカー「handson grip」|創業68年の経験と想いが紡ぐ哲学

手元にも「レイヤリング」を!老舗メーカーと開発したYAMAP別注グローブ開発秘話


一貫生産体制が叶える繊細な極上インナー|福井県

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

繊維業とともに発展してきた地域が日本各地にある中で、北陸地方はシルクや化学繊維、細幅織物、繊維関連の企業が集まる一大産地です。

北陸地域は豊かな山地により水資源に恵まれている上に、日本海の湿潤な気候のおかげで乾燥による糸切れが少なく、繊維業に適した地域といわれています。絹織物に端を発し、レーヨン、ナイロン、ポリエステルなど、時代の変遷に合わせて発展を続けています。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

「アタゴ」も福井県にある老舗繊維工場のひとつ。

スポーツ、アウトドアウェアの生地開発や製造を行うトータルニットメーカーです。高い技術力に加え、素材開発から編み立て、縫製、検査までを一貫して生産できる体制を整えているのも特筆すべきポイント。分業化が進んだ繊維業界では極めて特殊なことで、一貫生産体制により独創的な製品を作り上げることが可能となっています。

スーパーエクストラファインメリノシリーズ

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

カシミヤに匹敵するほどと称される「スーパーエクストラファインメリノ」。このウール100%の生地をふんだんに使用したのが、YAMAPとアタゴがコラボした、スーパーエクストラファインメリノシリーズです。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

ウールの優れた特徴を知りながら、独特のチクチク感が苦手だという人も少なくないでしょう。その声を反映し、本シリーズでは15.5μmという超極細繊維を採用。一般的なメリノウールの細さは20μm程度ですので、その細かさは一目瞭然でしょう。

これにより触り心地は非常に滑らか。メリノウールの着用感と機能性を十二分に味わえる贅沢なインナーです。

これが日本の山道具!登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目
これが日本の山道具!登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目

加えてアンダーウェアは最も内側に着込む衣類でもあるため縫製が難しいとされますが、こちらもアタゴの優れた技術力により百点満点の仕上がりに。ザックやレイヤリングに干渉せず、歩く・登る・座るなどの登山中の動きを妨げないパターンづくりに徹することで、究極のインナーが誕生しました。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

「いちばん重視したのは、着心地や動きやすさでした。YAMAPさんからのご要望に合わせて、生地の特性を考慮しながら各パーツのパターンを検討しました」とアタゴ企画部の田中さん。

社内に一貫した生産体制をつくりあげ、生地開発から製造までを行う「アタゴ」との共同開発だからこそ、生み出すことができた「スーパーエクストラファインメリノ」シリーズ。ぜひお試し下さい。

▼工場レポートはこちら

日本の肌着で、日本の山に登ろう|YAMAP限定ウールインナーの工場を潜入取材



スキーで培った技術力を登山用インソールに|群馬県

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

群馬県みなかみ町は、谷川岳や武尊山、利根川の源流域を抱く自然豊かな地域。日本でも有数の豪雪地帯で、冬にはウィンタースポーツが盛んなエリアとしても知られています。そんな地域で生まれたのがインソールを専門に開発する「BMZ(ビー・エム・ゼット)」です。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

当初、BMZはスキー用インソールの開発を専門としていましたが、現在ではサッカーやテニス、ゴルフ、陸上など幅広いスポーツを足裏から支えるブランドに成長しています。スキーのチューンナップで培った骨格に合わせた調整技術を根底に、それぞれの種目に最適化されたインソールを開発しているのです。

山を歩く・走るインソールシリーズ

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

YAMAPとBMZが共同開発した山専用インソールシリーズは、BMZの提唱する「Cuboid(キュボイド)バランス理論」に基づいています。

キュボイドとは足の骨格の基盤となる立方骨を指しており、この骨を支えることで土踏まずのアーチが自然に形成され、足の指もしっかり動かせるようになるのです。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

この考え方をベースに、登山やトレランなどの特性に合わせて採用する素材を変えています。

例えば、スタンダードモデルの「山を歩くインソールベーシック」には、「ポロン」という高反発のウレタン素材を採用。重い荷物を長時間背負って歩く登山では、足裏に多大な負荷がかかります。そこでポロンによって適度に衝撃を吸収することで、足裏や膝への負荷を軽減するのです。

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

BMZの製品は企画から製造まで一貫して国内生産ですが、例えば、「山を歩くインソール カーボン」は一部の加工をより技術の高い国外で行っているという徹底ぶり。

「カーボン繊維の製造は日本で、樹脂の含浸工程はドイツで行っています。日本には安定した品質で樹脂を含浸させる技術がないため、わざわざドイツまで送って、それをまた日本に戻してもらっているんです。性能とコストで言えば、性能を優先した生産を行なっています。」とBMZの中山さんは言います。

このように、1つひとつに語り尽くせないほどのこだわりが詰まっているBMZのインソールシリーズ。お悩みや山の楽しみ方に合わせて、ぜひ気になるアイテムをチェックしてみてくださいね。

※一部製品は国外生産になります。

▼ブランドインタビューはこちら

「インソールで足の悩みを改善したい」|足裏から健康を支える専門メーカー・BMZの挑戦


こだわりの日本ブランドとともに山へ

これが「日本の山道具」|登山ギア×地場産業のジャパンブランドに注目!

登山をはじめてから山を知り、地域を知るようになった。そんな経験をした人も多いでしょう。

山から下りた先に広がる街や景色は、人々の営みが長い時間をかけて築いたものに他なりません。地域とともに発展してきた産業を知れば、道具を使う楽しさが増し、山へ向かう時間がもっと待ち遠しくなるはず。

日本のものづくりとともに、そんな嬉しい循環を一緒に育てていきませんか?

    紹介したブランド

    • CHAORAS®

      CHAORAS®

      CHAORAS®(チャオラス)は日本の伝統的なものづくりから生み出され...

    • BMZ

      BMZ

      "足から健康元気に"をモットーに、「立方骨」を支える特許取得インソール...

    • handson grip

      handson grip

      made with pride ハンズオングリップが生まれたのは、四...

    • YAMAP

      YAMAP

      「つづく、つながる、ものがたる」を大切にしているYAMAP STORE...

    関連する記事

      関連する記事は見つかりませんでした